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Kuro [Light 3*] MSS JP Text

Feb 10th, 2023
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  1. FILENAME: text_310471-1.txt
  2. 魔女を倒して、人々を守ること
  3. それは、ひとつの願いと引き換えに課された 私たち魔法少女の使命
  4. そこに、いまさら文句を言うつもりはないですが ご存知の通り、魔女って怖くて強いので 魔法少女として生きるのって大変なんですよね
  5. それでも、弱かった私が生きているのは いろいろな出来事と出会いのおかげなんです
  6. そのうちのひとつは…そうですね “そっくりさん事件”とでも名づけておきますか
  7. 事件が起きたのは 私が今よりも弱くて “ひとりで生きること”に執着していた頃でした
  8. …ここら辺で魔女の 反応があった気がしますが…
  9. …うん、気のせいですね さて、帰ってSNSの周回を…
  10. …って、うわぁ!? ここ…魔女の結界!?
  11. …………
  12. な、なんとかするしかない… ですよね…!
  13. あれ、でも 肝心の魔女はどこに…?
  14. 完全に迷子です…
  15. 使い魔に遭遇せず いられたことはラッキーですが…
  16. 気づけば景色も 変わってきちゃいましたし…
  17. このまま出られなかったら どうなっちゃうんでしょう…
  18. 「――――!!」
  19. わわっ!?
  20. この音は、あっちから…?
  21. まままま魔女! ついに遭遇してしまいました!
  22. …って、あれ…?
  23. …なんだか弱ってる? これなら私でもなんとか…
  24. 幸い、魔女はまだ私に 気づいていないみたいですし…
  25. 今のうち…!
  26. ええっ、倒れないんですかあ!?
  27. それなら、ダメ押しの一発で!
  28. …ふぅ、はぁ… なんとか倒せました…
  29. グリーフシードは 手に入れられたので
  30. これでもう、今日は ノルマクリアということで…
  31. あの…!
  32. ――っ!?
  33. (もしかして結界に 他の魔法少女が…!?)
  34. (私、他の方の 担当地域に侵入を…!?)
  35. いや、そのすみません! 獲物を横取りするつもりはなく…
  36. グリーフシードはお渡しするので どうか…許してください!
  37. 助けてくれてありがとう
  38. …へっ? 私が、助けた…?
  39. はい、あなたが私を 助けてくれたんですよね?
  40. 直接、姿は見えなかったけど…
  41. (もしかして私が倒した魔女に やられそうになっていたとか?)
  42. (…それ、倒したというより いいとこどりしただけでは…!)
  43. (ここは、なんかいい感じに 誤魔化さないと…)
  44. いやぁ、その!はは たまたまです!たまたま!
  45. また、助けてもらえるなんて びっくりしました…!
  46. え、また…? 多分それは人違…
  47. あの、お願いがあるんです!
  48. へぁ、はい…!
  49. 私と、チームを 組んでくれませんか?
  50. え…
  51. 私、魔法少女になりたてなので まだ仲間とかいなくて…
  52. 今日だって助けてもらわなければ どうなっていたか…
  53. でも、あなたみたいに 強い人が一緒なら…!
  54. あ、あの、勘違いですよ! 私、すっごく弱いので!
  55. 誰かを助ける余裕なんて 本当、全然ないですし
  56. 私なんかと組むくらいなら ひとりの方がマシというか!
  57. …そう、ですか…
  58. あぁ、いやその決して あなたが嫌とかではなくって…
  59. お誘い自体は、とっても 嬉しいことなんでしょうけど
  60. …その、私 “ひとりで生きる”って…
  61. そう決めてるんです
  62. 誰にも頼らず、協力せず ひとりで生きていくと
  63. …どうしてですか?
  64. えっと…それは…
  65. 弱い私じゃ迷惑ですし 社交性とかあまりないので…へへ
  66. そ、それじゃあ 私はここで失礼しますね!
  67. お詫びにグリーフシードは お渡しするので…
  68. その、お元気で!
  69. …はぁ 今日はいろいろありました…
  70. 明日からは、何も 起きないといいですけど…
  71. しかし、“そっくりさん事件”は この1回で終わらなかったんですよね
  72.  
  73. FILENAME: text_310471-2.txt
  74. 人違いをされること自体は 特徴の少ない私には何度か経験のあることでした
  75. ただ、そうそうよく起きることでは ないと思っていたのですが…
  76. 「前にも助けてくれましたよね」 そんな言葉から始まる人違いは その後も、何度か続いていったんです
  77. 前にも助けてくれましたよね! その、何かお礼をしたくって…!
  78. わわわわわ 人違いだと思います…!
  79. ひぃ…ふぅ…
  80. こう…何度も人違いを されることってあるんでしょうか
  81. もしかして、私の そっくりさんがいるとか…?
  82. …だとしても、そっくりさん 人助けしすぎでは!?
  83. …って、こんなところに 魔女の結界が…
  84. ぼーっと歩いていたせいで 全く気づきませんでした…
  85. 周りに魔法少女は いないようですね
  86. そっくりさんも 頑張っているようですし
  87. 私だって、負けてられませんね!
