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- Jekyll
- この子
- フランは、うん、人造人間だ。
- 身体組成は霊体ではなかったよ。英霊じゃないね。
- Jekyll
- この時代に生きる人間だ。
- いや、人造人間か。
- Jekyll
- 小説の記述が誤りだったのか……
- いや、そこまでは断言できないけれど。
- Fran
- ……ゥゥ……ァ……。
- Jekyll
- うん?
- Mashu
- ええと、その……
- 彼女は、ええと……何と言ったらいよいでしょう……
- Mordred
- 調査だ、とか言っておまえがあちこち触ったんで、
- 不満みたいだぞ。謝れ、ジキル。
- Jekyll
- えっ。あ、ごめんよ。
- 僕としたことが、英国紳士にあるまじき行為を。
- Fran
- ……ゥ。
- Jekyll
- ?
- Mashu
- わかってくれればそれでいい、
- 的なニュアンスの声……でしょうか。今の発声は。
- Mordred
- そうだな。
- ?1:うん、そう言ってる
- ?2:なんで君たちわかるの?
- ?!
- Jekyll
- なぜ、君たちは彼女の意思がわかるんだ?
- [#同性ゆえ]の、あっ、いや、何でもない!
- Mordred
- 次はないぞ。殺す。
- Jekyll
- はい。うん。ごめん、二度と言わない。
- で
- だね。僕の情報網に別件が引っ掛かったんだよ。
- Jekyll
- ソーホーエリアに妙なものが現れた。
- 何でも、屋内にまで入り込んできて市民を襲う、と。
- Dr. Roman
- 確認だ。ホムンクルスや[#自動人形:オートマタ]、
- それにヘルタースケルターは、これまでに
- Jekyll
- 屋内に入り込んだという前例はないはずだ。
- 僕の情報網と、セイバーが見回った限りではね。
- Jekyll
- 屋内にまでやって来て、市民を襲うもの。
- それが、人間ぐらいの大きさの本であるらしい。
- Jekyll
- 僕は仮にこれを、[#魔本:まほん]、と仮称することにした。
- 君たちはこれに対処して欲しい。
- Jekyll
- 件の「魔霧計画」に関係しているかは不明だが、
- 少なくともソーホーでは被害が出ているんだ。
- Jekyll
- どうか、頼みたい。
- 引き受けてくれるかい?
- ?1:任せて
- ?2:じっとしていても仕方ない
- ?!
- Mashu
- そうですね、マスター。
- わたしたちは数少ない屋外活動要員ですから。
- Mashu
- わたしも、先輩の力になるよう努めます。
- いえ、なれたら……幸いです。
- Mordred
- なに言ってんだ、おまえ。
- デミだろうが何だろうがサーヴァントだろうが。
- Mashu
- は、はい。
- Mordred
- ……あー、いや、まあ。いい。忘れろ。
- Mashu
- え
- Mordred
- マスターとの関係性はそれぞれのもんだしな。
- オレが口出すことでもない。
- Mordred
- じゃ、行くか。
- フランは戦力になるかわからんから置いていく。
- Fran
- ……ゥ、ゥ……。
- ……ゥ……。
- Mordred
- なんだよ寂しいのか?
- おとなしく待ってろ、すぐ帰ってくるから。
- Mashu
- 外は、危険ですから。
- 戻ってきたら、また話をしましょう。
- Fran
- …………ゥ、ゥ。
- Mordred
- でかい本、魔本ねえ。
- オレの頃のブリテンにはいなかった類の怪物だな。
- Mashu
- あなたの生前のブリテンというと……
- 円卓の騎士の時代に、怪物が存在していたんですか?
- Mordred
- そりゃあいたさ。
- 円卓の騎士ってのはドラゴンや巨人とも戦ったんだぜ。
- Mordred
- 深い森や険しい山、突風の絶えない断崖。
- 人の立ち入らない領域ってのは恰好の幻想種の巣だ。
- Mordred
- たまに人里に降りたりもするけどな。
- で、まあ、ただの人間じゃ大抵の場合は餌になる。
- Mashu
- 餌、ですか。
- Mordred
- 魔獣、幻獣、竜種が相手じゃ並の兵は戦うだけ無駄だ。
- おまえらの時代の兵器でも大概は通用しない。
- Mordred
- ただし、例外はある。
- ブリテンの場合は
- [#円卓の騎士:オレたち]だ。
- Mordred
- それなりに戦って、それなりの数を殺したぜ?
