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Kanagi (Eternal Darkness ver.) MSS JP Text

Oct 3rd, 2022 (edited)
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  1. FILENAME: text_312161-1.txt
  2. みたま: いらっしゃーい 調整屋さんへようこそぉ♪
  3. みたま: って、あらぁ十七夜じゃない 来てくれたのねぇ
  4. 十七夜: うむ、呼ばれたからな
  5. 十七夜: …それで、今日は何の用だ 相談があると聞いていたが
  6. みたま: ええ、神浜学生会議の イベントについてよぉ
  7. みたま: 東西とか関係なく みんなで交流するために
  8. みたま: ハロウィンのイベントを 開かないかって話したでしょ?
  9. みたま: やっと、いろんな状況が 落ち着いてきたから
  10. みたま: そろそろ内容を 決めないとなぁって思ったの
  11. 十七夜: うむ…確かにそうだな
  12. みたま: このイベントを成功させて 新しい未来への一歩にしましょ
  13. 十七夜: 新しい未来…か
  14. 十七夜: ならば、罪深い過去を糧とし 同じ過ちを繰り返さないためにも
  15. 十七夜: かつて見ていた未来を 振り返っておくか
  16. みたま: 過去の自分を反面教師に するってことね
  17. 十七夜: うむ…
  18. 十七夜: あの頃の自分たちは
  19. 十七夜: 今のような未来が訪れるとは 思っていなかった
  20. 十七夜: 「ただ、悲しみに呑まれていただけだからな」
  21. みたま: そうね…見ていた未来も 今とは大きく違っていたわ
  22. みたま: わたしは、いずれ訪れる滅びを
  23. みたま: これ以上、苦しむ人が 増えないうちに与えようとした
  24. 十七夜: 自分も滅びの果てにある 平等な未来を求めて
  25. 十七夜: 多くの罪を犯し…傷つけた…
  26. ドサッ…
  27. 十七夜: ハァ…ハァ…
  28. うぅ…
  29. 苦しい…痛い…
  30. 殺してくれ…
  31. 何も見えない…
  32. 十七夜: ハァ…ハァ…
  33. 十七夜: …………
  34. 十七夜: やって…しまったのか… 自分は、人間を相手に…
  35. 十七夜: …………
  36. 十七夜: 「滅びによって訪れる平等な未来」
  37. 十七夜: 「明確に、その未来を描いたのは 人に手をあげたあの夜だったか…」
  38. 十七夜: 「あの一件を通して、自分は ずっと選択肢にいれないようにしていた “滅び”に手を付けることを決めてしまった…」
  39.  
  40. FILENAME: text_312161-2.txt
  41. 十七夜: 「かつての自分が求めていたのは…」
  42. 十七夜: 「滅びの果てに訪れる平等な未来」
  43. 十七夜: 「未来の人々が、それを享受できるのなら 今の神浜市を犠牲にしても構わなかった」
  44. 十七夜: 「だから、ネオマギウスについた自分たちは 理想を叶えるためならばと 姫君の作戦に乗るのをためらわなかった」
  45. 十七夜: 「たとえ作戦の内容が 神浜市に生きる人々から飲食の自由を奪い 魔法少女に屈するように力を誇示するという 非人道的なものだったとしてもだ」
  46. 十七夜: 「振り返れば、どこかで踏んぎりのつかない 気持ちがあったのも確かだが 不平等によって襲いかかる数々の不幸が 自分に決意させてしまった」
  47. 十七夜: 「姫君の作戦を飲んだ上で すべてを滅ぼして平らげることこそが 神浜市に平等を与えるのだと…」
  48. ひめな: 苦戦はしたけど 作戦も成功続きだね、キャハッ★
  49. ミユリ: ですですぅ!
  50. ミユリ: ネットの配信で魔法少女の話を 湯国市の学生にしてもらって
  51. ミユリ: その上、謝罪までさせましたから SNS上でも大バズりですぅ!
  52. 燦: バズる…というか炎上してない? 少しやりすぎたかもしれないわね
  53. ひめな: まぁ、やりすぎぐらいが ちょうどいいんだってー!
  54. 十七夜: 魔法少女の強さは 示せたんじゃないか
  55. みたま: ええ…効果的な配信に なったと思うわぁ
  56. ひめな: そゆこと! 残る作戦もあと少し!
  57. ひめな: 魔法少女の存在については 事前に各メディアに知らせてるし
  58. ひめな: あとは目の前で本物を見せつけて 現実だって信じさせるだけ
  59. 燦: ただ、ユニオンを始めとした 魔法少女たちが邪魔になるわね
  60. ひめな: …まぁ、排除するための 最終手段はあるけど
  61. ひめな: むしろ戦いを見せつけた方が 力を誇示できてよくない?
  62. 燦: …それもそうかもしれないわね
  63. 十七夜: …姫君、その後の 作戦についてだが…
  64. ひめな: ん、わかってるよ
  65. ひめな: …でも、本当にやる気? なぎりん
  66. 十七夜: ああ、愛する町の未来のためだ
  67. 十七夜: 「こうした未来が訪れた場合に 思い描いていたのは 自分が人々にとって共通の敵となることだった」
  68. ひめな: んで、なぎりんの作戦って どんな感じだっけ
  69. 十七夜: ああ、魔法少女の力を 見せつけた…その後の話だ
  70. 十七夜: これだけの準備をしても そう簡単に人々は屈しないだろう
  71. 十七夜: そこで自分が神浜市民にとっての 脅威として君臨できればと思う
  72. ひめな: ふんふん…
  73. 十七夜: 「つまりは、神浜市長選などといった この町で起きたすべての罪を自分が被り 人々の恨みを自分に集中させたいということだ」
  74. 十七夜: 「その際、ネオマギウスのメンバーを借り 自分が羽根たちを操って 神浜市を破壊しているという構図を作りたい」
  75. 十七夜: 「その中で姫君は 正気を保った魔法少女として羽根と戦い 人々が自分を討てるように 仕向けてもらいたいと思っている」
  76. 十七夜: 「少しクサいが、自分が悪の魔法少女になり 姫君が正義の魔法少女として人に味方すれば 今後、人の上に立ちやすいはずだ」
  77. 十七夜: 「それでも、人を御せない場合や 作戦を始める前に自分が敗れたときは このまま恐怖で支配してやればいい」
  78. ひめな: …確かに 作戦が成功したおかげで
  79. ひめな: もう魔法少女って かなり恐怖の対象だからねー
  80. ひめな: あとは、恐怖と畏敬のどちらに 振るかって感じだよね
  81. ひめな: ただ、こっちが良く見えるのは ぶっちゃけ助かるけどさ
  82. ひめな: それってなぎりんは ワンチャン殺されない?
