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Valentine's Day Message JP Text

Feb 10th, 2023 (edited)
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  1. ――っ!
  2. はあああっ… …死ぬかと思いました!
  3. ありがとうございます
  4. …うん
  5. ニャー
  6. 行っちゃった…
  7. 見ない顔だけど…新人?
  8. あ、はい この近所じゃないんですけど…
  9. そう…
  10. ここら辺、一応、 私が担当してる地域で…
  11. 他の魔法少女が担当してる場所で 勝手に魔女と戦うの
  12. あんまり良くないらしいし…
  13. うわぁああ! ごごごごごめんなさい!
  14. 猫ちゃんが魔女の結界に 入っちゃったのが見えて!
  15. 許してください! もうしません!
  16. いいよ 別に
  17. しょうがないし そういうの
  18. ほほほ、本当ですか?
  19. うん それじゃ…
  20. あ、あのぉ…
  21. 何…?
  22. その…グリーフシード、とか… 余ってたりしませんか…?
  23. え…?
  24. い、今ので、ソウルジェム だいぶ濁っちゃって…
  25. もし、あったら、なんて… え、えへへ
  26. …………ごめん
  27. そ、そうですよね!
  28. グリーフシード余ってるとか ないですよね!
  29. なんでもないです!
  30. 変なこと聞いちゃって ごめんなさい!
  31. 私も…手持ちがないの…
  32. さっきの魔女にも 逃げられちゃったし
  33. 私、そんなに強い訳じゃないし…
  34. あ…
  35. ごめん…
  36. あああ、あやまらないで下さい!
  37. 私が無理言っただけですから! ごめんなさい!
  38. でも…ごめん…
  39. とんでもないです!
  40. 私の方こそ、たくさん 持ってたらよかったのに…
  41. 今日は、ありがとうございました 助けてくれて!
  42. あのままだと、私も猫ちゃんも どうなってたか…
  43. うん…
  44. 私、まだまだですけど
  45. 早く一人前の魔法少女に なれるように、頑張ります!
  46. みなさんの分のグリーフシードも 取れるように頑張ります!
  47. うん…、お互い、頑張ろう
  48. はい! お互い、頑張りましょう!
  49. …………
  50. 私たちは、名前も聞かず 連絡先も交換しないまま、別れました
  51. …………
  52. また、会えるといいなぁ
  53.  
  54. [From the opening sequence images]
  55. まだ未熟な調整屋さんは バレンタインを駆け巡る
  56. [Title card] バレンタインメッセージ ~思い出は淡いくろ色~
  57.  
  58. FILENAME: text_518410-1_PEHJB.txt
  59. えー!
  60. 旅する調整屋さん、 次の町に行っちゃうんですか?
  61. リヴィア: そうやで 各地を回り魔法少女を救う…
  62. リヴィア: だからこその “旅する調整屋”や
  63. その通りだけど…
  64. ヨヅル: 安心してください
  65. ヨヅル: 一巡してしまえば またこの町に来ます
  66. ヨヅル: 永遠のお別れということでは ありませんよ
  67. うーん…もうすぐ バレンタインだったのに…残念
  68. 何かできると思ったのにな
  69. まあ、しょうがないよね じゃあね、みんな!
  70. 月出里: ふむっ!
  71. あ、でもこれだけは聞いていい? 次の町はどこなの?
  72. ヨヅル: ええ、次の拠点となる町は…
  73. <宝崎市>
  74. リヴィア: おっしゃ到着やで~
  75. 月出里: ふんむーっ!
  76. ヨヅル: ずいぶんと興奮してますね
  77. ヨヅル: 月出里と宝崎市にゆかりが あった記憶はないのですが…
  78. リヴィア: 神浜市に近いことが嬉しいんやろ
  79. ヨヅル: …………ああ、なるほど みかげさんが住んでますからね
  80. リヴィア: そういうこっちゃ
  81. ヨヅル: …まだまだ何段階か、理屈を 積み重ねないと辿り着かない…
  82. ヨヅル: “人の喜ぶ理由”には 気づくのに時間がかかります…
  83. 月出里: ふーむんふ ふむんふふん!?
  84. リヴィア: みかげちゃんと遊びたいか ああ、ええで
  85. リヴィア: ただし神浜市に行くんは こっちの仕事が落ち着いてからや
  86. 月出里: ふっむー! ふむむふん!
  87. ヨヅル: よかったですね
  88. 月出里: ――っ!?
  89. ヨヅル: 先生! 魔女の反応です
  90. 月出里: …………?
  91. リヴィア: ああ… しかもこの魔力の反応…
  92. リヴィア: ここ最近でも かなり強めの大物やな…
  93. ヨヅル: 長く生き続けてきたのか、かなり 穢れを集めているようですね…
  94. ヨヅル: となりの町にいたのに まったく気づきませんでした
  95. リヴィア: 宝崎市の魔法少女かて 神浜市と同じようにけっこうおる
  96. リヴィア: それでも対処してへんてことは
  97. リヴィア: この魔女もよそから来たばっかり かもしれへんな
  98. 月出里: ふむっ!?
  99. リヴィア: おーおー 暴れとる暴れとる
  100. ヨヅル: 我々3人では 少々対応が難しそうですね
  101. 月出里: ふむむ?
  102. リヴィア: いや、逃げたらあかん
  103. リヴィア: せめて魔女の弱点を 手土産にするで
  104. リヴィア: 宝崎市で調整屋を開くのに 好印象を与えられるやろ?
  105. ヨヅル: 確かに…では月出里 一緒に弱点を見つけましょう
  106. 月出里: ふむっ!
  107. リヴィア: とはいえムリは禁物や
  108. リヴィア: 勝つ必要はあれへんから 守り重視で相手を観察し!
  109. リヴィア: ちゃんと敵の動きを見とったら 避けれんような攻撃はあれへ…
  110. リヴィア: ぐあっ!!
  111. ヨヅル: 先生! 言った矢先にそれは!
  112. 月出里: ふむふむっふむ?
  113. リヴィア: ちゃ、ちゃう! 魔女の動きはしっかり見とった!
  114. リヴィア: せやけど、今の攻撃… 魔女とちゃう方向から来たんや…
  115. ヨヅル: そんなことが…
  116. ヨヅル: いえ、そういうことに しておきましょうか…
  117. リヴィア: ああっ!ちゃうでヨヅル!
  118. リヴィア: 失敗を見逃すのも優しさやって 教えたんは私やけどやな
  119. リヴィア: 今のこれはちゃう 失敗を誤魔化したんやない!!
  120. ヨヅル: わかってますよ
  121. ヨヅル: 先生の汚名を返上するために 私がしっかりと避けきって…
  122. ヨヅル: ぐあっ!!
  123. 月出里: ふむむーーっ!?
  124. ヨヅル: まさか、本当に 魔女のいない所から攻撃が…
  125. 月出里: ふ、ふむ… ふむ…
  126. リヴィア: あかん 隙を見つけて撤退するで…!
  127. ヨヅル: 危ないところでしたね すさまじい魔女でした
  128. リヴィア: えらい魔力が強いと思ったら 何もないところから攻撃…
  129. リヴィア: 手土産にと軽い気持ちやったけど 弱点を探す余裕もあれへんかった
  130. 月出里: …………
  131. 月出里: ――っ!?
  132. ヨヅル: 先生! 魔女の反応です
  133. 月出里: …………?
  134. 月出里: (あの違和感は… なんだったんだろう…)
  135.  
  136. FILENAME: text_518410-2_PEHJB.txt
  137. リヴィア: はいはい、ふたりとも 気を取り直すで!
  138. リヴィア: 魔女の弱点を得られんかったのは 残念やけど
  139. リヴィア: 私らが宝崎市に来た目的は 調整屋の仕事をすることや
  140. リヴィア: 開業の準備が整ったら すぐに呼び込みも始めるで
  141. ヨヅル: …あの魔女は放置ですか?
  142. リヴィア: まあ、ちょいと考えがあるから いったんは放置でかめへんよ
  143. ヨヅル: わかりました
  144. 月出里: ふむ
  145. リヴィア: お、あの指輪は…
  146. リヴィア: そこの魔法少女さん ちょっと時間かめへんか?
  147. はい、なんでしょう
  148. ヨヅル: 私たちはピュエラケアといって 旅をしている調整屋でして
  149. ――っ!?
  150. ちょ、調整屋って あ、あの調整屋…?
  151. ヨヅル: 調整屋をご存知でしたか それなら話は早…
  152. ま、間に合ってますから!
  153. ヨヅル: えっ?
  154. 失礼します!
  155. 月出里: ふむ…?
  156. リヴィア: なんや、あれ…
  157. リヴィア: お、その魔力の反応 ふたりとも魔法少女やんな?
  158. え、は、はい…
  159. リヴィア: 私らもなんやけど 軽く話でもさせてくれへんか
  160. リヴィア: 実は私ら、ピュエラケアっちゅう 旅をしている調整屋なんやけど
  161. ――っ!?
  162. え、いま… 調整屋って…
  163. リヴィア: せ、せやけど…
  164. 関わらない方がいい… 逃げよう…!
  165. う、うんっ!
  166. リヴィア: なっ、立て続けに!?
  167. ふた手に分かれよう!
  168. リヴィア: ヨヅル! 話を聞かせてもらうで!
  169. ヨヅル: わかりました!
  170. う…こっちに来た…!
  171. ヨヅル: 手荒な行為は優しくないと メモにあるので
  172. ヨヅル: あくまで丁寧に…!
  173. ガシッ
  174. て、丁寧なのに… なんて力…!
  175. い、痛いのだけは…
  176. ヨヅル: 心配は無用です
  177. ヨヅル: 痛みのない 熱々のおもてなしが待っています
  178. ヨヅル: コーヒーです
  179. 熱々だ…!
  180. リヴィア: …で、話の続きやけど… 調整屋が「怖いお店」やて…?
  181. って、みんな噂してますよ
  182. 宝崎市の魔法少女の間じゃ 有名な話です
  183. 近くの町の…神浜市にも 調整屋がいるんですよね?
  184. そっちからの噂が たくさん流れてくるんです
  185. リヴィア: …………
  186. クイズ大会を開いて、不正解者を 地下で強制労働させるとか…
  187. 魔法少女を好きな格好に 着せ替えるとか…
  188. 年齢を詐称してるとか… 地獄の料理を召喚するとか…
  189. リヴィア: …………
  190. あ、宝崎市の魔法少女も 被害に遭ったって噂で聞きました
  191. どうも初めて行ったときに 服を…
  192. ヨヅル: …みたまさんですね
  193. 月出里: うん…
  194. リヴィア: みたまぁ~~!!
  195. ヨヅル: 宝崎市に流れ着くまでに だいぶ尾ヒレは付いたようですが
  196. ヨヅル: あいにく、根も葉もないわけじゃ ないのが悔しいところですね
  197. 月出里: うん…
  198. リヴィア: みたまぁ~~!!
