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- ――っ!
- はあああっ… …死ぬかと思いました!
- ありがとうございます
- …うん
- ニャー
- 行っちゃった…
- 見ない顔だけど…新人?
- あ、はい この近所じゃないんですけど…
- そう…
- ここら辺、一応、 私が担当してる地域で…
- 他の魔法少女が担当してる場所で 勝手に魔女と戦うの
- あんまり良くないらしいし…
- うわぁああ! ごごごごごめんなさい!
- 猫ちゃんが魔女の結界に 入っちゃったのが見えて!
- 許してください! もうしません!
- いいよ 別に
- しょうがないし そういうの
- ほほほ、本当ですか?
- うん それじゃ…
- あ、あのぉ…
- 何…?
- その…グリーフシード、とか… 余ってたりしませんか…?
- え…?
- い、今ので、ソウルジェム だいぶ濁っちゃって…
- もし、あったら、なんて… え、えへへ
- …………ごめん
- そ、そうですよね!
- グリーフシード余ってるとか ないですよね!
- なんでもないです!
- 変なこと聞いちゃって ごめんなさい!
- 私も…手持ちがないの…
- さっきの魔女にも 逃げられちゃったし
- 私、そんなに強い訳じゃないし…
- あ…
- ごめん…
- あああ、あやまらないで下さい!
- 私が無理言っただけですから! ごめんなさい!
- でも…ごめん…
- とんでもないです!
- 私の方こそ、たくさん 持ってたらよかったのに…
- 今日は、ありがとうございました 助けてくれて!
- あのままだと、私も猫ちゃんも どうなってたか…
- うん…
- 私、まだまだですけど
- 早く一人前の魔法少女に なれるように、頑張ります!
- みなさんの分のグリーフシードも 取れるように頑張ります!
- うん…、お互い、頑張ろう
- はい! お互い、頑張りましょう!
- …………
- 私たちは、名前も聞かず 連絡先も交換しないまま、別れました
- …………
- また、会えるといいなぁ
- [From the opening sequence images]
- まだ未熟な調整屋さんは バレンタインを駆け巡る
- [Title card] バレンタインメッセージ ~思い出は淡いくろ色~
- FILENAME: text_518410-1_PEHJB.txt
- えー!
- 旅する調整屋さん、 次の町に行っちゃうんですか?
- リヴィア: そうやで 各地を回り魔法少女を救う…
- リヴィア: だからこその “旅する調整屋”や
- その通りだけど…
- ヨヅル: 安心してください
- ヨヅル: 一巡してしまえば またこの町に来ます
- ヨヅル: 永遠のお別れということでは ありませんよ
- うーん…もうすぐ バレンタインだったのに…残念
- 何かできると思ったのにな
- まあ、しょうがないよね じゃあね、みんな!
- 月出里: ふむっ!
- あ、でもこれだけは聞いていい? 次の町はどこなの?
- ヨヅル: ええ、次の拠点となる町は…
- <宝崎市>
- リヴィア: おっしゃ到着やで~
- 月出里: ふんむーっ!
- ヨヅル: ずいぶんと興奮してますね
- ヨヅル: 月出里と宝崎市にゆかりが あった記憶はないのですが…
- リヴィア: 神浜市に近いことが嬉しいんやろ
- ヨヅル: …………ああ、なるほど みかげさんが住んでますからね
- リヴィア: そういうこっちゃ
- ヨヅル: …まだまだ何段階か、理屈を 積み重ねないと辿り着かない…
- ヨヅル: “人の喜ぶ理由”には 気づくのに時間がかかります…
- 月出里: ふーむんふ ふむんふふん!?
- リヴィア: みかげちゃんと遊びたいか ああ、ええで
- リヴィア: ただし神浜市に行くんは こっちの仕事が落ち着いてからや
- 月出里: ふっむー! ふむむふん!
- ヨヅル: よかったですね
- 月出里: ――っ!?
- ヨヅル: 先生! 魔女の反応です
- 月出里: …………?
- リヴィア: ああ… しかもこの魔力の反応…
- リヴィア: ここ最近でも かなり強めの大物やな…
- ヨヅル: 長く生き続けてきたのか、かなり 穢れを集めているようですね…
- ヨヅル: となりの町にいたのに まったく気づきませんでした
- リヴィア: 宝崎市の魔法少女かて 神浜市と同じようにけっこうおる
- リヴィア: それでも対処してへんてことは
- リヴィア: この魔女もよそから来たばっかり かもしれへんな
- 月出里: ふむっ!?
- リヴィア: おーおー 暴れとる暴れとる
- ヨヅル: 我々3人では 少々対応が難しそうですね
- 月出里: ふむむ?
- リヴィア: いや、逃げたらあかん
- リヴィア: せめて魔女の弱点を 手土産にするで
- リヴィア: 宝崎市で調整屋を開くのに 好印象を与えられるやろ?
- ヨヅル: 確かに…では月出里 一緒に弱点を見つけましょう
- 月出里: ふむっ!
- リヴィア: とはいえムリは禁物や
- リヴィア: 勝つ必要はあれへんから 守り重視で相手を観察し!
- リヴィア: ちゃんと敵の動きを見とったら 避けれんような攻撃はあれへ…
- リヴィア: ぐあっ!!
- ヨヅル: 先生! 言った矢先にそれは!
- 月出里: ふむふむっふむ?
- リヴィア: ちゃ、ちゃう! 魔女の動きはしっかり見とった!
- リヴィア: せやけど、今の攻撃… 魔女とちゃう方向から来たんや…
- ヨヅル: そんなことが…
- ヨヅル: いえ、そういうことに しておきましょうか…
- リヴィア: ああっ!ちゃうでヨヅル!
- リヴィア: 失敗を見逃すのも優しさやって 教えたんは私やけどやな
- リヴィア: 今のこれはちゃう 失敗を誤魔化したんやない!!
- ヨヅル: わかってますよ
- ヨヅル: 先生の汚名を返上するために 私がしっかりと避けきって…
- ヨヅル: ぐあっ!!
- 月出里: ふむむーーっ!?
- ヨヅル: まさか、本当に 魔女のいない所から攻撃が…
- 月出里: ふ、ふむ… ふむ…
- リヴィア: あかん 隙を見つけて撤退するで…!
- ヨヅル: 危ないところでしたね すさまじい魔女でした
- リヴィア: えらい魔力が強いと思ったら 何もないところから攻撃…
- リヴィア: 手土産にと軽い気持ちやったけど 弱点を探す余裕もあれへんかった
- 月出里: …………
- 月出里: ――っ!?
- ヨヅル: 先生! 魔女の反応です
- 月出里: …………?
- 月出里: (あの違和感は… なんだったんだろう…)
- FILENAME: text_518410-2_PEHJB.txt
- リヴィア: はいはい、ふたりとも 気を取り直すで!
- リヴィア: 魔女の弱点を得られんかったのは 残念やけど
- リヴィア: 私らが宝崎市に来た目的は 調整屋の仕事をすることや
- リヴィア: 開業の準備が整ったら すぐに呼び込みも始めるで
- ヨヅル: …あの魔女は放置ですか?
- リヴィア: まあ、ちょいと考えがあるから いったんは放置でかめへんよ
- ヨヅル: わかりました
- 月出里: ふむ
- リヴィア: お、あの指輪は…
- リヴィア: そこの魔法少女さん ちょっと時間かめへんか?
- はい、なんでしょう
- ヨヅル: 私たちはピュエラケアといって 旅をしている調整屋でして
- ――っ!?
- ちょ、調整屋って あ、あの調整屋…?
- ヨヅル: 調整屋をご存知でしたか それなら話は早…
- ま、間に合ってますから!
- ヨヅル: えっ?
- 失礼します!
- 月出里: ふむ…?
- リヴィア: なんや、あれ…
- リヴィア: お、その魔力の反応 ふたりとも魔法少女やんな?
- え、は、はい…
- リヴィア: 私らもなんやけど 軽く話でもさせてくれへんか
- リヴィア: 実は私ら、ピュエラケアっちゅう 旅をしている調整屋なんやけど
- ――っ!?
- え、いま… 調整屋って…
- リヴィア: せ、せやけど…
- 関わらない方がいい… 逃げよう…!
- う、うんっ!
- リヴィア: なっ、立て続けに!?
- ふた手に分かれよう!
- リヴィア: ヨヅル! 話を聞かせてもらうで!
- ヨヅル: わかりました!
- う…こっちに来た…!
- ヨヅル: 手荒な行為は優しくないと メモにあるので
- ヨヅル: あくまで丁寧に…!
- ガシッ
- て、丁寧なのに… なんて力…!
- い、痛いのだけは…
- ヨヅル: 心配は無用です
- ヨヅル: 痛みのない 熱々のおもてなしが待っています
- ヨヅル: コーヒーです
- 熱々だ…!
- リヴィア: …で、話の続きやけど… 調整屋が「怖いお店」やて…?
- って、みんな噂してますよ
- 宝崎市の魔法少女の間じゃ 有名な話です
- 近くの町の…神浜市にも 調整屋がいるんですよね?
- そっちからの噂が たくさん流れてくるんです
- リヴィア: …………
- クイズ大会を開いて、不正解者を 地下で強制労働させるとか…
- 魔法少女を好きな格好に 着せ替えるとか…
- 年齢を詐称してるとか… 地獄の料理を召喚するとか…
- リヴィア: …………
- あ、宝崎市の魔法少女も 被害に遭ったって噂で聞きました
- どうも初めて行ったときに 服を…
- ヨヅル: …みたまさんですね
- 月出里: うん…
- リヴィア: みたまぁ~~!!
- ヨヅル: 宝崎市に流れ着くまでに だいぶ尾ヒレは付いたようですが
- ヨヅル: あいにく、根も葉もないわけじゃ ないのが悔しいところですね
- 月出里: うん…
- リヴィア: みたまぁ~~!!