  83. ひめな: 討てるようにとか言ってるし ワンチャンどころじゃないけど
  84. 十七夜: …それが、目的だ
  85. ひめな: は…罪悪感で自殺とか そういうの私チャン許さないよ?
  86. 十七夜: …その気持ちがまったくない とは言いきれないが…
  87. 十七夜: 目的は神浜市の未来にある
  88. 十七夜: 自分という敵を倒すために人々が 一致団結することで
  89. 十七夜: あの、巨大な魔女によって起きた 災害の後のように
  90. 十七夜: 東西関係なく力を合わせられたら 滅びの後に残るのは平等だろう
  91. 十七夜: そのために自分の命を使うなら 惜しくはないというものだ
  92.  
  93. FILENAME: text_312161-3.txt
  94. 十七夜: 「町を破壊され、強さを見せつけられ それでも尚、抵抗しようとする人々の前に 自分が最後に立ちはだかり、殺される」
  95. 十七夜: 「それこそが、自分の考える 人々に手を繋がせる方法であり 最期に果たそうとしていた一手だった」
  96. アイツら、ずっと町を壊してる… どうなってんだよ…!
  97. テレビのドッキリとか そういうのじゃねえのかよ…
  98. でも、実際に町が壊されてる… 夢…なんかじゃないわよね
  99. わけわかんねえよ…!
  100. 俺だってわかんねえ…けど ヤツらが町を壊してるなら…
  101. 早く助けを呼ばないと…!
  102. …っ、こんなの許されない!
  103. 魔法少女って…なんなんだ… 俺たちになんの恨みが…
  104. ひめな: 羽根ちゃんたち すごい頑張ってんじゃん
  105. ひめな: 本当に洗脳しちゃってる? ってレベルだもん
  106. ミユリ: ですですぅ! 迫真の演技ですぅ!
  107. 燦: ちょっと手ぬるさはあるけど 人間たちには効いてるみたいね
  108. 十七夜: …姫君、あの作戦を決行しよう
  109. ひめな: まぁ、そうなるよね
  110. 十七夜: 羽根たちの頑張りも 無駄にしたくはないからな
  111. ひめな: …ん、わかった ヒコ君的にもOKだってさ
  112. みたま: …わたしも行かせてもらうわ
  113. 十七夜: では、自分たちは今をもって ネオマギウスから離脱する
  114. 十七夜: あとのことは頼んだぞ
  115. 警察は、いったい 何をしてるんだよ…!
  116. もう通報はしたわ!
  117. だけど、道も アイツらに壊されたみたいで…
  118. クソ… どうしろってんだよ
  119. てか結局、街頭で演説をしてた ひめなってやつが黒幕か?
  120. それしかないわよね…
  121. 警察なんか待ってたら 私たちまで危ない…
  122. 俺たちで立ち向かうしか ないんじゃねえの
  123. 無理よ、あんなの…!
  124. 警察を待てないなら ここから逃げましょうよ…!
  125. つったって、このままじゃ 神浜市が壊されちまうぞ…!
  126. ああ、立ち向かうしか…
  127. 十七夜の声: …そうだ、立ち向かえ
  128. あ、あれ…
  129. 十七夜: なぜなら、お前たちが恨むべき 魔法少女は、自分だからな
  130. ど、どういうことだよ!
  131. 十七夜: 「自分こそが、そこの魔法少女たちを操り 神浜市を破壊させ お前たちを苦しめている魔法少女ということだ」
  132. 十七夜: 「お前たちが飲食を封じられたのもそう… すべては自分の魔法によって 引き起こされたことに過ぎない」
  133. 十七夜: 「神浜市長選のことも、そうだ 自分が市長を洗脳し、東西の関係が 悪化するように仕組んだ」
  134. ハァ!? どうして、そんなことするんだ!
  135. 十七夜: なぜって… おかしなことを聞くな
  136. 十七夜: 理由など、ひとつしかないだろう
  137. 十七夜: 大嫌いな、この神浜市を 滅ぼしたいから…それだけだ
  138. わけわかんねぇ…
  139. やっぱり、魔法少女なんて ヤバい奴しかいないのよ!
  140. ひめなの声: ちょっと待ったーっ!
  141. また魔法少女かよ…! しかも演説の…!
  142. ひめな: 待って待って? 私チャンは、みんなの味方だって
  143. ひめな: 演説でも言ったと思うけど 私チャンたちに攻撃の意思はない
  144. ひめな: 「私チャンたちは、ただ魔法少女が 人を守ってる、人よりすごい存在だって わかってほしいだけなんだってば」
  145. ひめな: 「本当は、もっと穏やかな方法でみんなに 伝えたかったんだけどさ そこの魔法少女に操られちゃったの」
  146. ひめな: 「そこで暴れてる羽根ちゃんたちもそう… 本当は、神浜市を破壊したくなんてない… ただの優しい魔法少女たちなのに…!」
  147. ひめな: 「でも、直にあの子たちも洗脳がとけるから きっとみんなの力に…」
  148. けど、お前ら同じ魔法少女だろ 結局どっちも悪人で…
  149. ひめな: 魔法少女ってだけで 一括りにすんのはよくなくない?
  150. ひめな: みんなだけで町を守れるなら 私チャンは手出ししないけど~
  151. ひめな: 「いいの?このままじゃみんなの神浜市 あの子たちに壊されて、なくなっちゃうよ? 私チャンたちが力を貸すって言ってる間に 協力した方がよくなくなくない?」
  152. …その子の言う通りかもしれない
  153. おい…正気か!?
  154. 警察はなかなか来ない… 来たって、魔法少女に敵う?
  155. あなただって あの配信を見たでしょ!?
  156. 悔しいけど、普通の人の力じゃ 彼女たちには太刀打ちできない…
  157. それなら、今あの黒幕だって子に 対抗できるのは魔法少女しかない
  158. ひめな: ねぇ、なぎりん 本当にこれで良かったの?
  159. 十七夜: ああ、いい …残りも手はず通り頼む
  160. あの子に頼るしかないわ
  161. 十七夜: …ふふ、その通りだ
  162. 十七夜: だが、魔法少女と言えども 羽根たちはもはや満身創痍
  163. 十七夜: まともに動けるのは そいつらしかいないぞ
  164. 十七夜: それで 自分たちに勝てるつもりか?
  165. 私たちは直接戦えないけど… でも、やれることはあるはず!
  166. ねえ…! そこのあなた!
  167. ひめな: ん? 私チャンのこと?
  168. できることがあったら言って! 力になるから!
  169. 私たちも町を守りたいの!
  170. ひめな: お、だったら作戦があるからさ
  171. ひめな: あとでちょっと 作戦会議しよっか!
  172. ええ、わかったわ!
  173. 十七夜: ふむ、いい心意気だ…!