  199. それに、私も追いかけられて 無理やり連れて来られたし…
  200. ヨヅル: 今まさに、我々の行為が 悪評を生む一因になりましたね…
  201. リヴィア: …………
  202. ヨヅル: またのご来店を…
  203. は、はぁ~ やっと解放されたぁ~
  204. リヴィア: 今日のことは あんまり言いふらさんでやー!
  205. リヴィア: …で、ふたりとも 事態はちょっとばかし深刻やで…
  206. ヨヅル: 調整では命とも言える ソウルジェムに触れますし
  207. ヨヅル: 相手が内に秘めていることまで 見えてしまう
  208. ヨヅル: 強く警戒されているのは 由々しき事態と言えますね
  209. リヴィア: ほんま、神浜市におった間に 宝崎市でのイメージは最悪
  210. リヴィア: マイナスからのスタートなんは 私でも初めてやなあ…
  211. 月出里: ふんふむふん?
  212. リヴィア: 安心し!諦めへん! 順序立ててやることやるだけや
  213. リヴィア: まずは風評被害で地に落ちた 調整屋の信頼を回復させたる
  214. リヴィア: 「名づけて… “バレンタインの義理”作戦や!」
  215. 月出里: ふむ…!
  216.  
  217. FILENAME: text_518410-3_PEHJB.txt
  218. リヴィア: さて、調整屋の風評被害を払う この“バレンタインの義理”…
  219. リヴィア: 鍵を握るのは………… 月出里、あんたや!
  220. 月出里: ふむっ!?
  221. ヨヅル: それはまた どういった理由でしょうか
  222. リヴィア: 私らの目的は、みたまが作った 危険なイメージの払拭やろ?
  223. リヴィア: そのためには健全さとピュアさの アピールが不可欠なんや
  224. 月出里: ふむんむんむ、ふむんむ?
  225. リヴィア: あかんあかん 私とヨヅルにはでけへん
  226. リヴィア: 私の場合は色気と風格のせいか 悪の親玉みたいやし
  227. リヴィア: ヨヅルのクールさかて 危険でミステリアスな感じや
  228. リヴィア: それに比べて月出里 あんた、自分を見てみい!
  229. 月出里: ふむ…?
  230. ヨヅル: おぉ…
  231. リヴィア: 今どきこんな 健全で無垢に見える子はおらん!
  232. リヴィア: つまり、アンサーや!
  233. リヴィア: 月出里が調整屋の印象改善に うってつけなんや!
  234. ヨヅル: 確かに…
  235. リヴィア: バレンタインは人と人を繋ぐ 素敵な行事や
  236. リヴィア: 調整屋と宝崎市の魔法少女に 繋がりを作ってくれ!
  237. リヴィア: 頼んだで月出里 あんただけが頼りや!
  238. 月出里: ふむーっ!
  239. ヨヅル: 気合い十分ですね… しかし…
  240. ヨヅル: 先生は先ほどから 少々失言が過ぎるのでは?
  241. リヴィア: へぇ…なんや急に…
  242. ヨヅル: 月出里は最近まで、自分を 汚れた存在と悩んでいました
  243. ヨヅル: そんな月出里に対して無遠慮に 無垢と言い切ってしまうのは…
  244. ヨヅル: それに「人と繋がる行事」という 表現も気になります
  245. ヨヅル: 月出里は人と繋がりができる度に 悪夢にうなされていました
  246. ヨヅル: それは、 自身が持つ苦い過去のせいです
  247. ヨヅル: わざわざ「人を繋ぐ」という 言葉を使ってまで
  248. ヨヅル: 意識をさせる必要は あるのでしょうか…?
  249. リヴィア: 教わった「優しさ」に反してる って言いたいんか?
  250. ヨヅル: はい…
  251. リヴィア: せやけど、最近の月出里は 自分から前に進んどるやろ?
  252. リヴィア: 人と繋がっても悪夢を見る回数は えらい減ってきたし
  253. リヴィア: なのに周囲の私らが そういう言葉を過剰に避ければ
  254. リヴィア: 却って気遣いが重荷になって 月出里の進歩を邪魔しかねん
  255. リヴィア: せやから、むしろ全く気にしない という空気を作るのも
  256. リヴィア: 心遣い… 仲間の使命やと思うとる
  257. ヨヅル: …難しいですね
  258. リヴィア: というわけで月出里 今からあんたを
  259. リヴィア: 旅する調整屋の宣伝担当大臣に 任命する!
  260. 月出里: ふむっ!
  261. リヴィア: 任命責任は全部私にあるから、 思い切ってやったり!
  262. リヴィア: そうや、せっかくやし 調整の力で
  263. リヴィア: 衣装もバレンタイン仕様に 替えたるわ
  264. 月出里: ふむむっ!
  265. リヴィア: どうや
  266. 月出里: ふむーっ!
  267. ヨヅル: 似合っていますよ
  268. 月出里: ふむんふむんむ ふむっむふむ?
  269. リヴィア: いや、固有魔法は変わってへん
  270. リヴィア: 元々衣装替えと一緒に 魔法が変わるのは
  271. リヴィア: その人に強い目的意識がある場合 だけやしな
  272. リヴィア: 宣伝目的程度じゃ 固有魔法は変わらへん
  273. 月出里: ふっむ…
  274. リヴィア: なんや、残念そうな顔して
  275. リヴィア: 変わるのがちょっと 楽しみやったんか?
  276. リヴィア: でも月出里の場合は 変わらんでええと思うけどな
  277. 月出里: ふむ?
  278. リヴィア: だって月出里は自分の魔法を 最近になって自覚したわけやろ?
  279. リヴィア: 私がふたりの固有魔法を 教えたるから、駆使してき
  280. リヴィア: 「ほんで月出里は人の考えを切り替えたように “感情を切り替える力”を持っとる」
  281. リヴィア: まだ自分本来の魔法にも 慣れてへんのに
  282. リヴィア: 別の魔法に変わったら 扱いがわからんくて困るで
  283. リヴィア: せやから、変わってないのは ええことやと思うわ
  284. 月出里: ふむ…!
  285. 月出里: …………
  286. 月出里: (新しい姿をくれるくらい リヴィアさんは期待してる…)
  287. 月出里: (よーし、頑張るぞー!)
  288.  
  289. FILENAME: text_518410-4_PEHJB.txt
  290. <宝崎市・国道付近>
  291. ざわざわ…
  292. 月出里: (ここは人も建物も多くて 賑やかだね…)
  293. 月出里: (さっそく魔法少女を探して 調整屋のアピールをしよう!)
  294. 月出里: (それにしても…)
  295. 月出里: (あんまり知らない町って 歩くとちょっとワクワクする!)
  296. 月出里: (前に公民館に行ったときは 車移動だったし…)
  297. 月出里: (あと他に宝崎市に来たのは なんだっけ…)
  298. 月出里: (あ、間違えて 電車を降りたときだ)
  299. 月出里: (…アレももう何か月も前かな)
  300. 月出里: (でもあのときも、駅の辺りを ウロウロしただけだし…)
  301. 月出里: (こうして街中を散策するのは 初めてだから)
  302. 月出里: (やっぱり楽しい)
  303. 月出里: (…じゃなくて! 魔法少女魔法少女…)
  304. 月出里: ――っ!?
  305. 月出里: (魔法少女だ! よーし…!)
  306. 月出里: ふんふむむ! ふっむーふむんふむん!
  307. わっ、えっ、すごい格好! もしかして全部お菓子なの…!?
  308. この宝石はソウルジェム…? この子、魔法少女だよ!
  309. 月出里: ふん! ふむむふふむんふんふ!
  310. 月出里: ふむふむむふむんふんふふふふふ ふーむんふっふふむふむむん…
  311. なんか…
  312. うん…
  313. かわいいぃ~~!
  314. 月出里: ふむっ!?
  315. 身振り手振りで ぴょこぴょこしてるの可愛い!
  316. 愛おしすぎる! バレンタインの申し子なの!?
  317. 月出里: ふー…ふー…
  318. ふぅ…十分堪能したし
  319. だね、そろそろ行かないと
  320. じゃーねー!
  321. 月出里: ふむっ!?
  322. 月出里: ふむぅ…
  323. 月出里: (まずは身振り手振りで 伝えようとチャレンジしたけど)
  324. 月出里: (やっぱり… 思った通りに伝わらない…)
  325. 月出里: (何か伝える方法を 考えるところからかなぁ…)
  326. 月出里: (お、魔法少女の魔力…)
  327. …………
  328. 月出里: (あれ…?あの人 前にどこかで見たことが…?)
  329. 月出里: …………
  330. 月出里: (ん~…どこだっけ…?)
  331. 月出里: (…って、ああっ! 行っちゃう!追いかけないと!)
  332. 月出里: ふむむふん!
  333. ん? 私ですか?
  334. …って、わっ! すごい格好してますね!
  335. あ、ごめんなさい バカにはしてないんです!
  336. それでご用件は…? あなた魔法少女ですよね…?
  337. 月出里: ふむ!
  338. それは「うん」ですよね あれ、でも指輪がない…?
  339. 月出里: ふむ!
  340. あ、今のが魔法少女としての 姿だったんですね
  341. でも、だったらなんで…?
  342. 月出里: ふむ?
  343. あ、ああ…! ごめんなさい、こっちの話です!
  344. それで、あなたの用事なんですが 魔法少女としての頼み…ですか?
  345. 月出里: ふむっ!
  346. …でしたらごめんなさい ご協力できることはないんです!
  347. それに、助けていいただく 必要もありません!
  348. 私はどんな時でもひとり!
  349. そうやって生きると決めたので すみませんが、失礼します!
  350. 月出里: ふむ…
  351.  
  352. FILENAME: text_518410-5_PEHJB.txt
  353. ヨヅル: 月出里はうまく やれているでしょうか
  354. リヴィア: 心配やな…
  355. ヨヅル: 先生が任命したのに…?
  356. ヨヅル: そもそも月出里がいた手前 あの場での言及は避けたのですが
  357. ヨヅル: 言葉の使えない月出里に 勧誘は厳しいのでは…?
  358. リヴィア: まあそれも 重々承知や
  359. ヨヅル: 承知の上で任せたのですか…?
  360. ヨヅル: それはまた…厳しい場に 身を置かせることで
  361. ヨヅル: 成長を促す狙いがあったとか… そういう類の話ですか?
  362. リヴィア: いや、そういう昔話的な 事情やあらへん
  363. リヴィア: 単にこっち側の都合や
  364. リヴィア: 私らがこれからする仕事に 関わらせたくなかったからな
  365. ヨヅル: これからする仕事?
