Story Event #27 (Sol)

###Dump 1

**？？？**
ヘリアーク！
おはよう。

**Heliak**
おはよう、ペルテイラ。
今日も大きな声だね。

**Pelteira**
いつもじゃないよ。
ヘリアークは考え事してると
声が聞こえないこともあるでしょ？

**Pelteira**
魔導心臓はほぼ完成だし
それで頭がいっぱいだろうから
絶対聞こえてないと思って。

**Heliak**
ひどいな。
たしかに頭はいっぱいだけどね。
まだ……完成してはいないから。

**Pelteira**
ほとんど完成だよ。
クリスタルを入れての動作は
問題なかったじゃない。

**Heliak**
設計に問題はなさそうだけど。
ちょっと不安なんだ。

**Pelteira**
問題ないのにちょっと不安って
またそれ？　何が不安なの？
ここまでこんなに順調なのに。

**Heliak**
……順調すぎちゃってね。

**Pelteira**
んん～？

**Heliak**
想定していなかったところで
勝手にクリスタルがうまく動作する。
その理由がなかなか探れない。

**Heliak**
今のところ成立しているように
見えるけど、その原因がわかるまで
結構な時間がかかりそうだからね。

**Pelteira**
まあ、私がひとりで触ろうとしたら
動かなかったことあったけどね……。

**Heliak**
はは、そういえば。
あれはあれで謎のひとつだね。

**Pelteira**
本気で悩むよ。あれ一回だけだよ。
なんでだろ。向いてないの？

**Heliak**
まあペルテイラの件はともかく、
ここまで来たら、僕らは
疑問への答えを出さなきゃね。

**Heliak**
さあ、研究所に急ごう。
まだ確認しておきたいことは
たくさんあるんだ。

**Pelteira**
ちょ、ちょっと待って！
同じ場所に行くんだから！
先、行かないでよ、もう！


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###Dump 2

**Yuraisha**
こんにちは、ヘリアーク。

**Heliak**
ようこそ、ユライシャ博士。
先日はお世話になりました。

**Yuraisha**
その後、気分はいかが？

**Heliak**
気になる症状もなく過ごしています。
本当に……不老不死になったのか。

**Yuraisha**
すぐに実感できることでは
ありませんからね。
でも今、異常がないなら良かった。

**Pelteira**
不老不死の肉体改造かぁ。博士、
やっぱり国から選ばれないと
受けられないんです？

**Yuraisha**
そうね、選ばれる必要はあります。
でも仮に誰でも受けられるように
なったとして――

**Yuraisha**
施術を受けた者は
長い長い時間を生きることになる。

**Yuraisha**
不死というわけではないから、
ひどい傷を負ったり病気にかかったり
すれば命を落とすこともあるけれど――

**Yuraisha**
長い時の間にもしかしたら
同意したことを後悔する人も
出てくるかもしれません。

**Yuraisha**
あまり気軽に受けられないほうがいい。
変な答え方になってしまったけれど
私はそう思っています。

**Pelteira**
そ、そうですよね！　あ、違うんです、
この中で私だけ老けていくのかぁ
って単純に思っただけで。あははは。

**Heliak**
そうだ……博士。
ちょっと相談したいことが。

**Yuraisha**
そう……つまり魔導心臓の動作が
意図したものにはなっていないと。

**Heliak**
このまま生物にテストを行うのは
不安なんです。まだ嫌な予感が
するとしか言えないのですが……。

**Yuraisha**
もう少し時間がほしいのですね。
わかりました。研究の期間を
延長するよう申請しておきます。

**Yuraisha**
色々な方向から調べてください。
命を助けるためのものが、
危険なものになってはいけませんから。

**Heliak**
ありがとうございます！

**Yuraisha**
今日はこれで失礼します。
他に気になることがあったら
いつでも相談して。それでは。

**Pelteira**
言ってもほとんど止まることないのに。
なんなら私でテストしてみる？
心臓の入れ替え。

**Heliak**
そういうのは冗談でもやめ���う。
僕の悪い予感は当たるって
君も知ってるじゃないか。

**Pelteira**
まあね。でもこれからどうする？

**Heliak**
博士が言うとおり、もっともっと
調べよう。この心臓の欠点を
必ず見つけ出すくらいのつもりでね。

**Yuraisha**
相談？　魔導心臓の件かしら？
何か問題でも？


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###Dump 3

**Heliak**
はい、どうぞ

**？？？**
お久しぶり、ヘリアーク。
私のこと……覚えてる？

**Heliak**
そりゃさすがに覚えてるよ、
イクリプサ。
君とは同期じゃないか。

**Heliak**
といっても僕は合間に
しばらく兵士として
働かされていたからね。

**Heliak**
君の方が先輩かな。

**Eclipsa**
ふふ、やめてよ。
肉体改造の対象者に選ばれた
優秀な博士の先輩？

**Eclipsa**
恥ずかしい。
私はしがない一研究員だもの。

**Heliak**
謙遜しすぎだよ。
……でも手術したこと、
よく知ってたね。

**Eclipsa**
みんな噂してるから。
ユライシャ博士に続く
栄えある二人目の科学者だって。

**Heliak**
そうなんだ……。
認めてもらったことは嬉しいけどね。