- それに、私も追いかけられて 無理やり連れて来られたし…
- ヨヅル: 今まさに、我々の行為が 悪評を生む一因になりましたね…
- リヴィア: …………
- ヨヅル: またのご来店を…
- は、はぁ~ やっと解放されたぁ~
- リヴィア: 今日のことは あんまり言いふらさんでやー!
- リヴィア: …で、ふたりとも 事態はちょっとばかし深刻やで…
- ヨヅル: 調整では命とも言える ソウルジェムに触れますし
- ヨヅル: 相手が内に秘めていることまで 見えてしまう
- ヨヅル: 強く警戒されているのは 由々しき事態と言えますね
- リヴィア: ほんま、神浜市におった間に 宝崎市でのイメージは最悪
- リヴィア: マイナスからのスタートなんは 私でも初めてやなあ…
- 月出里: ふんふむふん?
- リヴィア: 安心し!諦めへん! 順序立ててやることやるだけや
- リヴィア: まずは風評被害で地に落ちた 調整屋の信頼を回復させたる
- リヴィア: 「名づけて… “バレンタインの義理”作戦や!」
- 月出里: ふむ…!
- FILENAME: text_518410-3_PEHJB.txt
- リヴィア: さて、調整屋の風評被害を払う この“バレンタインの義理”…
- リヴィア: 鍵を握るのは………… 月出里、あんたや!
- 月出里: ふむっ!?
- ヨヅル: それはまた どういった理由でしょうか
- リヴィア: 私らの目的は、みたまが作った 危険なイメージの払拭やろ?
- リヴィア: そのためには健全さとピュアさの アピールが不可欠なんや
- 月出里: ふむんむんむ、ふむんむ?
- リヴィア: あかんあかん 私とヨヅルにはでけへん
- リヴィア: 私の場合は色気と風格のせいか 悪の親玉みたいやし
- リヴィア: ヨヅルのクールさかて 危険でミステリアスな感じや
- リヴィア: それに比べて月出里 あんた、自分を見てみい!
- 月出里: ふむ…?
- ヨヅル: おぉ…
- リヴィア: 今どきこんな 健全で無垢に見える子はおらん!
- リヴィア: つまり、アンサーや!
- リヴィア: 月出里が調整屋の印象改善に うってつけなんや!
- ヨヅル: 確かに…
- リヴィア: バレンタインは人と人を繋ぐ 素敵な行事や
- リヴィア: 調整屋と宝崎市の魔法少女に 繋がりを作ってくれ!
- リヴィア: 頼んだで月出里 あんただけが頼りや!
- 月出里: ふむーっ!
- ヨヅル: 気合い十分ですね… しかし…
- ヨヅル: 先生は先ほどから 少々失言が過ぎるのでは?
- リヴィア: へぇ…なんや急に…
- ヨヅル: 月出里は最近まで、自分を 汚れた存在と悩んでいました
- ヨヅル: そんな月出里に対して無遠慮に 無垢と言い切ってしまうのは…
- ヨヅル: それに「人と繋がる行事」という 表現も気になります
- ヨヅル: 月出里は人と繋がりができる度に 悪夢にうなされていました
- ヨヅル: それは、 自身が持つ苦い過去のせいです
- ヨヅル: わざわざ「人を繋ぐ」という 言葉を使ってまで
- ヨヅル: 意識をさせる必要は あるのでしょうか…?
- リヴィア: 教わった「優しさ」に反してる って言いたいんか?
- ヨヅル: はい…
- リヴィア: せやけど、最近の月出里は 自分から前に進んどるやろ?
- リヴィア: 人と繋がっても悪夢を見る回数は えらい減ってきたし
- リヴィア: なのに周囲の私らが そういう言葉を過剰に避ければ
- リヴィア: 却って気遣いが重荷になって 月出里の進歩を邪魔しかねん
- リヴィア: せやから、むしろ全く気にしない という空気を作るのも
- リヴィア: 心遣い… 仲間の使命やと思うとる
- ヨヅル: …難しいですね
- リヴィア: というわけで月出里 今からあんたを
- リヴィア: 旅する調整屋の宣伝担当大臣に 任命する!
- 月出里: ふむっ!
- リヴィア: 任命責任は全部私にあるから、 思い切ってやったり!
- リヴィア: そうや、せっかくやし 調整の力で
- リヴィア: 衣装もバレンタイン仕様に 替えたるわ
- 月出里: ふむむっ!
- リヴィア: どうや
- 月出里: ふむーっ!
- ヨヅル: 似合っていますよ
- 月出里: ふむんふむんむ ふむっむふむ?
- リヴィア: いや、固有魔法は変わってへん
- リヴィア: 元々衣装替えと一緒に 魔法が変わるのは
- リヴィア: その人に強い目的意識がある場合 だけやしな
- リヴィア: 宣伝目的程度じゃ 固有魔法は変わらへん
- 月出里: ふっむ…
- リヴィア: なんや、残念そうな顔して
- リヴィア: 変わるのがちょっと 楽しみやったんか?
- リヴィア: でも月出里の場合は 変わらんでええと思うけどな
- 月出里: ふむ?
- リヴィア: だって月出里は自分の魔法を 最近になって自覚したわけやろ?
- リヴィア: 私がふたりの固有魔法を 教えたるから、駆使してき
- リヴィア: 「ほんで月出里は人の考えを切り替えたように “感情を切り替える力”を持っとる」
- リヴィア: まだ自分本来の魔法にも 慣れてへんのに
- リヴィア: 別の魔法に変わったら 扱いがわからんくて困るで
- リヴィア: せやから、変わってないのは ええことやと思うわ
- 月出里: ふむ…!
- 月出里: …………
- 月出里: (新しい姿をくれるくらい リヴィアさんは期待してる…)
- 月出里: (よーし、頑張るぞー!)
- FILENAME: text_518410-4_PEHJB.txt
- <宝崎市・国道付近>
- ざわざわ…
- 月出里: (ここは人も建物も多くて 賑やかだね…)
- 月出里: (さっそく魔法少女を探して 調整屋のアピールをしよう!)
- 月出里: (それにしても…)
- 月出里: (あんまり知らない町って 歩くとちょっとワクワクする!)
- 月出里: (前に公民館に行ったときは 車移動だったし…)
- 月出里: (あと他に宝崎市に来たのは なんだっけ…)
- 月出里: (あ、間違えて 電車を降りたときだ)
- 月出里: (…アレももう何か月も前かな)
- 月出里: (でもあのときも、駅の辺りを ウロウロしただけだし…)
- 月出里: (こうして街中を散策するのは 初めてだから)
- 月出里: (やっぱり楽しい)
- 月出里: (…じゃなくて! 魔法少女魔法少女…)
- 月出里: ――っ!?
- 月出里: (魔法少女だ! よーし…!)
- 月出里: ふんふむむ! ふっむーふむんふむん!
- わっ、えっ、すごい格好! もしかして全部お菓子なの…!?
- この宝石はソウルジェム…? この子、魔法少女だよ!
- 月出里: ふん! ふむむふふむんふんふ!
- 月出里: ふむふむむふむんふんふふふふふ ふーむんふっふふむふむむん…
- なんか…
- うん…
- かわいいぃ~~!
- 月出里: ふむっ!?
- 身振り手振りで ぴょこぴょこしてるの可愛い!
- 愛おしすぎる! バレンタインの申し子なの!?
- 月出里: ふー…ふー…
- ふぅ…十分堪能したし
- だね、そろそろ行かないと
- じゃーねー!
- 月出里: ふむっ!?
- 月出里: ふむぅ…
- 月出里: (まずは身振り手振りで 伝えようとチャレンジしたけど)
- 月出里: (やっぱり… 思った通りに伝わらない…)
- 月出里: (何か伝える方法を 考えるところからかなぁ…)
- 月出里: (お、魔法少女の魔力…)
- …………
- 月出里: (あれ…?あの人 前にどこかで見たことが…?)
- 月出里: …………
- 月出里: (ん~…どこだっけ…?)
- 月出里: (…って、ああっ! 行っちゃう!追いかけないと!)
- 月出里: ふむむふん!
- ん? 私ですか?
- …って、わっ! すごい格好してますね!
- あ、ごめんなさい バカにはしてないんです!
- それでご用件は…? あなた魔法少女ですよね…?
- 月出里: ふむ!
- それは「うん」ですよね あれ、でも指輪がない…?
- 月出里: ふむ!
- あ、今のが魔法少女としての 姿だったんですね
- でも、だったらなんで…?
- 月出里: ふむ?
- あ、ああ…! ごめんなさい、こっちの話です!
- それで、あなたの用事なんですが 魔法少女としての頼み…ですか?
- 月出里: ふむっ!
- …でしたらごめんなさい ご協力できることはないんです!
- それに、助けていいただく 必要もありません!
- 私はどんな時でもひとり!
- そうやって生きると決めたので すみませんが、失礼します!
- 月出里: ふむ…
- FILENAME: text_518410-5_PEHJB.txt
- ヨヅル: 月出里はうまく やれているでしょうか
- リヴィア: 心配やな…
- ヨヅル: 先生が任命したのに…?
- ヨヅル: そもそも月出里がいた手前 あの場での言及は避けたのですが
- ヨヅル: 言葉の使えない月出里に 勧誘は厳しいのでは…?
- リヴィア: まあそれも 重々承知や
- ヨヅル: 承知の上で任せたのですか…?
- ヨヅル: それはまた…厳しい場に 身を置かせることで
- ヨヅル: 成長を促す狙いがあったとか… そういう類の話ですか?
- リヴィア: いや、そういう昔話的な 事情やあらへん
- リヴィア: 単にこっち側の都合や
- リヴィア: 私らがこれからする仕事に 関わらせたくなかったからな
- ヨヅル: これからする仕事?