  88. はひぃ…かっこつけてみたけど 無理なものは無理でした…
  89. ソウルジェムも濁ってきたし…
  90. これはまずいのでは…!?
  91. ???の声: いっけーっ!
  92. ――っ!?
  93. (この攻撃… いったいどこから…!)
  94. いろは: 大丈夫ですか!?
  95. いろは: えっと、とりあえず これ使ってください!
  96. え、いや私は他人の力を 借りるわけには…!
  97. (問答無用…!?)
  98. いろは: …なんとか倒せましたね 大丈夫でしたか?
  99. その…ありがとうございました なんだか助けてもらっちゃって…
  100. いろは: あ、ううん全然!
  101. …あれ、もしかしてどこかで 会ったことあります…?
  102. いろは: へっ?
  103. ああ違うんですナンパとか そういうのじゃなくて
  104. 学校で見かけたことが あるかもって思って…
  105. (掃除を押しつけられていたのを 見たことがあるような…)
  106. いろは: 確かにすれ違ってるかも…
  107. いろは: あなたが着てる制服 私も転校前に着てたんです
  108. やっぱり同じ学校でしたか
  109. でも、転校したんですか?
  110. (…そういえば、制服が違う)
  111. いろは: はい、でも寮生活みたいなもので 実家はこっちにあって
  112. いろは: それで、今はちょうど 帰ってきていたところなんです
  113. そういうことだったんですね
  114. いろは: だから、魔女と戦うときも 縄張り争いにならないようにって
  115. いろは: できるだけ他の魔法少女の お手伝いに留めるようにしていて
  116. いろは: …あ、もしかして私 あなたの担当地域に…!
  117. ああ、いえ それは気にしないで大丈夫です
  118. …それより今、お手伝いって 言ってましたけど
  119. もしかして、最近 何人か魔法少女を助けました?
  120. いろは: 助けたって程じゃないけど… 一緒に魔女は倒したかも?
  121. …………
  122. …なんだか私たちって 見た目、ちょっと似てますよね
  123. ほら、この姿…
  124. いろは: ほんとだ!
  125. いろは: フードもついてて似てるかも!
  126. そっくりさんの正体って…
  127. いろは: …?
  128. いろは: ご、ごめんなさい! 迷惑をかけちゃったみたいで
  129. ああそんな!
  130. それより、あなたも 私に間違われていたなんて…
  131. こちらこそご迷惑を…
  132. …………
  133. ただでさえ、フード付きの 魔法少女は勘違いされるのに…
  134. いろは: 勘違い…?
  135. 神浜市にフード付きローブの 怪しい集団がいるじゃないですか
  136. 私もそれで 何度か勘違いされまして…
  137. いろは: あ、あぁ…それは…すみません
  138. (え、あれ、反応が…)
  139. ご、ごめんなさい…!
  140. もしかしてあなたも その集団に入ってたとか…
  141. いろは: そうじゃないんですけど…その…
  142. すみません、ずかずかと 聞くようなことじゃないですね!
  143. そ、それにそれに…あなたも 私みたいな陰キャと
  144. 勘違いされるなんて とんだ災難ですよね
  145. ご迷惑をかけてすみません!
  146. いろは: それは、私もなので…!
  147. …………
  148. (気まずくなっちゃった…!)
  149.  
  150. FILENAME: text_310471-3.txt
  151. 話題のチョイスが悪かったようで 場はどんどん耐えられない空気になりまして
  152. 私は、これ以上空気がおかしくなる前に…と 一刻も早くその場を去ろうとしていました
  153. えっと…それじゃあ 私はここら辺で…
  154. いろは: あの聞きたいことが あるんですけど…
  155. …?
  156. いろは: あなたは、いつもひとりで 魔女退治を…?
  157. …ええ、まぁ
  158. まだ弱いので 魔女退治は特訓中ですが…
  159. いろは: …それなら、あなたの特訓を お手伝いさせてください
  160. いろは: その、人違いで 迷惑をかけちゃったから…
  161. 気持ちはありがたいですけど 気にしなくて大丈夫です!
  162. 私は、誰にも頼らず ひとりで生きると決めてるんです
  163. …まぁ、まだ全然 弱いんですけどね…へへ
  164. ただ、今は独学で特訓しつつ 魔女退治に励んでいるので
  165. 少しずつ成果は出ているかなって
  166. だから、ありがたい話ですが 気遣いは不要です
  167. いろは: そうなんですね…
  168. (う…こうしょんぼりされると 心が痛みますけど…)
  169. …では、私はこれで
  170. いろは: あ、あの…! 私、環いろはって言います!
  171. …?
  172. いろは: えっと、連絡先だけ 交換しませんか…!
  173. いろは: 何か困ったことがあれば いつでも言ってください!
  174. えっと…あ、はい…
  175. 環さん…思っていたより 押しが強かったな…
  176. 前に学校で見かけたときは あんなじゃなかったような…
  177. あの…もしかして 前に助けてくれた方ですよね!