  366. リヴィア: 言うたやろ 放置はせえへんて
  367. リヴィア: そろそろ動くでヨヅル これから、あの魔女の調査や
  368. ヨヅル: まさか、先ほどの強力な上に 不可解な攻撃をしてきた…
  369. リヴィア: そう、あの魔女や… 倒さなって思ってたんやけど
  370. リヴィア: 排除するにしてもあの強さやろ もしものことがあるからな
  371. リヴィア: 月出里は 近づけたくなかったんや
  372. ヨヅル: それは同意ですが、本人が聞くと 仲間はずれだと思いますね
  373. リヴィア: やから、バレんように動くには 今がベストなんや
  374. リヴィア: みたまが起こした 調整屋の風評被害があるやろ?
  375. リヴィア: その払拭を月出里に ミッションと課してやれば…
  376. ヨヅル: 月出里に隠れて 魔女の問題を解決できると…
  377. リヴィア: そういうことや
  378. リヴィア: 町の安全を脅かす魔女の 弱点なり見つけて解決すれば
  379. リヴィア: 魔法少女を守れて 調整屋の信頼も回復する
  380. リヴィア: そうすれば月出里もきっと 喜ぶやろう
  381. リヴィア: 大丈夫 全部うまくいくはずや
  382.  
  383. FILENAME: text_518410-6_PEHJB.txt
  384. 月出里: (あ、人がたくさん… 次はここで勧誘だね)
  385. 月出里: (じゃん!)
  386. 月出里: (スマホ!)
  387. スッ…スッ…スッ…スッ…
  388. 月出里: (こうして、あらかじめ 調整屋を宣伝する文章を)
  389. 月出里: (メモ帳に入力すれば あとは見せるだけで…)
  390. 月出里: (さっそく魔法少女!)
  391. 月出里: ふむっ!
  392. ビシッ!
  393. え、何…?読んで欲しいの? でも文字多いな…
  394. ごめん、急いでるから 他の人にお願いして
  395. 月出里: …………
  396. …………
  397. 月出里: ふむっ!
  398. ビシッ!
  399. …? はあ…
  400. 月出里: ふむん…
  401. 月出里: (ダメだ…画面を見せても 立ち止まって読んでくれない)
  402. 月出里: (どうしよう… 別の方法を考えないと…)
  403. ドン…
  404. 月出里: ふむっ!?
  405. ああっ、ごめんなさい よそ見して歩いてて…
  406. ピラッ…
  407. 月出里: ふ、ふむんむんむ!
  408. ああぁ、僕のチラシだ 拾ってくれてありがとう!
  409. 月出里: (これ… この辺りのお店のチラシ…?)
  410. 月出里: (チラシ…)
  411. 月出里: ふむむ!
  412. 月出里: (紙のチラシを手渡せば)
  413. 月出里: (立ち止まってる暇のない 忙しい人も後で読めるし)
  414. 月出里: (詳しい説明や電話番号 地図も載せられる!)
  415. 月出里: (あと、イラストも描いて 楽しくあったかい感じにして…)
  416. 月出里: (完成っ!)
  417. 月出里: (たくさんコピーもしたから いっぱい配るよ!)
  418. 月出里: (あ、来た来た…!)
  419. 月出里: ―月出里― ふんむー!
  420. 何?くれるの? ありがとう!
  421. 月出里: ―月出里― ふむっ!
  422. 月出里: ―月出里― (受け取ってくれた…!)
  423. 月出里: ―月出里― (この調子で もっと配ろう!)
  424. 月出里: ―月出里― ふんむー! ふんむ、ふんむー!
  425. ん?チラシ…? …って、調整屋… 確か…ソウルジェムに何かするんだよね…
  426. 月出里: ―月出里― ふむっ!
  427. ま、まあ受け取るだけ 受け取っとくよ…
  428. 拒否ったら何されるかわからないし…
  429. 月出里: ―月出里― ふむ…
  430. 月出里: ―月出里― (受け取ってもらえたけど… 今のは…ちょっと…)
  431. 月出里: ―月出里― (つ、次!)
  432. 月出里: ―月出里― ふむっ!
  433. …………
  434. 月出里: ―月出里― (あ…行っちゃった…)
  435. 月出里: ―月出里― ふむっ!
  436. お、何これ 調整屋じゃん、宣伝?
  437. 月出里: ―月出里― ふむっ!
  438. ふーん… 「アットホームで怖くない優しい人たちです」 ね…
  439. 月出里: ―月出里― ふむっ!
  440. イメージよくしようって必死なわけね でもあの噂自体は本当なの?
  441. 月出里: ―月出里― ふ、ふむ…
  442. いや、ふむ、じゃなくて 質問には答えてほしいんだけど…
  443. 月出里: ―月出里― (しまった…とっさの質問には 答える方法がない…)
  444. 月出里: ―月出里― (そうだ、今度こそ スマホのメモ画面で…)
  445. …もしかしてあなた 喋るのが苦手なの?
  446. 月出里: ―月出里― ふ、ふむ…
  447. え、どうしてそれなのに 宣伝や窓口をやらされてんの?
  448. それは…さすがにブラック組織でしょ…
  449. あなたもまだ小さいんだから 早くそんなところから足洗った方がいいって
  450. 健気さでアピールとかさ 叩かれないように利用されてるだけだよ
  451. 月出里: ―月出里― ふむ…
  452. 月出里: ―月出里― (なんでそんなこと言うの…)
  453. 月出里: (なんか… 疲れちゃったな…)
  454. 月出里: (リヴィアさんとヨヅルが 悪く言われちゃうし…)
  455. 月出里: (また、別の方法を考えよう…)
  456. 月出里: (でもわたしなんかでも 出来ること…他にあるかな…)
  457. 月出里: (…あ、ダメ)
  458. 月出里: (わたし「なんか」なんて言うな わたし「だから」と言えって)
  459. 月出里: (リヴィアさんに 怒られたのに…)
  460. 月出里: (わたし「だから」出来ること か…)
  461. 月出里: ――っ!?
  462. 月出里: (どうしよう… 閃いちゃった…!)
  463. 月出里: (これならわたし「だから」 出来ることだし…)
  464. 月出里: (調整屋の人気もすぐに アップさせられる!)
  465.  
  466. FILENAME: text_518410-7_PEHJB.txt
  467. ヨヅル: 聞き込みの成果は思ったより かんばしくありませんね…
  468. リヴィア: 最近来た魔女やと思ってたが それもちゃうみたいやしな…
  469. …ああ、その魔女なら 知ってるけど…
  470. この町に現れて もう何か月か経つよね…
  471. かなり強くて、攻撃も特殊で すぐに逃げられちゃうとか…
  472. 聞きたいって言われてもね… こっちが知りたいぐらいだし…
  473. リヴィア: あの魔女に負けて犠牲になった 魔法少女とかはおるんか…?
  474. 私が知る限りいないよ あんなに強いのに不思議だよね
  475. リヴィア: そうなんか? そら運がええな…
  476. ヨヅル: 正直、あの魔女の情報に関して めぼしい話はありませんね
  477. リヴィア: せいぜい新しくわかったのは 長い間存在しているということと
  478. リヴィア: 被害に遭った魔法少女は おらんってことぐらいや
  479. ヨヅル: …だからあの魔女について詳しい 魔法少女も少ないのでしょうか
  480. ヨヅル: 厄介な相手であることに 変わりはないものの
  481. ヨヅル: すぐには脅威にならないので みんなはすぐに手を出せない
  482. ヨヅル: だから今回のように 薄い情報だけが入ってくる
  483. リヴィア: おお、ええでヨヅル ちゃんと「読み取り」ができとる
  484. リヴィア: 証言から得た単語だけやなく その裏の事情まで考えることが
  485. リヴィア: 相手を理解して優しくするのにも 必要なことなんや
  486. ヨヅル: お褒めに預かり光栄です
  487. リヴィア: そこはテンプレ返事なんやな
  488. リヴィア: …で、あの魔女の被害に 話を戻すと…
  489. リヴィア: よくよく考えたら宝崎市では ここ最近、大きな事件事故がない
  490. ヨヅル: …!
  491. ヨヅル: あれだけ強力な魔女なら 口づけで人々を操作して
  492. ヨヅル: 相当な被害を発生させても おかしくないはず…!
  493. リヴィア: にもかかわらず事件の噂や 記事もないっちゅうことは…
  494. リヴィア: ん?
  495. リヴィア: あ、ヨヅル ほれ、あっち
  496. …………
  497. リヴィア: また魔法少女がおった せっかくやし話を聞くで
  498. リヴィア: ちょいとええか “魔法少女”のお嬢さん
  499. え、あ… な、なんでしょうか…!
  500. リヴィア: 協力してもらいたいことが あるんやけどな…
  501. すみません!お力になれません! 失礼します!
  502. リヴィア: ま、待ってや!
  503. リヴィア: ある魔女について 聞きたいだけや!
  504. リヴィア: この宝崎市に前から えらい強い魔女がおるやろ!?
  505. …それって
  506. リヴィア: そうそう、その魔女や!
  507. やっぱりそうですか でしたら、大丈夫です
  508. 放っておいてもいいですよ
  509. ヨヅル: その理由はやはりあの魔女による 被害が少ないからでしょうか
  510. はい、そうですね
  511. 少なくとも私たちは 被害を確認できていません
  512. ヨヅル: もう、調査しなくても いいのでは?
  513. リヴィア: う~ん…
  514. ヨヅル: 宝崎市の魔法少女たちは 困ってないようですので
  515. ヨヅル: この魔女の件を解決して、 魔法少女の信頼を得るという
  516. ヨヅル: 先生の魂胆は既に外れています
  517. リヴィア: 魂胆なんて言いなや…
  518. リヴィア: それに、信頼うんぬん以前にやな 魔女の問題は解決せなあかん
  519. リヴィア: 魔法少女が魔女から身を引いたら おしまいやで
  520. ヨヅル: そんなつもりはないのですが 承知しました
  521. あの、もういいですか?
  522. リヴィア: ああ、ごめんな もうええで、ありがとう
  523. リヴィア: あ、でも私ら調整屋っちゅうのを やっててな
  524. リヴィア: 今、試していかへん? 強くなるで
  525. 調整屋…! け、結構です
  526. ヨヅル: 遠慮せず頼りにしてください
  527. …いいえ、私は誰にも頼らず ひとりで生きていくと決めたので
  528.  
  529. FILENAME: text_518410-8_PEHJB.txt
  530. リヴィア: ふぅ…これ以上聞き取りをしても 進展はなさそうや
  531. リヴィア: 整理するような 情報もあれへんけど
  532. リヴィア: いったんトレーラーへ戻ろか
  533. ヨヅル: そうですね
  534. ヨヅル: では駐車場のある 河川敷まで向かいましょう
  535. リヴィア: …関係あるかわからんけど あの魔女、ずっと肉焼いとったな
  536. ヨヅル: あの姿に倒すためのヒントが…?
  537. リヴィア: いや、知らんけど なんかありそうやん
  538. リヴィア: ――っ!?
  539. ヨヅル: どうされましたか
  540. リヴィア: あ、あれ… トレーラーの周り…!