- 幻想種との戦闘ってのはなかなかこれで
- Mordred
- ああ、あとアレだ。アレ。
- ピクト人。
- Mashu
- わたしたちの時代では謎に包まれた人々ですね。
- かつて、スコットランドを中心に繁栄した部族だとか。
- Mordred
- いや、人々って言うかあれは……
- うーん……
- Mordred
- アレは、もう、部族とか蛮族とか……
- そういう次元のものじゃなかったような……
- Mordred
- おまえらの時代風に言うとなんだろうなァ、
- SF映画、とかに出て来そうな感じだったぞ?
- Mordred
- エイリアン?
- とか、そういう感じ。ああ、そういう感じだ。
- ?1:円卓ギャグ?
- ?2:お、面白いねその冗談。
- ?!
- Mashu
- はい、先輩。わたしも冗談に聞こえます。
- ……はっ。
- Mashu
- モードレッドさん、その……
- すみません。笑うタイミングを完全に外してしまって。
- Dr. Roman
- ううむ、これが円卓ジョークなのか。
- そこでそう外してくるのか……ふむふむ、なるほど。
- Fou
- フォウ……
- Mordred
- 冗談? いや、オレ冗談なんて
- Mordred
- っと。敵だ。
- この感じは[#自動人形:オートマタ]が多いな。
- Mashu
- …………戦闘ですね。マスター、指示を!
- ==
- Fou
- フォウ……
- Mordred
- 人形どもを撃破、っと。
- Mordred
- しっかし
- こういうのなんて言うんだっけかな。
- Mordred
- 東洋の方じゃ何か言い方があったよな。
- [#縁:エン]、だっけか。
- Mordred
- 英霊をあれこれ集めて自分の味方にする
- なんざ、容易く[#できる]ことでもないだろうに。
- Mordred
- まあ、でも、そういう風に使うのならアリだ。
- Mordred
- その使い方なら確かに英霊召喚の難易度は下がる。
- 誰が言い出した事かは想像つくな。
- Mordred
- 正直、オレとしちゃ妙な気分だが……
- ……ま、これも縁。か。
- Mashu
- ?
- ?1:モードレッド、何を言ってるんだろう
- ?2:召喚システムのことかな
- ?!
- Mashu
- はい……恐らくは、ですが。
- 英霊召喚システムについての言葉でしょうか。
- Mashu
- あの……モードレッドさんは英霊召喚に詳しいのですか?
- セイバークラスですが、魔術の素養がある、とか?
- Mordred
- あ? なに言ってやがる盾ヤロウ。
- オレに魔術の素養があるとか、いまさら嫌味かテメ
- Mordred
- ……いや、そうじゃないのか。
- ああもう、面倒くさい! おまえ面倒くさいな、マシュ!
- Mashu
- は、はい……! なぜ叱られたか分かりませんが、
- とにかく申し訳ありません!
- Mordred
- 叱ってねえよ、ただのグチだよ!
- そういうところも似てるな、おまえたちは!
- ?1:おまえたち……?
- Mordred
- …………。なんでもない。口が滑った。
- 今の話題は追究すんなよ[%1]。
- ?2:カリカリしてない?
- Mordred
- あったり前だ。オレが不機嫌なのはデフォルトだ。
- 聖者には程遠い殺戮者だからな。
- Mordred
- だいたい、おまえたち距離感近いんだよ。
- 普通、オレを見たら怖がるだろ。叛逆の騎士なんだから。
- ?!
- Mashu
- ………………
- Mordred
- ……チッ。別におまえたちが問題なんじゃない。
- オレの性根が問題だってだけだ。
- Mordred
- 勘違いするなよな。別に[%1]もマシュも
- 嫌いってワケじゃない。ワケじゃないが
- Mordred
- 我慢できないんで、やっぱり戦おう。
- その盾を構えろ。思いっきりたたきのめしてやる。
- ?1:やっぱり怒ってるじゃん!
- ?2:叛逆のバーサーカー!
- ?!
- Mordred
- おお、好きに罵りやがれ。
- 慣れてるからな。下手なお世辞より気持ちいいぜ。
- ?1:マシュに無意味な戦いはさせられない
- ?2:マシュと戦うのなら、その前に自分が
- ?!
- Mordred
- へえ? マスターらしいところあるじゃねえか。
- 足が震えてなきゃもっと格好よかったけどなぁ?