  178. …その、私に魔法少女としての 生き方を教え…
  179. ひえぇ! 人違いなんですってば…!
  180. ~~♪~~♪
  181. え、あ…環さんから…?
  182. あぁ、ちょうどよかったです また人違いをされていて…!
  183. いろは: え、そっちもですか!?
  184. そっちも…ってことは
  185. …はぁ まだ近くにいますよね
  186. それなら、合流して 説明しちゃいましょう
  187. …なんとか誤解は 解けたみたいですね
  188. いろは: はい、すみません また迷惑かけちゃって
  189. それは、あの お互いさまではあるんですけど
  190. …ただ、今後も同じように 人違いされると困りますね
  191. 特に私の場合は 他の方を手伝う余裕はないので…
  192. いろは: うーん…それならっ!
  193. いろは: 私が宝崎市から出るまでの間 一緒に行動しませんか?
  194. いろは: そうしたら、私たちが 別人だってわかるかなと
  195. なるほど…確かに それはいい考えかもしれません
  196. いろは: せっかくなので、その中で 魔女退治の特訓もできたら…
  197. あれ、もしかして そっちが目的だったり…?
  198. いろは: ああ、いえそんな! あはは
  199. (…でもまあ、背に腹は 代えられないですもんね)
  200. …じゃあ、少しの間ですが よろしくお願いします
  201. あ、えっと…あくまで 誤解を解くために…ですけど
  202. いろは: はいっ! じゃあさっそく魔女退治に…
  203. ぐぅ~~~~…
  204. いろは: あっ…ごめんなさい お腹が空いちゃったみたいで
  205. たしかに、私も 疲れたせいかぺこぺこです
  206. いろは: じゃあ…ご飯でも 食べていきますか…?
  207.  
  208. FILENAME: text_310471-4.txt
  209. ざわざわざわ…
  210. (環さんと、ご飯を 食べに来たのはいいものの…)
  211. いろは: あ、ティッシュ使いますか? ケチャップついちゃってますよ
  212. え、ああ ありがとうございます
  213. (なんか私…さっきから お世話をされているような)
  214. …環さん、面倒見がいいって よく言われませんか?
  215. いろは: え? そうですか?
  216. はい、出会ったときも 見ず知らずの私を助けてくれたし
  217. 他の魔法少女のことも たくさん助けてたじゃないですか
  218. いろは: そんな、助けたってほどじゃ…
  219. どうして、知らない人のこと 助けようって思うんですか?
  220. あ、別に環さんのことを 否定しているわけじゃなくて
  221. 単純に気になるっていうか…
  222. 私は、生きるだけで精一杯で そんな余裕がないので…
  223. いろは: うーん…
  224. いろは: 私も、同じように 誰かに助けられてきたからかな
  225. いろは: 「最初は、私も魔法少女として すっごく弱くて何も知らなかったけど みんなに助けてもらったり、優しさをもらって そうして、今の私がいると思うから…」
  226. いろは: だから私も、同じように 誰かを助けられたらなって
  227. …いったい、どんな環境で どのように育ったら
  228. そんな聖人君子みたいな 模範解答が…?
  229. いろは: 聖人君子だなんて 大げさですよ…!
  230. いろは: でも…もし、そう見えるのなら
  231. いろは: それは、私自身が 周りの人に恵まれたからかな
  232. いろは: 優しい両親に育ててもらって 可愛い妹もいて…
  233. いろは: それに今は、家族同然の仲間と 楽しく過ごしているから…
  234. いろは: だけど、それだけじゃないかも
  235. いろは: 魔法少女になってできた友だちも たくさんいて…
  236. いろは: みんなが 私に優しさをくれたから
  237. …やっぱり 仲間っていいものですか?
  238. いろは: うん、もちろん
  239. いろは: ぶつかりあうこともあるけど みんなで支え合えるからね!
  240. そうですか…
  241. いろは: あ、でもだからって仲間を 作らなきゃいけないってことも
  242. いろは: 多分、ないんだと思う
  243. いろは: どうやって生きるかの選択は きっと人それぞれだから…
  244. いろは: でも、もしひとりで生きよう って思ったきっかけが
  245. いろは: マイナスのものなら 相談くらいは乗れるかな、なんて
  246. …………
  247. ~~♪~~♪
  248. いろは: あ、やちよさんから電話… ちょっと出てきますね…!
  249. …………
  250. ひとりで生きようと思った きっかけ…ですか
  251. いろいろあった気はするけど なんだったっけ
  252. (私は、どんな環境で どんな風に育って…)
  253. (どうして、ひとりで生きると 決めたんだったっけ…)
  254. ひとりで生きること
  255. それ自体は固く決意していましたが どうしてそうなったのか… 思えば、あまり考えたことがなかったんです
  256. だから私は ひとりで生きると決めた理由を知るために 幼い頃を思い返すことにしました
  257. 私、弱いので…
  258.  
  259. FILENAME: text_310472-1.txt
  260. どうして私は ひとりで生きることを決めたのか
  261. その理由を知るために 私は、過去のことを思い返していました
  262. 私が育ったのは ごくごく普通の一般家庭でした
  263. あら、テストの結果が よくなかったの?