  174. 十七夜: さあ、かかってこい! 自分の命は、この宝石だ…!
  175.  
  176. FILENAME: text_312161-4.txt
  177. 十七夜: 「そして、自分たちは破壊の限りを尽くす」
  178. 十七夜: 「姫君が人間側についたことで 人々には少しの余裕が生まれて 少しずつ東西で手を取り合っていく」
  179. 十七夜: 「そして、自分は人々に極悪人として 追われ、命を狙われつづける」
  180. 十七夜: 「それが何時間、何日かかるか… どれだけかかっても構わない」
  181. 十七夜: 「西を破壊し、東を破壊し 逃れに逃れ、限りない破壊を続けたあとには」
  182. 十七夜: 「きっと、こんな未来が訪れる」
  183. 機動隊が到着したぞー!
  184. やっとか…!
  185. ひめな: じゃあ、私チャンたちが なぎりんを抑えるから…!
  186. ひめな: 作戦どおりよろしくね!
  187. ええ、任せて!
  188. 「君たちは完全に包囲されている!」
  189. 「投降しないのであれば すでに発砲の許可も下りている!」
  190. 早く撃て―!
  191. そうよ、あいつらが 私たちの町を…!
  192. 西と東と暴れまわってくれたけど 協力しあったおかげで
  193. ようやくここまで アイツらを誘導できたんだから!
  194. さっさと撃ってちょうだい!
  195. おいおい水名のヤツのくせに 口が悪いんじゃねえの?
  196. 今は東も西も、もう 関係ないでしょうが…!
  197. ああ…おれたちの 神浜市を守らないとな!
  198. 十七夜: ふっ、すごいな…八雲
  199. みたま: ええ、あのときの… 災害後の神浜市みたいね
  200. 十七夜: これなら、きっと大丈夫だ
  201. 十七夜: 滅びの果てに 平等が訪れるだろう…
  202. みたま: …えぇ
  203. 十七夜: さて、そろそろ行ってくる
  204. 十七夜: …先に行くぞ、八雲
  205. みたま: 気をつけてね…って言うのは 違うかしらねぇ
  206. 十七夜: ふっ、そうだな…
  207. 十七夜: だが、魔女にならんようにだけは 気をつけないとな
  208. みたま: …わたしも すぐに行くわ、十七夜
  209. 十七夜: ああ、地獄でまた会おう
  210. 「撃てーっ!」
  211. 十七夜: 神浜市の人々が力を合わせて 自分を殺そうとしている…
  212. 十七夜: きっと、自分を殺した後は手を取り合い 喜びを分かち合うのだろう…
  213. 十七夜: それでいい…自分の死で 神浜市に平等な未来が訪れるのであれば…
  214. 十七夜: 未来の神浜市に 希望が残るのならば…
  215. 十七夜: ぐっ…う…っ
  216. 十七夜: …忘れる、な
  217. 十七夜: これが東西で掴んだ…勝利だ!
  218. ターーーン
  219. 十七夜: っあ…
  220. パリン
  221. 十七夜: …しかし そんな未来は訪れなかった
  222. 十七夜: 今思えば、訪れなくて 良かったのだがな…
  223. みたま: そうね…わたしたちは 救われたものね…
  224. 十七夜: ああ、みかげの仲良し大作戦や 多くの人の力によってな
  225. みたま: 先生にも助けられた 魔法少女のみんなにも…
  226. 十七夜: そう…しかし、自分たちは 罪を重ね過ぎた…
  227. 十七夜: 故に、この場所に戻ってくるのに 気が引けていた…
  228. みたま: 東の子たちに会いに行ったときは ユニオンに戻る気かと思ったわ
  229. 十七夜: 東の問題の渦中にいるのは 同郷の彼女たちなら同じはず…
  230. 十七夜: その上、これまでの信頼も 無碍にしてしまったからな…
  231. 十七夜: 殺される覚悟で 真っ先に謝罪しに行っただけだ
  232. みたま: でも、十七夜はここにいる
  233. 十七夜: うむ…
  234. 十七夜: ユニオンに戻れたのも 学生会議に参加できているのも
  235. 十七夜: いま思えば あの時のおかげかもしれない…
  236. 十七夜: 本当なら、 とうに死んでいたはずだった
  237.  
  238. FILENAME: text_312162-1.txt
  239. 十七夜: すべてが終わったあと…
  240. 十七夜: 自分は、東の魔法少女たちに 改めて会いに行った
  241. 十七夜: …けじめをつけるためにな
  242. 十七夜: …本当に申し訳なかった
  243. 十七夜: 東のリーダーでありながら ネオマギウスに行ったこともだが
  244. 十七夜: 何より、自分はこの神浜市を 滅ぼそうとし…
  245. 十七夜: 君たちの家族まで 命の危険にさらしてしまった
  246. 十七夜: 飲み食いができないのは つらかったはずだ…すまない…
  247. 相野 みと: で、でも結果的に みんな大丈夫だったし…
  248. 十七夜: …だが、それだけではない
  249. 十七夜: 神浜市の魔法少女たちを 皆殺しにするのを黙認していた
  250. 相野 みと: …………
  251. 十七夜: 直前で止めはしたが その件については知ってるだろう
  252. 伊吹 れいら: …あとから聞きました
  253. 十七夜: 最終手段ではあった…
  254. 十七夜: それに、自分もできれば したくないとは思っていたが
  255. 十七夜: その作戦を了承したのは事実だ
  256. 桑水 せいか: …………
  257. 十七夜: 許されるなどとは 到底、思っていない…
  258. 十七夜: 殺されても構わない覚悟で 自分はここに来た
  259. 十七夜: …ただ、わがままではあるが
  260. 十七夜: 今度こそ真っ当な手段で 平等な未来を築くために…
  261. 十七夜: 未来の神浜市を担う そのひとりになりたい…
  262. 十七夜: 自分本位であることは 百も承知だ…
  263. 十七夜: …だから けじめをつけさせてくれるなら
  264. 十七夜: 自分を殴るなりなんなり…
  265. 千秋 理子: えっ…そ、そんなこと…
  266. 十七夜: しかし…このままでは 自分も前に進めない…
  267. 相野 みと: そんなこと言われたって…
  268. 眞尾 ひみか: …………
  269. 相野 みと: ひみかちゃんも なんとか言ってよぉ…!
  270. 眞尾 ひみか: …私は、怒ってますよ はらわたが煮えくり返るくらい
  271. 十七夜: …うむ、それが当たり前だ
  272. 眞尾 ひみか: …弟や妹がお腹が空いたって 私に言って泣いてたんです
  273. 眞尾 ひみか: 普段は泣かないあの子たちが 弱々しい声で泣いていて…
  274. 眞尾 ひみか: うちは、元から貧しいですけど
  275. 眞尾 ひみか: それでも、あの子たちに ひもじい思いだけはさせないよう
  276. 眞尾 ひみか: 父も私も なんとか頑張ってきました
  277. 眞尾 ひみか: それなのに、水も飲めないから 次第に声も掠れて…っ
  278. 眞尾 ひみか: 死んじゃうかもしれないって 本気で思ったんですよ…!?
