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- FILENAME: text_312161-1.txt
- みたま: いらっしゃーい 調整屋さんへようこそぉ♪
- みたま: って、あらぁ十七夜じゃない 来てくれたのねぇ
- 十七夜: うむ、呼ばれたからな
- 十七夜: …それで、今日は何の用だ 相談があると聞いていたが
- みたま: ええ、神浜学生会議の イベントについてよぉ
- みたま: 東西とか関係なく みんなで交流するために
- みたま: ハロウィンのイベントを 開かないかって話したでしょ?
- みたま: やっと、いろんな状況が 落ち着いてきたから
- みたま: そろそろ内容を 決めないとなぁって思ったの
- 十七夜: うむ…確かにそうだな
- みたま: このイベントを成功させて 新しい未来への一歩にしましょ
- 十七夜: 新しい未来…か
- 十七夜: ならば、罪深い過去を糧とし 同じ過ちを繰り返さないためにも
- 十七夜: かつて見ていた未来を 振り返っておくか
- みたま: 過去の自分を反面教師に するってことね
- 十七夜: うむ…
- 十七夜: あの頃の自分たちは
- 十七夜: 今のような未来が訪れるとは 思っていなかった
- 十七夜: 「ただ、悲しみに呑まれていただけだからな」
- みたま: そうね…見ていた未来も 今とは大きく違っていたわ
- みたま: わたしは、いずれ訪れる滅びを
- みたま: これ以上、苦しむ人が 増えないうちに与えようとした
- 十七夜: 自分も滅びの果てにある 平等な未来を求めて
- 十七夜: 多くの罪を犯し…傷つけた…
- ドサッ…
- 十七夜: ハァ…ハァ…
- うぅ…
- 苦しい…痛い…
- 殺してくれ…
- 何も見えない…
- 十七夜: ハァ…ハァ…
- 十七夜: …………
- 十七夜: やって…しまったのか… 自分は、人間を相手に…
- 十七夜: …………
- 十七夜: 「滅びによって訪れる平等な未来」
- 十七夜: 「明確に、その未来を描いたのは 人に手をあげたあの夜だったか…」
- 十七夜: 「あの一件を通して、自分は ずっと選択肢にいれないようにしていた “滅び”に手を付けることを決めてしまった…」
- FILENAME: text_312161-2.txt
- 十七夜: 「かつての自分が求めていたのは…」
- 十七夜: 「滅びの果てに訪れる平等な未来」
- 十七夜: 「未来の人々が、それを享受できるのなら 今の神浜市を犠牲にしても構わなかった」
- 十七夜: 「だから、ネオマギウスについた自分たちは 理想を叶えるためならばと 姫君の作戦に乗るのをためらわなかった」
- 十七夜: 「たとえ作戦の内容が 神浜市に生きる人々から飲食の自由を奪い 魔法少女に屈するように力を誇示するという 非人道的なものだったとしてもだ」
- 十七夜: 「振り返れば、どこかで踏んぎりのつかない 気持ちがあったのも確かだが 不平等によって襲いかかる数々の不幸が 自分に決意させてしまった」
- 十七夜: 「姫君の作戦を飲んだ上で すべてを滅ぼして平らげることこそが 神浜市に平等を与えるのだと…」
- ひめな: 苦戦はしたけど 作戦も成功続きだね、キャハッ★
- ミユリ: ですですぅ!
- ミユリ: ネットの配信で魔法少女の話を 湯国市の学生にしてもらって
- ミユリ: その上、謝罪までさせましたから SNS上でも大バズりですぅ!
- 燦: バズる…というか炎上してない? 少しやりすぎたかもしれないわね
- ひめな: まぁ、やりすぎぐらいが ちょうどいいんだってー!
- 十七夜: 魔法少女の強さは 示せたんじゃないか
- みたま: ええ…効果的な配信に なったと思うわぁ
- ひめな: そゆこと! 残る作戦もあと少し!
- ひめな: 魔法少女の存在については 事前に各メディアに知らせてるし
- ひめな: あとは目の前で本物を見せつけて 現実だって信じさせるだけ
- 燦: ただ、ユニオンを始めとした 魔法少女たちが邪魔になるわね
- ひめな: …まぁ、排除するための 最終手段はあるけど
- ひめな: むしろ戦いを見せつけた方が 力を誇示できてよくない?
- 燦: …それもそうかもしれないわね
- 十七夜: …姫君、その後の 作戦についてだが…
- ひめな: ん、わかってるよ
- ひめな: …でも、本当にやる気? なぎりん
- 十七夜: ああ、愛する町の未来のためだ
- 十七夜: 「こうした未来が訪れた場合に 思い描いていたのは 自分が人々にとって共通の敵となることだった」
- ひめな: んで、なぎりんの作戦って どんな感じだっけ
- 十七夜: ああ、魔法少女の力を 見せつけた…その後の話だ
- 十七夜: これだけの準備をしても そう簡単に人々は屈しないだろう
- 十七夜: そこで自分が神浜市民にとっての 脅威として君臨できればと思う
- ひめな: ふんふん…
- 十七夜: 「つまりは、神浜市長選などといった この町で起きたすべての罪を自分が被り 人々の恨みを自分に集中させたいということだ」
- 十七夜: 「その際、ネオマギウスのメンバーを借り 自分が羽根たちを操って 神浜市を破壊しているという構図を作りたい」
- 十七夜: 「その中で姫君は 正気を保った魔法少女として羽根と戦い 人々が自分を討てるように 仕向けてもらいたいと思っている」
- 十七夜: 「少しクサいが、自分が悪の魔法少女になり 姫君が正義の魔法少女として人に味方すれば 今後、人の上に立ちやすいはずだ」
- 十七夜: 「それでも、人を御せない場合や 作戦を始める前に自分が敗れたときは このまま恐怖で支配してやればいい」
- ひめな: …確かに 作戦が成功したおかげで
- ひめな: もう魔法少女って かなり恐怖の対象だからねー
- ひめな: あとは、恐怖と畏敬のどちらに 振るかって感じだよね
- ひめな: ただ、こっちが良く見えるのは ぶっちゃけ助かるけどさ
- ひめな: それってなぎりんは ワンチャン殺されない?