ところで、今日は何の用？

**Eclipsa**
ちょっと、お願いがあって。

**Heliak**
お願い？

**Eclipsa**
今ね、私……
新しいエネルギー生成装置の
開発を任されててね。

**Eclipsa**
いずれは飛空艇の動力として
使われるものになるんだけど……

**Eclipsa**
魔導心臓を扱う
あなたのアドバイスがほしいなって。

**Heliak**
僕の？　もちろん構わないけど
飛空艇の動力と人の心臓か……
通ずるところはなくも、ない？

**Eclipsa**
うん、いろいろあるはず。
魔導心臓は、もうすぐ完成？

**Heliak**
完成には近いんだけど
ちょっと問題があってね。

**Eclipsa**
問題、って……？

**Heliak**
それもまだハッキリしないんだ。
だから、僕が逆に君の協力を
お願いするかもしれない。

**Eclipsa**
もちろん構わない、光栄よ。
嬉しいくらい。
お互い助け合いましょ。

**Eclipsa**
これからはたびたび
お世話になると思うけどよろしくね。
今日は挨拶だけだから。さよなら。

**Pelteira**
あの人、バブイルの開発の人だよね。

**Heliak**
ああ……え？　バブイル？
あれって動力研究の
名前だったんだ。

**Pelteira**
他のトコに興味なさすぎ。
バブイルはエリートの集団だよ。
あの人もすごいんだろね。

**Heliak**
うん。彼女は優秀な人だね。
相談するのは僕の側に
なっちゃうんじゃないかな？

**Heliak**
向こうから新しい情報を
もらえ���こともあるだろうし。
僕もいろいろ話してみたい。


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###Dump 4

**Heliak**
申し上げたとおりで、
まだ……その安全性については
確認が必要かと……

**Laboratory Director**
君自身の話によれば
様々な方法を試しているようだし、
時間も充分にかけている。

**Laboratory Director**
不具合についても数字上では
ごく稀なケースじゃないか。
次にいつ発生するかもわからん。

**Laboratory Director**
逆に聞こう。
あと何を確かめれば
君は納得するんだ？

**Heliak**
……項目はいくらでもあります。

**Heliak**
人の身体に入れるものなんです。
得体の知れない物ではいけない。
今はまだその危険が――

**Laboratory Director**
ならば。

**Laboratory Director**
外にいる魔物を捕らえて
埋め込んでみればいい。
いくらでもうろついている。

**Heliak**
いや、待ってください、
魔物だからという話じゃない。
もう少し研究が進まないと――

**Laboratory Director**
進んでないんだよ！
君が試作品の完成を
報告してきたときから少しも！

**Laboratory Director**
もっとも君はその報告すら
遅らせたようだがな。

**Heliak**
…………。

**Laboratory Director**
フン、不老不死になったことで
時間に余裕が生まれたか？

**Laboratory Director**
悪いが私の命は限られているんだ。
今すぐに取り掛かれないなら
ヘリアーク、君をこの研究から外す！

**Heliak**
は、外すって……！
他に誰が代われると……

**Laboratory Director**
あとは埋め込んでテストでいい。
それなら他の者で充分だ！

**Laboratory Director**
自分でやれないならやめろ。
軍人にでも戻れ。秘めた魔力で
そっちでも活躍できるんだろう？

**Laboratory Director**
後で君の研究所に
いいサイズの魔物を捕らえて送ろう。
延期も中止も虚偽の報告も許さん。

**Laboratory Director**
もしどうしてもできんと言うなら
他の者に任せるまでだ。
どうする。君がやれるのか。

**Heliak**
………………

**Laboratory Director**
やらないという答えでいいんだな？

**Heliak**
……やります。
僕の責任で……。

**Laboratory Director**
よし。いい報告を待ってるぞ。


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###Dump 5

**Heliak**
…………。

**Heliak**
予感が……こんな形で……

**Heliak**
……あまりにもひどすぎる。

**Heliak**
そう……？

**Pelteira**
おはよう、ヘリアーク。
一日ぶりだけどやつれたね。

**Pelteira**
寝てないみたい。
報告書、手伝おうか？

**Heliak**
いや大丈夫。ありがとう��
おはよう、ペルテイラ。

**Heliak**
報告書はもうできてるよ。
ありのままを書いた。
魔導心臓は……動かないとね。

**Pelteira**
……うん。

**Heliak**
最初はなんとか動くけど
少しずつ拍動が減って、
やがては止まってしまう……。

**Heliak**
なのに取り出すとまた動き出す。
おそらくクリスタルに関係して
何らかの力の出入りがあるんだろう。

**Heliak**
今すぐ解明できるようには思えない。
今すぐどころか、もしかしたら
ずっと……わからないかもしれない。

**Pelteira**
ねえ、ヘリアーク。
しょげてるヒマないよ。

**Pelteira**
それはしっかり伝えなきゃならないし