  541. ヨヅル: ん…………あっ!
  542. あー!ふたりはもしかして リヴィアさんとヨヅルさん!?
  543. ヨヅル: え、ええ…
  544. リヴィア: せやけど…
  545. みんな: 「きゃー!」 「本物!本物よー!」
  546. やっと会えました~ ずっと待ってたんですよ
  547. 旅する調整屋さん!
  548. リヴィア: …みんなはどうしてここに…?
  549. リヴィア: もしかして月出里に 紹介されて…?
  550. はい!
  551. 町で月出里ちゃんに 声をかけられて
  552. トレーラーのある場所も 教えてもらいました!
  553. ここで待ってれば 会えるってね!
  554. あ~あ、調整ってどんなだろう 楽しみ!リヴィアさん、早く!
  555. 待ってよ! 強くなるのは私が先!
  556. リヴィア: お、おぉ…
  557. ヨヅル: ふふ…素晴らしいです やりますね、月出里
  558. ヨヅル: この可愛らしいチラシも 頑張って作ったのでしょうか
  559. ヨヅル: ここまで勧誘を成功させるとは 正直、思ってもいませんでした
  560. リヴィア: …………いや これは…褒められたものか…
  561. ヨヅル: と、言いますと?
  562. リヴィア: 本人に確かめるで
  563. リヴィア: みんな、月出里は今 どこにおるん?
  564. ビル街の大通りで 案内してましたよー!
  565. リヴィア: おおきに よし、行くでヨヅル!
  566. ヨヅル: はい
  567. え~行っちゃうの?
  568. ヨヅル: 度々すみません すぐ戻りますので…失礼します
  569. ヨヅル: あ、外は寒いので
  570. ヨヅル: ぜひトレーラーの中で 待機していただければと
  571. 優しい~
  572.  
  573. FILENAME: text_518410-9_PEHJB.txt
  574. そんで、なんて言われたと思う? これがほんと酷くてさ~
  575. わかった!声が変! ファッションが変!
  576. 月出里: ふむっ!
  577. え? 何この子…
  578. チラシ…?ちょうせい………… あ、調整屋!?
  579. 調整屋がこの町に来てるから ぜひ来てね、ってこと…?
  580. 月出里: ふむっ!
  581. いや、ムリ… だって調整屋って変な噂があるし
  582. ソウルジェムを差し出すのは 流石にちょっと怖…………[freeze:2.5]くない
  583. あれ、怖くない…?
  584. どちらかと言えば 今すぐ会いたい…?
  585. えっ!? どうしたの!?
  586. あなたも行こうよ! 調整屋は最高、今すぐ行くべき
  587. え、やだ…何…? あなたが怖いんだけど…
  588. …………[freeze:2.5]うん、そうだね 行こう行こう…
  589. 調整屋は決して怖くない むしろ絶対頼りになりそうだしね
  590. 月出里: ふむっ!
  591. ここにいるんだね! ありがとう!
  592. 月出里: ふむっ!
  593. 月出里: (またまた大成功! こんなにうまくいくなんてね!)
  594. リヴィア: 私がふたりの固有魔法を 教えたるから、駆使してき
  595. リヴィア: 「ほんで月出里は人の考えを切り替えたように “感情を切り替える力”を持っとる」
  596. 月出里: (わたしの固有魔法… “感情を切り替える力”…)
  597. 月出里: (これを使えば、簡単に 調整屋への感情を変えられる!)
  598. 月出里: (しかもこれは わたし「だから」こその方法)
  599. 月出里: ふむ…むふふ…
  600. 月出里: (きっとリヴィアさんも 喜んで、褒めてくれる)
  601. 月出里: (期待してくれたリヴィアさんを ガッカリさせないで済む…)
  602. 月出里: (この方法を思いつくまで 諦めずに頑張ってよかった…!)
  603. 月出里: (この調子で もっとお客さんを増やすよ)
  604. …………
  605. 月出里: (また魔法少女だ よーし…)
  606. リヴィアの声: 「月出里!」
  607. 月出里: む…?
  608. リヴィア: …………
  609. 月出里: (リヴィアさん!)
  610.  
  611. FILENAME: text_518410-10_PEHJB.txt
  612. リヴィア: 月出里…
  613. 月出里: リヴィアさん!
  614. 月出里: わたし、たっくさん 調整屋を案内したよ!
  615. 月出里: 今、トレーラーにいったら みんなが待ってると思う!
  616. リヴィア: ああ、見てきたんや… 知ってるで…でもな…
  617. 月出里: わたしならではの方法で 工夫して案内したんだよ
  618. 月出里: リヴィアさんとヨヅルにも 見せてあげる!
  619. リヴィア: ――っ!?
  620. 月出里: ふむっ!
  621. えっ!? 何…調整屋…!?
  622. 嫌…
  623. リヴィアの声: 月出里っ!!
  624. …じゃない 嫌じゃない
  625. 調整屋さんに 調整の依頼をしたい!
  626. リヴィア: 月出里…
  627. 月出里: ね!すごいでしょ!?
  628. 月出里: リヴィアさんが教えてくれた 固有魔法のおかげなんだよ!
  629. 月出里: リヴィアさんの言った通り わたしが1番、勧誘に向いてた!
  630. 月出里: リヴィアさんの期待した 通りだったでしょ!?
  631. 月出里: リヴィアさん 褒めてくれるよね!
  632. リヴィア: ………… 月出里…これはアカンて…
  633. 月出里: え?
  634. リヴィア: それがどれだけ人の尊厳を 踏みにじる行為やと…
  635. リヴィア: いや、こんなん子どもに わかるわけないわな…
  636. 月出里: え?え?
  637. リヴィア: でも、こんな風に月出里が 力を使うと思えへんかったんや
  638. リヴィア: だってこの能力は アンタにとって…………いや
  639. リヴィア: すまん、今のは無しや
  640. 月出里: …………
  641. リヴィア: 一緒にトレーラーに戻るで
  642. リヴィア: そんでみんなに掛けた魔法を 元に戻してやり
  643. 月出里: ――っ!?
  644. 月出里: え?え? え?え?
  645. 月出里: なんで!?なんで!?
  646. 「ひどい!」 「魔法を使って騙したなんて!」
  647. 「やっぱり調整屋は噂通りの人たちね!」 「魔女について調べてたのも 何か裏の目的があるんでしょ!」
  648. ヨヅル: 申し訳ありません…
  649. リヴィア: ごめんな…
  650. 月出里: (なんで…みんな怒ってるの…)
  651. 月出里: (なんでふたりは 怒られてるの…?)
  652. 月出里: (わたし…みんなのために 頑張ったのに…)
  653. 月出里: (喋れないけど、一生懸命考えて 頑張ったのに…)
  654. [Part 1 end]
  655. ---
  656. [Part 2 start]
  657. FILENAME: text_518420-1_LZJeJ.txt
  658. …………
  659. ここで待っていれば またあの人に会えるかな…
  660. 今日は会えるかな…
  661. 連絡先… ちゃんと聞けばよかったな…
  662. あの人はこの辺りが 担当地域って言ってた…
  663. だから待ってれば 会えるはず…
  664. …………今日も 現れないんだろうな…
  665. 弱っちい私なんかと仲良くしても いいことなんてないですしね…
  666. もう一生 会えないのかな…
  667. もしかしたら…あの人はもう…
  668. ようやく出会えた 一緒に戦えそうな人だったのに…
  669. どうしよう…
  670. 私はひとりじゃ生きていけない… あの人だけが頼りなのに…
  671. …………
  672. ――っ!?
  673. あ…あ…
  674. この魔力は…!
  675.  
  676. FILENAME: text_518420-2_LZJeJ.txt
  677. 月出里: …………
  678. 月出里: (今日も調整屋の紹介 頑張らないと…)
  679. 月出里: (だって昨日… みんなに謝った後で…)
  680. 帰ります!
  681. もう二度と 来ないと思ってくださいっ!
  682. リヴィア: しゃあないと思ってる ほんま申し訳ないことしたわ…
  683. …………
  684. リヴィア: ん?なんや? あんたは帰らんのか?
  685. …ちょっと聞きたいことが…
  686. …実は先週…彼氏に 「重い」ってフラれちゃいまして
  687. リヴィア: あ、ああ… それは、しんどいな…
  688. しかもバレンタイン直前ですよ? 最悪ですよね
  689. それで、彼氏のことを 思い出したくもないんですけど…
  690. 頭の中から消し去ることって この子の魔法でできますか…!?
  691. リヴィア: …苦しいのはわかるが やめとき
  692. リヴィア: 都合よく記憶を消したりはできん
  693. リヴィア: 月出里にできるのは あくまで想いや感情の切り替えや
  694. リヴィア: 仮に、彼氏への強い想いを弱めて 切り替えたところで
  695. リヴィア: 別の何かに依存し始めたら それこそ厄介やで
  696. リヴィア: せやから、そんな魔法に頼って 己を変えようとしたらあかんよ
  697. そうですかぁ…
  698. 月出里: …………
  699. リヴィア: ああっ、月出里、違うんや…
  700. リヴィア: 別に月出里の能力を 悪く言ったわけやなくてな…!
  701. 月出里: …………
  702. リヴィア: …………
  703. リヴィア: …明日は固有魔法に頼らず 頑張ってくれや…
  704. 月出里: ふ…
  705. 月出里: む…
  706. 月出里: (…って感じで、今日も宣伝の お仕事、任されちゃったし…)
  707. 月出里: (「イヤ」とも言えなかった…)
  708. 月出里: (やらないと…)
  709. …………
  710. 月出里: ふむ…
  711. …? どうしたの?
  712. 可愛い格好だね
  713. 月出里: ふ…
  714. 月出里: む…
  715. 月出里: …………
  716. …あれ、いっちゃった
  717. 月出里: …………
  718. 月出里: (なんか…もう、ムリ… どうせ伝わるわけないし…)
  719. 月出里: (わたしの言葉を伝えられても 調整屋の評判は変わらない…)
  720. 月出里: (それにもし…)
  721. 月出里: (昨日の怒ってた子たちが わたしの悪口を言ってたら…)
  722. 月出里: (評判だけじゃなくて…)
  723. 月出里: …………
  724. 月出里: (とりあえず 場所を変えよう…)
  725. 月出里: …………
  726. 月出里: (もう1時間くらい サボっちゃってるよ…)
  727. 月出里: (でも体が動かないや)
  728. 月出里: (あ、アリの行列…)
  729. 月出里: (偉いな、アリさんは…)
  730. 月出里: (こんなに寒いのに 自分より大きな荷物を運んで)
  731. 月出里: (あれ…?一匹だけ 行列から外れちゃってる…)
  732. 月出里: (…この子、触覚が 折れちゃってるんだ…)
  733. 月出里: (…………一緒だね… 話せないわたしと…)
  734. 月出里: (そう… わたしは触覚の折れたアリ…)
  735. 月出里: (前歯の欠けたリス…)
  736. 月出里: (食べても太れない豚…)
  737. 月出里: (画面バキバキのスマホ…)
  738. 月出里: …………
  739. 月出里: (固有魔法は…)
  740. 月出里: (やっぱり 使っちゃダメだよね…)
  741. 月出里: (あーあ…)
  742. 月出里: (やっと、この魔法のことを 好きになれそうだったのにな…)
  743. ぐるるる…
  744. 月出里: (お腹すいた…)
  745. 月出里: (まだ何もしてないけど もうすぐお昼なんだね…)
  746. 月出里: (アリさんを行列に 戻して…と)
  747. 月出里: …………
  748. 月出里: (駅前までいけば 何かお店あるかな…)
  749. 月出里: (どれにしよう)
  750. ピンポンパンポーン
  751. 月出里: ふむ?