- ひめな: 討てるようにとか言ってるし ワンチャンどころじゃないけど
- 十七夜: …それが、目的だ
- ひめな: は…罪悪感で自殺とか そういうの私チャン許さないよ?
- 十七夜: …その気持ちがまったくない とは言いきれないが…
- 十七夜: 目的は神浜市の未来にある
- 十七夜: 自分という敵を倒すために人々が 一致団結することで
- 十七夜: あの、巨大な魔女によって起きた 災害の後のように
- 十七夜: 東西関係なく力を合わせられたら 滅びの後に残るのは平等だろう
- 十七夜: そのために自分の命を使うなら 惜しくはないというものだ
- FILENAME: text_312161-3.txt
- 十七夜: 「町を破壊され、強さを見せつけられ それでも尚、抵抗しようとする人々の前に 自分が最後に立ちはだかり、殺される」
- 十七夜: 「それこそが、自分の考える 人々に手を繋がせる方法であり 最期に果たそうとしていた一手だった」
- アイツら、ずっと町を壊してる… どうなってんだよ…!
- テレビのドッキリとか そういうのじゃねえのかよ…
- でも、実際に町が壊されてる… 夢…なんかじゃないわよね
- わけわかんねえよ…!
- 俺だってわかんねえ…けど ヤツらが町を壊してるなら…
- 早く助けを呼ばないと…!
- …っ、こんなの許されない!
- 魔法少女って…なんなんだ… 俺たちになんの恨みが…
- ひめな: 羽根ちゃんたち すごい頑張ってんじゃん
- ひめな: 本当に洗脳しちゃってる? ってレベルだもん
- ミユリ: ですですぅ! 迫真の演技ですぅ!
- 燦: ちょっと手ぬるさはあるけど 人間たちには効いてるみたいね
- 十七夜: …姫君、あの作戦を決行しよう
- ひめな: まぁ、そうなるよね
- 十七夜: 羽根たちの頑張りも 無駄にしたくはないからな
- ひめな: …ん、わかった ヒコ君的にもOKだってさ
- みたま: …わたしも行かせてもらうわ
- 十七夜: では、自分たちは今をもって ネオマギウスから離脱する
- 十七夜: あとのことは頼んだぞ
- 警察は、いったい 何をしてるんだよ…!
- もう通報はしたわ!
- だけど、道も アイツらに壊されたみたいで…
- クソ… どうしろってんだよ
- てか結局、街頭で演説をしてた ひめなってやつが黒幕か?
- それしかないわよね…
- 警察なんか待ってたら 私たちまで危ない…
- 俺たちで立ち向かうしか ないんじゃねえの
- 無理よ、あんなの…!
- 警察を待てないなら ここから逃げましょうよ…!
- つったって、このままじゃ 神浜市が壊されちまうぞ…!
- ああ、立ち向かうしか…
- 十七夜の声: …そうだ、立ち向かえ
- あ、あれ…
- 十七夜: なぜなら、お前たちが恨むべき 魔法少女は、自分だからな
- ど、どういうことだよ!
- 十七夜: 「自分こそが、そこの魔法少女たちを操り 神浜市を破壊させ お前たちを苦しめている魔法少女ということだ」
- 十七夜: 「お前たちが飲食を封じられたのもそう… すべては自分の魔法によって 引き起こされたことに過ぎない」
- 十七夜: 「神浜市長選のことも、そうだ 自分が市長を洗脳し、東西の関係が 悪化するように仕組んだ」
- ハァ!? どうして、そんなことするんだ!
- 十七夜: なぜって… おかしなことを聞くな
- 十七夜: 理由など、ひとつしかないだろう
- 十七夜: 大嫌いな、この神浜市を 滅ぼしたいから…それだけだ
- わけわかんねぇ…
- やっぱり、魔法少女なんて ヤバい奴しかいないのよ!
- ひめなの声: ちょっと待ったーっ!
- また魔法少女かよ…! しかも演説の…!
- ひめな: 待って待って? 私チャンは、みんなの味方だって
- ひめな: 演説でも言ったと思うけど 私チャンたちに攻撃の意思はない
- ひめな: 「私チャンたちは、ただ魔法少女が 人を守ってる、人よりすごい存在だって わかってほしいだけなんだってば」
- ひめな: 「本当は、もっと穏やかな方法でみんなに 伝えたかったんだけどさ そこの魔法少女に操られちゃったの」
- ひめな: 「そこで暴れてる羽根ちゃんたちもそう… 本当は、神浜市を破壊したくなんてない… ただの優しい魔法少女たちなのに…!」
- ひめな: 「でも、直にあの子たちも洗脳がとけるから きっとみんなの力に…」
- けど、お前ら同じ魔法少女だろ 結局どっちも悪人で…
- ひめな: 魔法少女ってだけで 一括りにすんのはよくなくない?
- ひめな: みんなだけで町を守れるなら 私チャンは手出ししないけど~
- ひめな: 「いいの?このままじゃみんなの神浜市 あの子たちに壊されて、なくなっちゃうよ? 私チャンたちが力を貸すって言ってる間に 協力した方がよくなくなくない?」
- …その子の言う通りかもしれない
- おい…正気か!?
- 警察はなかなか来ない… 来たって、魔法少女に敵う?
- あなただって あの配信を見たでしょ!?
- 悔しいけど、普通の人の力じゃ 彼女たちには太刀打ちできない…
- それなら、今あの黒幕だって子に 対抗できるのは魔法少女しかない
- ひめな: ねぇ、なぎりん 本当にこれで良かったの?
- 十七夜: ああ、いい …残りも手はず通り頼む
- あの子に頼るしかないわ
- 十七夜: …ふふ、その通りだ
- 十七夜: だが、魔法少女と言えども 羽根たちはもはや満身創痍
- 十七夜: まともに動けるのは そいつらしかいないぞ
- 十七夜: それで 自分たちに勝てるつもりか?
- 私たちは直接戦えないけど… でも、やれることはあるはず!
- ねえ…! そこのあなた!
- ひめな: ん? 私チャンのこと?
- できることがあったら言って! 力になるから!
- 私たちも町を守りたいの!
- ひめな: お、だったら作戦があるからさ
- ひめな: あとでちょっと 作戦会議しよっか!
- ええ、わかったわ!
