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- 本当はただ自分が可愛かっただけだ。
- 自分が傷つくのが嫌だったのだ。
- 誰かのためにと言って、誰かのせいにしていた。
- そして自分はいつだって、何もせずにいたのだ。
- そのために母を失い。
- 今、…はやみを失おうとしている。
- そこまでして守りたい自分とは何だ?
- 最愛の人を犠牲にしてまで、守りたい自分とは何だ。
- 弘瀬家の跡取りとしての自分か?
- 大学一の秀才としての自分か?
- 便利な人としての自分か?
- それは本当に俺なのか?
- ずっとそうしてきた。
- ずっとそうするように義務付けてきた。
- 今までずっとそうしていたんだ。
- それがなんだ!
- それがどうした!
- それがなんだと言うんだ!
- そんなもの、俺の気持ちではない!
- 俺の気持ちは、
- はやみが好きだ!
- それだけだ!
- 彼女と過ごした三十日! それが俺の過去だ!
- 彼女のいない未来。
- 彼女を失った未来。
- そんなものはいらない!
- そんなものは無価値だ!
- そんなものは無意味だ!
- 誰が何と言おうと、はやみこそが俺の全てだ!
- 「はぁ…はぁ…はぁ…」
- あの時気付いた筈だ。
- それを感じていた筈だ。
- 見えない瞳で、彼女を探し求めていたあの時。
- 真っ暗な怪物を思わせる闇の中。
- 俺は彼女を探していた。
- はやみを見たいと思った。
- どうしても彼女を見つけたいと思った。
- 他の全てを忘れて
- ただ彼女だけを想っていた。
- そのとき俺の瞳は、
- 失われた筈の視力を取り戻したのだ。
- 「はやみ!!」
- 俺は叫んだ。
- 俺は唯一人の人を求めていた。
- 夜の丘に立つ…その後姿だけを…。
- 彼の声が聞こえた。
- これは耳鳴り?
- いいえ…違う。
- これは…
- 真実。
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