  752. 月出里: (駅の中のアナウンスかな)
  753. 「神浜方面行き普通電車 間もなく発車いたします 危険ですので白線の内側へお下がりください」
  754. 月出里: …………
  755. 月出里: (神浜…)
  756.  
  757. FILENAME: text_518420-3_LZJeJ.txt
  758. 月出里: …………
  759. 「神浜方面行き準急 間もなく発車いたします 危険ですので白線の内側へお下がりください」
  760. 月出里: (あ、また…)
  761. 月出里: …………
  762. 「神浜方面行き急行 間もなく発車いたします 危険ですので白線の内側へお下がりください」
  763. 月出里: (どんどん出てってる…)
  764. 月出里: (神浜市への電車…)
  765. 月出里: …………
  766. 月出里: (切符…買っちゃった…)
  767. 月出里: (お昼ご飯に、って貰った おこづかいだったのに…)
  768. 月出里: (これを使って 電車に乗っちゃえば…)
  769. みかげ: わーい!すーたん久しぶり! いっぱい遊ぼ―ね!
  770. 月出里: ふむーっ!
  771. 那由他: おかえりなさいですの!
  772. ラビ: 久しぶりのこの町を ゆっくり堪能してください
  773. 月出里: ふむ!ふむ!
  774. みかげ: なゆたんのパパがミナギーシーの チケットをくれたんだよ!
  775. みかげ: 今からみんなで行こう!
  776. 月出里: ふむっ!
  777. 那由他: お山の絶叫マシンが 迫力満点だそうですの!
  778. ラビ: ふふ、那由他様の絶叫は さぞかし迫力があるのでしょうね
  779. 那由他: どういう意味ですの!
  780. みかげ: にぎやかで楽しいねっ!
  781. 月出里: ふむむーっ!
  782. 月出里: (きっと、神浜市で 楽しいことが待ってるはず…)
  783. 月出里: (…でも、この電車に 乗らなかったら…)
  784. また私の心を操って 騙そうとしてるんでしょ!
  785. なんとか言ってみなよ!
  786. リヴィア: 収穫ゼロ… ちょっと期待しすぎたか…
  787. ヨヅル: 今まで何やってたんですか…?
  788. 月出里: (きっと こうなるんだろうな…)
  789. 月出里: (「期待外れ」か…)
  790. 月出里: (そもそもリヴィアさんは 期待なんてしてなかったのかも)
  791. 月出里: (だって昨日…)
  792. 「ひどい!」 「魔法を使って騙したなんて!」
  793. 「やっぱり調整屋は噂通りの人たちね!」 「魔女について調べてたのも 何か裏の目的があるんでしょ!」
  794. 月出里: (あれは、リヴィアさんと ヨヅルのふたりで)
  795. 月出里: (昨日会った強い魔女のことを 調べてたってことだよね…)
  796. 月出里: (…わたしは魔法少女としての 能力を信用されてないから)
  797. 月出里: (苦手な宣伝の仕事を与えられて 誤魔化されてたんだ…)
  798. 月出里: (そう…危険だって言われて 遠ざけられるのはいつものこと)
  799. 月出里: (わかるよ いつもそうだもん)
  800. 月出里: (いつもわたしは 何も期待されてない…)
  801.  
  802. FILENAME: text_518420-4_LZJeJ.txt
  803. 「神浜方面行き準急 間もなく発車いたします 危険ですので白線の内側へお下がりください」
  804. 月出里: …………
  805. 月出里: (どうせ期待されてないなら…)
  806. 月出里: (本当に神浜市に行って サボっちゃったとしても)
  807. 月出里: (「頑張ったけどダメだった」 って謝れば許されそう)
  808. 月出里: (…だいたいリヴィアさんも 悪いよね)
  809. 月出里: (わたしに向いてない仕事を 押し付けたわけだし)
  810. 月出里: (『任命責任は私にある』って リヴィアさんも言ってた)
  811. 月出里: (うん 全部リヴィアさんのせいだよ)
  812. 月出里: (チラシを渡した子も ブラックって言ってたから)
  813. 月出里: (わたしは悪くない…)
  814. 月出里: ふむっ!
  815. 月出里: (なんでわたし こんなに性格悪いのっ!?)
  816. 月出里: (全部リヴィアさんの せいにして!)
  817. 月出里: (じゃあ勧誘の仕事に戻る?)
  818. 月出里: (それももうムリだよ…!)
  819. 月出里: (どうすればいいの リヴィアさん…)
  820. ガシャン
  821. 月出里: (切符、入れちゃったよ 改札通っちゃったよ)
  822. 月出里: (いいの?リヴィアさん?)
  823. 月出里: (いいか、別にいいんだよね)
  824. 月出里: (今日くらいサボったところで 調整屋は何も変わらない…)
  825. 月出里: (むしろリヴィアさんにとって 1番困ることは…)
  826. 月出里: (サボられて成果がないこと じゃなくて…)
  827. 月出里: (わたしに固有魔法を 使われることなんだから)
  828. 月出里: …………
  829. リヴィア: ………… 月出里…これはアカンて…
  830. 月出里: え?
  831. リヴィア: それがどれだけ人の尊厳を 踏みにじる行為やと…
  832. リヴィア: …苦しいのはわかるが やめとき
  833. リヴィア: 都合よく記憶を消したりはできん
  834. リヴィア: 月出里にできるのは あくまで想いや感情の切り替えや
  835. リヴィア: せやから、そんな魔法に頼って 己を変えようとしたらあかんよ
  836. 月出里: …………
  837. 月出里: (でもね、固有魔法の “嫌いさ”だったら…)
  838. リヴィア: 宣伝目的程度じゃ 固有魔法は変わらへん
  839. 月出里: ふっむ…
  840. リヴィア: なんや、残念そうな顔して
  841. リヴィア: 変わるのがちょっと 楽しみやったんか?
  842. 月出里: (“嫌いさ”だったら…)
  843. 月出里: (わたしの方が負けてないよ)
  844. 月出里: わたしは、ある事件に巻き込まれて 殺されそうになった
  845. 月出里: そこに現れたのはキュゥべえ
  846. 月出里: わたしは願いを叶えて わたしに向けられた銃口を 別の方向に向けさせた
  847. 月出里: (そんな最低の願いで 得た固有魔法なんだから…)
  848. リヴィア: 「ほんで月出里は人の考えを切り替えたように “感情を切り替える力”を持っとる」
  849. 月出里: (最初は何も思わなかった…)
  850. 月出里: (でも、魔法少女になったときを 振り返ってみると…)
  851. 月出里: (自分の魔法が気持ち悪い…)
  852. 月出里: (すごく吐き気がする)
  853. 月出里: (たぶんこれは わたしの中の罪悪感が)
  854. 月出里: (わたしを許さないぞって 言ってるんだと思う)
  855. 月出里: (でもね…)
  856. 月出里: (あの説明を聞いたとき わたしの中にあった感情は)
  857. 月出里: (“それだけ”じゃ なかったんだよ)
  858.  
  859. FILENAME: text_518420-5_LZJeJ.txt
  860. リヴィア: …………
  861. ヨヅル: 調査、進みませんね…
  862. リヴィア: あー…
  863. ヨヅル: 元々、みなさんが魔女の情報を 持ち合わせてないのもありますが
  864. ヨヅル: それ以上に我々への警戒心が強く 会話までこぎつけませんね
  865. リヴィア: うー…
  866. ヨヅル: 初めて会う方でも 同様の対応をされました
  867. ヨヅル: 恐らく昨日の件が既に 出回っていて…
  868. リヴィア: んー…
  869. ヨヅル: …お疲れ、ですか?
  870. リヴィア: …そんなとこやなぁ
  871. ヨヅル: …嘘ですね
  872. リヴィア: “嘘を見逃すのも優しさ”やで…
  873. ヨヅル: それに従って「ぐあっ」と 言わされたので見逃しません
  874. リヴィア: ほうかほうか… んー…
  875. ヨヅル: …………月出里のことですね
  876. リヴィア: 勘がええな…
  877. ヨヅル: 簡単ですよ 罪悪感を持つ優しい人は得てして
  878. ヨヅル: 怒るべきときに怒ったあとで 言い過ぎたなどと悔やむもの…
  879. ヨヅル: そういった傾向を踏まえ 逆算し推論を立てたまでです
  880. リヴィア: 概ね正解やけど
  881. リヴィア: 私が頭を抱えてるんは “それだけ”やない
  882. リヴィア: でもそこまでわかるのは偉いな そんで…大変やな
  883. リヴィア: 月出里も大変や 向いてない仕事押し付けられて…
  884. リヴィア: そんで…追い詰められた…
  885. リヴィア: 背中を押そうとしたんが 完全に空回りやし
  886. リヴィア: とはいえ、こっち手伝うてもろう わけにもいかんやろ…?
  887. リヴィア: とりあえず宣伝はさせとるけど、 今となっては悪手やと思うし
  888. リヴィア: どないしようかと思とる
  889. ヨヅル: …………
  890. リヴィア: 月出里は周りを思いやれる 優しい子で
  891. リヴィア: 自分のしたことで何かあれば 罪悪感の持てる子やと思っとった
  892. リヴィア: 実際、自分の願いで多くの人が 亡くなったんを悔いとるしな…
  893. リヴィア: せやから驚いた
  894. リヴィア: 月出里自身が「毛嫌い」しとる 願いで得た固有魔法を
  895. リヴィア: あんな乱暴に使うんやからな…
  896. リヴィア: 信じられんかった
  897. リヴィア: それがさっき言った
  898. リヴィア: “それだけ”やないって 言葉の意味や
  899. ヨヅル: なるほど…
  900. ヨヅル: …ひとつ、よろしいでしょうか
  901. リヴィア: なんや
  902. ヨヅル: 月出里と一緒に私も、先生から 固有魔法について聞かされました
  903. リヴィア: 私がふたりの固有魔法を 教えたるから、駆使してき
  904. リヴィア: 「ヨヅルは自分の願いで起きたことと同じで “心を切り捨てる力”を持っとる」
  905. ヨヅル: 私の魔法も褒められた経緯で 得たものではありませんが…
  906. ヨヅル: 決して知らされた自分の能力に 「毛嫌い」はしませんでした
  907. リヴィア: それはアンタに 罪悪感がないからやろ…?