- リヴィア: 言うたやろ 放置はせえへんて
- リヴィア: そろそろ動くでヨヅル これから、あの魔女の調査や
- ヨヅル: まさか、先ほどの強力な上に 不可解な攻撃をしてきた…
- リヴィア: そう、あの魔女や… 倒さなって思ってたんやけど
- リヴィア: 排除するにしてもあの強さやろ もしものことがあるからな
- リヴィア: 月出里は 近づけたくなかったんや
- ヨヅル: それは同意ですが、本人が聞くと 仲間はずれだと思いますね
- リヴィア: やから、バレんように動くには 今がベストなんや
- リヴィア: みたまが起こした 調整屋の風評被害があるやろ?
- リヴィア: その払拭を月出里に ミッションと課してやれば…
- ヨヅル: 月出里に隠れて 魔女の問題を解決できると…
- リヴィア: そういうことや
- リヴィア: 町の安全を脅かす魔女の 弱点なり見つけて解決すれば
- リヴィア: 魔法少女を守れて 調整屋の信頼も回復する
- リヴィア: そうすれば月出里もきっと 喜ぶやろう
- リヴィア: 大丈夫 全部うまくいくはずや
- FILENAME: text_518410-6_PEHJB.txt
- 月出里: (あ、人がたくさん… 次はここで勧誘だね)
- 月出里: (じゃん!)
- 月出里: (スマホ!)
- スッ…スッ…スッ…スッ…
- 月出里: (こうして、あらかじめ 調整屋を宣伝する文章を)
- 月出里: (メモ帳に入力すれば あとは見せるだけで…)
- 月出里: (さっそく魔法少女!)
- 月出里: ふむっ!
- ビシッ!
- え、何…?読んで欲しいの? でも文字多いな…
- ごめん、急いでるから 他の人にお願いして
- 月出里: …………
- …………
- 月出里: ふむっ!
- ビシッ!
- …? はあ…
- 月出里: ふむん…
- 月出里: (ダメだ…画面を見せても 立ち止まって読んでくれない)
- 月出里: (どうしよう… 別の方法を考えないと…)
- ドン…
- 月出里: ふむっ!?
- ああっ、ごめんなさい よそ見して歩いてて…
- ピラッ…
- 月出里: ふ、ふむんむんむ!
- ああぁ、僕のチラシだ 拾ってくれてありがとう!
- 月出里: (これ… この辺りのお店のチラシ…?)
- 月出里: (チラシ…)
- 月出里: ふむむ!
- 月出里: (紙のチラシを手渡せば)
- 月出里: (立ち止まってる暇のない 忙しい人も後で読めるし)
- 月出里: (詳しい説明や電話番号 地図も載せられる!)
- 月出里: (あと、イラストも描いて 楽しくあったかい感じにして…)
- 月出里: (完成っ!)
- 月出里: (たくさんコピーもしたから いっぱい配るよ!)
- 月出里: (あ、来た来た…!)
- 月出里: ―月出里― ふんむー!
- 何?くれるの? ありがとう!
- 月出里: ―月出里― ふむっ!
- 月出里: ―月出里― (受け取ってくれた…!)
- 月出里: ―月出里― (この調子で もっと配ろう!)
- 月出里: ―月出里― ふんむー! ふんむ、ふんむー!
- ん?チラシ…? …って、調整屋… 確か…ソウルジェムに何かするんだよね…
- 月出里: ―月出里― ふむっ!
- ま、まあ受け取るだけ 受け取っとくよ…
- 拒否ったら何されるかわからないし…
- 月出里: ―月出里― ふむ…
- 月出里: ―月出里― (受け取ってもらえたけど… 今のは…ちょっと…)
- 月出里: ―月出里― (つ、次!)
- 月出里: ―月出里― ふむっ!
- …………
- 月出里: ―月出里― (あ…行っちゃった…)
- 月出里: ―月出里― ふむっ!
- お、何これ 調整屋じゃん、宣伝?
- 月出里: ―月出里― ふむっ!
- ふーん… 「アットホームで怖くない優しい人たちです」 ね…
- 月出里: ―月出里― ふむっ!
- イメージよくしようって必死なわけね でもあの噂自体は本当なの?
- 月出里: ―月出里― ふ、ふむ…
- いや、ふむ、じゃなくて 質問には答えてほしいんだけど…
- 月出里: ―月出里― (しまった…とっさの質問には 答える方法がない…)
- 月出里: ―月出里― (そうだ、今度こそ スマホのメモ画面で…)
- …もしかしてあなた 喋るのが苦手なの?
- 月出里: ―月出里― ふ、ふむ…
- え、どうしてそれなのに 宣伝や窓口をやらされてんの?
- それは…さすがにブラック組織でしょ…
- あなたもまだ小さいんだから 早くそんなところから足洗った方がいいって
- 健気さでアピールとかさ 叩かれないように利用されてるだけだよ
- 月出里: ―月出里― ふむ…
- 月出里: ―月出里― (なんでそんなこと言うの…)
- 月出里: (なんか… 疲れちゃったな…)
- 月出里: (リヴィアさんとヨヅルが 悪く言われちゃうし…)
- 月出里: (また、別の方法を考えよう…)
- 月出里: (でもわたしなんかでも 出来ること…他にあるかな…)
- 月出里: (…あ、ダメ)
- 月出里: (わたし「なんか」なんて言うな わたし「だから」と言えって)
- 月出里: (リヴィアさんに 怒られたのに…)
- 月出里: (わたし「だから」出来ること か…)
- 月出里: ――っ!?
- 月出里: (どうしよう… 閃いちゃった…!)
- 月出里: (これならわたし「だから」 出来ることだし…)
- 月出里: (調整屋の人気もすぐに アップさせられる!)
- FILENAME: text_518410-7_PEHJB.txt
- ヨヅル: 聞き込みの成果は思ったより かんばしくありませんね…
- リヴィア: 最近来た魔女やと思ってたが それもちゃうみたいやしな…
- …ああ、その魔女なら 知ってるけど…
- この町に現れて もう何か月か経つよね…
- かなり強くて、攻撃も特殊で すぐに逃げられちゃうとか…
- 聞きたいって言われてもね… こっちが知りたいぐらいだし…
- リヴィア: あの魔女に負けて犠牲になった 魔法少女とかはおるんか…?
- 私が知る限りいないよ あんなに強いのに不思議だよね
- リヴィア: そうなんか? そら運がええな…
- ヨヅル: 正直、あの魔女の情報に関して めぼしい話はありませんね
- リヴィア: せいぜい新しくわかったのは 長い間存在しているということと
- リヴィア: 被害に遭った魔法少女は おらんってことぐらいや
- ヨヅル: …だからあの魔女について詳しい 魔法少女も少ないのでしょうか
- ヨヅル: 厄介な相手であることに 変わりはないものの
- ヨヅル: すぐには脅威にならないので みんなはすぐに手を出せない
- ヨヅル: だから今回のように 薄い情報だけが入ってくる
- リヴィア: おお、ええでヨヅル ちゃんと「読み取り」ができとる
- リヴィア: 証言から得た単語だけやなく その裏の事情まで考えることが
- リヴィア: 相手を理解して優しくするのにも 必要なことなんや
- ヨヅル: お褒めに預かり光栄です
- リヴィア: そこはテンプレ返事なんやな
- リヴィア: …で、あの魔女の被害に 話を戻すと…
- リヴィア: よくよく考えたら宝崎市では ここ最近、大きな事件事故がない
- ヨヅル: …!
- ヨヅル: あれだけ強力な魔女なら 口づけで人々を操作して
- ヨヅル: 相当な被害を発生させても おかしくないはず…!
- リヴィア: にもかかわらず事件の噂や 記事もないっちゅうことは…
- リヴィア: ん?
- リヴィア: あ、ヨヅル ほれ、あっち
- …………
- リヴィア: また魔法少女がおった せっかくやし話を聞くで
- リヴィア: ちょいとええか “魔法少女”のお嬢さん
- え、あ… な、なんでしょうか…!
- リヴィア: 協力してもらいたいことが あるんやけどな…
- すみません!お力になれません! 失礼します!
- リヴィア: ま、待ってや!
- リヴィア: ある魔女について 聞きたいだけや!
- リヴィア: この宝崎市に前から えらい強い魔女がおるやろ!?
- …それって
- リヴィア: そうそう、その魔女や!
- やっぱりそうですか でしたら、大丈夫です
- 放っておいてもいいですよ
- ヨヅル: その理由はやはりあの魔女による 被害が少ないからでしょうか
- はい、そうですね
- 少なくとも私たちは 被害を確認できていません
- ヨヅル: もう、調査しなくても いいのでは?
- リヴィア: う~ん…
- ヨヅル: 宝崎市の魔法少女たちは 困ってないようですので
- ヨヅル: この魔女の件を解決して、 魔法少女の信頼を得るという
- ヨヅル: 先生の魂胆は既に外れています
- リヴィア: 魂胆なんて言いなや…
- リヴィア: それに、信頼うんぬん以前にやな 魔女の問題は解決せなあかん
- リヴィア: 魔法少女が魔女から身を引いたら おしまいやで
- ヨヅル: そんなつもりはないのですが 承知しました
- あの、もういいですか?
- リヴィア: ああ、ごめんな もうええで、ありがとう
- リヴィア: あ、でも私ら調整屋っちゅうのを やっててな
- リヴィア: 今、試していかへん? 強くなるで
- 調整屋…! け、結構です
- ヨヅル: 遠慮せず頼りにしてください
- …いいえ、私は誰にも頼らず ひとりで生きていくと決めたので
- FILENAME: text_518410-8_PEHJB.txt
- リヴィア: ふぅ…これ以上聞き取りをしても 進展はなさそうや
- リヴィア: 整理するような 情報もあれへんけど
- リヴィア: いったんトレーラーへ戻ろか
- ヨヅル: そうですね
- ヨヅル: では駐車場のある 河川敷まで向かいましょう
- リヴィア: …関係あるかわからんけど あの魔女、ずっと肉焼いとったな
- ヨヅル: あの姿に倒すためのヒントが…?