最後の子のこともしっかり見なきゃ。
また急に……悪くなってきたから。

**Heliak**
急に？　……そうか。

**Pelteira**
必要があれば眠らせてあげないと。
私たちがあの子を
変えちゃったことになるんだし。

**Heliak**
……うん……。

**Pelteira**
ほらほら！　ヘリアーク！
やることはいっぱいあるんだぞ！
落ち込む前に働け！

**Heliak**
……そ、そうだねペルテイラ。

**Pelteira**
私、先に行ってるから。
ヘリアークも少し休んだら
研究所に来るんだよ。


=========================

###Dump 6

**Pelteira**
ごめんね……ヘリアークが来る前に
眠らせる薬を打ってそのまま、と
思ったんだ。

**Pelteira**
昨日から調子が悪そうだったんだけど、
今朝には急に苦しみ始めて……。
最後には暴れ出したの。

**Heliak**
苦しくて暴れたのか……。
申し訳ないことをしてしまったね。
あの魔物にも。

**Pelteira**
魔導心臓はなんで
動かなくなっちゃうのかな。

**Heliak**
わからない。
ただクリスタルの性質を考えると
思い当たる理由はなくもない。

**Pelteira**
性質……って？

**Heliak**
クリスタルにはよく、
人の想いが込められているって
聞くよね。

**Heliak**
エネルギーとして使用する僕らからは
縁遠い話だと思ってたんだけど……

**Heliak**
人の想いが入り込むってことは
人の何らかの力を吸収して
蓄える性質があるということだよ。

**Heliak**
それが身体の中に
直接埋め込まれたとしたら……

**Pelteira**
その生き物の力を
吸収しちゃうのかもってこと？

**Heliak**
身体から取り出した後に
また普通に動作することにも
説明を付けないといけないけどね。

**Heliak**
ああ、本当に
僕は何もわかってなかった。

**Heliak**
とにかく今のままの魔導心臓じゃ、
実用化なんて無理だ。

**Heliak**
研究は中止、
一からやり直しだと伝えてくる。
室長は怒るだろうけどね。

**Pelteira**
ねえ、ヘリアーク。

**Heliak**
ん？

**Pelteira**
またさ、いっしょに始めよ？
苦しんでる人たちを助ける研究。
次は絶対成功させよ？

**Heliak**
……ありがとう。ペルテイラ。
やり直して、次は成功させよう。


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###Dump 7

**Eclipsa**
ヘリアーク。
あ……もしかして
魔導心臓のこと、室長へ報告に？

**Heliak**
やあ。そのとおり。
ずっと忙しくしててごめん。
なかなか連絡もできなかった。

**Eclipsa**
テスト大変だったみたいね。
うまくいかなかったって聞いたけど
今後の研究は……どうするの？

**Heliak**
中止になるかな。
最初からやり直そうと思ってね。
「魔導」を使うかも含めて。

**Eclipsa**
そうなの……残念。
あなたの研究の考え方、
とても参考になってたのに。

**Heliak**
そう言ってもらえて嬉しいよ。
でも僕はクリスタルのことを
ぜんぜん理解できていなかった。

**Heliak**
イクリプサ、クリスタルを
バブイルの研究に使うんだったら
これだけは気をつけて。

**Heliak**
クリスタルは生き物の命の力を
吸収する性質があるのかもしれない。

**Heliak**
想いを込められるだけじゃなく、
勝手に吸い取る力もある……
おとぎ話じゃなくね。

**Eclipsa**
おとぎ話、じゃなくか。

**Heliak**
さて、今回の報告に行かなきゃ。
研究もテストも大失敗だ、ってね。

**Eclipsa**
ふふ、気が重いわね。
室長、諦めてくれるといいけど。

**Heliak**
粘られるかな？
念のため戻ったらファイルも
魔導心臓も処分しとこう。

**Heliak**
下手に使えるものを
残さないほうがいいし。
やるならまた一からだ。

**Eclipsa**
そうね……もったいないけど
きっとその方がいい。

**Heliak**
またね、イクリプサ。

**Eclipsa**
おとぎ話……ね。
私だって同じ場所に
行きついてるわ。

**Eclipsa**
それでも私は、
魔導を捨てないけど。


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###Dump 8

**Pelteira**
ああああ！　ヘリアーク！！

**Heliak**
え？　……ペルテイラ？
どうしたの。

**Pelteira**
お帰り、ヘリアーク！
よかった、解放されたんだ！

**Heliak**
……何の話？

**Pelteira**
中止が聞き入れられなくて
捕まったんでしょ？

**Heliak**
待って、なに言ってるの。
僕はちゃんと中止だと伝えてきたよ。
いったい誰がそんなことを？

**Pelteira**
え？　どういうこと？

**Heliak**
僕が聞きたいくらいだけど……？

**Pelteira**
じゃ、あの人は
嘘ついたってこと！？

**Heliak**
あの人って誰？

**Pelteira**
バブイルのイクリプサだよ！
さっき、ここに来たの！

**Heliak**
イクリプサが……？
僕も今朝、街で会ったけど。

**Pelteira**
ヘリアークを助けるために
研究のファイルと、
完成してる魔導心臓を渡して、って

**Heliak**
いったいどういう話……？