  264. 算数は苦手だったもんな それなら仕方ないよ
  265. 得意不得意くらいあるんだから 気にしなくても大丈夫!
  266. ええ、きっとそれが あなたの個性なのよ
  267. 幼い頃から、私は苦手が多い子どもでしたが 優しい両親は、私が失敗しても叱らず それが私の個性だと言って育ててくれました
  268. 決して、悪い環境ではありませんでしたし むしろ恵まれていたと思います
  269. ただ… 苦手なものは仕方ないから、やらない 得意なことも、あまりない…
  270. 個性を認められて育った私はいつの間にか 没個性で、何かにそそぐ情熱もないような そんな人間になっていたんですよね
  271. 自分で頑張るということが苦手だったので 幼い頃は、なんとなく生きていました それで、許される環境だったので
  272. ただ、それはいつまでも続きませんでした
  273. 環境がガラリと変わったのは 中学に進学してからでしょうか
  274. 両親の仕事の関係で、私は引っ越し 小学校の知り合いがいない中学校に進みました
  275. てかマジ掃除だるくない? サボっちゃう?
  276. えっと…私は…その…
  277. …なんか、ノリ悪いよねー いい子なのは別にいいけど
  278. 会話にもあんま入ってこないし 黙ってられると…ね?
  279. ちょっとはしゃべったら? もしかして話すの苦手?
  280. あ、えと…頑張ります…!
  281. そう?
  282. 中学校は、小学校とは雰囲気が違っていて そのままの私では馴染めなかったんです
  283. 少し前までは かけっこをするだけで仲良くなれたはずなのに 中学生になって、みんなが大人になって…
  284. 友だちがひとりもいない私は 自分自身を変える必要があったんです…
  285. 中学校は、もう幼い頃のように なんとなく生きているだけでは 生き抜けない世界だったんですよね
  286. だから 上手く喋れるように、話題についていけるように みんなに置いていかれないように…
  287. 私は、取り繕って生きることを覚えました
  288. 話題のドラマを見て…それから SNSのチェックと投稿…
  289. あ、あとは笑顔… 印象の良い笑顔で検索…と
  290. でも、まぁ…お察しの通り あんまり上手くはいかなくって
  291. どうにか孤立しないように生きていましたけど なんとなく浮いてるというか…
  292. 明らかに避けられることはなくても ふたり一組になるときは少し困るというか… まあ、そういう感じでしたね
  293. でも、人と関わるのが下手なだけで 人が嫌いとかではなかったはずなので
  294. これは「ひとりで生きる」ことの 直接の理由ではなさそうでした
  295. そこで、もっと別のところに ひとりで生きると決めた理由が ありそうだと思った当時の私は
  296. 取り繕うことを覚えた後の 苦い思い出を振り返ることにしました
  297. ねえ、宿題やってきた? 写させてほしいんだけど…
  298. ああはい、もちろん
  299. 一応、確認しましたけど 間違ってたらごめんなさい…!
  300. 大丈夫大丈夫~ いやー、マジいつも感謝だわ!
  301. へへ…お役に立てたなら 何よりです
  302. てかぁ、日直の仕事あんだけど ウチ、放課後は用事がさぁ
  303. それなら、私がやりますよ どうせヒマなので…へへ
  304. ガチ?超たすかるわぁ いつもありがとねぇ
  305. ねー、放課後のカラオケ 行けるんだよねー?
  306. あっは、ちょっとさぁ タイミング悪いんだけどぉ~
  307. (カラオケ…も まあ立派な用事ですよね)
  308. …ねぇ、ちょっと
  309. へあ、はい なんでしょう?
  310. 最近、あいつらに パシられてない?
  311. え…いやいや そんなんじゃないですよ
  312. 私は、みなさんみたいに 放課後の用事もないですし
  313. それなら、ヒマな私がした方が いいかなーと思いまして
  314. あ、あなた方も 宿題が終わってないなら…
  315. …いいよ、別に ちゃんと自分でやるから
  316. …あのさ、嫌なら嫌って ちゃんと言った方がいいよ
  317. 黙ってると、ああいうのって どんどんつけあがるから
  318. へ…あ、はい… でも大丈夫ですよ、へへ
  319. 取り繕って人にすり寄っていた頃 一緒にいた人たちって
  320. 思い返せば、私をパシリにしていたり 引き立て役にしていたり まあまあいいように利用してたんですよね
  321. いま考えるとあれってイジメだったのでは? ということも結構ありますけど 当時の私は必死で、全然気づけませんでした
  322. 「もしかしたら、この誰かに利用された心の傷が ひとりで生きようと思う 最初のきっかけだったかもしれない」
  323. 昔を振り返ることで あの時の私はようやく気づいたんです
  324. 答えが見つかりそうになってきた私は 魔法少女になってからも 似たようなことがあったのを思い出しました
  325. いやあ、いま思い返しても 苦くてつらい記憶ですね…
  326.  