  908. ヨヅル: はい、そうです
  909. ヨヅル: ですが、何も思わなかった わけではないんです
  910. ヨヅル: あの時の私には 別の想いが込み上げていました
  911. ヨヅル: 先生の考えた作戦に役立てる…
  912. ヨヅル: 嬉しい、という想いが
  913. リヴィア: …………!
  914. ヨヅル: 罪悪感を持つ月出里が固有魔法を 毛嫌いしたのは事実でしょう
  915. ヨヅル: ですが、“それだけ”じゃない
  916. ヨヅル: 私が抱いたのと同様に 嬉しいという気持ちもあったはず
  917. ヨヅル: もしかしたらこれは 罪悪感の欠如した私だからこそ
  918. ヨヅル: 嬉しいという想いが ハッキリ見えたのかもしれません
  919. リヴィア: …つまり月出里は
  920. リヴィア: 自分の固有魔法に対して 喜びと嫌悪がせめぎ合う中で
  921. リヴィア: 揺れ続けとったということか…
  922. ヨヅル: …自分の魔法を嫌いになりきれず むしろ好きになろうとしていた
  923. ヨヅル: そこで見つけた活用の機会
  924. ヨヅル: 多少の空回りをしてでも 頑張ってしまったのは
  925. ヨヅル: 致し方のないことかも しれませんね
  926. リヴィア: …………
  927.  
  928. FILENAME: text_518420-6_LZJeJ.txt
  929. リヴィア: あの月出里が 周りの人の気持ちも考えずに
  930. リヴィア: 罪悪感のひとつもなく みんなの感情を書き換える…
  931. リヴィア: そんなわけあれへんのは 自分でいっちゃんわかってたのに
  932. リヴィア: 私は…何を勝手に思い込んで ガッカリしてたんやろ…
  933. リヴィア: 月出里…私の気持ちには たぶん気づいとるかな…
  934. ヨヅル: 月出里は人の心の機敏に 敏感ですからね
  935. ヨヅル: 「ガッカリされた」という 実感は少なからずあるでしょう
  936. リヴィア: その上、固有魔法を否定する ようなこと言ってしもうた
  937. リヴィア: 謝らんといかんな…
  938. リヴィア: 今、月出里はどこに…
  939. 燦の声: あら? ピュエラケア?
  940. 燦: なんだ、噂通り 本当にこっちに来てたのね
  941. ミユリ: ということは… お昼に駅で見かけたのは
  942. ミユリ: やっぱり月出里ちゃんってことで 間違いなさそうですね
  943. リヴィア: ああ、あんたらか… 久しぶりやな
  944. リヴィア: ちょうど昨日から こっちを拠点にしとるんや
  945. リヴィア: それより今、 駅で月出里を見たって…?
  946. 燦: ええ、今日は神浜市で 姫様たちと遊んでたんだけど
  947. ミユリ: 宝崎市に帰ってきたとき 反対側のプラットフォームで
  948. ミユリ: 月出里ちゃんらしき人を 見かけたんです!
  949. 燦: ピュエラケアがこの町に 来てるなんて思ってなかったから
  950. 燦: 単なる見間違いかなと 思ったんだけどね
  951. 燦: 実際に帰ってきてるとなると 話は変わってくる…
  952. リヴィア: ちょい待ち い、今…
  953. リヴィア: 『反対側のプラットフォーム』 って言うたか…?
  954. ヨヅル: つまり神浜方面行…?
  955. 燦: ええ、そういうことになるわね
  956. ヨヅル: 月出里… もしかして、逃げ…
  957. リヴィア: 行くで!ヨヅル! せめて謝らんと!
  958. ヨヅル: はいっ!
  959. リヴィア: …って駅の名前聞いてなかったわ 宝崎市のどの駅なん?
  960. 燦: それは…
  961. 燦: 「宝崎第一次駅」よ
  962. リヴィア: ありがとう!
  963. ヨヅル: はいっ!
  964. ミユリ: えっ!? 今から行くんですか!?
  965. 燦: 見かけたのはお昼よ!
  966. ミユリ: …………行っちゃいました
  967.  
  968. FILENAME: text_518420-7_LZJeJ.txt
  969. リヴィア: ここや!
  970. リヴィア: す、月出里は…!
  971. ヨヅル: …いませんね…
  972. ヨヅル: 神楽様が見かけたのは 昼頃との話だったので、もう…
  973. リヴィア: …………
  974. 月出里の声: ふむっ!?
  975. リヴィア: ――っ!?
  976. リヴィア: この声は…
  977. 月出里: ふんむ…
  978. 駅員: もしかして この子をご存じで…?
  979. リヴィア: 保護者…みたいなもんです…
  980. 駅員: ああ、それはよかった
  981. 駅員: いえですね…
  982. 駅員: この子、お昼ごろからずっと こちらの駅におりまして
  983. 月出里: …………
  984. 駅員: 神浜方面の電車が来るたびに ドアに近づいては
  985. 駅員: 乗ると見せかけて乗らない 乗ると見せかけて…乗らない
  986. 駅員: といった行為を繰り返していて…
  987. 駅員: 我々としては単なる迷惑以上に ただならぬ事情を感じまして
  988. 駅員: 駅員室の方で 保護していた次第です
  989. リヴィア: それは…大変なご迷惑を おかけしました
  990. ヨヅル: 丁寧な対応 ありがとうございます
  991. 駅員: いえいえ、仕事の内です 以前も同じような子がいたので
  992. 駅員: それ以来、怪しい子を見かけたら 声をかける決まりになったんです
  993. 駅員: では、私の役割は もう済んだようなので失礼します
  994. リヴィア: …………
  995. 月出里: …………
  996. 月出里: ごめ…
  997. リヴィア: ありがとうな
  998. 月出里: …!
  999. リヴィア: 逃げ出さずに 残っててくれたんやろ…?
  1000. 月出里: …………うん…
  1001. 月出里: 勧誘するの、もう嫌で 神浜市に行こうとした
  1002. 月出里: 調整屋なんて 潰れればいいやって思った…
  1003. 月出里: ごめんなさい
  1004. 月出里: でも、電車に乗ろうとするたびに ふたりの顔が思い浮かんで
  1005. 月出里: 乗れなかった…
  1006. リヴィア: うん…
  1007. リヴィア: ええんや こっちが悪かった…
  1008. リヴィア: 無茶なことを言ったのは 私や
  1009. リヴィア: それでもまだ残ってくれて ホンマに感謝しとる
  1010. リヴィア: もう謝らんでいい
  1011. 月出里: うん…
  1012. リヴィア: さ、帰るで 顔を上げや
  1013. 月出里: ふむ
  1014. 月出里: ――っ!?
  1015. ヨヅル: どうしましたか?
  1016. 月出里: …………
  1017. 月出里: (あと他に宝崎市に来たのは なんだっけ…)
  1018. 月出里: (あ、間違えて 電車を降りたときだ)
  1019. 月出里: …………
  1020. 月出里: …………
  1021. 月出里: (ここ、どこ…?看板には 宝崎第一次駅ってあるけど…)
  1022. 月出里: (もしかして神浜市から 出ちゃった…?)
  1023. 月出里: (お昼にここに来たときは 何も感じなかったけど…)
  1024. 月出里: (今、夕方になって 改めて顔を上げて思い出した…)
  1025. 月出里: (この夕方の景色…知ってる…)
  1026. 月出里: (わたし ここに、来たことがある!)
  1027. 月出里: (…たしかあのとき、 迷子になったわたしは…)
  1028. 月出里: (頼りになりそうな 魔法少女を探すために)
  1029. 月出里: (魔力探知をしようとして…)
  1030. 月出里: ――っ!?
  1031. 月出里: (「あの魔力」を見つけた…)
  1032. 月出里: (あれ?待って…?)
  1033. 月出里: (あのときの感覚を よくよく思い出してみると…)
  1034. 月出里: ――っ!?
  1035. ヨヅル: 先生! 魔女の反応です
  1036. 月出里: …………?
  1037. 月出里: (同じだ…)
  1038. 月出里: (昨日、宝崎市についてすぐに 感じた魔力…)
  1039. 月出里: (アレと同じ魔力を、昔 この駅で感じてたんだ…!)
  1040. 月出里: (どういうこと? だって昨日のあの魔力は)
  1041. 月出里: (直後に戦った 魔女の魔力のはず…?)
  1042. 月出里: (いや違う…)
  1043. 月出里: (もっと根っ子のところで 勘違いをしてる気がする…)
  1044. 月出里: (魔女と戦ったときに覚えた 違和感はこれ…?)
  1045. 月出里: (もっとちゃんと… 昨日のことを思い出して…)
  1046. 月出里: ――っ!?
  1047. 月出里: (そうだよ!)
  1048. 月出里: (あのとき感じた魔力は 「ふたつ」あったんだ!)
  1049. 月出里: (そしてわたしは、 昨日のこのふたつの魔力を)
  1050. 月出里: (昔、この駅で感じている…)
  1051. 月出里: (ひとつは魔女で… じゃあもうひとつは…)
  1052. 月出里: (どういうこと… 何が起きてるの…?)
  1053. そういう関係になれるような 運命の人だと思うんです
  1054. だからグリーフシードを手に 私はここで待ち続けます
  1055. リヴィア: 月出里にできるのは あくまで想いや感情の切り替えや
  1056. リヴィア: 仮に、彼氏への強い想いを弱めて 切り替えたところで
  1057. リヴィア: 別の何かに依存し始めたら それこそ厄介やで
  1058. 月出里: (ウソ、だよね…)
  1059. 月出里: (違うよね…)
  1060. 月出里: (嫌だよ… そういう…ことなの…?)
  1061. …でしたらごめんなさい ご協力できることはないんです!
  1062. それに、助けていいただく 必要もありません!
  1063. 私はどんな時でもひとり!
  1064. そうやって生きると決めたので すみませんが、失礼します!
  1065. 月出里: (あのとき、指輪のないわたしを 魔法少女だって見抜いたのに)
  1066. 月出里: (バレンタイン衣装のわたしを 変身前の姿と勘違いしたのは…)
  1067. 月出里: このとき、わたしの本来の魔法少女姿を ここで見ていたから…!
  1068. 月出里: (あの子は、あの場所にいた…! じゃあもう、決まりだよね…)
  1069. 月出里: リヴィアさん、ヨヅル… ごめん…
  1070. リヴィア: もう謝らんでええて
  1071. 月出里: そうじゃなくて… ふたりは昨日からずっと
  1072. 月出里: 宝崎市に来て最初に戦った魔女を 必死に倒そうとしてたんだよね…
  1073. リヴィア: ああ、そのために裏で月出里に 別の仕事をさせようと…
  1074. 月出里: その話はもうよくて…
  1075. 月出里: 全部つながったよ…
  1076. 月出里: でもやっぱりごめん 全部、わたしのせいだ…
  1077. リヴィア: それは、どういう…
  1078. ヨヅル: この反応は…あの魔女です! それもかなり近い!