- 十七夜: ふむ、いい心意気だ…!
- 十七夜: さあ、かかってこい! 自分の命は、この宝石だ…!
- FILENAME: text_312161-4.txt
- 十七夜: 「そして、自分たちは破壊の限りを尽くす」
- 十七夜: 「姫君が人間側についたことで 人々には少しの余裕が生まれて 少しずつ東西で手を取り合っていく」
- 十七夜: 「そして、自分は人々に極悪人として 追われ、命を狙われつづける」
- 十七夜: 「それが何時間、何日かかるか… どれだけかかっても構わない」
- 十七夜: 「西を破壊し、東を破壊し 逃れに逃れ、限りない破壊を続けたあとには」
- 十七夜: 「きっと、こんな未来が訪れる」
- 機動隊が到着したぞー!
- やっとか…!
- ひめな: じゃあ、私チャンたちが なぎりんを抑えるから…!
- ひめな: 作戦どおりよろしくね!
- ええ、任せて!
- 「君たちは完全に包囲されている!」
- 「投降しないのであれば すでに発砲の許可も下りている!」
- 早く撃て―!
- そうよ、あいつらが 私たちの町を…!
- 西と東と暴れまわってくれたけど 協力しあったおかげで
- ようやくここまで アイツらを誘導できたんだから!
- さっさと撃ってちょうだい!
- おいおい水名のヤツのくせに 口が悪いんじゃねえの?
- 今は東も西も、もう 関係ないでしょうが…!
- ああ…おれたちの 神浜市を守らないとな!
- 十七夜: ふっ、すごいな…八雲
- みたま: ええ、あのときの… 災害後の神浜市みたいね
- 十七夜: これなら、きっと大丈夫だ
- 十七夜: 滅びの果てに 平等が訪れるだろう…
- みたま: …えぇ
- 十七夜: さて、そろそろ行ってくる
- 十七夜: …先に行くぞ、八雲
- みたま: 気をつけてね…って言うのは 違うかしらねぇ
- 十七夜: ふっ、そうだな…
- 十七夜: だが、魔女にならんようにだけは 気をつけないとな
- みたま: …わたしも すぐに行くわ、十七夜
- 十七夜: ああ、地獄でまた会おう
- 「撃てーっ!」
- 十七夜: 神浜市の人々が力を合わせて 自分を殺そうとしている…
- 十七夜: きっと、自分を殺した後は手を取り合い 喜びを分かち合うのだろう…
- 十七夜: それでいい…自分の死で 神浜市に平等な未来が訪れるのであれば…
- 十七夜: 未来の神浜市に 希望が残るのならば…
- 十七夜: ぐっ…う…っ
- 十七夜: …忘れる、な
- 十七夜: これが東西で掴んだ…勝利だ!
- ターーーン
- 十七夜: っあ…
- パリン
- 十七夜: …しかし そんな未来は訪れなかった
- 十七夜: 今思えば、訪れなくて 良かったのだがな…
- みたま: そうね…わたしたちは 救われたものね…
- 十七夜: ああ、みかげの仲良し大作戦や 多くの人の力によってな
- みたま: 先生にも助けられた 魔法少女のみんなにも…
- 十七夜: そう…しかし、自分たちは 罪を重ね過ぎた…
- 十七夜: 故に、この場所に戻ってくるのに 気が引けていた…
- みたま: 東の子たちに会いに行ったときは ユニオンに戻る気かと思ったわ
- 十七夜: 東の問題の渦中にいるのは 同郷の彼女たちなら同じはず…
- 十七夜: その上、これまでの信頼も 無碍にしてしまったからな…
- 十七夜: 殺される覚悟で 真っ先に謝罪しに行っただけだ
- みたま: でも、十七夜はここにいる
- 十七夜: うむ…
- 十七夜: ユニオンに戻れたのも 学生会議に参加できているのも
- 十七夜: いま思えば あの時のおかげかもしれない…
- 十七夜: 本当なら、 とうに死んでいたはずだった
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- 十七夜: すべてが終わったあと…
- 十七夜: 自分は、東の魔法少女たちに 改めて会いに行った
- 十七夜: …けじめをつけるためにな
- 十七夜: …本当に申し訳なかった
- 十七夜: 東のリーダーでありながら ネオマギウスに行ったこともだが
- 十七夜: 何より、自分はこの神浜市を 滅ぼそうとし…
- 十七夜: 君たちの家族まで 命の危険にさらしてしまった
- 十七夜: 飲み食いができないのは つらかったはずだ…すまない…
- 相野 みと: で、でも結果的に みんな大丈夫だったし…
- 十七夜: …だが、それだけではない
- 十七夜: 神浜市の魔法少女たちを 皆殺しにするのを黙認していた
- 相野 みと: …………
- 十七夜: 直前で止めはしたが その件については知ってるだろう
- 伊吹 れいら: …あとから聞きました
- 十七夜: 最終手段ではあった…
- 十七夜: それに、自分もできれば したくないとは思っていたが
- 十七夜: その作戦を了承したのは事実だ
- 桑水 せいか: …………
- 十七夜: 許されるなどとは 到底、思っていない…
- 十七夜: 殺されても構わない覚悟で 自分はここに来た
- 十七夜: …ただ、わがままではあるが
- 十七夜: 今度こそ真っ当な手段で 平等な未来を築くために…
- 十七夜: 未来の神浜市を担う そのひとりになりたい…
- 十七夜: 自分本位であることは 百も承知だ…
- 十七夜: …だから けじめをつけさせてくれるなら
- 十七夜: 自分を殴るなりなんなり…
- 千秋 理子: えっ…そ、そんなこと…
- 十七夜: しかし…このままでは 自分も前に進めない…
- 相野 みと: そんなこと言われたって…
- 眞尾 ひみか: …………
- 相野 みと: ひみかちゃんも なんとか言ってよぉ…!
- 眞尾 ひみか: …私は、怒ってますよ はらわたが煮えくり返るくらい
- 十七夜: …うむ、それが当たり前だ
- 眞尾 ひみか: …弟や妹がお腹が空いたって 私に言って泣いてたんです
- 眞尾 ひみか: 普段は泣かないあの子たちが 弱々しい声で泣いていて…
- 眞尾 ひみか: うちは、元から貧しいですけど
- 眞尾 ひみか: それでも、あの子たちに ひもじい思いだけはさせないよう
- 眞尾 ひみか: 父も私も なんとか頑張ってきました
- 眞尾 ひみか: それなのに、水も飲めないから 次第に声も掠れて…っ
- 眞尾 ひみか: 死んじゃうかもしれないって 本気で思ったんですよ…!?