  327. FILENAME: text_310472-2.txt
  328. 魔法少女になってから 実は私、頑張って何度か チームに入ったことがあったんです
  329. …というか、最初は優しい人が誘ってくれたので チームで活動ができていたんですけど…
  330. …こんな感じの陣形で 戦おうと思うけどどうかな?
  331. …私、こんな責任重大な ポジションで大丈夫ですか?
  332. ああ、やりたくないわけではなく ただ力不足ではないかと思って…
  333. 大丈夫だよ、自信持って
  334. う…はい
  335. ねー、このあとみんなで ご飯行こうよー
  336. …まぁ、話し合いも終わったし みんなで行こっか
  337. いい店知らないー?
  338. じゃあ私、調べておきますね
  339. …おー、さんきゅー
  340. 必死に取り繕って 少しでも使える仲間になれるように 私なりに頑張ってはいたんですけど…
  341. どれだけ日常で役に立とうと頑張っても 魔女退治で役に立たなければ 魔法少女のチームとしてはお荷物なんですよね
  342. そっち行ったよ!
  343. は、はいぃ…!
  344. え、えい!
  345. わ、わわ…どうしよ…
  346. やぁーっ!
  347. ご、ごめんなさ…
  348. いいから、下がっててー こっちは私が片づけるから
  349. は、はい…
  350. あの…私…
  351. その子、外した方が いいんじゃないのー?
  352. えっと…次からは、陣形 ちょっと変えようか
  353. ごめんなさい…
  354. ううん、私の采配ミスでも あるから気にしないで
  355. …………
  356. そうして、いたたまれなくなった私は 追い出される前に…と チームから抜けることにしました
  357. そんなことを繰り返していくうちに 何度か、ここならやっていけるかも と思えるようなチームもありましたが…
  358. 私が、あなたを おとりにしたって言いたいの?
  359. いや…でも、はは そう見えちゃったというか…
  360. 私が助けにいかなかったら やられてた気もするけど
  361. え、えっと、それは そもそも…
  362. …別に、チームを抜けたいなら 勝手にして構わないけど
  363. あなた、弱いのに ひとりで生きていけるの?
  364. それ…は…
  365. あの頃の私は、ひとりで生きることより 利用されてでも人といることを選んでいました
  366. だから、失敗を重ねるごとに どんどん取り繕うようになっていって 取り繕うほどに利用されやすくなっていって… という繰り返しでした
  367. そんな扱いを何度も受けたことは 今でも苦くてつらい思い出です
  368. ああ、でも勘違いしないでください あの人たちを恨んだりはしていないんです
  369. いや、まぁ…急いでいる日に限って 全部信号が赤続きになってくれればいいのに… くらいの気持ちすらないと言えば ウソになりますが…はは
  370. 実際、目的はどうであれ 仲間にしてくれたから私は救われて 今も生きている だから、感謝はしているんです
  371. …それに、本を正せば 実力がない私が悪いってわかっていたので 私にとって本当に苦しかったのは 環境ではなく自分自身のことだったんです
  372. 取り繕って生き続けることの方が 苦しかった
  373. 私は自分のせいで自分の素を失い その上、利用されるような人になっていたんです
  374. そんな、自虐的な過去を振り返った私は ある答えにたどりついたんです
  375.  
  376. FILENAME: text_310472-3.txt
  377. 私は自分のせいで自分の素を失い その上、利用されるような人になっていたんです
  378. そんな、自虐的な過去を振り返った私は ある答えにたどりついたんです
  379. (今まで、過去のことを あまり振り返らなかったけど)
  380. (これは、確かに 目を背けたくなる日々ですね)
  381. …………
  382. (取り繕って生きる中で 私は自分の素が見えなくなった)
  383. (あれだけ頑張って得たのものは 曖昧になってしまった自分と)
  384. (歪な人間関係…)
  385. (…そこまで努力してもダメなら 最初からひとりの方がいい)
  386. (その方が傷つかないし 誰にも迷惑をかけない…)
  387. (ああ、そっか…)
  388. (こうした過去の経験が 私がひとりでいる理由…)
  389. (過去のすべてが 今の私を形作ってたんですね)
  390. (他人に期待して依存せず ひとりで生きる私を…)
  391. …………
  392. (あれ、でもなんだか 他にも理由があったような…)
  393. いろは: すみません お待たせしました…!
  394. あ、環さん 電話は大丈夫でした?