  1079. リヴィア: なっ…!?
  1080.  
  1081. FILENAME: text_518420-8_LZJeJ.txt
  1082. ヨヅル: この反応は…あの魔女です! それもかなり近い!
  1083. リヴィア: なっ…!?
  1084. ヨヅル: やってしまいましたね…!
  1085. リヴィア: 知らんうちに 誘い込まれてもうたんや!
  1086. リヴィア: 探していた相手ではあるが まだわからんことが多すぎる…!
  1087. リヴィア: 幸い魔女はまだ奥におるみたいや …ヨヅル!月出里!
  1088. リヴィア: 奥におる魔女が来る前に 逃げる準備するで!
  1089. 月出里: …………
  1090. 月出里: …………!
  1091. 月出里: (やっぱり…)
  1092. 月出里: (奥の魔女とは別に… あの魔力も反応した…)
  1093. 月出里: ねえ、ヨヅル…
  1094. ヨヅル: なんでしょう 妙に落ち着いてますが…
  1095. 月出里: 今からわたしが言うこと 大きな声で叫んでくれる?
  1096. ヨヅル: はい?
  1097. 月出里: …………
  1098. ヨヅル: …………
  1099. ヨヅル: …!
  1100. ヨヅル: …………その言葉を 叫べばよろしいのですね
  1101. 月出里: ふむ!
  1102. ヨヅル: …………
  1103. ヨヅル: 『ねえ!隠れてる子! 聞こえてる!?』
  1104. ヨヅル: 『あの日、何か月か前の夕方! この駅で会ったあの子だよね!』
  1105. ヨヅル: 『知らないところからの攻撃って あなたがしてるんでしょ…?』
  1106. ヨヅル: 『ごめんなさい! あなたを変えてしまったのは…』
  1107. ヨヅル: 『たぶん、わたしのせいなの!』
  1108. ヨヅル: …………
  1109. リヴィア: ヨヅル…何を言ってるんや…?
  1110. リヴィア: ちゃう、月出里の代弁か…
  1111. リヴィア: ん?その攻撃って… あの魔女のことか…?
  1112. え… ど、どうしてどうして…
  1113. 魔女からも離れた所にいたし 気取られないようにしてたのに…
  1114. そ、それに!
  1115. あなたのせい、って どういうことですか…?
  1116. ヨヅル: あ、ええと『わたし』というのは 私のことではなく…
  1117. はい、あなたのこと…ですよね 調整屋の宣伝をしていた…
  1118. 月出里: ふむ…
  1119. あぁ、そっか… 思い出してきました…!
  1120. 昨日、見た顔だと思ったのは 前にこの駅で会ってたからなんだ
  1121. …よくよく考えれば 本当にあなたと会った数日後です
  1122. …わたしがこの魔女を 守るようになったのは…
  1123. リヴィア: ――っ!?
  1124. リヴィア: じゃあ、ほんまにアンタが 魔女の陰から攻撃してきてたんか
  1125. ごめんなさい…ほんとに… でも、その通りなんです…!
  1126. この魔女を守るための… 妨害でした…!
  1127. ヨヅル: どうしてそのようなことを…
  1128. そんなこと… 私が教えて欲しいぐらいです…!
  1129. でも、いま言ったんですよね? この子が『わたしのせい』だって
  1130. 月出里: …………
  1131. だから、魔女を守るっていう 自分の行動の理由が知りたくて
  1132. こうして、みなさんの前に 姿を現したんです
  1133. どうか、お願いです! 知っているのなら教えてください
  1134. 私、あの魔女を見ると、 守らないとって思っちゃうんです
  1135. だから魔法少女が現れたら 攻撃して、魔女を逃がして…
  1136. 被害は出さないようにだけ し続けてきて…
  1137. …いったい、私に 何が起きてるんですか…
  1138. 月出里: ふむ…
  1139. 月出里: あれは…どれくらい前だろう… 「これから神浜市で、魔法少女同士の 大きな争いが起こる」って情報が入って
  1140. 月出里: 今の内に神浜市を視察しようって リヴィアさんたちと来たんだよね
  1141. 月出里: いったん3人でバラバラに 神浜市を散策した後 新西区で集合ってことだったんだけど
  1142. 月出里: 私は電車の中でうっかり寝ちゃって そのまま神浜市を出ちゃったんだ…
  1143. 月出里: …………
  1144. 月出里: (ここ、どこ…?看板には 宝崎第一次駅ってあるけど…)
  1145. 月出里: (もしかして神浜市から 出ちゃった…?)
  1146. 月出里: (引き返すには 駅員さんに言って)
  1147. 月出里: (切符を買い直さないと いけないんだっけ…?)
  1148. 月出里: ――っ!?
  1149. 月出里: (あ、魔法少女だ… なら、この人に…)
  1150. 月出里: ――っ!?
  1151. 月出里: (大変っ! ソウルジェム!濁ってる!)
  1152. 月出里: ふむっ!! ふむ、ふむっ!!
  1153. …どうかしましたか? あ、その指輪…魔法少女ですよね
  1154. 月出里: ふむっ! ふむむむっ!
  1155. 私のソウルジェムが どうかしましたか…?
  1156. 確かに少し元気はないですが 大丈夫、心配しないでください
  1157. 月出里: (スマホのメモ帳で…)
  1158. グリーフシードは持ってないの?
  1159. …………ひとつだけ持ってますよ
  1160. なら、早く使った方がいいです
  1161. …そんな、使えませんよ
  1162. これは私を助けてくれた人に、 再会したら渡すものですから
  1163. やっと弱い魔女を倒して 手に入れられたんです
  1164. 使って手持ちがないときに もしも、再会してしまったら
  1165. 私はまだ弱っちいままなんだって ガッカリされるじゃないですか
  1166. だから使えませんよ
  1167. 月出里: (何を言ってるの…)
  1168. 月出里: (ガッカリされるとか 言ってる場合じゃないのに!)
  1169. 月出里: (もしかして最後まで濁ったら どうなるか知らない…?)
  1170. 月出里: (どうしよう、教えていいの? でもショックだろうし…)
  1171. あの人はきっと 私が自分を偽らなくていい人
  1172. そういう関係になれるような 運命の人だと思うんです
  1173. だからグリーフシードを手に 私はここで待ち続けます
  1174. ここが、 あの人と出会えた場所だから
  1175. そして、その時は もうすぐ来ると思うんです…
  1176. ――っ!?
  1177. 月出里: (魔女!? こんなときに…!)
  1178. あ…あ…
  1179. この魔力は…!
  1180.  
  1181. FILENAME: text_518420-9_LZJeJ.txt
  1182. この魔女、この魔女です…!
  1183. あの子と初めて会って 一緒に戦った…
  1184. 月出里: ――っ!?
  1185. 月出里: (ダメ!こんな状態で この魔女と戦えるわけないっ!)
  1186. は、放してください!
  1187. この魔女が…名前と連絡先を 知らないあの人への
  1188. 唯一の手がかりなんです!!
  1189. 月出里: (そんなこと言っても…!)
  1190. 月出里: (ならせめて、グリーフシードを 使わせないと…)
  1191. 月出里: (わたしの手持ちで…!)
  1192. ――っ!?
  1193. ダメですよっ! それはあなたのものです!
  1194. 今、あなたの グリーフシードを使ったら
  1195. 前と何も変わらない…!
  1196. 弱いままじゃないですか!
  1197. 結構です!必要ありません! あなた自身に使ってください!
  1198. 月出里: (事情はわからないけど… だったら調整で強くする…?)
  1199. 月出里: (無理!見習いのわたしじゃ 逆に弱くなっちゃうかもっ)
  1200. お願いします! どいてください!
  1201. 月出里: ふむ! ふむぅぅぅ~~~!!
  1202. 月出里: わたしは無我夢中だった 必死になって全身に力を入れていた
  1203. 月出里: 直前に、調整をしようと 魔力を溜めたのも原因かもしれない
  1204. …………まあ、それもそうですね
  1205. あの人に渡す分の グリーフシード…
  1206. …もう、 使ってしまいましょうか
  1207. 月出里: ふ、ふむ…?
  1208. 月出里: (説得が通じた…?)
  1209. 月出里: …と思い込んだのは 当時のわたしが自分の固有魔法を 知らなかったからで…
  1210. 月出里: 今にして思えばわかる わたしはこのとき夢中になって 固有魔法をうっかり暴発させたんだって
  1211. 月出里: 感情の切り替えの魔法で… この人の心を無理やり歪に捻じ曲げて… リヴィアさんで言うところの
  1212. 月出里: 『人の尊厳』を踏みにじったんだって
  1213. 月出里: 小学校に通っていた頃のわたしは 面倒事を避けるために クラスの誰ともかかわろうとしていなかった
  1214. 月出里: 誰かに期待して、依存して生きるより ひとりで生きていく方が大事って思ってた
  1215. 月出里: このときのわたしも まだ、心のどこかでそう思っていたから
  1216. 月出里: きっとその想いが 固有魔法にも乗っかって…
  1217. 結果、私のあの人への 強い想いが失われて…
  1218. すっかり依存しなくなったと…
  1219. ヨヅル: …そう、申しております ただ話を聞く限り
  1220. ヨヅル: その方への想いに限らず 他人への期待といった想いが
  1221. ヨヅル: 切り替わって無くなったという 可能性もありますね…
  1222. 月出里: ふむ…
  1223. そうなんですか… 他人に期待しなくなったのは
  1224. 自分が強くなった結果だと 思っていたんですが…
  1225. そっか…あなたの魔法が 切り替えさせてたんですね…
  1226. ただ、それが 私にあの魔女を守らせてた…?
  1227. それってちょっと おかしくありませんか…?
  1228. ヨヅル: 私もそれが疑問でした
  1229. ヨヅル: その“他人”へ期待する感情が 無くなったことは理解できますが
  1230. ヨヅル: 関係のあった魔女を 守ろうとする理由がわかりません
  1231. ヨヅル: もはや感情の切り替えの領域を 超えているような気がします
  1232. ヨヅル: 魔女を守ろうとした理由は 別の原因があったのでは…?
  1233. 確かに…
  1234. リヴィア: …………いや、違うんや それも多分、月出里が原因や…
  1235. ヨヅル: なぜ…?
  1236. 月出里: …………
  1237. リヴィア: 仮に、彼氏への強い想いを弱めて 切り替えたところで
  1238. リヴィア: 別の何かに依存し始めたら それこそ厄介やで
  1239. は、放してください!
  1240. この魔女が…名前と連絡先を 知らないあの人への
  1241. 唯一の手がかりなんです!!