- 十七夜: …………
- 眞尾 ひみか: でも、十七夜さんとみたまさんが
- 眞尾 ひみか: どんな想いで生きてきたのか… 過去の話を聞いてわかりました…
- 眞尾 ひみか: やったことはひどいですし 許せることじゃありません…
- 眞尾 ひみか: …だけど、同時に十七夜さんの 気持ちもわかってしまうんです
- 眞尾 ひみか: だって、家族が生まれを理由に いじめられたりケガさせられたり
- 眞尾 ひみか: そんなことが起きれば、私だって 同じことをしたかもしれない…
- 眞尾 ひみか: 怒りに…悲しみに呑まれて すべてを恨んだと思います
- 眞尾 ひみか: 正義感の強い十七夜さんなら 特に、許せなかっただろうなって
- 眞尾 ひみか: したことは許せないのに わかってしまうんです…
- 伊吹 れいら: …私たちもです
- 伊吹 れいら: 神浜市の魔法少女たちが 強い絆で結ばれていたとしても
- 伊吹 れいら: プロミストブラッドの策略で 西の魔法少女たちを疑った…
- 桑水 せいか: …それだけ、東西の問題は 根深くて深刻だったから…
- 相野 みと: …だとしても、私が すごく悲しいと思ったのはね
- 相野 みと: 十七夜さんが私たちに 何も言ってくれなかったことだよ
- 十七夜: な…
- 眞尾 ひみか: そうなんです… 許せないのは、そこもなんです
- 眞尾 ひみか: 私たちは、同じ東の魔法少女 同じ境遇で生きてきた仲間です
- 眞尾 ひみか: それなのに、何も言わずに 行ってしまったから…
- 伊吹 れいら: はい…頼ってもらっても、何も できなかったかもしれないけど
- 伊吹 れいら: 少なくとも私たちは 悲しみを共有できたはずです…
- 千秋 理子: やっぱり私たちじゃ 頼りない…ですか?
- 十七夜: そうじゃないが… しかし…
- 眞尾 ひみか: 言い訳はいりません
- 眞尾 ひみか: …いいから、そこで 歯を食いしばってください
- 伊吹 れいら: え、え、ひみか 何するつもり…!?
- 眞尾 ひみか: けじめ…必要なんですよね
- 十七夜: …………あぁ 一思いにやってくれ
- 十七夜: …………
- 眞尾 ひみか: …………
- 十七夜: ん…?
- 眞尾 ひみか: 隙ありです!
- 十七夜: ぬわっ!?
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- 眞尾 ひみか: 隙ありです!
- 十七夜: ぬわっ!?
- 十七夜: なぜデコピンを…
- 眞尾 ひみか: 少し前に、時雨ちゃんと はぐむさんが同じように来ました
- 十七夜: な…宮尾君と安積君が…!?
- 時雨の声: …そんなに驚かなくても…
- 十七夜: …どうしてここに…
- はぐむ: その…こうなったのも元は 私たちのせいですし…
- はぐむ: それに、十七夜さん 覚えてませんか…?
- はぐむ: 私たちがマギウスの翼から 戻ってきたときに
- はぐむ: 東のみんなのところに 挨拶に連れて行ってくれて…
- はぐむ: 贖罪だって…デコピンを 私たちにしたこと…
- 時雨: それで、ぼくには不意打ちで いじわるしたんだよね…
- 十七夜: あ…
- 眞尾 ひみか: 本当なら時雨ちゃんが仕返しを するのが筋ですが
- 眞尾 ひみか: 自分たちも悪いからって 代わりにやらせてもらいました
- 時雨: そこまで バラさなくたっていいのに…
- 時雨: …………
- 時雨: 結局、ユニオンからは あのあと離れちゃったし…
- 時雨: 十七夜さんからの恩を 仇で返すことになっちゃったけど
- はぐむ: でも…あのとき、私たち すごく救われたんです…
- 時雨: 十七夜さんは、ぼくらより 責任感も強いから…
- 時雨: きっと今回のことを、すごく 気に病んでるだろうなって
- 眞尾 ひみか: 時雨ちゃんたちも 大泣きしてましたけどね
- 時雨: …っ、だ…だって… 悪いと…思ってたから…
- 時雨: 皆殺しとか飲食の暗示とかは 確かに知らなかったけど
- 時雨: もう、それを言い訳に 逃げるぼくじゃ…ないから…
- 時雨: だから、ごめんね…十七夜さん 巻き込んじゃって…
- 時雨: …背負わせて、ごめんなさい
- 十七夜: …………
- 伊吹 れいら: …十七夜さんたちのしたことは きっと許されないです
- 伊吹 れいら: でも 私たちは気持ちが分かるから
- 相野 みと: うん、だから…一緒に 未来を作っていこう…!
- 桑水 せいか: …十七夜さんと一緒なら 頑張れると思う…から
- 千秋 理子: はい、頼れるお姉さんです!
- 眞尾 ひみか: ええ、弟や妹の生きる未来を 明るく照らすには
- 眞尾 ひみか: きっと、光も闇も知っている 十七夜さんの力が必要なんです
- 眞尾 ひみか: 簡単には許せないけど… それでも…
- 眞尾 ひみか: 私たちは、また十七夜さんと 手を取り合いたいと思ってます
- 眞尾 ひみか: これでもまだ、けじめが必要って うじうじするつもりですか?
- 十七夜: …………いや
- 十七夜: ありがとう、みんな…
- 相野 みと: うん…!
- 相野 みと: これで、とりあえずは 一件落着だね!
- 伊吹 れいら: まあ、いろいろと 課題は残ってると思うけどね
- 桑水 せいか: …私たち以外とも…きっと 話す必要がある…だろうから…
- 眞尾 ひみか: あ…そうです! また、開きましょうよ!
- 眞尾 ひみか: みんなで話すために!
- はぐむ: 開くって何を…?