- リヴィア: いや、知らんけど なんかありそうやん
- リヴィア: ――っ!?
- ヨヅル: どうされましたか
- リヴィア: あ、あれ… トレーラーの周り…!
- ヨヅル: ん…………あっ!
- あー!ふたりはもしかして リヴィアさんとヨヅルさん!?
- ヨヅル: え、ええ…
- リヴィア: せやけど…
- みんな: 「きゃー!」 「本物!本物よー!」
- やっと会えました~ ずっと待ってたんですよ
- 旅する調整屋さん!
- リヴィア: …みんなはどうしてここに…?
- リヴィア: もしかして月出里に 紹介されて…?
- はい!
- 町で月出里ちゃんに 声をかけられて
- トレーラーのある場所も 教えてもらいました!
- ここで待ってれば 会えるってね!
- あ~あ、調整ってどんなだろう 楽しみ!リヴィアさん、早く!
- 待ってよ! 強くなるのは私が先!
- リヴィア: お、おぉ…
- ヨヅル: ふふ…素晴らしいです やりますね、月出里
- ヨヅル: この可愛らしいチラシも 頑張って作ったのでしょうか
- ヨヅル: ここまで勧誘を成功させるとは 正直、思ってもいませんでした
- リヴィア: …………いや これは…褒められたものか…
- ヨヅル: と、言いますと?
- リヴィア: 本人に確かめるで
- リヴィア: みんな、月出里は今 どこにおるん?
- ビル街の大通りで 案内してましたよー!
- リヴィア: おおきに よし、行くでヨヅル!
- ヨヅル: はい
- え~行っちゃうの?
- ヨヅル: 度々すみません すぐ戻りますので…失礼します
- ヨヅル: あ、外は寒いので
- ヨヅル: ぜひトレーラーの中で 待機していただければと
- 優しい~
- FILENAME: text_518410-9_PEHJB.txt
- そんで、なんて言われたと思う? これがほんと酷くてさ~
- わかった!声が変! ファッションが変!
- 月出里: ふむっ!
- え? 何この子…
- チラシ…?ちょうせい………… あ、調整屋!?
- 調整屋がこの町に来てるから ぜひ来てね、ってこと…?
- 月出里: ふむっ!
- いや、ムリ… だって調整屋って変な噂があるし
- ソウルジェムを差し出すのは 流石にちょっと怖…………[freeze:2.5]くない
- あれ、怖くない…?
- どちらかと言えば 今すぐ会いたい…?
- えっ!? どうしたの!?
- あなたも行こうよ! 調整屋は最高、今すぐ行くべき
- え、やだ…何…? あなたが怖いんだけど…
- …………[freeze:2.5]うん、そうだね 行こう行こう…
- 調整屋は決して怖くない むしろ絶対頼りになりそうだしね
- 月出里: ふむっ!
- ここにいるんだね! ありがとう!
- 月出里: ふむっ!
- 月出里: (またまた大成功! こんなにうまくいくなんてね!)
- リヴィア: 私がふたりの固有魔法を 教えたるから、駆使してき
- リヴィア: 「ほんで月出里は人の考えを切り替えたように “感情を切り替える力”を持っとる」
- 月出里: (わたしの固有魔法… “感情を切り替える力”…)
- 月出里: (これを使えば、簡単に 調整屋への感情を変えられる!)
- 月出里: (しかもこれは わたし「だから」こその方法)
- 月出里: ふむ…むふふ…
- 月出里: (きっとリヴィアさんも 喜んで、褒めてくれる)
- 月出里: (期待してくれたリヴィアさんを ガッカリさせないで済む…)
- 月出里: (この方法を思いつくまで 諦めずに頑張ってよかった…!)
- 月出里: (この調子で もっとお客さんを増やすよ)
- …………
- 月出里: (また魔法少女だ よーし…)
- リヴィアの声: 「月出里!」
- 月出里: む…?
- リヴィア: …………
- 月出里: (リヴィアさん!)
- FILENAME: text_518410-10_PEHJB.txt
- リヴィア: 月出里…
- 月出里: リヴィアさん!
- 月出里: わたし、たっくさん 調整屋を案内したよ!
- 月出里: 今、トレーラーにいったら みんなが待ってると思う!
- リヴィア: ああ、見てきたんや… 知ってるで…でもな…
- 月出里: わたしならではの方法で 工夫して案内したんだよ
- 月出里: リヴィアさんとヨヅルにも 見せてあげる!
- リヴィア: ――っ!?
- 月出里: ふむっ!
- えっ!? 何…調整屋…!?
- 嫌…
- リヴィアの声: 月出里っ!!
- …じゃない 嫌じゃない
- 調整屋さんに 調整の依頼をしたい!
- リヴィア: 月出里…
- 月出里: ね!すごいでしょ!?
- 月出里: リヴィアさんが教えてくれた 固有魔法のおかげなんだよ!
- 月出里: リヴィアさんの言った通り わたしが1番、勧誘に向いてた!
- 月出里: リヴィアさんの期待した 通りだったでしょ!?
- 月出里: リヴィアさん 褒めてくれるよね!
- リヴィア: ………… 月出里…これはアカンて…
- 月出里: え?
- リヴィア: それがどれだけ人の尊厳を 踏みにじる行為やと…
- リヴィア: いや、こんなん子どもに わかるわけないわな…
- 月出里: え?え?
- リヴィア: でも、こんな風に月出里が 力を使うと思えへんかったんや
- リヴィア: だってこの能力は アンタにとって…………いや
- リヴィア: すまん、今のは無しや
- 月出里: …………
- リヴィア: 一緒にトレーラーに戻るで
- リヴィア: そんでみんなに掛けた魔法を 元に戻してやり
- 月出里: ――っ!?
- 月出里: え?え? え?え?
- 月出里: なんで!?なんで!?
- 「ひどい!」 「魔法を使って騙したなんて!」
- 「やっぱり調整屋は噂通りの人たちね!」 「魔女について調べてたのも 何か裏の目的があるんでしょ!」
- ヨヅル: 申し訳ありません…
- リヴィア: ごめんな…
- 月出里: (なんで…みんな怒ってるの…)
- 月出里: (なんでふたりは 怒られてるの…?)
- 月出里: (わたし…みんなのために 頑張ったのに…)
- 月出里: (喋れないけど、一生懸命考えて 頑張ったのに…)
- [Part 1 end]
- ---
- [Part 2 start]
- FILENAME: text_518420-1_LZJeJ.txt
- …………
- ここで待っていれば またあの人に会えるかな…
- 今日は会えるかな…
- 連絡先… ちゃんと聞けばよかったな…
- あの人はこの辺りが 担当地域って言ってた…
- だから待ってれば 会えるはず…
- …………今日も 現れないんだろうな…
- 弱っちい私なんかと仲良くしても いいことなんてないですしね…
- もう一生 会えないのかな…
- もしかしたら…あの人はもう…
- ようやく出会えた 一緒に戦えそうな人だったのに…
- どうしよう…
- 私はひとりじゃ生きていけない… あの人だけが頼りなのに…
- …………
- ――っ!?
- あ…あ…
- この魔力は…!
- FILENAME: text_518420-2_LZJeJ.txt
- 月出里: …………
- 月出里: (今日も調整屋の紹介 頑張らないと…)
- 月出里: (だって昨日… みんなに謝った後で…)
- 帰ります!
- もう二度と 来ないと思ってくださいっ!
- リヴィア: しゃあないと思ってる ほんま申し訳ないことしたわ…
- …………
- リヴィア: ん?なんや? あんたは帰らんのか?
- …ちょっと聞きたいことが…
- …実は先週…彼氏に 「重い」ってフラれちゃいまして
- リヴィア: あ、ああ… それは、しんどいな…
- しかもバレンタイン直前ですよ? 最悪ですよね
- それで、彼氏のことを 思い出したくもないんですけど…
- 頭の中から消し去ることって この子の魔法でできますか…!?
- リヴィア: …苦しいのはわかるが やめとき
- リヴィア: 都合よく記憶を消したりはできん
- リヴィア: 月出里にできるのは あくまで想いや感情の切り替えや
- リヴィア: 仮に、彼氏への強い想いを弱めて 切り替えたところで
- リヴィア: 別の何かに依存し始めたら それこそ厄介やで
- リヴィア: せやから、そんな魔法に頼って 己を変えようとしたらあかんよ
- そうですかぁ…
- 月出里: …………
- リヴィア: ああっ、月出里、違うんや…
- リヴィア: 別に月出里の能力を 悪く言ったわけやなくてな…!
- 月出里: …………
- リヴィア: …………
- リヴィア: …明日は固有魔法に頼らず 頑張ってくれや…
- 月出里: ふ…
- 月出里: む…
- 月出里: (…って感じで、今日も宣伝の お仕事、任されちゃったし…)
- 月出里: (「イヤ」とも言えなかった…)
- 月出里: (やらないと…)
- …………
- 月出里: ふむ…
- …? どうしたの?