なんだってそんなことに……

**Pelteira**
本気で嘘だったの……。
ってことはだよ？　これって――

**Pelteira**
私、騙されて魔導心臓と
研究ファイルをあの人に
盗まれちゃったってわけだよね？

**Heliak**
そこまで大げさなことじゃ
ないとは思うけど……。

**Pelteira**
なくないよ！
あなたじゃないけど
私いますごく嫌な予感がする。

**Pelteira**
魔導心臓が必要なら
まずは相談するのが筋でしょ？
わざわざ騙して持っていったんだよ。

**Heliak**
僕が魔導心臓を処分する、
って言ったから
心配になったんだと思う。

**Heliak**
廃棄される前に
知りたいことや見たいものが
あったのかもしれない。

**Pelteira**
待ってよ、どれだけ人が好いの？
知りたい、見たいって、
そもそもうちの研究なんだよ？

**Heliak**
とりあえず話をしに行くよ。
どうしてこんなことを
したのかも聞いてくる。

**Pelteira**
……危なくない？
あの人のところに行くの。

**Heliak**
大丈夫。もし、万が一。
何かあったら全力で逃げてくるよ。

**Heliak**
そんな事態には
ならないと思うけどね。

**Pelteira**
ヘリアーク。
絶対、戻ってきてよ？

**Heliak**
うん。
じゃあ行ってくる。


=========================

###Dump 9

**Eclipsa**
どうぞ、入って。

**Heliak**
やあ。イクリプサ。

**Heliak**
さっき僕の研究室に来て
ファイルとサンプルを
持っていったそうだね。

**Heliak**
どうして？
研究の内容についてなら
言ってくれれば相談に乗ったのに。

**Eclipsa**
妙な真似をしてごめんなさい。
処分されてしまう前に
いろいろ確認したかったの。

**Eclipsa**
魔導心臓……よくできてたわ。
テストではこれを使って
数日は生きられたのよね。

**Heliak**
数日しか、だよ。
よくできているように見えても
それは失敗作だ。

**Eclipsa**
ヘリアーク。
魔導心臓を私に譲ってもらえない？

**Heliak**
……なぜ？

**Eclipsa**
バブイルは動かせなかったの。
動作させるとすぐに
エネルギーが尽きてしまう。

**Eclipsa**
だから……自ら
エネルギーを発する心臓を
入れたいのよ。

**Heliak**
……斬新な発想だね。でも
魔導心臓じゃ役目を果たせない。
ファイルの中身も見たんだよね？

**Heliak**
そもそもバブイルは生き物じゃない。
少しもエネルギーは供給できずに
動作は停止するよ。

**Eclipsa**
そんなの知ってる。
いちいちあなたから
教えてもらわなくてもね。

**Eclipsa**
勘違いしないで。
魔導心臓のほうじゃない。

**Eclipsa**
バブイルに組み込むのは
生命力を持った、
生きた私の心臓よ。

**Eclipsa**
そして魔導心臓が、
私の心臓になる。

**Heliak**
何を……言ってるんだ！？

**Heliak**
結果は出てるじゃないか！　それじゃ
バブイルも君も数日しかもたない。
君は無駄死にするっていうの？

**Eclipsa**
いいのよ、それでも。
バブイルが動いて
研究が認められればね。

**Eclipsa**
死んだっていい。
私の名前で研究を残したいの。

**Heliak**
イクリプサ……
絶対にダメだ。僕の研究は、
人の命を奪うためのものじゃない！

**Eclipsa**
邪魔はしないで。
もう少しで完成なの。
お願いヘリアーク。

**Heliak**
見過ごすわけにはいかない！

**Eclipsa**
……あなたならそういうわね。
力ずくで止めてみせたらいい。

**Eclipsa**
さあ、この人を……追い払って！


=========================

###Dump 10

**Heliak**
まずい……！

**Heliak**
ぐっ……！！

**Eclipsa**
危なかった。
本当に本気を出されたら
きっと私たちみんな死んでいたわ。

**Eclipsa**
といって彼が死んでしまっても
計画は台無しに
なってしまうんだけど。

**Eclipsa**
ちゃんと生きてる。
すぐに手術室へ連れていって。

**Eclipsa**
魔導心臓は用意してあるわね。

**Cold-Hearted Researcher**
はい。

**Eclipsa**
では医師を呼んで。
すぐに始めましょう。

**Eclipsa**
心臓を摘出したら
ヘリアークには魔導心臓を。

**Eclipsa**
動作はするらしいけれど、
急変しても……
他に処置はしないと伝えて。

**Cold-Hearted Researcher**
承知しました。

**Eclipsa**
ヘリアーク。
貴重な素材をありがとう。
あなたの、心臓という素材を。

**Eclipsa**
数年じゃなく、何年も何年も
動き続けてくれるはずよ。
肉体改造を受けたあなたの心臓なら。

**Eclipsa**
限りない生命力をクリスタルに与え、
クリスタルの力が永遠に循環する。

**Eclipsa**
アルドールの科学の結晶、
「バブイルの心臓」の誕生ね……。


=========================

###Dump 11

**Heliak**
…………。
ここは？


**Heliak**
……胸に、傷？

**Heliak**
この……微かな音は……まさか

**Heliak**
魔導心臓が僕に���…？
じゃあ、僕の心臓は……


**Heliak**
イクリプサ……彼女なのか。