  395. いろは: はい、どうやら宝崎市で セールをやっているらしく
  396. いろは: おつかいを頼まれまして…
  397. ふふ、なんだか本当に 家族みたいです
  398. …仲間って、いいですね
  399. いろは: えっと、じゃあ…
  400. あ、でも、私はやっぱり ひとりで生きます
  401. いろは: そっか…
  402. 考えてみたんです どうして今の自分になったのか
  403. どうして ひとりで生きることにしたのか…
  404. 明確にこの出来事が… ってことではなかったみたいで
  405. いろは: …………
  406. 私、環さんほどではないですが 環境にも人にも恵まれていました
  407. だけど、どうやら環境以前に 私は生きるのが下手みたいで
  408. どうにか取り繕って 頑張ってみたんですけど、駄目で
  409. 周りの人に迷惑をかけたり 利用されてしまったり…
  410. 思い出すのも苦しいことが いくつもありました
  411. でも、原因は すべて弱い私なんです
  412. ひとりが嫌だからと 取り繕うから迷惑をかけるし
  413. 好かれようと無理をするから いいように使われてしまう
  414. …だから、私は ひとりで生きると決めたんです
  415. ひとりでいることが 自分と周りのためだから
  416. …あー、いえ…大体は 自分を守るためですね
  417. だって、期待するのは怖いんです
  418. もう、素がわからなくなった 自分の本音は曖昧ですけど
  419. 期待して、落胆して… 裏切られた…なんて思いたくない
  420. だから私は、傷つかないために ひとりで生きると決めたんです
  421. いろは: …そう、なんですね
  422. …仲間は素敵だなって思います 本当に、いいものだなあって
  423. でも、それは 私とは縁遠いものなんです
  424.  
  425. FILENAME: text_310472-4.txt
  426. いろは: ひとりで生きていく… その決意は固いんですね
  427. はい
  428. いろは: そっか…それならやっぱり 意思は否定できない
  429. いろは: だけど私、思うんです
  430. いろは: あなたにもきっと、いつか 信じられる人が
  431. いろは: 期待してもいいかなって 思える人が現れる…って
  432. いろは: 無責任な発言だっていうのは わかってるんだけど
  433. いろは: 周りも、自分自身も… 人って変わるものだから
  434. …………
  435. …確かに、環さんって 昔と印象が変わりましたよね
  436. いろは: え、私ですか…?
  437. 掃除を押しつけられてたときは もっと弱々しく見えたというか
  438. なんとなく、意思が 見えなかったっていうか…
  439. でも、今の環さんは どちらかというと我が強くて
  440. 見た目の割には頑固…というか
  441. あ!その、悪く聴こえたら ごめんなさい…!
  442. ただ、うん…人は変わるって それはわかるかもしれないです
  443. いろは: そっか…確かに私 結構変わったかも…
  444. いろは: その、いろいろあったし たくさんの人に出会ったから
  445. いろいろ…って 何があったんですか?
  446. あ、その… 差し支えなければ…ですけど
  447. いろは: えっと…
  448. いろは: ちょっと長くなっちゃうんだけど 大丈夫ですか…?
  449. とんでもないことに なってしまいました
  450.  
  451. FILENAME: text_310473-1.txt
  452. 彼女から聞いた話は なんというか…波乱万丈でした
  453. いろいろと省略しているところや あえて話していないこともありそうでしたが
  454. それでも、その話を聞いたときに やっぱり私とは縁遠い話だって思ったんです
  455. なんだか、ものすごい 経験をしてきたんですね
  456. 私の人生には、そんな劇的なこと 一生、起こらなそうですけど
  457. いろは: えっと…うーん 確かに、いろいろあったけど
  458. いろは: 私を変えたのは その出来事だけじゃなくて
  459. いろは: どっちかと言うと 出会いだったって話をしたくて
  460. 出会い…ですか?
  461. いろは: はい
  462. いろは: たくさんの困難を乗り越えて 今の私がいるのはみんなのおかげ
  463. いろは: だから、いつかあなたにも 新しい出会いがあったとき
  464. いろは: ひとりで生きるからって 拒むのはもったいないなって…
  465. いろは: えっと、だから…今の選択を 否定するつもりはないんだけどね
  466. いろは: 未来まで、決めなくても いいんじゃないかな…なんて
  467. 未来…
  468. いろは: …なんか、説教臭いですよね 言葉にするのって難しいな…
  469. …ちょっと、言いたいことは わかったような気もします
  470. 未来がどうなるかは 確かにわかりませんからね…
  471. 当分は、ひとりの予定ですけど 未来のことは保留にしてみます
  472. いろは: はい…っ!
  473. (…環さんって なんだか不思議な人ですね)
  474. (最初は、少しだけ 私と近い人かと思ったけど)
  475. (多分、全然違う)
  476. (でも、だからこそ この人といたら私は…)
  477. (何かが 変わったりするのかもしれない)
  478. (ちょっと、打算的な考えだから 気が引けるところはあるけど)
  479. (環さんから、何か 学べることがあるのなら)
  480. (少しだけ、身を任せても いいのかもしれない)
  481. (それに…)
  482. いろは: あなたにもきっと、いつか 信じられる人が
  483. いろは: 期待してもいいかなって 思える人が現れる…って
  484. (私にもいつか そんな出会いがあるなら…)
  485. (それは 今なのかもしれないですし…)
  486. いろは: えっと、じゃあさっそくですけど
  487. いろは: このあと、魔女退治に 行きませんか?
  488. いろは: 一緒に特訓…とか
  489. はい、そうですね よろしくお願いします!
  490.  
  491. FILENAME: text_310473-2.txt
  492. いろは: はっ!
  493. いろは: そっちに行きました!
  494. いろは: カバーするので 攻撃してください!