- 時雨: あ…もしかして…
- 眞尾 ひみか: お帰りなさい会…ですよ!
- 十七夜: そしてお帰りなさい会では 魔法少女だけでなく
- 十七夜: 地域の学生たちにも 謝罪をすることができた
- 十七夜: もっとも、学生たちは 洗脳について事実を知らない
- 十七夜: 魔法少女についても 明かせていない以上は
- 十七夜: ほとんど 自己満足のようなものだった
- 十七夜: それでも、関わりあうことで 学生会議の話をしたり
- 十七夜: これからの神浜市についての 話ができた
- 十七夜: 様々な想いはあれど、皆 明るい未来を描くのは変わらず
- 十七夜: 手を取り合っていけそうだと 希望を見ることができた
- 十七夜: あそこで、謝れる機会を もらえたからこそ
- 十七夜: こうして学生会議のイベントを 開くほどまでに地域の学生たちと
- 十七夜: 近づくことができたのだと思う
- 十七夜: そう考えれば、改めて その機会をくれた眞尾君たちにも
- 十七夜: こんな自分を受け入れてくれた 学生たちにも…
- 十七夜: 自分は、感謝しないといけないな
- みたま: ええ、そうね
- 十七夜: …つくづく、自分は周りの人間に 恵まれていると感じる
- 十七夜: メイドカフェでのできごとも そのひとつだな…
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- 十七夜: 「東の魔法少女たちとの一件もそうだが メイドカフェでのできごとは この町を滅ぼさなくて良かったと そう思えるものだった」
- 十七夜: 「そして同時に、自分の罪深さを 痛感させられるできごとでもあった」
- 十七夜: (メイドカフェのことも けじめをつけねば…と)
- 十七夜: (裏口近くまで来たのは いいものの…)
- 十七夜: (連絡への返事も長いこと していないし入りづらいな)
- ガサッ
- なぎ…たん…?
- 十七夜: 「そこにいたのは、自分が滅びへと振りきれる 理由のひとつとなる事実を教えてくれた あの、メイドの先輩だった」
- まって、なぎたん
- 十七夜: む…?
- …あのね、このお店… 少し前から、脅されてるの…!
- 大東区の人を雇うなって 脅してきたのは本当…
- でも、おネェさまは その脅しを拒んでる状態
- まだなぎたんのことは バレてない…
- だけど、別のお店で バレたところもあって…
- 十七夜: まさか、あの休業中の…! アレは襲撃を受けての…!?
- …………
- だからお願い! お店を辞めろとは言わない!
- でも、出身地だけは 絶対に口外しないでっ…!
- 十七夜: …………ああ、当然だな 約束しよう
- …………
- …うっ…うぅ…
- 十七夜: なぜ泣く…
- だってぇ…
- ごんなこどお願いされる なぎたんが可哀想でぇ…
- 十七夜: 「父は東だからと採用を取り消しになり 弟が痛めつけられた…そのあとだったから 余計に、その事実は自分にとって大きかった」
- なぎた…なぎたん…!
- うわぁぁあん… ごめんねえぇ…!
- 十七夜: え…あ…
- 私があんなこと言ったから なぎたん居なくなっちゃったって
- ずっとずっと…後悔してたの…っ
- 連絡しても返事ないし… 無事でよかったよぉ…
- 十七夜: …っ、すまない… 心配をかけてしまって…
- ???の声: ちょっとぉ、いったい なんの騒ぎかしらぁ?
- 十七夜: あ…
- 店長: アナタ、いったい今まで どこで何を…!
- 店長: …いや、それより… また会えて良かったわ…
- 店長: その子にいろいろと聞いた… 店長であるアタシが
- 店長: もっとしっかりしなくちゃ いけなかったわね…
- 十七夜: いや…店長は何も…! 自分が、ただ…
- 店長: …………
- 店長: そうだ、ここに来たってことは 何か話があったのよね
- 十七夜: …あぁ
- 店長: もうすぐお店も閉まるから 少し事務所で待っててもらえる?
- ぐすっ…みんな心配してたから 会えたら喜ぶよ…!
- 十七夜: え、いや…自分は…
- 十七夜: (謝って、辞めることだけ 伝えられれば…)
- なぎたん…!? 帰ってきてくれたの!?
- みんな心配してたんだよ…!
- 十七夜: …いや、自分は…
- 十七夜: (困った… どう切り出せばいいものか…)
- それに、なぎたんがいなくて いろいろと大変だったんだから!
- ご主人様たちもね みんな会いたがってたよ
- 十七夜: ――っ!?
- ずっとお休みしてたから 体調とかも気にしてて
- ほら、お手紙も こんなにいっぱいあるんだよ
- ドサッ
- 十七夜: …こんなに…?
- ずっとお休みって聞いて心配です… また、お店に来てくれたら嬉しいです! でも、なぎたんの元気が一番だから 無理はしないでね!
- なぎたんには、いつもパワーもらってます! だから今度は、私たちがなぎたんに パワーを送れたらいいなって…届け~~! なぎたんが元気でいてくれたら 私は、それだけでとっても幸せなので!
- 十七夜: …………
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- 十七夜: こんなに多くのご主人が 自分を…?
- 店長: そうよ
- 十七夜: 店長…
- 店長: まったく…アナタの 無断欠勤で大変だったのよ
- 店長: って話は、もうみんなから 聞いてるかしらね
- 店長: だから…
- 十七夜: …あぁ、責任を取って…
- 店長: バリバリ働いてもらうわね!
- 十七夜: え… 自分は…辞めるつもりで…
- 店長: あら…辞めたいの…?
- 店長: それなら、無理に止めることは アタシにできないけど…
- 十七夜: …辞め…なくてもいいのか…?
- 店長: むしろ、いてくれた方が 助かるし、嬉しいわ
- 店長: アタシたちも ご主人様たちもね
- 十七夜: …………
- 店長: 改めて、お願いしたいの 和泉十七夜ちゃん…
- 店長: なぎたんとして 戻ってきてくれないかしら?
- 店長: アナタが良ければ…だけど
- 十七夜: …っ…
- 十七夜: 喜んで…!
- やったー!
- なぎたん復帰ばんざーい!
- 店長: ふふ、またよろしくね なぎたん
- 十七夜: ああ…! ありがとう、店長…!