**Heliak**
イクリプサ……！
話を……聞かないと……！


**Heliak**
イクリプサを呼んでくれ。

**Heliak**
早く呼んでくれ。
話を聞きたいんだ。


**Eclipsa**
ここにいるわよ……ヘリアーク。
あまり動くと、傷が開くわ。


**Heliak**
イクリプサ。どういうことなんだ。
なぜ僕に魔導心臓を埋め込んだ……？


**Eclipsa**
それは……やむをえずよ。
あなたが胸にひどいケガをして
死にそうだったから。


**Heliak**
……それじゃあ

**Heliak**
生きた心臓を
入れると言っていた、
バブイルはどうなったの？


**Eclipsa**
研究は中止したわよ。
魔導心臓はあなたに
入れてしまったんだもの。


**Heliak**
バブイルを見せてくれないかな。

**Eclipsa**
部外者には見せられないわ。

**Heliak**
……見せてくれ。
中を確認したいんだ。


**Eclipsa**
や、やめてよ。何やってるの！
施設内で魔法を使わないで！


**Eclipsa**
やめてって言ってるでしょ！

**Heliak**
バブイルを見せてくれ。

**Heliak**
中に何が入っているのか
知りたいんだ。


=========================

###Dump 12

**Eclipsa**
見たければ見ればいいわ。
これがバブイルよ。


**Heliak**
…………。

**Heliak**
動いてる……のか。
僕の心臓を使って。


**Heliak**
こんなことが知れたら、君だって
立場がないんじゃないのか。


**Eclipsa**
誰にも知られることはないわ。
装置は決して開かない。
中身ごと粉々に砕く以外にね。


**Eclipsa**
中に何が入っているのか、
確かめる術は存在しないのよ。


**Heliak**
決して……開かない……

**Eclipsa**
……下手に魔導心臓の移植なんて
しなければよかった。


**Eclipsa**
普通に生きてるじゃない。
数日もすればテストした魔物は
みんな死んだって書いてあったのに。


**Eclipsa**
肉体改造は身体の劣化を防ぐだけ。
魔導心臓は役立たず。
心臓を失ったら死ぬはずでしょ。


**Heliak**
僕を殺すつもりなのか。

**Eclipsa**
死んでくれないと困るの。

**Heliak**
君は優秀な科学者のはずなのに
なんで……こんなこと考えたんだ。


**Eclipsa**
つまらないこと聞くのね。

**Eclipsa**
私には永遠の時間も
よそで役立つ魔力もないからよ。
あんたと違ってね。


=========================

###Dump 13

**Pelteira**
ヘリアーク！！

**Pelteira**
ヘリアーク？　どうしたの？
どこか調子悪いの？


**Heliak**
どう話せばいいんだろう。

**Pelteira**
なに？　何があったの？

**Heliak**
驚かないで、聞いて。
僕の身体の中に……
魔導心臓が入ってる。

**Pelteira**
どうして……！？
なんでそんなことに！？


**Heliak**
僕の本当の心臓は……
この箱の中にある。
何をやっても開けられそうにない。


**Pelteira**
……これは、なに？

**Heliak**
イクリプサが開発していた
「バブイル」だよ。


**Heliak**
イクリプサの研究施設から、
持ってきたんだ。だって、
中身は……僕の心臓だしさ……。


**Pelteira**
持ってきた、って……
ねえヘリアーク、その手。
傷だらけだよ、どうしたの？


**Heliak**
魔法のせいかな……。
慣れない強いのを
何度も撃ってしまったから……


**Heliak**
僕は……死ぬんだろうね。
肉体改造なんて関係ない、
心臓が抜かれてしまったら――


**Pelteira**
ヘリアーク、大丈夫だよ。
落ち着いて、まだ生きてる。


**Pelteira**
あのね、私、
しっかりあなたの話を聞きたい。
でもここはたぶん危ないから。


**Pelteira**
街を離れよう。
今から私の故郷の村に行くの。


**Heliak**
…………。

**Pelteira**
そのバブイルはちゃんと持って。
絶対に心臓のほうも何とかしよ！

**Heliak**
ペルテイラ……

**Pelteira**
とにかく話は後。
今すぐ出発だよ。いい？

**Heliak**
……わかった。

**Pelteira**
行こう！！　急いで！！

**Pelteira**
よかった！！
何日もずっと帰ってこないから
心配したんだよ！


**Heliak**
ペルテイラ……
僕は……、僕は……


=========================

###Dump 14

**Pelteira**
少し慣れてきた？
いいところでしょ。この村。

**Heliak**
気温が低くて
過ごしやすいね。


**Pelteira**
景色もいい、空気もおいしい。
静かでのーんびり。
ちょっとつまんない？


**Heliak**
平気だよ。

**Pelteira**
だよね！　だってヘリアーク、
静かな田舎でのんびりしたいって
いつも言ってたし？


**Heliak**
……ああ。そうだね。

**Pelteira**
……ヘリアーク。
心臓の調子、どう？


**Pelteira**
テストした子たちはみんな、
調子が悪くなっていってたしさ。
そろそろ何かあるかも、って。


**Heliak**
今のところおかしくなる様子は
なさそうだ。


**Heliak**
意図しないところで
勝手にうまく動いてる。