  1242. リヴィア: その子にとって その魔法少女は生きる希望で…
  1243. リヴィア: せやからこそ、期待して 依存したわけやけど
  1244. リヴィア: あの魔女もまた、そんな期待する 魔法少女への手がかりとして
  1245. リヴィア: 期待が生まれつつあった…
  1246. ヨヅル: まさか、二次的に… 魔女が期待の対象となった…
  1247. リヴィア: そして… 魔法で人への期待が失われて
  1248. リヴィア: 魔女への期待だけが 切り離されて残ってしもた
  1249. リヴィア: 魔女そのものには、なんの価値も ないはずだったことを知らずに
  1250. それで魔女を守り続けた…? はは…ヤバいですね、私…
  1251. 勘違いで守る必要がない魔女を 守り続けてたってことですよね…
  1252. リヴィア: あんたはなんも悪くない 仕方ないことなんや
  1253. リヴィア: 魔法というかなり歪な方法で “一次”の方の想いを失ったんや
  1254. リヴィア: 感情の中に混乱が生まれて 当然なんや
  1255. いや、でもわかんないですよ… 信じられないです…
  1256. この気持ちが…勘違い…? 魔法で歪められたもの…?
  1257. でも、あくまで全部 調整屋さんの推測なんですよね
  1258. リヴィア: そうや でも、証明する方法はある
  1259. 月出里: …………
  1260. リヴィア: 本当に月出里の魔法が かかってしまっているなら
  1261. リヴィア: 月出里があんたへの魔法を 解除できてしまう
  1262. リヴィア: それで全ての想いが返ってくる 真相は全部わかる
  1263. …………
  1264. ドドドドドドドドド!
  1265. リヴィア: ――っ!?
  1266.  
  1267. FILENAME: text_518420-10_LZJeJ.txt
  1268. リヴィア: アカン! 魔女に見つかった!
  1269. リヴィア: みんな、勝てなくてもいい! 戦って隙を作るで!
  1270. ヨヅル: はいっ!
  1271. ヨヅル: ぐぅっ!
  1272. ふたり: …………
  1273. リヴィア: (アカン、戦力の分が悪すぎる)
  1274. リヴィア: (ただでさえ私らは魔女戦が 得意じゃない)
  1275. リヴィア: (それに加えて…)
  1276. リヴィア: (この子はまだ魔女に対する 折り合いがついてへん…!)
  1277. リヴィア: (本当にこの感情が勘違いで 魔女を倒してしまっていいのか)
  1278. リヴィア: (その迷いがあるはずや)
  1279. リヴィア: (もっと厄介なのは月出里や 完全に心が折れとる…)
  1280. リヴィア: (今回のあらゆる混乱の原因が 自分にあったんや…!)
  1281. リヴィア: (落ち込むのも無理はない… けどや…)
  1282. 月出里: リヴィアさん、見くびらないで
  1283. リヴィア: なっ…!?
  1284. 月出里: 今は落ち込んでる場合じゃ ないよね…!
  1285. 月出里: 今、わたしが本当に やるべきことは…
  1286. 月出里: ふむんむむん…
  1287. 謝ってくれてるのですか…? でもですね…
  1288. …………ああ、そうですね… この感覚です…
  1289. あの人への感情も… 全部…取り戻しました…
  1290. ハッキリしました
  1291. 私にあの魔女を守る理由はない…
  1292. 全部、私のあの人への依存心が 生み出していた
  1293. 二次的な依存心でした
  1294. リヴィア: (魔法を解除した! よくやったで、月出里…!)
  1295. リヴィア: (それは自分のしでかしたことを 証明することになる行為やが…)
  1296. リヴィア: (それでもあの子の迷いは消えて 戦力は整った…!)
  1297. リヴィア: (今やれる、最善手や)
  1298. リヴィア: ヨヅル、気合いいれや…! 隙を見つけて脱出するで…!
  1299. ヨヅル: はい…!
  1300. あ、御三方 下がっていただけますでしょうか
  1301. リヴィア: へ?
  1302.  
  1303. FILENAME: text_518420-11_LZJeJ.txt
  1304. 私、とても弱い魔法少女でしたが 毎日この魔女を制御してきました
  1305. 生かさず殺さず、被害を出さず それって大変なんですよ
  1306. そういった日々の積み重ね… ではないですが…
  1307. 私、もう普通に強いんです
  1308. この魔女の弱点はここ! てやぁっ!!
  1309.  
  1310. FILENAME: text_518420-12_LZJeJ.txt
  1311. 私、もう普通に強いんです
  1312. この魔女の弱点はここ! てやぁっ!!
  1313. …………
  1314. ヨヅル: ――っ!?
  1315. リヴィア: い、いいいいい…
  1316. リヴィア: 一撃ィ~~!?
  1317. えへへ… なんかすみません
  1318. 月出里: 次の日、調整屋はお店を開いたけど やっぱりお客さんは来ない
  1319. 月出里: ということでリヴィアさんの提案で 反省会をすることになったんだ
  1320. 月出里: だいぶ重い空気の中で…
  1321. リヴィア: 今回の件、トータルして ヨヅルはどう思った?
  1322. ヨヅル: …ピュエラケアとしては 良いところがなかったですね
  1323. ヨヅル: こうして閑古鳥が鳴いているのが 何よりもの証拠かと…
  1324. 月出里: …………
  1325. リヴィア: …まあ、そうやなぁ… 忌憚のない意見に感謝や
  1326. ヨヅル: 反省会で甘いことを言っても 意味はないですからね…
  1327. リヴィア: 言葉強いな
  1328. ヨヅル: 失礼しました
  1329. ヨヅル: 何も気づけず動けなかった自分に イラ立ってるのでしょうか
  1330. リヴィア: ほうか、でもまあ まずは私の完全な任命ミスや
  1331. リヴィア: 月出里に向いてない 勧誘を押し付けてしもうた…
  1332. 月出里: それで誰も誘えなくて… 焦って魔法も使っちゃった
  1333. リヴィア: 焦るのはそれだけ責任感が あるっちゅうことや
  1334. リヴィア: そこを私が見誤って 追い詰めてもうた…
  1335. リヴィア: 月出里をあの魔女の調査から 遠ざけるための方便やったけど
  1336. リヴィア: 魔女の調査の解決にこそ 月出里が必要やった
  1337. リヴィア: 2択を完全に間違えた トータル、私の任命責任や
  1338. 月出里: でも、焦ったからって 安易に魔法を使ったのも悪いよ
  1339. 月出里: 魔法を受けた子たち みんな怒ってた…
  1340. 月出里: 考えたらそうだよね 好きでもないことを
  1341. 月出里: 無理やり好きってことに 変えられちゃうんだもんね…
  1342. ヨヅル: …………
  1343. リヴィア: …………
  1344. 月出里: お客さん、今日も来るわけない 全部わたしのせいで…
  1345. 月出里: しかもあの魔女についての 騒ぎだって…
  1346. 月出里: わたしが解決したみたいな 言い方をしてくれてるけど
  1347. 月出里: そもそも おかしなことになったのは
  1348. 月出里: 全部、過去のわたしが 原因だったわけだし…
  1349. ヨヅル: …マイナスをゼロにしただけ… …とも言えてしまいますね
  1350. 月出里: 刺さる~…
  1351. 月出里: でもほんと、そうだよね いいとこなしだった…
  1352. ヨヅル: はい… 何もできませんでした…
  1353. リヴィア: (そうとう落ち込んどるけど…)
  1354. リヴィア: (ここで「そんなことない」って とりあえずで元気出さすのは)
  1355. リヴィア: (今後、成長する上で よくないことなんやろな…)
  1356. リヴィア: よし、月出里
  1357. リヴィア: そんだけ自分のダメだったとこを 言えたなら十分や
  1358. リヴィア: そんで今後はどうするつもりや? 例えば固有魔法とか…
  1359. 月出里: …………やっぱり この魔法のことは好きになれない
  1360. リヴィア: …………
  1361. 月出里: だから、よく考えてから使う
  1362. リヴィア: ほうか、よかった
  1363. リヴィア: もし「二度と使わない」って 答えたら叱るとこやった
  1364. 月出里: 人を試す上司やだなぁ…
  1365. リヴィア: なんや~いっちょ前に 社会人ぶってからに~うりうり
  1366. 月出里: えへへ
  1367. リヴィア: あ、ヨヅル ひとつだけ良いことあったで
  1368. ヨヅル: お、反省会冒頭の反論ですか 受けてたちます
  1369. リヴィア: 月出里が逃げんかった
  1370. リヴィア: どんなに不貞腐れても逃げんくて ちゃんと解決に結びついた
  1371. リヴィア: 原因とか結果はともかくとして そこだけは絶対良いことのはずや
  1372. ヨヅル: …はい、そうですね 論破されます
  1373. コンコン
  1374. リヴィア: …? どうぞー
  1375. おじゃましまーす 調整を受けに来ました~
  1376. みんな: ――っ!?
  1377. 月出里: ふ、ふんむふ…?
  1378. ヨヅル: 月出里がどうして、と驚いてます 私も驚いてます
  1379. リヴィア: ええんか…? 恨んだり…怖くないんか…?
  1380. リヴィア: 言ってしまえばずっと感情を 歪まさせられてたんやで…?
  1381. リヴィア: ある意味であんたが今回の 1番の被害者やろうに…
  1382. ひ、被害者だなんて とんでもないっ!
  1383. むしろ救われたんですよ
  1384. 月出里: ふむ…?
  1385. あの魔法を受けるまでの私は 自分のことを
  1386. 「ひとりでは生きていけない」と 思い込んでました
  1387. 勝手に自分の可能性を見限って 誰かに依存し続けてたんです
  1388. でも魔法を受けて強制的にでも ひとりで生きていくことになって
  1389. それで生きてこれちゃったんです
  1390. やってみなきゃわからないことを やらずにいた私に
  1391. やってみさせてくれたのが この魔法なんです
  1392. だからね、えーと…
  1393. ヨヅルの声: 月出里、と言います
  1394. あ、月出里ちゃんの魔法はね… 苦手なことに立ち向かわせて…
  1395. 自分の可能性に気づかせてくれる 素敵な魔法なんですよ
  1396. 月出里: ふむ…!
  1397. 月出里: リヴィアさん… わたし、この魔法のこと
  1398. 月出里: 好きに…なれるかも
  1399. リヴィア: …よかったな
  1400. リヴィア: さ、月出里、この町最初の常連は あんたが調整してやり
  1401. 月出里: うん!
  1402. 月出里ちゃん、って言うんですね お名前
  1403. 月出里: ―月出里― ふむ!
  1404. …どうして私はあの時… こんな簡単なことすら 聞けなかったのでしょうか…
  1405. 月出里: ―月出里― ふむ…?
  1406. いえ、こちらの話です
  1407. あ、そうだ まだ私の方が名乗ってませんでしたね
  1408. 私の名前は…
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