- Mordred
- 弱者は弱者らしく引っ込んでいればいいものを。
- そうやって出しゃばるから、真っ先に死ぬんだぜ?
- Mashu
- っ
- ! マスター、下がって……!
- モードレッドさんは本気です……!
- Mordred
- 生意気にもオレの初撃を受けやがったか!
- ようやくらしい使い方しやがったな!
- Mordred
- それでいい、行くぜ盾ヤロウ!
- 仲間を守る時は限界より常に一歩前に出る、だ!
- Mordred
- その宝具を使うってんなら気合いをいれろ!
- 先輩サーヴァントとして、徹底的に鍛えてやる!
- ==
- Mashu
- はあ……ぁ、っ……!
- ?1:マシュ……!
- Mashu
- せん、ぱ、い
- 良かった。
- 見ていてくれました、か……?
- Mashu
- 戦闘、終了、です
- わたし、ちゃんと
- モードレッドさんの剣を、受け切れて
- ?2:モードレッド……!
- Mordred
- う……そう睨むな、オレもやりすぎたって反省してる。
- 本気でおっかないぞ、今のおまえ。
- Mordred
- 安心しろ、今のは模擬戦だ。
- マシュはちゃんと分かってたぞ?
- ?!
- Mordred
- で、どうだマシュ。
- その宝具の使い方、少しは分かったか?
- Mashu
- はい……ありがとう……ごさいます……
- なにか、こう
- Mashu
- 心の枷がひとつ、外れた気がします……
- クーフーリンさんの魔術以来の、スパルタでした……
- ?1:じゃあ今のは……もしかして?
- ?!
- Mordred
- ……まあな。荒療治だよ、荒療治。
- Mordred
- デミ・サーヴァントなんて言って
- 自分の力を抑え込んでいやがったからな。
- Mordred
- 下手な芝居を打って、テメエの役割をたたき込んで
- やったんだよ。これで少しはマシになるだろ。
- Mashu
- モードレッドさん……
- ?1:面倒見、いいんだね
- ?2:……それにしたって手荒すぎる……
- ?!
- Mordred
- うるせえ。おまえたちがあんまりにも危機感ないんで
- イライラしただけだ。
- Mordred
- 他人に剣を教えるなんてオレの柄じゃない。
- っていうか、これが初めてだチクショウめ。
- Mordred
- いいか。このことはジキルには言うなよ。
- またぞろしつこく質問攻めにしてくるからな。
- Mordred
- それと悪かったな[%1]。無礼は詫びる。
- おまえは確かに弱いが、地に足のついた弱さだ。
- Mordred
- 臆病者でも卑怯者でもない。それなりに担ぎ甲斐のある
- 阿呆だよ。そうだろ、マシュ?
- Mashu
- はい、もちろんです!
- 先輩はカルデア一のマスターですので!
- ?1:ありがとう、マシュ
- ?2:カルデア一は言い過ぎのような……
- ?!
- Mordred
- はいはい、ごちそうさまごちそうさま。
- 糖分多くて胃もたれどころか吐きそうだぜ。
- Mordred
- んじゃ先を急ぐぞ[%1]、マシュ。
- その盾をしっかり構えてついてきな。
- Mashu
- はい!
- ありがとうございました、親切なモードレッド卿!
- Mordred
- い、いきなりモードレッド卿とか言うな、バカ!
- 転びそうになったじゃねえか!
- ==
- Mashu
- 敵性体をすべて撃破……完全沈黙を確認しました。
- 先輩、お疲れさまでした。
- Dr. Roman
- お疲れさま。
- ジキルからの通信が入ったから繋げるよ。
- Jekyll
- 聞こえるかい?
- 僕だ。追加の情報が入ったので伝えておくよ。
- Mashu
- あ
- なるほど。ジキルさんから届いた無線通信を、
- Dr.ロマンの回線に載せたんですね。
- Jekyll
- そういうこと。カルデアの技術ってのは凄いね。
- 早速内容を言うよ。ソーホーで暴れてる魔本についてだ。
- Jekyll
- 魔本は、殺人ホムンクルスや自動人形たちとは違って
- 門戸を閉ざした屋内へと侵入してしまう。それはいいね。
- Jekyll
- 具体的な被害が明らかになった。
- [#曰:いわ]く、人々を醒めない眠りに落とすらしい。
- Mordred
- 魔術か?