  279. 十七夜: …………
  280. 眞尾 ひみか: でも、十七夜さんとみたまさんが
  281. 眞尾 ひみか: どんな想いで生きてきたのか… 過去の話を聞いてわかりました…
  282. 眞尾 ひみか: やったことはひどいですし 許せることじゃありません…
  283. 眞尾 ひみか: …だけど、同時に十七夜さんの 気持ちもわかってしまうんです
  284. 眞尾 ひみか: だって、家族が生まれを理由に いじめられたりケガさせられたり
  285. 眞尾 ひみか: そんなことが起きれば、私だって 同じことをしたかもしれない…
  286. 眞尾 ひみか: 怒りに…悲しみに呑まれて すべてを恨んだと思います
  287. 眞尾 ひみか: 正義感の強い十七夜さんなら 特に、許せなかっただろうなって
  288. 眞尾 ひみか: したことは許せないのに わかってしまうんです…
  289. 伊吹 れいら: …私たちもです
  290. 伊吹 れいら: 神浜市の魔法少女たちが 強い絆で結ばれていたとしても
  291. 伊吹 れいら: プロミストブラッドの策略で 西の魔法少女たちを疑った…
  292. 桑水 せいか: …それだけ、東西の問題は 根深くて深刻だったから…
  293. 相野 みと: …だとしても、私が すごく悲しいと思ったのはね
  294. 相野 みと: 十七夜さんが私たちに 何も言ってくれなかったことだよ
  295. 十七夜: な…
  296. 眞尾 ひみか: そうなんです… 許せないのは、そこもなんです
  297. 眞尾 ひみか: 私たちは、同じ東の魔法少女 同じ境遇で生きてきた仲間です
  298. 眞尾 ひみか: それなのに、何も言わずに 行ってしまったから…
  299. 伊吹 れいら: はい…頼ってもらっても、何も できなかったかもしれないけど
  300. 伊吹 れいら: 少なくとも私たちは 悲しみを共有できたはずです…
  301. 千秋 理子: やっぱり私たちじゃ 頼りない…ですか?
  302. 十七夜: そうじゃないが… しかし…
  303. 眞尾 ひみか: 言い訳はいりません
  304. 眞尾 ひみか: …いいから、そこで 歯を食いしばってください
  305. 伊吹 れいら: え、え、ひみか 何するつもり…!?
  306. 眞尾 ひみか: けじめ…必要なんですよね
  307. 十七夜: …………あぁ 一思いにやってくれ
  308. 十七夜: …………
  309. 眞尾 ひみか: …………
  310. 十七夜: ん…?
  311. 眞尾 ひみか: 隙ありです!
  312. 十七夜: ぬわっ!?
  313.  
  314. FILENAME: text_312162-2.txt
  315. 眞尾 ひみか: 隙ありです!
  316. 十七夜: ぬわっ!?
  317. 十七夜: なぜデコピンを…
  318. 眞尾 ひみか: 少し前に、時雨ちゃんと はぐむさんが同じように来ました
  319. 十七夜: な…宮尾君と安積君が…!?
  320. 時雨の声: …そんなに驚かなくても…
  321. 十七夜: …どうしてここに…
  322. はぐむ: その…こうなったのも元は 私たちのせいですし…
  323. はぐむ: それに、十七夜さん 覚えてませんか…?
  324. はぐむ: 私たちがマギウスの翼から 戻ってきたときに
  325. はぐむ: 東のみんなのところに 挨拶に連れて行ってくれて…
  326. はぐむ: 贖罪だって…デコピンを 私たちにしたこと…
  327. 時雨: それで、ぼくには不意打ちで いじわるしたんだよね…
  328. 十七夜: あ…
  329. 眞尾 ひみか: 本当なら時雨ちゃんが仕返しを するのが筋ですが
  330. 眞尾 ひみか: 自分たちも悪いからって 代わりにやらせてもらいました
  331. 時雨: そこまで バラさなくたっていいのに…
  332. 時雨: …………
  333. 時雨: 結局、ユニオンからは あのあと離れちゃったし…
  334. 時雨: 十七夜さんからの恩を 仇で返すことになっちゃったけど
  335. はぐむ: でも…あのとき、私たち すごく救われたんです…
  336. 時雨: 十七夜さんは、ぼくらより 責任感も強いから…
  337. 時雨: きっと今回のことを、すごく 気に病んでるだろうなって
  338. 眞尾 ひみか: 時雨ちゃんたちも 大泣きしてましたけどね
  339. 時雨: …っ、だ…だって… 悪いと…思ってたから…
  340. 時雨: 皆殺しとか飲食の暗示とかは 確かに知らなかったけど
  341. 時雨: もう、それを言い訳に 逃げるぼくじゃ…ないから…
  342. 時雨: だから、ごめんね…十七夜さん 巻き込んじゃって…
  343. 時雨: …背負わせて、ごめんなさい
  344. 十七夜: …………
  345. 伊吹 れいら: …十七夜さんたちのしたことは きっと許されないです
  346. 伊吹 れいら: でも 私たちは気持ちが分かるから
  347. 相野 みと: うん、だから…一緒に 未来を作っていこう…!
  348. 桑水 せいか: …十七夜さんと一緒なら 頑張れると思う…から
  349. 千秋 理子: はい、頼れるお姉さんです!
  350. 眞尾 ひみか: ええ、弟や妹の生きる未来を 明るく照らすには
  351. 眞尾 ひみか: きっと、光も闇も知っている 十七夜さんの力が必要なんです
  352. 眞尾 ひみか: 簡単には許せないけど… それでも…
  353. 眞尾 ひみか: 私たちは、また十七夜さんと 手を取り合いたいと思ってます
  354. 眞尾 ひみか: これでもまだ、けじめが必要って うじうじするつもりですか?
  355. 十七夜: …………いや
  356. 十七夜: ありがとう、みんな…
  357. 相野 みと: うん…!
  358. 相野 みと: これで、とりあえずは 一件落着だね!
  359. 伊吹 れいら: まあ、いろいろと 課題は残ってると思うけどね
  360. 桑水 せいか: …私たち以外とも…きっと 話す必要がある…だろうから…
  361. 眞尾 ひみか: あ…そうです! また、開きましょうよ!
  362. 眞尾 ひみか: みんなで話すために!
  363. はぐむ: 開くって何を…?