- 店長: もう…おネェさま、でしょっ?
- 十七夜: ふ…そうだったな、おネェさま
- 店長: あら… …何があったかは知らないけど
- 店長: なんだか… いい表情になったわね
- 十七夜: 「そして、自分は皆のやさしさのおかげで メイドのなぎたんとして復帰した」
- カラ~ン カラ~ン
- 十七夜: 帰りを待っていたぞ、ご主人
- ~~~~っ!
- それは、こっちのセリフだよ! おかえり…なぎたん!
- 十七夜: ああ、ただいま…ご主人
- 店長: なぎたん、大盛況ね
- 十七夜: ありがたいことだが それだけ心配かけたということか
- ほら、疲れたでしょ 少し休憩に入ってきていいわ
- 十七夜: うむ…感謝する すぐに戻ろう
- 十七夜: …………
- ガヤガヤ…
- 十七夜: (ここが、自分の居場所…)
- 十七夜: (ああ、本当に恵まれている… こんな自分を受け入れてくれて)
- 十七夜: (皆のために 今の自分ができることは…)
- 十七夜: (そう…きっと、明るい未来を 切り拓いていくこと)
- 店長: あら、休憩行かないの? こんなとこでぼーっとして
- 十七夜: いや…少し 思いついたことがあってな
- 十七夜: …ということで 学生会議をよろしく頼む
- 十七夜: …自分も、東の人間として 参加している
- 東出身なのは聞いてたけど こんなのやってたんだあ!
- これさ、友だちにも 教えていいかな?
- 十七夜: もちろん…むしろ周りの人に 宣伝してもらえたら助かる
- 店長: あーもう、なぎたんったら そういうことね?
- 十七夜: すまない…事務所で宣伝は まずかっただろうか…
- 店長: 休憩中だし、事務所でなら 基本的に自由よぉ
- 店長: 宣伝なんて、相変わらず ちゃっかりしてるって思っただけ
- 店長: むしろ、いつも通りで安心したわ
- 店長: あ…それと、お店で大々的に 宣伝はできないけど…
- 店長: アタシのプライベートの友人で スナックを開いてる子とか
- 店長: 顔の広い子が何人かいるから 協力してもらう?
- 十七夜: 本当か…助かる…!
- 店長: アタシも、東西問題には いい加減飽き飽きしてたとこよ
- 店長: ああ、それから…
- 店長: もう、お店で生まれのことは 無理に隠さなくてもいいわよ
- 店長: もちろん、メイドの立場として 個人情報は守ってほしいけど
- 店長: 自分の出自を隠すなんて わけわかんないでしょ?
- 十七夜: おネェさま…
- 店長: …自分らしく生きなさい なぎたん
- 店長: アタシのようにねっ!
- 店長: このお店では、大人として アタシがアナタを守るから
- 店長: 好きにやんなさい
- 十七夜: …恩に着る、おネェさま なんだか今日は、かっこいいな
- 店長: あらっ、美しいって 言ってほしいわねぇ
- 十七夜: ふふっ
- 十七夜: 大切な居場所を 失わなくて良かったと
- 十七夜: 心からそう思ったな…
- みたま: ええ、本当にね…
- 十七夜: ただ、それを本当の意味で 痛感したのは
- 十七夜: また、別のときだった…
- 十七夜: この感謝を、後悔を… 忘れてはいけないな
- FILENAME: text_312163-1.txt
- 十七夜: 自分は、滅びの先に 未来を見ようとしていた…
- 十七夜: だが、その滅びが いったい何を壊すのか
- 十七夜: きっと、本当の意味では 理解できていなかった
- 十七夜: 「それに気づいたのは 東の魔法少女に会うより… メイドカフェに戻るよりも前… 数週間ぶりに家に帰ったときだった」
- 十七夜: 「家に帰ることは、ずっと躊躇していた」
- 十七夜: 「長く留守にして、家族に心配をかけたのも 理由のひとつではあるが…」
- 十七夜: 「特に、弟には魔法少女であることを 勘づかれてしまっていたかもしれなかった」
- 十七夜: 「なにより、自分は罪を犯しすぎた…」
- 十七夜: 「家族は、そのことを知らないかもしれないが どこかで家族に拒絶されるかもしれない…という 恐怖心を抱いていたのだろう」
- 十七夜: 「それで、自分はなかなか家に帰れずに 団地の敷地内を行ったり来たりしていた…」
- 十七夜: (なんだか、ずいぶんと 久しぶりに帰ってきた気がする)
- 十七夜: (いや、実際こんなに長い期間 家を離れたことはなかったか)
- 十七夜: …………
- 十七夜: (昔から、ずっと… ここは変わらないな)
- こーら、もうお家に帰るわよ
- えぇ、もうちょっと 遊びたいよ~!
- 今日はみんな大好き カレーの日なんだけどなぁ
- え、お母さんのカレー!? 早く帰って食べよう!
- 十七夜: (そうか…もう夕食時か…)
- 十七夜: (団地に並んだ部屋から 夕食の香りが流れてくる…)
- 十七夜: (きっと今の子どものように 楽しみにする者がいて)
- 十七夜: (食事が始まれば 家族団らんの温かい時間がある)
- 十七夜: (それを自分は 奪おうとしていたのだな…)
- 十七夜: (あの騒動の中、団地の皆は 無事だったろうか…)
- 十七夜: (高齢の方は特に…)
- 十七夜: (自分は、そういうことも含めて 覚悟を決めたつもりだったが)
- 十七夜: (心が変われば、見方も変わる)
- あれ、十七夜ねーちゃんじゃん
- よー
- 十七夜: …あぁ
- あれ、ねーちゃん 元気ねーの?
- 十七夜: あ、いや…元気だぞ
- てゆーか 最近見かけなかったけど
- あ、わかった 男っしょ!男ー!