- それとも、薬物か。
- Jekyll
- そこまではわからない。
- ただの薬物であれば君たちには問題ないが……
- Mashu
- ええ、わたしたちには問題ないものと思われます。
- 先輩にも対毒性スキル(仮)がありますし。
- Mordred
- へえ、そうなのか。そりゃいいな。
- でもまあ、警戒するに越したことはない。
- Mordred
- 魔術ならオレの場合、
- 対魔力スキルで大概は無効化するが
- Mordred
- 例えばサーヴァントのスキルや宝具による薬物、
- 大魔術級クラスなら、直撃すると防げない。
- ?1:充分注意しよう
- ?2:当たらなければいいんだよ
- ?!
- Mordred
- ま、そうだな。
- せいぜいうまく立ち回るだけだ。
- Jekyll
- ソーホーエリアに到着したら、
- まずは僕の指定する古書店に立ち寄ってくれ。
- Jekyll
- 情報提供者がそこにいるはずだ。
- まだ、魔本に襲われていなければの話だがね。
- Mashu
- 了解しました。
- Mordred
- じゃ、行くぜ。
- もうソーホーは目と鼻の先だ。
- ==
- Boy
- ……ようやくか。
- 待ちくたびれたぞ馬鹿ども。
- Boy
- おかげで読みたくもない小説を一シリーズ、
- 二十冊近く読み潰すハメになった。
- ?1:誰……?
- ?2:子供……?
- ?!
- Fou
- フォウ……?
- Boy
- おまえたちがヘンリー・ジキル氏の言っていた救援だな。
- では、早速こちらの状況を伝えるとしようか。
- Mordred
- ああ? なんだ、連絡員ってのはガキかよ。
- Mashu
- 少年、ですね。
- この古書店の関係者でしょうか。
- Mashu
- 店主の息子とか、孫……とか。
- そういった認識で間違っていませんか?
- Mashu
- あなたがミスター・ジキルと連絡を取って
- わたしたちに救援を求めた人物、で良いのですよね。
- Boy
- ああそうだ。状況が状況だからな、
- おおまかな認識はその程度でかまわない。
- Mordred
- 何か……やけにいい声してんだな。
- 変声期か、おまえ?
- Boy
- ああ、これでも元々は演劇志望でな。
- Boy
- まったく恥ずかしい。
- 為し得なかった人生ほど恥ずかしいものはないな!
- Boy
- まあいい、俺の美声については後回しだ。
- この先イヤというほど聞かせてやる。
- Boy
- 今は[#ここ]の話をしよう。
- この古書店の老主人は、既に魔本に襲われた。
- Boy
- ソーホーエリアの半数近くが同じ状況だ。
- 醒めない眠りへと落ち、今も仲良く夢の中という訳さ。
- Dr. Roman
- いま、魔本がどこにいるかわかるかい?
- それと、君はなぜ襲われなかったんだろう。
- Boy
- あん? 馬鹿かおまえは。声だけでなく頭まで花畑か?
- そんなもの、逃げたからに決まっているだろう。
- Dr. Roman
- えっ……あっ、ご、ごめん……そうだね……
- それはそうだ……はは、ごめんよ……すみません……
- Dr. Roman
- はは……
- ははは……
- Mashu
- ドクター。子供の言葉に傷付かないで下さい。
- あの年頃の子は、直裁に物を言うことが多いですし。
- Boy
- 魔本がどこにいるか、だったな。
- ここだ。
- Mordred
- あん?
- Mashu
- え?
- Boy
- 奴は、この古書店二階住居……
- つまり、まだこの階にいる。隣の書斎だ。
- Mordred
- はは。
- 何だ、いるのか。そこに?
- Mashu
- …………!
- Mashu
- 先輩、屋内戦闘は危険です。
- 狭い閉鎖空間での戦闘はなるべく避けるべきでしょう。
- Mashu
- 戦闘による影響が、あの少年と先輩に
- 及んでしまう可能性があります。
- ?1:そういう事なら広い場所で戦闘しよう
- ?2:外に誘導する!
- ?!
- Mashu
- ……はい。
- では、モードレッドさん。
- Mordred
- んじゃま、さっそく片付けてやるとするか!
- ==
- Fou
- フォーウ!?
- Mordred
- くそ、当たってるはずなのに攻撃が通らねー!
- 何だこの本!