**Pelteira**
そっか。よかった。
生きてられるのは
いいことだもんね……


**Yuraisha**
ヘリアーク、ペルテイラ。

**Pelteira**
ユライシャ博士……！！
どうして、ここに？


**Yuraisha**
あなたたちを探していたんです。
よかった、やっと会えました。


**Yuraisha**
何が起きたかは想像がついています。
バブイルも今……ここにあるのですね？


**Pelteira**
…………。

**Yuraisha**
軍は間もなく、
ヘリアークとバブイルの捜索を
開始するでしょう。


**Yuraisha**
本来なら、軍に保護されたほうが
安全であるはずなのだけど――


**Yuraisha**
あなたたちが
アルドールの街を出てから
世の中の状況が変わりました。


**Heliak**
……状況、とは？

**Yuraisha**
ヘスの民が
国から不当な扱いを
受けるようになったのです。


**Pelteira**
ヘスの民、って
ヘスの血を引く民族ですよね。
博士やヘリアークもたしか……。


**Yuraisha**
バブイルや魔導心臓の研究を
妨害した者として、私の名も
ヘリアークの名も挙げられています。


**Pelteira**
妨害！？　なっ……なんで！

**Yuraisha**
……私はアルドールを
離れると決めました。


**Yuraisha**
ヘスの民を集めて
自分たちの身を守る組織を
作り上げるつもりです。


**Yuraisha**
あなたはバブイル消失の件の当事者。
捕えられればどうなるかわかりません。
無防備なままここにいるのは危険です。


**Yuraisha**
魔導心臓も見たところいまは
落ち着いているようだけど
今後何が起こるかはわからないはず。


**Yuraisha**
ヘリアーク。私にあなたを
保護させてもらえないかしら。


**Pelteira**
保護……？

**Yuraisha**
もちろん匿うだけじゃありません。
肉体改造手術の経過も含めて、
私があなたの身体を見ましょう。


**Yuraisha**
そして、アルドールとの衝突に備え、
身を守れるように大きな魔力の
使い方や戦い方を教え込みます。


**Yuraisha**
街に帰るのは危険。
ここにいても、いずれは
見つかってしまう。


**Yuraisha**
どうかしら。ヘリアーク。

**Heliak**
…………。

**Pelteira**
ヘリアーク……。

**Heliak**
……わかりました。
連れて行ってください。
ユライシャ博士。


**Pelteira**
じゃ、じゃあ私も！
私も行かせてください。


**Heliak**
ペルテイラ。
話を聞く限り、
僕についてくるのは危ない。


**Pelteira**
でも……！

**Heliak**
魔導心臓に異常はない。
僕はまだまだ死にそうにないし、
きっと……また会えるから。


**Pelteira**
ヘリアーク……。


=========================

###Dump 15

**Yuraisha**
ずっと村で休んでいたのに、
いきなり連れ回して
ごめんなさいね。


**Yuraisha**
心臓の調子はどうですか？

**Heliak**
問題ありません。

**Yuraisha**
それならよかった。
けれど疲れている？


**Heliak**
……何か、いつもと
違うように感じられますか。


**Yuraisha**
何か自覚があるの？

**Heliak**
自覚といっていいのか
わかりませんが。


**Heliak**
……以前、
どんな風に考えていたか。
相手とどんな風に接していたか。

**Heliak**
魔導心臓が入ってから、
よく曖昧になるんです。

**Pelteira**
ヘッ、ヘリアークッ！

**Heliak**
ペルテイラ……？

**Pelteira**
ごめん、私っ！！
ずっと追いかけてきてて！！


**Heliak**
追いかけてきたって、
どうして。


**Pelteira**
……心配で。

**Heliak**
…………。

**Pelteira**
博士、お願いです。
何でも雑用、やりますから。
私も拠点に連れてってください。


**Yuraisha**
ペルテイラ……

**Pelteira**
私、普通のアルドール人ですけど、
ヘスの民にも大事な人はいるし
もちろん中で敵対なんかしません。


**Pelteira**
行きたいんです。

**Pelteira**
今、別れたら
二度とヘリアークには
会えないような気がするから。


**Pelteira**
魔導心臓は動いてるけど、
あの日からどんどん
ヘリアークは変わってきてる。


**Pelteira**
私、わかったの。
多分ね……
ううん、きっと絶対にね――


**Pelteira**
人の想いがクリスタルに
込められるって
言われてるように……


**Pelteira**
きっと生命力として
ヘリアークの心もクリスタルに
吸収され始めてるんだと思う。

**Yuraisha**
心が……？

**Pelteira**
今のままなら
心がなくなっちゃうまで
そんなに日はないはずなんです。


**Pelteira**
心のエネルギーが尽きたとき
死んじゃうのか――


**Pelteira**
魔導心臓だけは動いてて
別人になっちゃうのか。
それはわからないけど……。


**Pelteira**
でもヘリアークには
もう会えない。


**Pelteira**
それまでいっしょにいたい。
それだけなんです。
ぜんぶ見届けたら……村に帰るから。


**Yuraisha**
ペルテイラ……。

**Pelteira**
だからお願いします。