  495. は、はいっ!
  496. やぁ!
  497. ぜ、全然効いてないみたいです! どうしましょう…!
  498. いろはの声: じゃあ一旦退いて 体勢を整えましょう!
  499. わ、わかりました!
  500. はぁ…すみません 弱いですね、私…
  501. いろは: そんなことないです!
  502. いろは: …あと、もしかしたら
  503. いろは: 遠距離攻撃の方が 合ってるのかもしれないです
  504. え…そうですか?
  505. いろは: はい、近距離のときは ちょっと焦って見えたんですけど
  506. いろは: 遠距離のときは落ち着いて 狙いを定められていたので
  507. (すごい…細かいところまで 見てくれていたんですね…)
  508. いろは: 今後もソロでやっていくのなら 無理に突っ込むよりも
  509. いろは: 遠くから攻撃ができた方が 危険も少ないと思うし…
  510. (押しが強いと思っていたけど)
  511. (ちゃんと私の 意思も尊重してくれてる…)
  512. いろは: じゃあ、次は私が前衛へ行くので 後ろからカバーお願いできますか
  513. はい!
  514. いろは: やっ!
  515. いろは: 今です!
  516. いっけーっ!
  517. いろは: いい感じです!
  518. いろは: 最後! たたみかけましょう!
  519. はい!
  520. (なんか、すごい… いつもより戦いやすい…)
  521. (人と一緒だから…?)
  522. (ううん、チームで戦ったことは 何度もあるはず…)
  523. (でも、そのどれよりも 今が1番動きやすい…!)
  524. (もしかして… 相手が環さんだから…?)
  525. (あっちは環さんが 攻撃してるから大丈夫そう…)
  526. (私は後ろから回って…)
  527. いろはの声: そっち行きました! 距離を…!
  528. ――っ!?
  529. あ…あ…
  530. (今、私…気を抜いて…)
  531. (ああ…終わった…)
  532. ――っ!?
  533. (まずい、このままじゃ 環さんまで一緒に…!)
  534. いろは: たぁっ!
  535. いろは: だ、大丈夫でした!?
  536. (…一撃で…?)
  537. (私よりは強いと思っていたけど 環さんってそんなに…)
  538. いろは: すみません、助けに行くのが 遅くなっちゃって
  539. いろは: 怖かったですよね…
  540. いろは: 私が一緒に特訓したいとか 言っておきながら
  541. いろは: 全然、上手く立ち回れなくて…
  542. (あれで、上手く 立ち回れてない…?)
  543. (あ、そっか… 私、勘違いしてたんですね)
  544. そこで私は、気づいたんです
  545. 昔の私も、そのときの私も 仲間ができればなんとかなると 心のどこかで思っていたってことに
  546. けれど、仲間を作ることは 弱いままで良い言い訳にはならない
  547. 最初から私は、わかっていたはずなんです 仲間ができたって自分が強くなければ そこに意味はないってこと
  548. 私は、仲間を作るより先に 自分自身が強くなる必要があったんです
  549. そして、それは誰かに期待せず 頼らず生きないといけないということ
  550. 結局は、そこに帰ってくるんです
  551. …私は、傷つかないために ひとりで生きるんじゃなくて
  552. 自分の力で生きられるように ならなくちゃいけなかったんです
  553.  
  554. FILENAME: text_310473-3.txt
  555. (私が期待するのを やめた理由って)
  556. (期待することで傷ついたり 人に迷惑をかけないためだって)
  557. (そう、答えを 出したはずだったけど)
  558. (本当の理由は それだけじゃなかったのかも)
  559. いろは: …?
  560. (確かに、環さんと一緒に 戦うのはやりやすかったし)
  561. (とても心強くて 仲間っていいなと思えた)
  562. (きっと、ひとりじゃ 魔女を倒せなかった)
  563. (でも戦っているときに感じた 動きやすさは)
  564. (単純に、環さんが 強かったから)
  565. (多分、今の弱い私は ひとりじゃ生きていけない…)
  566. …………
  567. (だから、ひとりで生きられる そんな私になりたかったんだ)
  568. (誰かに頼らず仲間がいなくても ひとりで頑張れる自分に…!)
  569. そうして私は 「ひとりで生きる」と決めたことについて ひとつの答えにたどりつきました
  570. 私が、期待して依存せずに生きようとしたのは
  571. 誰かに利用されたりせず 他人でなく自分自身に期待できるように
  572. ひとりで生きられるように なりたかったからなんだって
  573. いろは: あの…大丈夫ですか? もしかしてケガとか…!
  574. あ、いえ大丈夫ですよ
  575. 環さん、助けてくれて 本当にありがとうございました
  576. いろは: ううん、私なんて全然
  577. …私、環さんのおかげで 少し変われそうな気がします
  578. いろは: え…?
  579. 私の得意な攻撃方法を 見つけてくれたり
  580. 仲間の良さを 教えてくれたり…
  581. (ひとりで生きたい理由にも 気づかせてもらえたし…)
  582. (それに…)
  583. ――っ!?