- Mashu
- わたしにも不明です。
- 確かに攻撃は届いているはずなのに、倒れません!
- Dr. Roman
- 攻撃は届いているのか。幻覚の類ではないね?
- 確かに、君たちの攻撃は届いていると。
- Mashu
- はい、ドクター。
- こちらにステータス異常はありません。
- @魔本
- …………………………………………。
- …………………………………………。
- Mordred
- ああ、もう、ぷかぷか浮かびやがって!
- 本のクセに生意気な、落丁本か何かかテメェ!
- Boy
- どちらかというと発禁本だがな。
- その内容が[#真:まこと]なら本であれ人を殺せる、という話さ。
- Mashu
- さっきの子……いけません、外に出ては!
- ここは危険です。退避を!
- Boy
- 魔本から目を離すなお嬢さん。
- 俺の事はいい、言うことを言ったらさっさと逃げる。
- Mordred
- おまえ……
- いい声してやがると思ったが、まさか。
- Mordred
- もしかして、サーヴァントか?
- くそ。オレの勘も霧のせいでうまく働かん!
- Boy
- やっと気付いたか。
- そう、俺もおまえと同じ英霊だ。というか
- Boy
- このタイミングで[#悠々:ゆうゆう]と[#稀覯:きこう]本を
- 読みあさっている子供が[#普通:マトモ]だとでも思ったか?
- Boy
- 魔力感知の感度はともかく、読み手としての勘は
- 下の下だなセイバー。もっと本を読め。
- Boy
- 一階のEの棚のシリーズがお勧めだぞ。おまえの
- 好きそうな夢と浪漫とバッドエンドが詰まっている。
- Mordred
- な
- テメエ、どこの誰だ!
- ずいぶんふざけた
- Anderson
- アンデルセン。
- ハンス・クリスチャン・アンデルセン。
- Anderson
- クラスはキャスターだ。
- 詳しく知りたいのなら俺の本を一冊でも読め。
- Mashu
- え。えっ。
- えぇぇえっ!?
- Mashu
- 作家ハンス・クリスチャン・アンデルセン
- すごい……世界三大童話作家の一角ですよ、先輩!
- ?1:落ち着いて
- ?2:童話、好きなの?
- ?!
- Mashu
- あっ、いえ……その……
- 好きというか、相当数の読み直しをした程度で。
- Anderson
- ほう。その様子、隠さなくてもハッキリわかるぞ!
- さては愛読者だな! サーヴァントにも愛読者か!
- Dr. Roman
- 架空とされた小説の登場人物たちの次は
- 作家本人か。そして敵は本と来た!
- Dr. Roman
- ようし、今回もまたワケのわからない状況に
- なってきたな、[%1][&君:ちゃん]!
- Dr. Roman
- それで、ミスター・アンデルセンはどうなんだい!?
- サーヴァントとしてすごいのかい!?
- Anderson
- はあ? なにを期待しているんだその大間抜けは。
- 俺は作家だ、クソ弱いに決まっているだろう。
- Anderson
- 人々を襲って回る魔本と遭遇したはいいが、
- 俺ひとりでは倒すことなど不可能もいいところ。
- Anderson
- そこで、肉体労働に適したサーヴァントが来るのを
- こうして待っていたというワケさ!
- Anderson
- さあ戦うがいいセイバー、愛読者のお嬢さん!
- その一部始終、こぼさずメモにとってやろう!
- Fou
- ンー、キュウ!
- キャーウ!
- Mordred
- よし黙れ、たのむ黙れ!
- 魔本より先にテメエに斬りかかっちまいそうだ!
- Anderson
- なに? 魔本の考察をする知能もないばかりか、
- 敵か味方かの判断もできないのか?
- Anderson
- すごいな、極まった蛮族だ! あれか、頭に
- マッシュポテトでも詰まっているんだな、きっと!
- Mordred
- どけ盾ヤロウ!
- まずそのクソガキを叩きのめしてやる!
- Mashu
- 気持ちはわかりますが落ち着いて……!
- ミスター・アンデルセン、貴方も何か言ってください!
- Anderson
- 何か言え? ああ、益になる発言か。
- ふむ。では仕方ない、レクチャーしてやろう。
- Anderson
- おまえたちは魔本の性質に触れたな?
- 攻撃が通じない。それはそうだ。
- Anderson
- あれを本だと思うからそうなる。
- 違うぞ。あれは、一種の固有結界だ。
- Mashu
- 固有結界……!?