  364. 時雨: あ…もしかして…
  365. 眞尾 ひみか: お帰りなさい会…ですよ!
  366. 十七夜: そしてお帰りなさい会では 魔法少女だけでなく
  367. 十七夜: 地域の学生たちにも 謝罪をすることができた
  368. 十七夜: もっとも、学生たちは 洗脳について事実を知らない
  369. 十七夜: 魔法少女についても 明かせていない以上は
  370. 十七夜: ほとんど 自己満足のようなものだった
  371. 十七夜: それでも、関わりあうことで 学生会議の話をしたり
  372. 十七夜: これからの神浜市についての 話ができた
  373. 十七夜: 様々な想いはあれど、皆 明るい未来を描くのは変わらず
  374. 十七夜: 手を取り合っていけそうだと 希望を見ることができた
  375. 十七夜: あそこで、謝れる機会を もらえたからこそ
  376. 十七夜: こうして学生会議のイベントを 開くほどまでに地域の学生たちと
  377. 十七夜: 近づくことができたのだと思う
  378. 十七夜: そう考えれば、改めて その機会をくれた眞尾君たちにも
  379. 十七夜: こんな自分を受け入れてくれた 学生たちにも…
  380. 十七夜: 自分は、感謝しないといけないな
  381. みたま: ええ、そうね
  382. 十七夜: …つくづく、自分は周りの人間に 恵まれていると感じる
  383. 十七夜: メイドカフェでのできごとも そのひとつだな…
  384.  
  385. FILENAME: text_312162-3.txt
  386. 十七夜: 「東の魔法少女たちとの一件もそうだが メイドカフェでのできごとは この町を滅ぼさなくて良かったと そう思えるものだった」
  387. 十七夜: 「そして同時に、自分の罪深さを 痛感させられるできごとでもあった」
  388. 十七夜: (メイドカフェのことも けじめをつけねば…と)
  389. 十七夜: (裏口近くまで来たのは いいものの…)
  390. 十七夜: (連絡への返事も長いこと していないし入りづらいな)
  391. ガサッ
  392. なぎ…たん…?
  393. 十七夜: 「そこにいたのは、自分が滅びへと振りきれる 理由のひとつとなる事実を教えてくれた あの、メイドの先輩だった」
  394. まって、なぎたん
  395. 十七夜: む…?
  396. …あのね、このお店… 少し前から、脅されてるの…!
  397. 大東区の人を雇うなって 脅してきたのは本当…
  398. でも、おネェさまは その脅しを拒んでる状態
  399. まだなぎたんのことは バレてない…
  400. だけど、別のお店で バレたところもあって…
  401. 十七夜: まさか、あの休業中の…! アレは襲撃を受けての…!?
  402. …………
  403. だからお願い! お店を辞めろとは言わない!
  404. でも、出身地だけは 絶対に口外しないでっ…!
  405. 十七夜: …………ああ、当然だな 約束しよう
  406. …………
  407. …うっ…うぅ…
  408. 十七夜: なぜ泣く…
  409. だってぇ…
  410. ごんなこどお願いされる なぎたんが可哀想でぇ…
  411. 十七夜: 「父は東だからと採用を取り消しになり 弟が痛めつけられた…そのあとだったから 余計に、その事実は自分にとって大きかった」
  412. なぎた…なぎたん…!
  413. うわぁぁあん… ごめんねえぇ…!
  414. 十七夜: え…あ…
  415. 私があんなこと言ったから なぎたん居なくなっちゃったって
  416. ずっとずっと…後悔してたの…っ
  417. 連絡しても返事ないし… 無事でよかったよぉ…
  418. 十七夜: …っ、すまない… 心配をかけてしまって…
  419. ???の声: ちょっとぉ、いったい なんの騒ぎかしらぁ?
  420. 十七夜: あ…
  421. 店長: アナタ、いったい今まで どこで何を…!
  422. 店長: …いや、それより… また会えて良かったわ…
  423. 店長: その子にいろいろと聞いた… 店長であるアタシが
  424. 店長: もっとしっかりしなくちゃ いけなかったわね…
  425. 十七夜: いや…店長は何も…! 自分が、ただ…
  426. 店長: …………
  427. 店長: そうだ、ここに来たってことは 何か話があったのよね
  428. 十七夜: …あぁ
  429. 店長: もうすぐお店も閉まるから 少し事務所で待っててもらえる?
  430. ぐすっ…みんな心配してたから 会えたら喜ぶよ…!
  431. 十七夜: え、いや…自分は…
  432. 十七夜: (謝って、辞めることだけ 伝えられれば…)
  433. なぎたん…!? 帰ってきてくれたの!?
  434. みんな心配してたんだよ…!
  435. 十七夜: …いや、自分は…
  436. 十七夜: (困った… どう切り出せばいいものか…)
  437. それに、なぎたんがいなくて いろいろと大変だったんだから!
  438. ご主人様たちもね みんな会いたがってたよ
  439. 十七夜: ――っ!?
  440. ずっとお休みしてたから 体調とかも気にしてて
  441. ほら、お手紙も こんなにいっぱいあるんだよ
  442. ドサッ
  443. 十七夜: …こんなに…?
  444. ずっとお休みって聞いて心配です… また、お店に来てくれたら嬉しいです! でも、なぎたんの元気が一番だから 無理はしないでね!
  445. なぎたんには、いつもパワーもらってます! だから今度は、私たちがなぎたんに パワーを送れたらいいなって…届け~~! なぎたんが元気でいてくれたら 私は、それだけでとっても幸せなので!
  446. 十七夜: …………
  447.  
  448. FILENAME: text_312162-4.txt
  449. 十七夜: こんなに多くのご主人が 自分を…?
  450. 店長: そうよ
  451. 十七夜: 店長…
  452. 店長: まったく…アナタの 無断欠勤で大変だったのよ
  453. 店長: って話は、もうみんなから 聞いてるかしらね
  454. 店長: だから…
  455. 十七夜: …あぁ、責任を取って…
  456. 店長: バリバリ働いてもらうわね!
  457. 十七夜: え… 自分は…辞めるつもりで…
  458. 店長: あら…辞めたいの…?
  459. 店長: それなら、無理に止めることは アタシにできないけど…
  460. 十七夜: …辞め…なくてもいいのか…?
  461. 店長: むしろ、いてくれた方が 助かるし、嬉しいわ
  462. 店長: アタシたちも ご主人様たちもね
  463. 十七夜: …………
  464. 店長: 改めて、お願いしたいの 和泉十七夜ちゃん…
  465. 店長: なぎたんとして 戻ってきてくれないかしら?
  466. 店長: アナタが良ければ…だけど
  467. 十七夜: …っ…
  468. 十七夜: 喜んで…!
  469. やったー!
  470. なぎたん復帰ばんざーい!