  584. (まずい、このままじゃ 環さんまで一緒に…!)
  585. (あの時、私は仲間を 失う恐怖に気づいちゃいました)
  586. (当たり前ですけど…)
  587. (仲間ができれば 失う恐怖も生まれてしまう)
  588. (…今の弱い私じゃ きっと何も守れない)
  589. (だから、もし仲間を作るなら もっと強い私になってから…)
  590. あ…そっか、だから 環さんは強いんですね
  591. (守るべき 大切な仲間たちがいるから…)
  592. いろは: へっ? そんな、私なんてまだまだ…
  593. 環さん、本当に 今までありがとうございました
  594. いろは: え…あの…?
  595. 私、やっぱり ひとりで生きることにします
  596. いろは: えっと、私… 何かしちゃったかな…
  597. ああいえ、そういうわけでは
  598. むしろ環さんのおかげで この生き方を選べました
  599. …でも、安心してください 決してマイナスな気持ちではなく
  600. 未来のために 自分で選んだことなので
  601. いろは: そっか…うん それなら何も言わないよ
  602. ありがとうございます、環さん 私、ちゃんと頑張ります
  603. じゃあ、私はここで
  604. いろは: あ、あの!
  605. …?
  606. いろは: その、またいつか 一緒にご飯行きましょう!
  607. …はいっ!
  608. いつかまた! 環さん!
  609.  
  610. FILENAME: text_310473-4.txt
  611. …と、まあそんな感じで そっくりさん事件は幕を閉じ
  612. あー、そうは言ってもあれから 何度か人違いはされたわけですが
  613. とりあえず一件落着…
  614. …って、すみません つい自分語りを…!
  615. いえいえ!
  616. それより、助けてくれて 本当にありがとうございました!
  617. それで、なんですけど 結局、今って仲間は…?
  618. それが、まあ人間 性格はすぐに変わらないもので
  619. 取り繕っちゃうクセも 期待してしまう怖さも
  620. 少し良くなってはいても 簡単には治らなかったので
  621. 仲間という仲間は できませんでしたね
  622. ただ、調整屋さんに出会って 調整をしてもらったり
  623. ひとりで魔女退治の 特訓も頑張ったり…
  624. あと、まあいろいろと 強くなれる機会もあって
  625. ある程度ひとりで 生きられるようにもなったので
  626. 無理に仲間を作る 必要もないかなと
  627. あ、そうなんですね
  628. でも、協力関係…くらいの 魔法少女さんは増えましたよ
  629. 調整屋さんもそうですし
  630. まあ、仲良し…と言える人は 恥ずかしながらあまりいませんが
  631. でも、ひとりで生きているなんて すごいです!
  632. 今も、ひとりで生きたいって 気持ちは変わってないんですか?
  633. そうですね…
  634. まあ、この考えに至ったのも さっき話したこと以外にも
  635. 魔法やらなんやら いろいろあったんですけど
  636. …うん、やっぱり その意思は変わらないですね
  637. 他人に期待することも 時としてありますし
  638. 協力することも いいことだって思います
  639. でも、誰かに寄りかからずに ひとりで生きられることも
  640. 多分、大事なんだろうなって
  641. すごいな…
  642. 私は弱いから そんな風に思えないです…
  643. いえいえ、私だって 最初はへっぽこでしたよ
  644. まあ、今もですけど…へへ
  645. …あ、そうだ もし良かったらなんですけど
  646. …?
  647. 連絡先、交換しませんか?
  648. ああ、そのナンパとかじゃ ないんですよ!
  649. その、困っていることがあれば 力になりたいなって…
  650. 私で良ければ魔女退治の 特訓なんかも付き合いますし
  651. え…
  652. あ、それからグリーフシードは ちゃんと足りてますか?
  653. ソウルジェムが濁ってしまうと 力が出ませんからね!
  654. あ、あの…
  655. …って、すみません 次から次にお節介ですよね
  656. でも、その…少しでも 助けになれたら嬉しいなって…
  657. いえ、そうじゃなくて
  658. どうしてそんなに 気にかけてくれるんだろうって…
  659. 私なんて、さっき会ったばかりの 弱い魔法少女なのに…
  660. …………
  661. 私も同じように 誰かに助けられてきたから…
  662. …なんて、受け売りですけど へへへ…
  663. もらった優しさを 次は、また別の誰かに…
  664. そうできたらいいなって 思うんですよね
  665. じゃあ、私もいつか 誰かを助けられるような
  666. そんな魔法少女に なれるんでしょうか
  667. ええ、きっとなれますよ
  668. あ、私にそんなこと 言われてもですよね、あはは
  669. あ…
  670. …………
  671. (この魔力…今、あそこに)
  672. (黒いフードのあの子が いた、ような…)
  673. どうかしました?
  674. ああ、いえなんでも
  675. (きっと、気のせい)
  676. (環さんも、あの子も 元気にしているでしょうか…)
  677. (いつか、どこかで また会えるかな…)
  678. (…うん、生きてさえいれば きっと会えますよね)
  679. また会えたら嬉しいです
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