- 可愛い格好だね
- 月出里: ふ…
- 月出里: む…
- 月出里: …………
- …あれ、いっちゃった
- 月出里: …………
- 月出里: (なんか…もう、ムリ… どうせ伝わるわけないし…)
- 月出里: (わたしの言葉を伝えられても 調整屋の評判は変わらない…)
- 月出里: (それにもし…)
- 月出里: (昨日の怒ってた子たちが わたしの悪口を言ってたら…)
- 月出里: (評判だけじゃなくて…)
- 月出里: …………
- 月出里: (とりあえず 場所を変えよう…)
- 月出里: …………
- 月出里: (もう1時間くらい サボっちゃってるよ…)
- 月出里: (でも体が動かないや)
- 月出里: (あ、アリの行列…)
- 月出里: (偉いな、アリさんは…)
- 月出里: (こんなに寒いのに 自分より大きな荷物を運んで)
- 月出里: (あれ…?一匹だけ 行列から外れちゃってる…)
- 月出里: (…この子、触覚が 折れちゃってるんだ…)
- 月出里: (…………一緒だね… 話せないわたしと…)
- 月出里: (そう… わたしは触覚の折れたアリ…)
- 月出里: (前歯の欠けたリス…)
- 月出里: (食べても太れない豚…)
- 月出里: (画面バキバキのスマホ…)
- 月出里: …………
- 月出里: (固有魔法は…)
- 月出里: (やっぱり 使っちゃダメだよね…)
- 月出里: (あーあ…)
- 月出里: (やっと、この魔法のことを 好きになれそうだったのにな…)
- ぐるるる…
- 月出里: (お腹すいた…)
- 月出里: (まだ何もしてないけど もうすぐお昼なんだね…)
- 月出里: (アリさんを行列に 戻して…と)
- 月出里: …………
- 月出里: (駅前までいけば 何かお店あるかな…)
- 月出里: (どれにしよう)
- ピンポンパンポーン
- 月出里: ふむ?
- 月出里: (駅の中のアナウンスかな)
- 「神浜方面行き普通電車 間もなく発車いたします 危険ですので白線の内側へお下がりください」
- 月出里: …………
- 月出里: (神浜…)
- FILENAME: text_518420-3_LZJeJ.txt
- 月出里: …………
- 「神浜方面行き準急 間もなく発車いたします 危険ですので白線の内側へお下がりください」
- 月出里: (あ、また…)
- 月出里: …………
- 「神浜方面行き急行 間もなく発車いたします 危険ですので白線の内側へお下がりください」
- 月出里: (どんどん出てってる…)
- 月出里: (神浜市への電車…)
- 月出里: …………
- 月出里: (切符…買っちゃった…)
- 月出里: (お昼ご飯に、って貰った おこづかいだったのに…)
- 月出里: (これを使って 電車に乗っちゃえば…)
- みかげ: わーい!すーたん久しぶり! いっぱい遊ぼ―ね!
- 月出里: ふむーっ!
- 那由他: おかえりなさいですの!
- ラビ: 久しぶりのこの町を ゆっくり堪能してください
- 月出里: ふむ!ふむ!
- みかげ: なゆたんのパパがミナギーシーの チケットをくれたんだよ!
- みかげ: 今からみんなで行こう!
- 月出里: ふむっ!
- 那由他: お山の絶叫マシンが 迫力満点だそうですの!
- ラビ: ふふ、那由他様の絶叫は さぞかし迫力があるのでしょうね
- 那由他: どういう意味ですの!
- みかげ: にぎやかで楽しいねっ!
- 月出里: ふむむーっ!
- 月出里: (きっと、神浜市で 楽しいことが待ってるはず…)
- 月出里: (…でも、この電車に 乗らなかったら…)
- また私の心を操って 騙そうとしてるんでしょ!
- なんとか言ってみなよ!
- リヴィア: 収穫ゼロ… ちょっと期待しすぎたか…
- ヨヅル: 今まで何やってたんですか…?
- 月出里: (きっと こうなるんだろうな…)
- 月出里: (「期待外れ」か…)
- 月出里: (そもそもリヴィアさんは 期待なんてしてなかったのかも)
- 月出里: (だって昨日…)
- 「ひどい!」 「魔法を使って騙したなんて!」
- 「やっぱり調整屋は噂通りの人たちね!」 「魔女について調べてたのも 何か裏の目的があるんでしょ!」
- 月出里: (あれは、リヴィアさんと ヨヅルのふたりで)
- 月出里: (昨日会った強い魔女のことを 調べてたってことだよね…)
- 月出里: (…わたしは魔法少女としての 能力を信用されてないから)
- 月出里: (苦手な宣伝の仕事を与えられて 誤魔化されてたんだ…)
- 月出里: (そう…危険だって言われて 遠ざけられるのはいつものこと)
- 月出里: (わかるよ いつもそうだもん)
- 月出里: (いつもわたしは 何も期待されてない…)
- FILENAME: text_518420-4_LZJeJ.txt
- 「神浜方面行き準急 間もなく発車いたします 危険ですので白線の内側へお下がりください」
- 月出里: …………
- 月出里: (どうせ期待されてないなら…)
- 月出里: (本当に神浜市に行って サボっちゃったとしても)
- 月出里: (「頑張ったけどダメだった」 って謝れば許されそう)
- 月出里: (…だいたいリヴィアさんも 悪いよね)
- 月出里: (わたしに向いてない仕事を 押し付けたわけだし)
- 月出里: (『任命責任は私にある』って リヴィアさんも言ってた)
- 月出里: (うん 全部リヴィアさんのせいだよ)
- 月出里: (チラシを渡した子も ブラックって言ってたから)
- 月出里: (わたしは悪くない…)
- 月出里: ふむっ!
- 月出里: (なんでわたし こんなに性格悪いのっ!?)
- 月出里: (全部リヴィアさんの せいにして!)
- 月出里: (じゃあ勧誘の仕事に戻る?)
- 月出里: (それももうムリだよ…!)
- 月出里: (どうすればいいの リヴィアさん…)
- ガシャン
- 月出里: (切符、入れちゃったよ 改札通っちゃったよ)
- 月出里: (いいの?リヴィアさん?)
- 月出里: (いいか、別にいいんだよね)
- 月出里: (今日くらいサボったところで 調整屋は何も変わらない…)
- 月出里: (むしろリヴィアさんにとって 1番困ることは…)
- 月出里: (サボられて成果がないこと じゃなくて…)
- 月出里: (わたしに固有魔法を 使われることなんだから)
- 月出里: …………
- リヴィア: ………… 月出里…これはアカンて…
- 月出里: え?
- リヴィア: それがどれだけ人の尊厳を 踏みにじる行為やと…
- リヴィア: …苦しいのはわかるが やめとき
- リヴィア: 都合よく記憶を消したりはできん
- リヴィア: 月出里にできるのは あくまで想いや感情の切り替えや
- リヴィア: せやから、そんな魔法に頼って 己を変えようとしたらあかんよ
- 月出里: …………
- 月出里: (でもね、固有魔法の “嫌いさ”だったら…)
- リヴィア: 宣伝目的程度じゃ 固有魔法は変わらへん
- 月出里: ふっむ…
- リヴィア: なんや、残念そうな顔して
- リヴィア: 変わるのがちょっと 楽しみやったんか?
- 月出里: (“嫌いさ”だったら…)
- 月出里: (わたしの方が負けてないよ)
- 月出里: わたしは、ある事件に巻き込まれて 殺されそうになった
- 月出里: そこに現れたのはキュゥべえ
- 月出里: わたしは願いを叶えて わたしに向けられた銃口を 別の方向に向けさせた
- 月出里: (そんな最低の願いで 得た固有魔法なんだから…)
- リヴィア: 「ほんで月出里は人の考えを切り替えたように “感情を切り替える力”を持っとる」
- 月出里: (最初は何も思わなかった…)
- 月出里: (でも、魔法少女になったときを 振り返ってみると…)
- 月出里: (自分の魔法が気持ち悪い…)
- 月出里: (すごく吐き気がする)
- 月出里: (たぶんこれは わたしの中の罪悪感が)
- 月出里: (わたしを許さないぞって 言ってるんだと思う)
- 月出里: (でもね…)
- 月出里: (あの説明を聞いたとき わたしの中にあった感情は)
- 月出里: (“それだけ”じゃ なかったんだよ)
- FILENAME: text_518420-5_LZJeJ.txt
- リヴィア: …………
- ヨヅル: 調査、進みませんね…
- リヴィア: あー…
- ヨヅル: 元々、みなさんが魔女の情報を 持ち合わせてないのもありますが
- ヨヅル: それ以上に我々への警戒心が強く 会話までこぎつけませんね
- リヴィア: うー…
- ヨヅル: 初めて会う方でも 同様の対応をされました
- ヨヅル: 恐らく昨日の件が既に 出回っていて…
- リヴィア: んー…
- ヨヅル: …お疲れ、ですか?
- リヴィア: …そんなとこやなぁ
- ヨヅル: …嘘ですね
- リヴィア: “嘘を見逃すのも優しさ”やで…
- ヨヅル: それに従って「ぐあっ」と 言わされたので見逃しません
- リヴィア: ほうかほうか… んー…
- ヨヅル: …………月出里のことですね
- リヴィア: 勘がええな…
- ヨヅル: 簡単ですよ 罪悪感を持つ優しい人は得てして
- ヨヅル: 怒るべきときに怒ったあとで 言い過ぎたなどと悔やむもの…
- ヨヅル: そういった傾向を踏まえ 逆算し推論を立てたまでです
- リヴィア: 概ね正解やけど
- リヴィア: 私が頭を抱えてるんは “それだけ”やない
- リヴィア: でもそこまでわかるのは偉いな そんで…大変やな
- リヴィア: 月出里も大変や 向いてない仕事押し付けられて…
- リヴィア: そんで…追い詰められた…
- リヴィア: 背中を押そうとしたんが 完全に空回りやし
- リヴィア: とはいえ、こっち手伝うてもろう わけにもいかんやろ…?
- リヴィア: とりあえず宣伝はさせとるけど、 今となっては悪手やと思うし
- リヴィア: どないしようかと思とる
- ヨヅル: …………
- リヴィア: 月出里は周りを思いやれる 優しい子で
- リヴィア: 自分のしたことで何かあれば 罪悪感の持てる子やと思っとった
- リヴィア: 実際、自分の願いで多くの人が 亡くなったんを悔いとるしな…
- リヴィア: せやから驚いた
- リヴィア: 月出里自身が「毛嫌い」しとる 願いで得た固有魔法を
- リヴィア: あんな乱暴に使うんやからな…
- リヴィア: 信じられんかった
- リヴィア: それがさっき言った
- リヴィア: “それだけ”やないって 言葉の意味や
- ヨヅル: なるほど…
- ヨヅル: …ひとつ、よろしいでしょうか
- リヴィア: なんや
- ヨヅル: 月出里と一緒に私も、先生から 固有魔法について聞かされました
- リヴィア: 私がふたりの固有魔法を 教えたるから、駆使してき
- リヴィア: 「ヨヅルは自分の願いで起きたことと同じで “心を切り捨てる力”を持っとる」
- ヨヅル: 私の魔法も褒められた経緯で 得たものではありませんが…
- ヨヅル: 決して知らされた自分の能力に 「毛嫌い」はしませんでした
- リヴィア: それはアンタに 罪悪感がないからやろ…?