  471. 店長: ふふ、またよろしくね なぎたん
  472. 十七夜: ああ…! ありがとう、店長…!
  473. 店長: もう…おネェさま、でしょっ?
  474. 十七夜: ふ…そうだったな、おネェさま
  475. 店長: あら… …何があったかは知らないけど
  476. 店長: なんだか… いい表情になったわね
  477. 十七夜: 「そして、自分は皆のやさしさのおかげで メイドのなぎたんとして復帰した」
  478. カラ~ン カラ~ン
  479. 十七夜: 帰りを待っていたぞ、ご主人
  480. ~~~~っ!
  481. それは、こっちのセリフだよ! おかえり…なぎたん!
  482. 十七夜: ああ、ただいま…ご主人
  483. 店長: なぎたん、大盛況ね
  484. 十七夜: ありがたいことだが それだけ心配かけたということか
  485. ほら、疲れたでしょ 少し休憩に入ってきていいわ
  486. 十七夜: うむ…感謝する すぐに戻ろう
  487. 十七夜: …………
  488. ガヤガヤ…
  489. 十七夜: (ここが、自分の居場所…)
  490. 十七夜: (ああ、本当に恵まれている… こんな自分を受け入れてくれて)
  491. 十七夜: (皆のために 今の自分ができることは…)
  492. 十七夜: (そう…きっと、明るい未来を 切り拓いていくこと)
  493. 店長: あら、休憩行かないの? こんなとこでぼーっとして
  494. 十七夜: いや…少し 思いついたことがあってな
  495. 十七夜: …ということで 学生会議をよろしく頼む
  496. 十七夜: …自分も、東の人間として 参加している
  497. 東出身なのは聞いてたけど こんなのやってたんだあ!
  498. これさ、友だちにも 教えていいかな?
  499. 十七夜: もちろん…むしろ周りの人に 宣伝してもらえたら助かる
  500. 店長: あーもう、なぎたんったら そういうことね?
  501. 十七夜: すまない…事務所で宣伝は まずかっただろうか…
  502. 店長: 休憩中だし、事務所でなら 基本的に自由よぉ
  503. 店長: 宣伝なんて、相変わらず ちゃっかりしてるって思っただけ
  504. 店長: むしろ、いつも通りで安心したわ
  505. 店長: あ…それと、お店で大々的に 宣伝はできないけど…
  506. 店長: アタシのプライベートの友人で スナックを開いてる子とか
  507. 店長: 顔の広い子が何人かいるから 協力してもらう?
  508. 十七夜: 本当か…助かる…!
  509. 店長: アタシも、東西問題には いい加減飽き飽きしてたとこよ
  510. 店長: ああ、それから…
  511. 店長: もう、お店で生まれのことは 無理に隠さなくてもいいわよ
  512. 店長: もちろん、メイドの立場として 個人情報は守ってほしいけど
  513. 店長: 自分の出自を隠すなんて わけわかんないでしょ?
  514. 十七夜: おネェさま…
  515. 店長: …自分らしく生きなさい なぎたん
  516. 店長: アタシのようにねっ!
  517. 店長: このお店では、大人として アタシがアナタを守るから
  518. 店長: 好きにやんなさい
  519. 十七夜: …恩に着る、おネェさま なんだか今日は、かっこいいな
  520. 店長: あらっ、美しいって 言ってほしいわねぇ
  521. 十七夜: ふふっ
  522. 十七夜: 大切な居場所を 失わなくて良かったと
  523. 十七夜: 心からそう思ったな…
  524. みたま: ええ、本当にね…
  525. 十七夜: ただ、それを本当の意味で 痛感したのは
  526. 十七夜: また、別のときだった…
  527. 十七夜: この感謝を、後悔を… 忘れてはいけないな
  528.  
  529. FILENAME: text_312163-1.txt
  530. 十七夜: 自分は、滅びの先に 未来を見ようとしていた…
  531. 十七夜: だが、その滅びが いったい何を壊すのか
  532. 十七夜: きっと、本当の意味では 理解できていなかった
  533. 十七夜: 「それに気づいたのは 東の魔法少女に会うより… メイドカフェに戻るよりも前… 数週間ぶりに家に帰ったときだった」
  534. 十七夜: 「家に帰ることは、ずっと躊躇していた」
  535. 十七夜: 「長く留守にして、家族に心配をかけたのも 理由のひとつではあるが…」
  536. 十七夜: 「特に、弟には魔法少女であることを 勘づかれてしまっていたかもしれなかった」
  537. 十七夜: 「なにより、自分は罪を犯しすぎた…」
  538. 十七夜: 「家族は、そのことを知らないかもしれないが どこかで家族に拒絶されるかもしれない…という 恐怖心を抱いていたのだろう」
  539. 十七夜: 「それで、自分はなかなか家に帰れずに 団地の敷地内を行ったり来たりしていた…」
  540. 十七夜: (なんだか、ずいぶんと 久しぶりに帰ってきた気がする)
  541. 十七夜: (いや、実際こんなに長い期間 家を離れたことはなかったか)
  542. 十七夜: …………
  543. 十七夜: (昔から、ずっと… ここは変わらないな)
  544. こーら、もうお家に帰るわよ
  545. えぇ、もうちょっと 遊びたいよ~!
  546. 今日はみんな大好き カレーの日なんだけどなぁ
  547. え、お母さんのカレー!? 早く帰って食べよう!
  548. 十七夜: (そうか…もう夕食時か…)
  549. 十七夜: (団地に並んだ部屋から 夕食の香りが流れてくる…)
  550. 十七夜: (きっと今の子どものように 楽しみにする者がいて)
  551. 十七夜: (食事が始まれば 家族団らんの温かい時間がある)
  552. 十七夜: (それを自分は 奪おうとしていたのだな…)
  553. 十七夜: (あの騒動の中、団地の皆は 無事だったろうか…)
  554. 十七夜: (高齢の方は特に…)
  555. 十七夜: (自分は、そういうことも含めて 覚悟を決めたつもりだったが)
  556. 十七夜: (心が変われば、見方も変わる)
  557. あれ、十七夜ねーちゃんじゃん
  558. よー
  559. 十七夜: …あぁ
  560. あれ、ねーちゃん 元気ねーの?
  561. 十七夜: あ、いや…元気だぞ
  562. てゆーか 最近見かけなかったけど
  563. あ、わかった 男っしょ!男ー!
  564. 十七夜: …そんなわけないだろう
  565. …………
  566. …やっぱ十七夜ねーちゃん 今日、なんかつまんねー
  567. 早く家で飯食ってこいよ 元気になったら遊ぼうぜ
  568. ほらあれ、ごしんじゅつっての また教えてくれよなー
  569. 十七夜: …子どもは察しがいいな
  570. 十七夜: (家に帰って飯…か)
  571. 十七夜: (そんな資格…自分にはもう…)
  572. 十七夜: …………
  573.  