**Heliak**
……君が言うとおり
僕の中で何かが変わってきてる。


**Heliak**
いつまでヘリアークとして
過ごせるのかわからない。


**Heliak**
いっしょに来ても
期待に応えられるかどうか。
それでもいいの？


**Pelteira**
……いいの。

**Pelteira**
っていうか期待って何？
別に期待なんかしてないよ！


**Pelteira**
私の期待に応えてくれたこと、
そもそもあった？　いっつも
反対ばっかりだったじゃない。


**Heliak**
………そうだっけ。
…………ふっ

**Yuraisha**
ペルテイラに同行してもらった方が
あなたの経過にはいい気がします。


**Yuraisha**
いっしょに行きましょう、
ペルテイラ。
ヘスの民はあなたを歓迎します。


**Pelteira**
ありがとうございます！！

**Heliak**
（心が消えていく……）

**Heliak**
（とっさにペルテイラを
　助けたのは、自分が助けたいと
　思ったからなのか）

**Heliak**
（偶然……助けられる位置に
　いたからだったのか。
　……心が動かない、わからない）


**Heliak**
（自分が笑ったはずなのに、
　他人事のようにも思える）


**Heliak**
（自分が全て消えてしまったら、
　僕は死ぬのか？　それとも
　別の誰かになってしまうのか……）


=========================

###Dump 16

**Yuraisha**
ヘリアーク、
新しい拠点のほうはどうでしたか？


**Heliak**
私が見てきた限りでは
現在のところ問題はありません。

**Heliak**
ただ食料の備蓄には不安があります。

**Heliak**
避難する人も増えていますから
尽きる前に運んでおいたほうが
良いでしょう。


**Yuraisha**
人が増えれば、狙われる確率も
上がります。あなたから
申し出があったとおり――

**Yuraisha**
明日から新拠点の警護役を
お願いしても大丈夫かしら。
危険な場所だけれど。

**Heliak**
はい。

**Yuraisha**
長い滞在になると思います。
ペルテイラは連れて行くんでしょう？
彼女にも伝えておいて。

**Heliak**
承知しました。

**Pelteira**
お帰り、ヘリアーク。
調子はどう？

**Heliak**
問題ない。

**Pelteira**
……ここに来てから
結構時間が経ったけど、
心臓ちゃんと動いてるね。

**Pelteira**
少しもおかしくならないなんて。
ラッキーだけどさ、
なんでなんだろうね？

**Heliak**
私……僕にもわからない。
でも仮説は立てられる。

**Pelteira**
えっ、そうなの？
何か思い当たった？

**Heliak**
先日、記録を読み返した。
説明のつく法則がひとつだけ
存在する。

**Pelteira**
本当に……？
聞きたい。教えて。

**Heliak**
話すことは構わない。
……だが、場所を変えないか。

**Heliak**
他にもこちらからいろいろ
話しておきたいことがある。

**Pelteira**
わかった。
じゃあちょっと出ようか。


=========================

###Dump 17

**Pelteira**
ああ、気分がいい！
外に出てきたの久しぶりだよ。


**Heliak**
この辺りは護衛がいなければ
危険だからな。


**Pelteira**
今日はヘリアークがいてよかった。
最近いつも出張で
忙しそうだもんね。


**Heliak**
明日から東の新拠点の警護の任に
就くことになった。
向こうにしばらく滞在する。

**Pelteira**
しばらく？　それなら
私も行っていいんだね？


**Heliak**
……いや、僕が一人で行く。
アルドールとの衝突も多い
危険な場所だ。


**Pelteira**
そっか……そうなんだ……。

**Pelteira**
そうだ、心臓のこと。
何がわかったの？


**Heliak**
ああ。確かめようはないが
正しい答えだと思う。


**Heliak**
心臓が問題なく動くタイミングと
動きの悪くなるタイミングに
共通点を見つけることができた。


**Pelteira**
それ、色々考えたけど……
全然わからなかったんだよね。
何かが関係してたの？


**Heliak**
僕の存在だ。

**Pelteira**
えっ……？　ヘリアークの？

**Heliak**
具体的にいうと僕の魔力だろう。

**Heliak**
僕が直接触れているか、
至近距離にいさえすれば、
心臓は動いていた。


**Heliak**
僕の不在のうちに
他の人間が触れた場合。


**Heliak**
心臓を埋め込まれた魔物と
僕の距離が大きく離れた場合。


**Heliak**
テストでの急激な体調変化は
僕が自宅にいた時間の長さが
そのまま影響した。


**Pelteira**
あの最後の子が苦しんだ日、
ヘリアークは１日休んで
家にいたっけ……。


**Heliak**
埋め込まれた身体の生命力とは別に
僕の力が働いていたと考えられる。


**Heliak**
そして今。
心臓は僕の身体に収まっている。


**Pelteira**
ちゃんと動くのは
ヘリアークの中にあるから……？


**Heliak**
ヘリアークとしての心が
完全に失われたとき、死ねるなら
それでもいいと思っていた。


**Heliak**
だがそうならない可能性が高い。
この身体に魔力がある限り
僕は死なないのかもしれない。


**Heliak**
僕が言いたいことがわかるか？