- ヨヅル: はい、そうです
- ヨヅル: ですが、何も思わなかった わけではないんです
- ヨヅル: あの時の私には 別の想いが込み上げていました
- ヨヅル: 先生の考えた作戦に役立てる…
- ヨヅル: 嬉しい、という想いが
- リヴィア: …………!
- ヨヅル: 罪悪感を持つ月出里が固有魔法を 毛嫌いしたのは事実でしょう
- ヨヅル: ですが、“それだけ”じゃない
- ヨヅル: 私が抱いたのと同様に 嬉しいという気持ちもあったはず
- ヨヅル: もしかしたらこれは 罪悪感の欠如した私だからこそ
- ヨヅル: 嬉しいという想いが ハッキリ見えたのかもしれません
- リヴィア: …つまり月出里は
- リヴィア: 自分の固有魔法に対して 喜びと嫌悪がせめぎ合う中で
- リヴィア: 揺れ続けとったということか…
- ヨヅル: …自分の魔法を嫌いになりきれず むしろ好きになろうとしていた
- ヨヅル: そこで見つけた活用の機会
- ヨヅル: 多少の空回りをしてでも 頑張ってしまったのは
- ヨヅル: 致し方のないことかも しれませんね
- リヴィア: …………
- FILENAME: text_518420-6_LZJeJ.txt
- リヴィア: あの月出里が 周りの人の気持ちも考えずに
- リヴィア: 罪悪感のひとつもなく みんなの感情を書き換える…
- リヴィア: そんなわけあれへんのは 自分でいっちゃんわかってたのに
- リヴィア: 私は…何を勝手に思い込んで ガッカリしてたんやろ…
- リヴィア: 月出里…私の気持ちには たぶん気づいとるかな…
- ヨヅル: 月出里は人の心の機敏に 敏感ですからね
- ヨヅル: 「ガッカリされた」という 実感は少なからずあるでしょう
- リヴィア: その上、固有魔法を否定する ようなこと言ってしもうた
- リヴィア: 謝らんといかんな…
- リヴィア: 今、月出里はどこに…
- 燦の声: あら? ピュエラケア?
- 燦: なんだ、噂通り 本当にこっちに来てたのね
- ミユリ: ということは… お昼に駅で見かけたのは
- ミユリ: やっぱり月出里ちゃんってことで 間違いなさそうですね
- リヴィア: ああ、あんたらか… 久しぶりやな
- リヴィア: ちょうど昨日から こっちを拠点にしとるんや
- リヴィア: それより今、 駅で月出里を見たって…?
- 燦: ええ、今日は神浜市で 姫様たちと遊んでたんだけど
- ミユリ: 宝崎市に帰ってきたとき 反対側のプラットフォームで
- ミユリ: 月出里ちゃんらしき人を 見かけたんです!
- 燦: ピュエラケアがこの町に 来てるなんて思ってなかったから
- 燦: 単なる見間違いかなと 思ったんだけどね
- 燦: 実際に帰ってきてるとなると 話は変わってくる…
- リヴィア: ちょい待ち い、今…
- リヴィア: 『反対側のプラットフォーム』 って言うたか…?
- ヨヅル: つまり神浜方面行…?
- 燦: ええ、そういうことになるわね
- ヨヅル: 月出里… もしかして、逃げ…
- リヴィア: 行くで!ヨヅル! せめて謝らんと!
- ヨヅル: はいっ!
- リヴィア: …って駅の名前聞いてなかったわ 宝崎市のどの駅なん?
- 燦: それは…
- 燦: 「宝崎第一次駅」よ
- リヴィア: ありがとう!
- ヨヅル: はいっ!
- ミユリ: えっ!? 今から行くんですか!?
- 燦: 見かけたのはお昼よ!
- ミユリ: …………行っちゃいました
- FILENAME: text_518420-7_LZJeJ.txt
- リヴィア: ここや!
- リヴィア: す、月出里は…!
- ヨヅル: …いませんね…
- ヨヅル: 神楽様が見かけたのは 昼頃との話だったので、もう…
- リヴィア: …………
- 月出里の声: ふむっ!?
- リヴィア: ――っ!?
- リヴィア: この声は…
- 月出里: ふんむ…
- 駅員: もしかして この子をご存じで…?
- リヴィア: 保護者…みたいなもんです…
- 駅員: ああ、それはよかった
- 駅員: いえですね…
- 駅員: この子、お昼ごろからずっと こちらの駅におりまして
- 月出里: …………
- 駅員: 神浜方面の電車が来るたびに ドアに近づいては
- 駅員: 乗ると見せかけて乗らない 乗ると見せかけて…乗らない
- 駅員: といった行為を繰り返していて…
- 駅員: 我々としては単なる迷惑以上に ただならぬ事情を感じまして
- 駅員: 駅員室の方で 保護していた次第です
- リヴィア: それは…大変なご迷惑を おかけしました
- ヨヅル: 丁寧な対応 ありがとうございます
- 駅員: いえいえ、仕事の内です 以前も同じような子がいたので
- 駅員: それ以来、怪しい子を見かけたら 声をかける決まりになったんです
- 駅員: では、私の役割は もう済んだようなので失礼します
- リヴィア: …………
- 月出里: …………
- 月出里: ごめ…
- リヴィア: ありがとうな
- 月出里: …!
- リヴィア: 逃げ出さずに 残っててくれたんやろ…?
- 月出里: …………うん…
- 月出里: 勧誘するの、もう嫌で 神浜市に行こうとした
- 月出里: 調整屋なんて 潰れればいいやって思った…
- 月出里: ごめんなさい
- 月出里: でも、電車に乗ろうとするたびに ふたりの顔が思い浮かんで
- 月出里: 乗れなかった…
- リヴィア: うん…
- リヴィア: ええんや こっちが悪かった…
- リヴィア: 無茶なことを言ったのは 私や
- リヴィア: それでもまだ残ってくれて ホンマに感謝しとる
- リヴィア: もう謝らんでいい
- 月出里: うん…
- リヴィア: さ、帰るで 顔を上げや
- 月出里: ふむ
- 月出里: ――っ!?
- ヨヅル: どうしましたか?
- 月出里: …………
- 月出里: (あと他に宝崎市に来たのは なんだっけ…)
- 月出里: (あ、間違えて 電車を降りたときだ)
- 月出里: …………
- 月出里: …………
- 月出里: (ここ、どこ…?看板には 宝崎第一次駅ってあるけど…)
- 月出里: (もしかして神浜市から 出ちゃった…?)
- 月出里: (お昼にここに来たときは 何も感じなかったけど…)
- 月出里: (今、夕方になって 改めて顔を上げて思い出した…)
- 月出里: (この夕方の景色…知ってる…)
- 月出里: (わたし ここに、来たことがある!)
- 月出里: (…たしかあのとき、 迷子になったわたしは…)
- 月出里: (頼りになりそうな 魔法少女を探すために)
- 月出里: (魔力探知をしようとして…)
- 月出里: ――っ!?
- 月出里: (「あの魔力」を見つけた…)
- 月出里: (あれ?待って…?)
- 月出里: (あのときの感覚を よくよく思い出してみると…)
- 月出里: ――っ!?
- ヨヅル: 先生! 魔女の反応です
- 月出里: …………?
- 月出里: (同じだ…)
- 月出里: (昨日、宝崎市についてすぐに 感じた魔力…)
- 月出里: (アレと同じ魔力を、昔 この駅で感じてたんだ…!)
- 月出里: (どういうこと? だって昨日のあの魔力は)
- 月出里: (直後に戦った 魔女の魔力のはず…?)
- 月出里: (いや違う…)
- 月出里: (もっと根っ子のところで 勘違いをしてる気がする…)
- 月出里: (魔女と戦ったときに覚えた 違和感はこれ…?)
- 月出里: (もっとちゃんと… 昨日のことを思い出して…)
- 月出里: ――っ!?
- 月出里: (そうだよ!)
- 月出里: (あのとき感じた魔力は 「ふたつ」あったんだ!)
- 月出里: (そしてわたしは、 昨日のこのふたつの魔力を)
- 月出里: (昔、この駅で感じている…)
- 月出里: (ひとつは魔女で… じゃあもうひとつは…)
- 月出里: (どういうこと… 何が起きてるの…?)
- そういう関係になれるような 運命の人だと思うんです
- だからグリーフシードを手に 私はここで待ち続けます
- リヴィア: 月出里にできるのは あくまで想いや感情の切り替えや
- リヴィア: 仮に、彼氏への強い想いを弱めて 切り替えたところで
- リヴィア: 別の何かに依存し始めたら それこそ厄介やで
- 月出里: (ウソ、だよね…)
- 月出里: (違うよね…)
- 月出里: (嫌だよ… そういう…ことなの…?)
- …でしたらごめんなさい ご協力できることはないんです!
- それに、助けていいただく 必要もありません!
- 私はどんな時でもひとり!
- そうやって生きると決めたので すみませんが、失礼します!
- 月出里: (あのとき、指輪のないわたしを 魔法少女だって見抜いたのに)
- 月出里: (バレンタイン衣装のわたしを 変身前の姿と勘違いしたのは…)
- 月出里: このとき、わたしの本来の魔法少女姿を ここで見ていたから…!