  574. FILENAME: text_312163-2.txt
  575. 十七夜: 自分の家の方を見ると 何度も見慣れた扉があった
  576. 十七夜: どの部屋も似たような 見た目をしているが
  577. 十七夜: どうしてか、自分の家の扉だけは 同じ見た目でも違って見える
  578. みたま: たしかに…そうねぇ…
  579. 十七夜: そして、その扉を見ながら 自分は過去を思い返していた
  580. 十七夜: 「思い出していたのは いつもそこを通っていた自分の姿」
  581. 十七夜: 「一番古い記憶は、きっと 両親と手を繋ぎ公園へと向かった日」
  582. 十七夜: 「『年上の子とケンカをして大変だった…』と 何度も両親に話を聞かされた」
  583. 十七夜: 「それから、腹の大きくなった母を見送った日」
  584. 十七夜: 「『お姉ちゃんになるんだからね…』 と言う母の言葉に 少し反抗した記憶がある」
  585. 十七夜: 「きっと、知らない誰かに 両親を奪われるような気がしたんだろうな」
  586. 十七夜: 「でも、母と一緒に帰ってきた 小さな赤ちゃんを見て、自分は幼いながらに 姉としての責任を感じていた」
  587. 十七夜: 「可愛くて小さい、この弟を 自分が守っていかなければならない…と」
  588. 十七夜: 「小学校から泣きながら帰ってきた日も」
  589. 十七夜: 「初めての宿泊学習で 不安でいっぱいだった日も」
  590. 十七夜: 「いつも、この扉を通っていた」
  591. 十七夜: 「東西のことで思い悩み 両親とケンカして家を飛び出した日も」
  592. 十七夜: 「魔法少女になり、魔女退治のために こっそり家から抜け出した日も」
  593. 十七夜: 「神浜市に滅びを与えようと… もう二度と帰らないと決意して 家を出た、あの日も…」
  594. 十七夜: 「そこには、自分の人生があった」
  595. 十七夜: 「すべてが良い思い出ではない むしろ、人間とは不思議なもので 悪いものばかりが印象強く記憶に残っている」
  596. 十七夜: 「それでも、その記憶たちは とても尊いものに感じた…」
  597. 十七夜: (ここも、もしかすると なくなっていたのかもしれない)
  598. 十七夜: (そう…自分の手によって)
  599. 十七夜: (愛する人々の営みを まるごと消そうと…)
  600. ???の声: …姉ちゃん
  601. 十七夜: ――っ!?
  602. 十七夜の弟: …そんなとこでぼーっとして 何してんだよ
  603. 十七夜: …どうしてここに
  604. 十七夜の弟: 家から見えてた
  605. 十七夜の弟: …てか、こんなところにいて 見つからない方がおかしいだろ
  606. 十七夜: …………
  607. 十七夜の弟: まぁ、いいや 早く帰るぞ
  608. 十七夜の弟: 父さんたちにはうまいこと 言ってあるし
  609. 十七夜の弟: 姉ちゃんが心配することは きっとねえよ
  610. 十七夜: …しかし、自分は…
  611. 十七夜の弟: …はぁ
  612. 十七夜の弟: 毎晩、同じ夕飯を食べるのは もう飽きたんだよ
  613. 十七夜: それは、どういう…
  614. 十七夜の弟: 姉ちゃんが帰ってこないと 俺が困るってこと
  615. 十七夜の弟: …ほら、行くぞ
  616. 十七夜: 「そして自分は、弟に手を引かれて 家の前まで辿りついた」
  617. 十七夜: 「…弟に手を引かれたのはいつぶりだったか」
  618. 十七夜: 「自分より小さかったはずの手は いつの間にか大きく、少し骨張っていて」
  619. 十七夜: 「知らぬ間に成長しているものだと… なんだか、感慨深くなった」
  620.  
  621. FILENAME: text_312163-3.txt
  622. 十七夜: 「弟に手を引かれて家へ連れていかれた自分は 戸惑う暇も与えられず… そのまま家の扉を開くことになった」
  623. 十七夜: 「今、思えば弟なりの優しさだったのだろう… 誰に似たのか、不器用なやつだからな」
  624. ガチャッ
  625. 十七夜の弟: ただいまー
  626. 十七夜: …………
  627. 十七夜の父: ――っ!?
  628. 十七夜の父: …あぁ、十七夜も一緒だったのか
  629. 十七夜の父: …おかえり
  630. 十七夜の母: …おかえりなさい
  631. 十七夜: …………ただいま
  632. 十七夜の父: …ほら 早く手を洗っておいで
  633. 十七夜の父: 少し早いけど夕飯にしよう …腹、減ってるだろう
  634. 十七夜の母: 今日はね、お父さんが カレーを作ってくれたのよ
  635. 十七夜: (父さんのカレー…か なんだか懐かしいな…)
  636. みんな: 「いただきます」
  637. 十七夜: …………
  638. 十七夜の母: あら、食べないの?
  639. 十七夜: …いや…
  640. ぐ~ぎゅるるるる…
  641. 十七夜の弟: …腹、鳴ってんじゃん
  642. 十七夜: (そういえば ずっと…食べていなかった)
  643. 十七夜: (神浜市の人々が飲食を できないようにしたあの日から)
  644. 十七夜: (罪悪感だったのか 腹も空かなかったが…)
  645. 十七夜: (今になって…)
  646. 十七夜: (そうか…自分も 魔法少女である前に人間か…)
  647. 十七夜: …いただきます
  648. ぱくっ
  649. 十七夜: …うまい…
  650. 十七夜の父: そうか…なら良かった
  651. 十七夜の父: 昔、母さんが出産で 家にいなかった頃があったろ
  652. 十七夜の父: あのとき、十七夜が美味しいと 言ってくれたから…
  653. 十七夜: な…そんな、昔のこと…
  654. 十七夜: 自分だって… もうよく覚えていないのに…
  655. 十七夜の弟: だから姉ちゃんが帰ってくるまで うちはカレー三昧だったってわけ
  656. 十七夜の弟: …いつ帰ってきてもいいようにさ
  657. 十七夜の父: こ、こら…! それは言わない約束だろ!
