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- 遥か昔のこと。まだこの世界は、暗い闇の中に輝く一つの光でしかなかった。星々は寄り集まり星座となり、遥かな刻を経て、とある星に命を生み出すまで、ただ冷たく暗い闇の中にあった。
- 最初の命は海から生まれたという。その命は瞬く間に地上で溢れ返り、神々―――後に古神と呼ばれる力の加護の元に“人”がその頂点へと立った。
- 先史文明期、一つの回廊の始まりである。
- 生き物の頂点に立った先史文明期の“人”は、あらゆる御技を編み出していった。
- 火を使わずに灯す光。指を翳すだけて溢れる水や風。遠く離れた者と言葉を交わす小箱。果ての国で起こった戦は、光の速さで遠く離れた国へと伝えられ、鉄の船は地上ばかりではなく七つの海を行き、他の星座に辿り着く程であった。
- やがて“人”は、暮らしをより豊かにする為、人格を与えた女神を生み出し、天も貫く機械の塔を造りあげた。
- 塔の中では飢えも無く、寒さや暑さも無い。 闇すら退ける技を以って“人”は塔の頂で、神さながらに暮らし始めたのだ。
- やがて時は経ち、“人”は神々の加護を忘れていった。
- 神の声に耳を閉ざし、自ら神の様に振舞う中で、この世界とは決して交わらない、もう一つの回廊を見つけ出したのである。
- そこには神―――後に現神と呼ばれる力の加護の元に、竜が、大魚が、原始の星さながらの豊かな緑の中で暮らし、多くの獣とエルフとドワーフがいた。
- “人”の数十倍の寿命を持ち、“人”が失った多くの恵みに囲まれて暮らしていたのだ。
- 女神を従えた“人”は、一つの豊かさを得ることで十の恵みを失っていた。その事実に気付いた時、失った恵みは取り返せない物ばかりであったのだと、気がついたのである。
- 改めて地上を見渡せば、大地の緑は枯れ、僅か塔の周辺に残るばかり。海と空には毒が漂い、僅かな恵みを奪い合う多くの“人”の姿を見たのである。
- 更に視線を転じれば、交わることの無いもう一つの回廊には、失われた多くの恵みが眠っていた。
- “人”の心は大きく揺れた。
- ―――古神は告げた。
- 今一度、我の言葉を聞き、恵みを蘇らせる道を探せ。もう一つの回廊を手本として、決して手を出してはならない。道は険しく果てしないものであろうが、真の恵みを蘇らせた果てには、真の豊かさが訪れよう。
- 多くの“人”は迷い、古神の言葉を黙殺して、安易にもう一つの回廊に干渉しようとした。だがその果てにあるのは、この回廊と同じ大地である。
- 結果として“人”は、荒野を進む決意に至ったのである。
- 豊穣の女神はこれを見て心を痛めた。
- 真の豊かさに至る道は、果てしなく遠く険しい。そして“人”の寿命は余りに短く、数百もの世代を超えねばならないだろう。
- こうして女神はその誤った慈悲と忠実さ故に、現神の支配するもう一つの回廊へと、手を伸ばしたのである。
- 相容れない筈の二つの回廊の融合。
- 飛来した現神と“人”を支配してきた古神。そして世界をより良い方向へ導こうとした女神による、三つ巴の戦い―――“三神戦争”の始まりである。
- 世界の融合によって大地は砕かれ、七つの海は無数の内海へと分かれていった。そそり立つ塔は悉く折れ伏し、星へと至る御技の数々も失われた。
- 長い、長い戦いの果てで、最後に勝利を収めたのは現神であった。
- 人々の乏しい信仰力では支えきれなかった古神は滅び、あるいは深い封印を施されて眠りについた。
- 女神は世界で散り散りに別れ、ある者は土着の神となり、ある者は国を建て王となった。
- そして“人”は“人間族”となり、現神と女神の加護の元で、細々と生きながらえることになった。
- ここに新たな世界―――“二つの回廊の終わり”が生まれたのである。
- 時が経ち、世界が秩序を保ちだした頃、ディル=リフィーナの一角に、一人の姫が生まれた。
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