- 月出里: (あの子は、あの場所にいた…! じゃあもう、決まりだよね…)
- 月出里: リヴィアさん、ヨヅル… ごめん…
- リヴィア: もう謝らんでええて
- 月出里: そうじゃなくて… ふたりは昨日からずっと
- 月出里: 宝崎市に来て最初に戦った魔女を 必死に倒そうとしてたんだよね…
- リヴィア: ああ、そのために裏で月出里に 別の仕事をさせようと…
- 月出里: その話はもうよくて…
- 月出里: 全部つながったよ…
- 月出里: でもやっぱりごめん 全部、わたしのせいだ…
- リヴィア: それは、どういう…
- ヨヅル: この反応は…あの魔女です! それもかなり近い!
- リヴィア: なっ…!?
- FILENAME: text_518420-8_LZJeJ.txt
- ヨヅル: この反応は…あの魔女です! それもかなり近い!
- リヴィア: なっ…!?
- ヨヅル: やってしまいましたね…!
- リヴィア: 知らんうちに 誘い込まれてもうたんや!
- リヴィア: 探していた相手ではあるが まだわからんことが多すぎる…!
- リヴィア: 幸い魔女はまだ奥におるみたいや …ヨヅル!月出里!
- リヴィア: 奥におる魔女が来る前に 逃げる準備するで!
- 月出里: …………
- 月出里: …………!
- 月出里: (やっぱり…)
- 月出里: (奥の魔女とは別に… あの魔力も反応した…)
- 月出里: ねえ、ヨヅル…
- ヨヅル: なんでしょう 妙に落ち着いてますが…
- 月出里: 今からわたしが言うこと 大きな声で叫んでくれる?
- ヨヅル: はい?
- 月出里: …………
- ヨヅル: …………
- ヨヅル: …!
- ヨヅル: …………その言葉を 叫べばよろしいのですね
- 月出里: ふむ!
- ヨヅル: …………
- ヨヅル: 『ねえ!隠れてる子! 聞こえてる!?』
- ヨヅル: 『あの日、何か月か前の夕方! この駅で会ったあの子だよね!』
- ヨヅル: 『知らないところからの攻撃って あなたがしてるんでしょ…?』
- ヨヅル: 『ごめんなさい! あなたを変えてしまったのは…』
- ヨヅル: 『たぶん、わたしのせいなの!』
- ヨヅル: …………
- リヴィア: ヨヅル…何を言ってるんや…?
- リヴィア: ちゃう、月出里の代弁か…
- リヴィア: ん?その攻撃って… あの魔女のことか…?
- え… ど、どうしてどうして…
- 魔女からも離れた所にいたし 気取られないようにしてたのに…
- そ、それに!
- あなたのせい、って どういうことですか…?
- ヨヅル: あ、ええと『わたし』というのは 私のことではなく…
- はい、あなたのこと…ですよね 調整屋の宣伝をしていた…
- 月出里: ふむ…
- あぁ、そっか… 思い出してきました…!
- 昨日、見た顔だと思ったのは 前にこの駅で会ってたからなんだ
- …よくよく考えれば 本当にあなたと会った数日後です
- …わたしがこの魔女を 守るようになったのは…
- リヴィア: ――っ!?
- リヴィア: じゃあ、ほんまにアンタが 魔女の陰から攻撃してきてたんか
- ごめんなさい…ほんとに… でも、その通りなんです…!
- この魔女を守るための… 妨害でした…!
- ヨヅル: どうしてそのようなことを…
- そんなこと… 私が教えて欲しいぐらいです…!
- でも、いま言ったんですよね? この子が『わたしのせい』だって
- 月出里: …………
- だから、魔女を守るっていう 自分の行動の理由が知りたくて
- こうして、みなさんの前に 姿を現したんです
- どうか、お願いです! 知っているのなら教えてください
- 私、あの魔女を見ると、 守らないとって思っちゃうんです
- だから魔法少女が現れたら 攻撃して、魔女を逃がして…
- 被害は出さないようにだけ し続けてきて…
- …いったい、私に 何が起きてるんですか…
- 月出里: ふむ…
- 月出里: あれは…どれくらい前だろう… 「これから神浜市で、魔法少女同士の 大きな争いが起こる」って情報が入って
- 月出里: 今の内に神浜市を視察しようって リヴィアさんたちと来たんだよね
- 月出里: いったん3人でバラバラに 神浜市を散策した後 新西区で集合ってことだったんだけど
- 月出里: 私は電車の中でうっかり寝ちゃって そのまま神浜市を出ちゃったんだ…
- 月出里: …………
- 月出里: (ここ、どこ…?看板には 宝崎第一次駅ってあるけど…)
- 月出里: (もしかして神浜市から 出ちゃった…?)
- 月出里: (引き返すには 駅員さんに言って)
- 月出里: (切符を買い直さないと いけないんだっけ…?)
- 月出里: ――っ!?
- 月出里: (あ、魔法少女だ… なら、この人に…)
- 月出里: ――っ!?
- 月出里: (大変っ! ソウルジェム!濁ってる!)
- 月出里: ふむっ!! ふむ、ふむっ!!
- …どうかしましたか? あ、その指輪…魔法少女ですよね
- 月出里: ふむっ! ふむむむっ!
- 私のソウルジェムが どうかしましたか…?
- 確かに少し元気はないですが 大丈夫、心配しないでください
- 月出里: (スマホのメモ帳で…)
- グリーフシードは持ってないの?
- …………ひとつだけ持ってますよ
- なら、早く使った方がいいです
- …そんな、使えませんよ
- これは私を助けてくれた人に、 再会したら渡すものですから
- やっと弱い魔女を倒して 手に入れられたんです
- 使って手持ちがないときに もしも、再会してしまったら
- 私はまだ弱っちいままなんだって ガッカリされるじゃないですか
- だから使えませんよ
- 月出里: (何を言ってるの…)
- 月出里: (ガッカリされるとか 言ってる場合じゃないのに!)
- 月出里: (もしかして最後まで濁ったら どうなるか知らない…?)
- 月出里: (どうしよう、教えていいの? でもショックだろうし…)
- あの人はきっと 私が自分を偽らなくていい人
- そういう関係になれるような 運命の人だと思うんです
- だからグリーフシードを手に 私はここで待ち続けます
- ここが、 あの人と出会えた場所だから
- そして、その時は もうすぐ来ると思うんです…
- ――っ!?
- 月出里: (魔女!? こんなときに…!)
- あ…あ…
- この魔力は…!
- FILENAME: text_518420-9_LZJeJ.txt
- この魔女、この魔女です…!
- あの子と初めて会って 一緒に戦った…
- 月出里: ――っ!?
- 月出里: (ダメ!こんな状態で この魔女と戦えるわけないっ!)
- は、放してください!
- この魔女が…名前と連絡先を 知らないあの人への
- 唯一の手がかりなんです!!
- 月出里: (そんなこと言っても…!)
- 月出里: (ならせめて、グリーフシードを 使わせないと…)
- 月出里: (わたしの手持ちで…!)
- ――っ!?
- ダメですよっ! それはあなたのものです!
- 今、あなたの グリーフシードを使ったら
- 前と何も変わらない…!
- 弱いままじゃないですか!
- 結構です!必要ありません! あなた自身に使ってください!
- 月出里: (事情はわからないけど… だったら調整で強くする…?)
- 月出里: (無理!見習いのわたしじゃ 逆に弱くなっちゃうかもっ)
- お願いします! どいてください!
- 月出里: ふむ! ふむぅぅぅ~~~!!
- 月出里: わたしは無我夢中だった 必死になって全身に力を入れていた
- 月出里: 直前に、調整をしようと 魔力を溜めたのも原因かもしれない
- …………まあ、それもそうですね
- あの人に渡す分の グリーフシード…
- …もう、 使ってしまいましょうか
- 月出里: ふ、ふむ…?
- 月出里: (説得が通じた…?)
- 月出里: …と思い込んだのは 当時のわたしが自分の固有魔法を 知らなかったからで…
- 月出里: 今にして思えばわかる わたしはこのとき夢中になって 固有魔法をうっかり暴発させたんだって
- 月出里: 感情の切り替えの魔法で… この人の心を無理やり歪に捻じ曲げて… リヴィアさんで言うところの
- 月出里: 『人の尊厳』を踏みにじったんだって
- 月出里: 小学校に通っていた頃のわたしは 面倒事を避けるために クラスの誰ともかかわろうとしていなかった
- 月出里: 誰かに期待して、依存して生きるより ひとりで生きていく方が大事って思ってた
- 月出里: このときのわたしも まだ、心のどこかでそう思っていたから
- 月出里: きっとその想いが 固有魔法にも乗っかって…
- 結果、私のあの人への 強い想いが失われて…
- すっかり依存しなくなったと…
- ヨヅル: …そう、申しております ただ話を聞く限り
- ヨヅル: その方への想いに限らず 他人への期待といった想いが
- ヨヅル: 切り替わって無くなったという 可能性もありますね…
- 月出里: ふむ…
- そうなんですか… 他人に期待しなくなったのは
- 自分が強くなった結果だと 思っていたんですが…
- そっか…あなたの魔法が 切り替えさせてたんですね…
- ただ、それが 私にあの魔女を守らせてた…?
- それってちょっと おかしくありませんか…?
- ヨヅル: 私もそれが疑問でした
- ヨヅル: その“他人”へ期待する感情が 無くなったことは理解できますが
- ヨヅル: 関係のあった魔女を 守ろうとする理由がわかりません
- ヨヅル: もはや感情の切り替えの領域を 超えているような気がします
- ヨヅル: 魔女を守ろうとした理由は 別の原因があったのでは…?
- 確かに…
- リヴィア: …………いや、違うんや それも多分、月出里が原因や…
- ヨヅル: なぜ…?