- 十七夜: …そんなわけないだろう
- …………
- …やっぱ十七夜ねーちゃん 今日、なんかつまんねー
- 早く家で飯食ってこいよ 元気になったら遊ぼうぜ
- ほらあれ、ごしんじゅつっての また教えてくれよなー
- 十七夜: …子どもは察しがいいな
- 十七夜: (家に帰って飯…か)
- 十七夜: (そんな資格…自分にはもう…)
- 十七夜: …………
- FILENAME: text_312163-2.txt
- 十七夜: 自分の家の方を見ると 何度も見慣れた扉があった
- 十七夜: どの部屋も似たような 見た目をしているが
- 十七夜: どうしてか、自分の家の扉だけは 同じ見た目でも違って見える
- みたま: たしかに…そうねぇ…
- 十七夜: そして、その扉を見ながら 自分は過去を思い返していた
- 十七夜: 「思い出していたのは いつもそこを通っていた自分の姿」
- 十七夜: 「一番古い記憶は、きっと 両親と手を繋ぎ公園へと向かった日」
- 十七夜: 「『年上の子とケンカをして大変だった…』と 何度も両親に話を聞かされた」
- 十七夜: 「それから、腹の大きくなった母を見送った日」
- 十七夜: 「『お姉ちゃんになるんだからね…』 と言う母の言葉に 少し反抗した記憶がある」
- 十七夜: 「きっと、知らない誰かに 両親を奪われるような気がしたんだろうな」
- 十七夜: 「でも、母と一緒に帰ってきた 小さな赤ちゃんを見て、自分は幼いながらに 姉としての責任を感じていた」
- 十七夜: 「可愛くて小さい、この弟を 自分が守っていかなければならない…と」
- 十七夜: 「小学校から泣きながら帰ってきた日も」
- 十七夜: 「初めての宿泊学習で 不安でいっぱいだった日も」
- 十七夜: 「いつも、この扉を通っていた」
- 十七夜: 「東西のことで思い悩み 両親とケンカして家を飛び出した日も」
- 十七夜: 「魔法少女になり、魔女退治のために こっそり家から抜け出した日も」
- 十七夜: 「神浜市に滅びを与えようと… もう二度と帰らないと決意して 家を出た、あの日も…」
- 十七夜: 「そこには、自分の人生があった」
- 十七夜: 「すべてが良い思い出ではない むしろ、人間とは不思議なもので 悪いものばかりが印象強く記憶に残っている」
- 十七夜: 「それでも、その記憶たちは とても尊いものに感じた…」
- 十七夜: (ここも、もしかすると なくなっていたのかもしれない)
- 十七夜: (そう…自分の手によって)
- 十七夜: (愛する人々の営みを まるごと消そうと…)
- ???の声: …姉ちゃん
- 十七夜: ――っ!?
- 十七夜の弟: …そんなとこでぼーっとして 何してんだよ
- 十七夜: …どうしてここに
- 十七夜の弟: 家から見えてた
- 十七夜の弟: …てか、こんなところにいて 見つからない方がおかしいだろ
- 十七夜: …………
- 十七夜の弟: まぁ、いいや 早く帰るぞ
- 十七夜の弟: 父さんたちにはうまいこと 言ってあるし
- 十七夜の弟: 姉ちゃんが心配することは きっとねえよ
- 十七夜: …しかし、自分は…
- 十七夜の弟: …はぁ
- 十七夜の弟: 毎晩、同じ夕飯を食べるのは もう飽きたんだよ
- 十七夜: それは、どういう…
- 十七夜の弟: 姉ちゃんが帰ってこないと 俺が困るってこと
- 十七夜の弟: …ほら、行くぞ
- 十七夜: 「そして自分は、弟に手を引かれて 家の前まで辿りついた」
- 十七夜: 「…弟に手を引かれたのはいつぶりだったか」
- 十七夜: 「自分より小さかったはずの手は いつの間にか大きく、少し骨張っていて」
- 十七夜: 「知らぬ間に成長しているものだと… なんだか、感慨深くなった」
- FILENAME: text_312163-3.txt
- 十七夜: 「弟に手を引かれて家へ連れていかれた自分は 戸惑う暇も与えられず… そのまま家の扉を開くことになった」
- 十七夜: 「今、思えば弟なりの優しさだったのだろう… 誰に似たのか、不器用なやつだからな」
- ガチャッ
- 十七夜の弟: ただいまー
- 十七夜: …………
- 十七夜の父: ――っ!?
- 十七夜の父: …あぁ、十七夜も一緒だったのか
- 十七夜の父: …おかえり
- 十七夜の母: …おかえりなさい
- 十七夜: …………ただいま
- 十七夜の父: …ほら 早く手を洗っておいで
- 十七夜の父: 少し早いけど夕飯にしよう …腹、減ってるだろう
- 十七夜の母: 今日はね、お父さんが カレーを作ってくれたのよ
- 十七夜: (父さんのカレー…か なんだか懐かしいな…)
- みんな: 「いただきます」
- 十七夜: …………
- 十七夜の母: あら、食べないの?
- 十七夜: …いや…
- ぐ~ぎゅるるるる…
- 十七夜の弟: …腹、鳴ってんじゃん
- 十七夜: (そういえば ずっと…食べていなかった)
- 十七夜: (神浜市の人々が飲食を できないようにしたあの日から)
- 十七夜: (罪悪感だったのか 腹も空かなかったが…)
- 十七夜: (今になって…)
- 十七夜: (そうか…自分も 魔法少女である前に人間か…)
- 十七夜: …いただきます
- ぱくっ
- 十七夜: …うまい…
- 十七夜の父: そうか…なら良かった
- 十七夜の父: 昔、母さんが出産で 家にいなかった頃があったろ
- 十七夜の父: あのとき、十七夜が美味しいと 言ってくれたから…
- 十七夜: な…そんな、昔のこと…
- 十七夜: 自分だって… もうよく覚えていないのに…
- 十七夜の弟: だから姉ちゃんが帰ってくるまで うちはカレー三昧だったってわけ
- 十七夜の弟: …いつ帰ってきてもいいようにさ
- 十七夜の父: こ、こら…! それは言わない約束だろ!