  658. 十七夜: …っ
  659. 十七夜: そうか…
  660. 十七夜: 自分は、この日常ごと 神浜市を消し去ろうとしていたのか
  661. 十七夜: 幼い頃に、一度好きだと言ったカレーを 今も忘れずにいてくれるような… 自分を心から愛してくれる家族まで…
  662. 十七夜: ああ…自分はこのカレーが好きだった
  663. 十七夜: 父さんがたまに作る、野菜が大きくて無骨で… 愛情が詰まった、このカレーが
  664. 十七夜: …そして、やたらと甘いのは… そうか…
  665. 十七夜: 父さんの中ではきっと、自分はあの頃の…
  666. 十七夜: 母さんの帰りを待つ幼い娘のままなのか
  667. 十七夜: なんて…なんて自分は罪深いんだ
  668. 十七夜: 平等のため、皆のためなどど息巻いて 結局は、一番近くにあった大切なことが 見えていなかった…
  669. 十七夜: こんなに大切な家族を傷つけ こんなにも、大切に…愛されていた自分の命を 投げ出そうとしていただなんて…
  670. 十七夜: …………
  671. 十七夜の父: …もう食べ終えたか
  672. 十七夜の父: おかわりはいるか?
  673. 十七夜: …………ああ
  674. 十七夜: …頼む
  675. 十七夜の母: あ、そうだわ
  676. 十七夜の母: 食後には、十七夜の好きな フルーツポンチもあるわよ
  677. 十七夜: …それが好きだったのは ずいぶんと昔のような
  678. 十七夜の母: あら、そうだったかしら
  679. 十七夜: ふっ…
  680. 十七夜: いや、今も大好物だったな
  681. 十七夜の弟: あーあー 姉ちゃんばっかずりーなー
  682. 十七夜の母: じゃあ、明日はあなたの 好きなものにしましょう
  683. 十七夜: 好きなもの… ボーロ…だったか…?
  684. 十七夜の弟: はぁ!? マジでいつの話だよ!
  685. 十七夜: …そんなに昔か?
  686. 十七夜の弟: 姉ちゃん、俺のこと いくつだと思ってんだよ…
  687. 十七夜: そうか…いつのまにか お前も大きくなってたんだな
  688. 十七夜の弟: っだぁ! なでんなって!おい!
  689. 十七夜: (あぁ、失わなくて良かった)
  690. 十七夜: (…だが、これですべてが 終わったわけじゃない…)
  691. 十七夜: (東西問題だって、まだ 何も解決してはいない)
  692. 十七夜: (この幸せを守るために… 自分は…)
  693.  
  694. FILENAME: text_312163-4.txt
  695. 十七夜: 自分は、滅びの先にある 平等な未来を目指していたが …それは、大きな過ちだった
  696. 十七夜: 確かに、滅びによって人々は 東西など関係なく手を取り合ったかもしれない 平等な未来は、訪れたかもしれない
  697. 十七夜: その大義のためであれば 多少の犠牲は仕方ないと信じこんでいた
  698. 十七夜: だが、憎むべき不平等を生んだこの神浜市には 自分が愛すべき人々が大勢いて 犠牲にしていいものなど 本当はなにひとつなかった
  699. 十七夜: それは、投げ出そうとしていた 自分の命も同様に…
  700. 十七夜: だから、自分が望むべき未来は…
  701. 十七夜: 自分たちは 多くの過ちを犯した…
  702. 十七夜: それでも そんな自分たちは生かされ
  703. 十七夜: こうして、生きて贖罪をする チャンスが与えられた
  704. みたま: ええ、あの頃のわたしたちは 悲しみに飲みこまれて
  705. みたま: 滅びの未来を 望んでしまったけれど
  706. みたま: 今、わたしたちの前には 違う未来への道が開かれてる
  707. みたま: 求めるものは、今も昔も きっと変わっていないけど
  708. みたま: その道筋が大きく変わった…
  709. みたま: わたしたちは もう、滅びを経ることなく
  710. みたま: 神浜市の幸せな未来を 求めることができる
  711. 十七夜: ああ… 東西を結ぶ学生会議
  712. 十七夜: それを通して、自分たちは 新たな未来を切り拓ける
  713. 十七夜: 今度こそ、自分たちの力で
  714. 十七夜: …いや、違うな
  715. 十七夜: 神浜市の人々みんなで この町に平等をもたらそう
  716. みたま: そうねぇ
  717. 十七夜: さて、思い返すのはここまでだ さっそく企画について話し合おう
  718. みたま: ああ、そうだったわ 何がいいかしらぁ
  719. みたま: テーマはひとつ決めてるのよ
  720. 十七夜: ふむ…なんだ?
  721. みたま: 学生会議も まだ始まったばかりでしょ?
  722. みたま: だから“みんなで作る” これをひとつのテーマにしたいの
  723. 十七夜: みんなで作る、か…
  724. 十七夜: 確かに、神浜市の未来も みんなで作るものになるからな
  725. 十七夜: ならば手始めに 運動会とかはどうだろう?
  726. 十七夜: 大人数で参加ができて 楽しいスタートを切れそうだろう
  727. 十七夜: それに体を動かせば、 自然と距離も縮まるはずだ
  728. みたま: それもいいわねぇ
  729. みたま: あ、お祭りとかはどう? 屋台を出したりして!
  730. みたま: わたしは、たこ焼き屋さんでも やろうかしらぁ
  731. 十七夜: なっ!?
  732. みたま: 先生なら、きっと美味しい 作り方を知ってるだろうし
  733. みたま: 電話して聞いてみようかしら
  734. 十七夜: 料理…もいいが…そうだ キャンプはどうだろうか
  735. 十七夜: キャンプファイアーで 踊る…とかな
  736. みたま: キャンプファイアー!
  737. みたま: なんだかロマンスが 生まれそうな響きねぇ
  738. みたま: あ…そう、そうよ!
  739. 十七夜: む…? 何か思いついたのか?
  740. みたま: やっぱり大事なのは “ロマンス”だったりしない?
  741. 十七夜: ロマンス…か… なんだか八雲らしいな
  742. 十七夜: ふっ…だが、そんなのも いいのかもしれない
  743. みたま: そういえば、弟の壮月君には ロマンスとかないの?
  744. 十七夜: な…自分の弟にか!?
  745. みたま: そうそう、恋人がいるとか そんな話は聞かないの?
  746. 十七夜: 恋人か…うむ… いてもおかしくはない、のか…
  747. 十七夜: 姉弟で恋バナなど なかなかしないからな…
  748. 十七夜: そういう八雲も みかげにそういう話は…
  749. みたま: え…ミィが…!?
  750. 十七夜: 最近の小学生は早いと聞くぞ
  751. みたま: うーん…でも、まぁ そのときは
  752. みたま: ミィの恋人に相応しいか わたしたちが見極めないとねぇ
  753. みたま: …って、やだ すぐ話が脱線しちゃうわね
  754. 十七夜: …まぁ 自分らの未来は、まだ長い
  755. 十七夜: 焦らず進んでいけばいいさ
  756. みたま: ふふっ、そうねぇ
  757. みたま: あ、じゃあ… こんなのはどうかしら
  758. 十七夜: 共に進もう、 神浜市の未来のために
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