- 月出里: …………
- リヴィア: 仮に、彼氏への強い想いを弱めて 切り替えたところで
- リヴィア: 別の何かに依存し始めたら それこそ厄介やで
- は、放してください!
- この魔女が…名前と連絡先を 知らないあの人への
- 唯一の手がかりなんです!!
- リヴィア: その子にとって その魔法少女は生きる希望で…
- リヴィア: せやからこそ、期待して 依存したわけやけど
- リヴィア: あの魔女もまた、そんな期待する 魔法少女への手がかりとして
- リヴィア: 期待が生まれつつあった…
- ヨヅル: まさか、二次的に… 魔女が期待の対象となった…
- リヴィア: そして… 魔法で人への期待が失われて
- リヴィア: 魔女への期待だけが 切り離されて残ってしもた
- リヴィア: 魔女そのものには、なんの価値も ないはずだったことを知らずに
- それで魔女を守り続けた…? はは…ヤバいですね、私…
- 勘違いで守る必要がない魔女を 守り続けてたってことですよね…
- リヴィア: あんたはなんも悪くない 仕方ないことなんや
- リヴィア: 魔法というかなり歪な方法で “一次”の方の想いを失ったんや
- リヴィア: 感情の中に混乱が生まれて 当然なんや
- いや、でもわかんないですよ… 信じられないです…
- この気持ちが…勘違い…? 魔法で歪められたもの…?
- でも、あくまで全部 調整屋さんの推測なんですよね
- リヴィア: そうや でも、証明する方法はある
- 月出里: …………
- リヴィア: 本当に月出里の魔法が かかってしまっているなら
- リヴィア: 月出里があんたへの魔法を 解除できてしまう
- リヴィア: それで全ての想いが返ってくる 真相は全部わかる
- …………
- ドドドドドドドドド!
- リヴィア: ――っ!?
- FILENAME: text_518420-10_LZJeJ.txt
- リヴィア: アカン! 魔女に見つかった!
- リヴィア: みんな、勝てなくてもいい! 戦って隙を作るで!
- ヨヅル: はいっ!
- ヨヅル: ぐぅっ!
- ふたり: …………
- リヴィア: (アカン、戦力の分が悪すぎる)
- リヴィア: (ただでさえ私らは魔女戦が 得意じゃない)
- リヴィア: (それに加えて…)
- リヴィア: (この子はまだ魔女に対する 折り合いがついてへん…!)
- リヴィア: (本当にこの感情が勘違いで 魔女を倒してしまっていいのか)
- リヴィア: (その迷いがあるはずや)
- リヴィア: (もっと厄介なのは月出里や 完全に心が折れとる…)
- リヴィア: (今回のあらゆる混乱の原因が 自分にあったんや…!)
- リヴィア: (落ち込むのも無理はない… けどや…)
- 月出里: リヴィアさん、見くびらないで
- リヴィア: なっ…!?
- 月出里: 今は落ち込んでる場合じゃ ないよね…!
- 月出里: 今、わたしが本当に やるべきことは…
- 月出里: ふむんむむん…
- 謝ってくれてるのですか…? でもですね…
- …………ああ、そうですね… この感覚です…
- あの人への感情も… 全部…取り戻しました…
- ハッキリしました
- 私にあの魔女を守る理由はない…
- 全部、私のあの人への依存心が 生み出していた
- 二次的な依存心でした
- リヴィア: (魔法を解除した! よくやったで、月出里…!)
- リヴィア: (それは自分のしでかしたことを 証明することになる行為やが…)
- リヴィア: (それでもあの子の迷いは消えて 戦力は整った…!)
- リヴィア: (今やれる、最善手や)
- リヴィア: ヨヅル、気合いいれや…! 隙を見つけて脱出するで…!
- ヨヅル: はい…!
- あ、御三方 下がっていただけますでしょうか
- リヴィア: へ?
- FILENAME: text_518420-11_LZJeJ.txt
- 私、とても弱い魔法少女でしたが 毎日この魔女を制御してきました
- 生かさず殺さず、被害を出さず それって大変なんですよ
- そういった日々の積み重ね… ではないですが…
- 私、もう普通に強いんです
- この魔女の弱点はここ! てやぁっ!!
- FILENAME: text_518420-12_LZJeJ.txt
- 私、もう普通に強いんです
- この魔女の弱点はここ! てやぁっ!!
- …………
- ヨヅル: ――っ!?
- リヴィア: い、いいいいい…
- リヴィア: 一撃ィ~~!?
- えへへ… なんかすみません
- 月出里: 次の日、調整屋はお店を開いたけど やっぱりお客さんは来ない
- 月出里: ということでリヴィアさんの提案で 反省会をすることになったんだ
- 月出里: だいぶ重い空気の中で…
- リヴィア: 今回の件、トータルして ヨヅルはどう思った?
- ヨヅル: …ピュエラケアとしては 良いところがなかったですね
- ヨヅル: こうして閑古鳥が鳴いているのが 何よりもの証拠かと…
- 月出里: …………
- リヴィア: …まあ、そうやなぁ… 忌憚のない意見に感謝や
- ヨヅル: 反省会で甘いことを言っても 意味はないですからね…
- リヴィア: 言葉強いな
- ヨヅル: 失礼しました
- ヨヅル: 何も気づけず動けなかった自分に イラ立ってるのでしょうか
- リヴィア: ほうか、でもまあ まずは私の完全な任命ミスや
- リヴィア: 月出里に向いてない 勧誘を押し付けてしもうた…
- 月出里: それで誰も誘えなくて… 焦って魔法も使っちゃった
- リヴィア: 焦るのはそれだけ責任感が あるっちゅうことや
- リヴィア: そこを私が見誤って 追い詰めてもうた…
- リヴィア: 月出里をあの魔女の調査から 遠ざけるための方便やったけど
- リヴィア: 魔女の調査の解決にこそ 月出里が必要やった
- リヴィア: 2択を完全に間違えた トータル、私の任命責任や
- 月出里: でも、焦ったからって 安易に魔法を使ったのも悪いよ
- 月出里: 魔法を受けた子たち みんな怒ってた…
- 月出里: 考えたらそうだよね 好きでもないことを
- 月出里: 無理やり好きってことに 変えられちゃうんだもんね…
- ヨヅル: …………
- リヴィア: …………
- 月出里: お客さん、今日も来るわけない 全部わたしのせいで…
- 月出里: しかもあの魔女についての 騒ぎだって…
- 月出里: わたしが解決したみたいな 言い方をしてくれてるけど
- 月出里: そもそも おかしなことになったのは
- 月出里: 全部、過去のわたしが 原因だったわけだし…
- ヨヅル: …マイナスをゼロにしただけ… …とも言えてしまいますね
- 月出里: 刺さる~…
- 月出里: でもほんと、そうだよね いいとこなしだった…
- ヨヅル: はい… 何もできませんでした…
- リヴィア: (そうとう落ち込んどるけど…)
- リヴィア: (ここで「そんなことない」って とりあえずで元気出さすのは)
- リヴィア: (今後、成長する上で よくないことなんやろな…)
- リヴィア: よし、月出里
- リヴィア: そんだけ自分のダメだったとこを 言えたなら十分や
- リヴィア: そんで今後はどうするつもりや? 例えば固有魔法とか…
- 月出里: …………やっぱり この魔法のことは好きになれない
- リヴィア: …………
- 月出里: だから、よく考えてから使う
- リヴィア: ほうか、よかった
- リヴィア: もし「二度と使わない」って 答えたら叱るとこやった
- 月出里: 人を試す上司やだなぁ…
- リヴィア: なんや~いっちょ前に 社会人ぶってからに~うりうり
- 月出里: えへへ
- リヴィア: あ、ヨヅル ひとつだけ良いことあったで
- ヨヅル: お、反省会冒頭の反論ですか 受けてたちます
- リヴィア: 月出里が逃げんかった
- リヴィア: どんなに不貞腐れても逃げんくて ちゃんと解決に結びついた
- リヴィア: 原因とか結果はともかくとして そこだけは絶対良いことのはずや
- ヨヅル: …はい、そうですね 論破されます
- コンコン
- リヴィア: …? どうぞー
- おじゃましまーす 調整を受けに来ました~
- みんな: ――っ!?
- 月出里: ふ、ふんむふ…?
- ヨヅル: 月出里がどうして、と驚いてます 私も驚いてます
- リヴィア: ええんか…? 恨んだり…怖くないんか…?
- リヴィア: 言ってしまえばずっと感情を 歪まさせられてたんやで…?
- リヴィア: ある意味であんたが今回の 1番の被害者やろうに…
- ひ、被害者だなんて とんでもないっ!
- むしろ救われたんですよ
- 月出里: ふむ…?
- あの魔法を受けるまでの私は 自分のことを
- 「ひとりでは生きていけない」と 思い込んでました
- 勝手に自分の可能性を見限って 誰かに依存し続けてたんです
- でも魔法を受けて強制的にでも ひとりで生きていくことになって
- それで生きてこれちゃったんです
- やってみなきゃわからないことを やらずにいた私に
- やってみさせてくれたのが この魔法なんです
- だからね、えーと…
- ヨヅルの声: 月出里、と言います
- あ、月出里ちゃんの魔法はね… 苦手なことに立ち向かわせて…
- 自分の可能性に気づかせてくれる 素敵な魔法なんですよ
- 月出里: ふむ…!
- 月出里: リヴィアさん… わたし、この魔法のこと
- 月出里: 好きに…なれるかも
- リヴィア: …よかったな
- リヴィア: さ、月出里、この町最初の常連は あんたが調整してやり
- 月出里: うん!
- 月出里ちゃん、って言うんですね お名前
- 月出里: ―月出里― ふむ!
- …どうして私はあの時… こんな簡単なことすら 聞けなかったのでしょうか…
- 月出里: ―月出里― ふむ…?
- いえ、こちらの話です
- あ、そうだ まだ私の方が名乗ってませんでしたね
- 私の名前は…
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