- ?1:固有結界?
- ?2:確か、それは……。
- ?!
- Mashu
- はい。世界の在り方そのものを書き換える、
- ある種の魔術の奥義です。魔法にさえ等しいとか。
- Mashu
- ごく稀に、現界を果たしたサーヴァントの宝具として
- 用いられる例もありますが
- Anderson
- そうだ。多くは空間に対して働くらしいが、
- こいつは違う。[#存在そのもの]が固有結界だ。
- Anderson
- 無敵に等しい耐久力はそのためだ。
- 自らが固有結界であることを有効に用いている。
- Anderson
- では何故それが可能なのか?
- いいぞ、もっともな質問だ。
- Anderson
- だがその程度、自分で考えろ! 判断材料は多分にある、
- 数分ほど考えれば誰にでもわかろうさ!
- Mordred
- その数分が無えんだよこっちは!
- 結論を言え、結論を!
- Mordred
- 今は浮かんでるだけだが、
- いつまた襲って来るかわからん!
- Anderson
- なんて性急な……本を後ろのページから読むタイプか?
- 仕方あるまい。愛読者に免じて、特別に教えてやる。
- Anderson
- 俺の類推するところでは、こいつは本来、
- マスターの精神を映し出すサーヴァントだろう。
- Anderson
- ドラマツルギーから導き出せば簡単だ。
- まあ、俺も一時間ほど考える必要があったが。
- Mordred
- たっぷり時間かけてんじゃねえか!
- もういい、結論を言え結論を!
- Anderson
- 結論というか見たまんまの問題だよ。
- こいつは[#はぐれ]だ。マスターがいない。
- Anderson
- だからこそ、こいつはソーホーの人々を襲った。
- 眠りに落として夢を見させた。
- Anderson
- ようはマスター探しさ。夢の顕現として、こいつは
- 疑似サーヴァントとしての[#実体を得ようとしている]。
- Mordred
- 何だと?
- Dr. Roman
- ……そうか!
- この魔本の姿は、まだ実体ではないのか!
- Anderson
- ご名答! こいつはサーヴァントですらない、
- サーヴァントになりたがっている魔力の塊だ。
- Anderson
- 放っておけばいずれ実体化するだろう。
- 代わりに、ソーホー市民すべてが眠りの中へ落ちる。
- Anderson
- 外に漂ってる魔力の霧に比べれば、
- さほど、あくどい被害ではないかも知れん。
- Anderson
- だが、だ。
- Anderson
- 眠ったまま衰弱して死ぬ奴もいるかも知れないし、
- もしかしたら死ぬ奴はいないかも知れない。
- Anderson
- そもそも眠りに時間をとられては
- 我ら物書きは商売あがったりだ!
- Anderson
- 故に倒す。
- ソーホーには書店や古書店も多いしな。
- Mashu
- 矛盾していますMr.アンデルセン!
- 実体がないから倒せない、と今
- Anderson
- だから、さ。名前のない本だから探せないんだ。
- 物語に実体を与える方法なんて簡単だ。
- Anderson
- 聞こえるか!
- おまえに名前を付けてやるぞ、魔本、いいや
- Anderson
- [#誰かの為の物語:ナーサリー・ライム]!
- Nursery Rhyme
- ……………………!!
- Mordred
- やればできるじゃねえか、ガキ!
- だが、なんで今までしなかった!?
- Anderson
- バカめ、実体を与えたらこっちも襲われるだろうが。
- 言っとくが殴り合いなら弱いぞ、俺は。
- Anderson
- おまえたちという肉体労働者が来るまで、
- 息を潜めて読書しているしかなかったと言っただろう。
- Nursery Rhyme
- ……ナーサリー……ライム……
- Nursery Rhyme
- いいえ、ちがうわ。
- それは名前じゃない。名前は、[#アリス:あたし]。
- Anderson
- ん? おや?
- Mashu
- 何か……アンデルセンさんの予想とは
- 些か違うようですが……しかし、先輩、これは。
- ?1:実体化している!
- ?2:結果よければすべて良し!
- ?!
- Mashu
- はい。敵は実体化しています!
- わかります、今は明確に、ここに実体がある!
- Mordred
- よっし。やるぞ!
- その後にあのクソガキを締めてやるっ!
- Nursery Rhyme
- ありす、どこ?