ペルテイラ。


**Pelteira**
ヘリアークでなくなった後
……あなたはずっと
生きていけるってことだ。


**Heliak**
こうしている間にも、
色々な感情が失われていく。
ヘリアークとしての記憶もだ。


**Pelteira**
ヘリアーク……

**Heliak**
そのうち……
自分が何を研究していたか
何を目的にしていたか、


**Heliak**
君がどういう関係の人間で、
どうやって知り合ったのか、


**Heliak**
ヘリアークとして
何を話したのかも――


**Heliak**
下がっていてくれ。
私が片付ける。


=========================

###Dump 18

**Heliak**
怪我はないか。

**Pelteira**
うん、ちょっとびっくりした。
ありがとうヘリアーク。
あれ……


**Pelteira**
降ってきちゃったね。

**Heliak**
……もう少し話を
聞いてもらってもいいか。


**Pelteira**
うん。そのつもりだよ。

**Heliak**
……ありがとう。
これが君と話ができる
最後の機会だと思う。


**Pelteira**
…………。

**Heliak**
私がヘリアークでなくなる日は
そう遠くない。


**Heliak**
バブイルの分解はできないまま、
飛空艇の動力として使用することが
検討され始めた。


**Heliak**
ヘリアークという意識の存在は、
もう、君の前には現れない。



**Pelteira**
そうだね。きっと。

**Heliak**
私は過去の記憶や
心や感情を持たない、
まったく新たな存在となり――


**Heliak**
この魔力が尽きるまで
不老だというこの身体を失うまで、
生きていかねばならない。


**Pelteira**
…………。

**Heliak**
ペルテイラ。頼みがある。

**Pelteira**
……嫌なことじゃないよね？

**Heliak**
嫌がられるかどうかはわからない。

**Pelteira**
一応、聞くよ。

**Heliak**
新しい名前をもらえないだろうか。

**Pelteira**
名前……？

**Heliak**
ヘリアークという存在に
永遠に囚われるべきではない。


**Heliak**
我々のひとつの区切りとして。
そして、私への餞別として。


**Pelteira**
餞別……

**Heliak**
新拠点への滞在は長くなる。
ほぼこちらに戻ることもない。


**Heliak**
これで君と会うのは最後になる。
餞別というのはそういう意味だ。


**Pelteira**
……ヘリアークは、
二度と会わないほうが
いいって。そう考えてるの？


**Heliak**
さっき君を守ろうとした行動も
自分の意思なのか
単に合理的に考えた結果なのか。


**Heliak**
自分の身に危険が及んでいたら
君を見捨てたのかどうか。


**Heliak**
心をなくした私が
君を守ることができるのか。
……わからないのだ。


**Heliak**
それを不安に思えるうちに
彼の意思が微かに残るうちに
君のもとを去っておきたい。


**Heliak**
そう考えている。

**Pelteira**
ふふ。なんか、懐かしい。

**Pelteira**
……これでもかって理由並べて。
私の意見は聞かないんだよね。
そこは変わらないんだね。


**Pelteira**
自分でわからなくたって
助けてくれたのは事実だよ。
私のことを心配してくれてるのもね。


**Pelteira**
今のあなたも優しい。
今のあなたが生き続けてくれるなら
それはそれで私は嬉しい。



**Pelteira**
さて……名前。あなたはずっと
太陽みたいな人だった。
研究や魔法の才能もそうなんだけど、


**Pelteira**
いつもニコニコして。
いっしょにいると温かかった。


**Pelteira**
今はほとんどニコニコしなく
なっちゃったけど、それでも
一緒にいると温かいから――


**Pelteira**
だから新しい名前は
「ソル」でどう？
太陽って意味がある言葉なんだ。


**Heliak**
ソル……か。

**Pelteira**
ものすごい魔法で敵をぶっ飛ばし���、
苦しんでる人を温かい光で照らす。
そういう意味も込めてね。


**Heliak**
わかった。
いい名をありがとう。


**Pelteira**
新拠点が危険なのは知ってる。
迷惑にはなりたくないし
私は行かないよ。


**Pelteira**
ヘリアークが――ソルが
帰ってくることも
ほとんどないだろうね。


**Pelteira**
お別れに……
近いけどさ……


**Pelteira**
でも二度と会わないなんて
決めなくても良くない？


**Pelteira**
名前のお礼に約束してよ。
アルドールとの争いが
なくなったらまた会うって。


**Sol**
約束…………。

**Pelteira**
苦しんでいる人を救うための
研究をまた始めるの。
悪くないでしょ？


**Pelteira**
ね。約束。

**Sol**
……心に留めておく。

**Pelteira**
ありがとう。別々の場所でも、
お互い頑張ろ、ソル。
いつか会える日、信じてるから。


**Pelteira**
さあ、そろそろ行こっか……。

**Pelteira**
……。

**Pelteira**
………。

**Pelteira**
…………………。

**Pelteira**
……っ。
……雨が降ってて
……良かったな。


**Sol**
そうだな。
私もなぜか……降っていて
良かったと思う。


**Sol**
……行こう、ペルテイラ。