- 十七夜: …っ
- 十七夜: そうか…
- 十七夜: 自分は、この日常ごと 神浜市を消し去ろうとしていたのか
- 十七夜: 幼い頃に、一度好きだと言ったカレーを 今も忘れずにいてくれるような… 自分を心から愛してくれる家族まで…
- 十七夜: ああ…自分はこのカレーが好きだった
- 十七夜: 父さんがたまに作る、野菜が大きくて無骨で… 愛情が詰まった、このカレーが
- 十七夜: …そして、やたらと甘いのは… そうか…
- 十七夜: 父さんの中ではきっと、自分はあの頃の…
- 十七夜: 母さんの帰りを待つ幼い娘のままなのか
- 十七夜: なんて…なんて自分は罪深いんだ
- 十七夜: 平等のため、皆のためなどど息巻いて 結局は、一番近くにあった大切なことが 見えていなかった…
- 十七夜: こんなに大切な家族を傷つけ こんなにも、大切に…愛されていた自分の命を 投げ出そうとしていただなんて…
- 十七夜: …………
- 十七夜の父: …もう食べ終えたか
- 十七夜の父: おかわりはいるか?
- 十七夜: …………ああ
- 十七夜: …頼む
- 十七夜の母: あ、そうだわ
- 十七夜の母: 食後には、十七夜の好きな フルーツポンチもあるわよ
- 十七夜: …それが好きだったのは ずいぶんと昔のような
- 十七夜の母: あら、そうだったかしら
- 十七夜: ふっ…
- 十七夜: いや、今も大好物だったな
- 十七夜の弟: あーあー 姉ちゃんばっかずりーなー
- 十七夜の母: じゃあ、明日はあなたの 好きなものにしましょう
- 十七夜: 好きなもの… ボーロ…だったか…?
- 十七夜の弟: はぁ!? マジでいつの話だよ!
- 十七夜: …そんなに昔か?
- 十七夜の弟: 姉ちゃん、俺のこと いくつだと思ってんだよ…
- 十七夜: そうか…いつのまにか お前も大きくなってたんだな
- 十七夜の弟: っだぁ! なでんなって!おい!
- 十七夜: (あぁ、失わなくて良かった)
- 十七夜: (…だが、これですべてが 終わったわけじゃない…)
- 十七夜: (東西問題だって、まだ 何も解決してはいない)
- 十七夜: (この幸せを守るために… 自分は…)
- FILENAME: text_312163-4.txt
- 十七夜: 自分は、滅びの先にある 平等な未来を目指していたが …それは、大きな過ちだった
- 十七夜: 確かに、滅びによって人々は 東西など関係なく手を取り合ったかもしれない 平等な未来は、訪れたかもしれない
- 十七夜: その大義のためであれば 多少の犠牲は仕方ないと信じこんでいた
- 十七夜: だが、憎むべき不平等を生んだこの神浜市には 自分が愛すべき人々が大勢いて 犠牲にしていいものなど 本当はなにひとつなかった
- 十七夜: それは、投げ出そうとしていた 自分の命も同様に…
- 十七夜: だから、自分が望むべき未来は…
- 十七夜: 自分たちは 多くの過ちを犯した…
- 十七夜: それでも そんな自分たちは生かされ
- 十七夜: こうして、生きて贖罪をする チャンスが与えられた
- みたま: ええ、あの頃のわたしたちは 悲しみに飲みこまれて
- みたま: 滅びの未来を 望んでしまったけれど
- みたま: 今、わたしたちの前には 違う未来への道が開かれてる
- みたま: 求めるものは、今も昔も きっと変わっていないけど
- みたま: その道筋が大きく変わった…
- みたま: わたしたちは もう、滅びを経ることなく
- みたま: 神浜市の幸せな未来を 求めることができる
- 十七夜: ああ… 東西を結ぶ学生会議
- 十七夜: それを通して、自分たちは 新たな未来を切り拓ける
- 十七夜: 今度こそ、自分たちの力で
- 十七夜: …いや、違うな
- 十七夜: 神浜市の人々みんなで この町に平等をもたらそう
- みたま: そうねぇ
- 十七夜: さて、思い返すのはここまでだ さっそく企画について話し合おう
- みたま: ああ、そうだったわ 何がいいかしらぁ
- みたま: テーマはひとつ決めてるのよ
- 十七夜: ふむ…なんだ?
- みたま: 学生会議も まだ始まったばかりでしょ?
- みたま: だから“みんなで作る” これをひとつのテーマにしたいの
- 十七夜: みんなで作る、か…
- 十七夜: 確かに、神浜市の未来も みんなで作るものになるからな
- 十七夜: ならば手始めに 運動会とかはどうだろう?
- 十七夜: 大人数で参加ができて 楽しいスタートを切れそうだろう
- 十七夜: それに体を動かせば、 自然と距離も縮まるはずだ
- みたま: それもいいわねぇ
- みたま: あ、お祭りとかはどう? 屋台を出したりして!
- みたま: わたしは、たこ焼き屋さんでも やろうかしらぁ
- 十七夜: なっ!?
- みたま: 先生なら、きっと美味しい 作り方を知ってるだろうし
- みたま: 電話して聞いてみようかしら
- 十七夜: 料理…もいいが…そうだ キャンプはどうだろうか
- 十七夜: キャンプファイアーで 踊る…とかな
- みたま: キャンプファイアー!
- みたま: なんだかロマンスが 生まれそうな響きねぇ
- みたま: あ…そう、そうよ!
- 十七夜: む…? 何か思いついたのか?
- みたま: やっぱり大事なのは “ロマンス”だったりしない?
- 十七夜: ロマンス…か… なんだか八雲らしいな
- 十七夜: ふっ…だが、そんなのも いいのかもしれない
- みたま: そういえば、弟の壮月君には ロマンスとかないの?
- 十七夜: な…自分の弟にか!?
- みたま: そうそう、恋人がいるとか そんな話は聞かないの?
- 十七夜: 恋人か…うむ… いてもおかしくはない、のか…
- 十七夜: 姉弟で恋バナなど なかなかしないからな…
- 十七夜: そういう八雲も みかげにそういう話は…
- みたま: え…ミィが…!?
- 十七夜: 最近の小学生は早いと聞くぞ
- みたま: うーん…でも、まぁ そのときは
- みたま: ミィの恋人に相応しいか わたしたちが見極めないとねぇ
- みたま: …って、やだ すぐ話が脱線しちゃうわね
- 十七夜: …まぁ 自分らの未来は、まだ長い
- 十七夜: 焦らず進んでいけばいいさ
- みたま: ふふっ、そうねぇ
- みたま: あ、じゃあ… こんなのはどうかしら
- 十七夜: 共に進もう、 神浜市の未来のために
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