- ここには……ありすがいない……
- Nursery Rhyme
- ねえ、お姉ちゃんたち。
- ひとりぼっちの[#ありす:あたし]はどこにいるの?
- Anderson
- ……おまえにマスターはいない。
- いや、正しくは、この時代にはいないのだろうな。
- Anderson
- ……まさか、名前のない本をここまで愛した
- [#誰か:マスター]がいたとはな。
- Anderson
- 見るに忍びないとはこの事だ。
- 悪いが、早々に倒してやってくれ。
- ==
- Anderson
- ……口ほどにもない。
- 不思議の国の再現ぐらいは期待していたんだがな。
- Anderson
- まあ、それも高望みというヤツか。
- 我々が強すぎたのも良くなかったな。
- Mordred
- ……おい。
- 何が我々が強すぎた、だクソガキ。
- Mordred
- おまえは何もしないばかりか、さんざんオレたちを
- バカにしていただけの気がするんだけど、よ!
- Mashu
- や、やめましょうモードレッドさん。
- Mashu
- たしかに口の悪い人ですが、彼のおかげで
- 魔本
- ナーサリー・ライムを倒せたわけですからっ!
- Fou
- フォウ、フォーウ!
- Mordred
- チッ……そうだな、わかってるよ。
- この手の人種には手を出した方が負けだしな。
- Anderson
- なんだ、顔に似合わず……いや似合って……いや
- やはり似合わないな、貴様の魂はモーニングハンマーだ。
- Mordred
- トゲトゲしいって意味か!
- チクショウ、悔しいがわかりやすいなテメエ!
- Anderson
- ……反応もいい……鍛えればいいカモ……失礼、
- いい読み手になりそうなのに、勿体ない。
- Anderson
- しかし、アンチからの攻撃を愛読者に庇われるとは。
- いつの時代も人間は変わらないな。
- Mordred
- オレもマシュもサーヴァントだぞ。
- Mashu
- はい。わたしは、元は人間ですが……
- Dr. Roman
- というか、
- 大部分のサーヴァントはもともとは人間だけどね。
- Mordred
- ………チッ。まあいいさ。
- さっきの奴は、元が人間って訳でもなさそうだが。
- Fou
- ……フォウ……
- Anderson
- ああ。人間から英霊になるのが基本だが、
- 中にはナーサリー・ライムのような例もある。
- Anderson
- 人間に作られた創造物が意思を持ち、あるいは人々から
- の幻想を集め“概念英霊”となる場合だな。
- Dr. Roman
- 滅多にいないケースだけどね。
- そのうち本だけでなく、機械の英霊も出てきそうだ。
- Dr. Roman
- ともかくお疲れさま、諸君。
- いったんジキル氏のアパルトメントに戻ってくれ。
- Dr. Roman
- アンデルセン、君も来てくれるかな。
- サーヴァントの仲間が増えるのは何よりも心強い。
- Mordred
- あぁ!?
- このクソガキを連れて行くのかぁ!?
- Mordred
- めちゃくちゃ弱くて使えないぞ、絶対!
- しかもつまらない! ろくな本を書かないに決まってる!
- Anderson
- そうか。よし、是非同行しよう。
- Anderson
- 協力する気なんぞまったくなかったが、
- 今の発言で気が変わった。
- Anderson
- よろしくなセイバー。いや、モードレッド卿。
- ところで主役になるのならジャンルは何が好みだ?
- Anderson
- 悲劇か? 喜劇か? それともコメディか?
- いいぞ、ともあれ最高の駄作に仕上げてやろう。
- Mordred
- そうかよ。せいぜい売れない本書いて
- 泣きべそかいてろ、童話作家。
- Mashu
- (あ、あの、失礼ですよ、聞こえてますよっ)
- Mordred
- 聞こえるように言ったんだ。
- 陰口は、臆病者のすることだからな。
- Mashu
- …………。
- …………。
- Anderson
- さて、移動するか。
- 古書店主人が目覚める前に出るぞ。
- Anderson
- なにしろ盗人なのは俺も同じでな。
- 実はこっそり裏口から忍び込んだんだ。
- Anderson
- 目を覚まして警官を呼びつけられても厄介だ。
- 助けてやったのに捕まるなんぞ、駄作にも程がある!
- Mordred
- はあ!?
- Mordred
- 無許可で上がりこんどいて、
- あんだけ堂々としてやがったのかよ、おまえ!?
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