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- ~ザ・ライトスタッフ~
- 新型機のテストパイロットを務める地球連邦軍の兵士。
- 気弱で何事にも消極的であるが、生真面目な性格で自分の任務を懸命に果たそうとする。
- ==============
- 宇宙世紀と呼ばれる時代。
- 国家を廃し、地球連邦政府の下に統一された人類は、
- スペースコロニーの建造の成功させ、その生活の場を宇宙へと広げていった。
- だが、それは新たな戦いを生む土壌となり、スペースコロニー群・サイド3に誕生したジオン公国による地球連邦からの独立宣言は、「一年戦争」へと発展していった。
- このかつてない規模の巨大な戦争は甚大な戦禍を生み、以降の社会に深刻な爪あとを残した。
- 総人口の3分の1を失った一年戦争が地球連邦の勝利で終結した後も、戦火は消えることはなかった。
- 超古代文明の力を我が物として世界征服を目論むDr・ヘルの攻撃に続き、人類は人類以外の知的生命体との戦いを連続して経験することになる。
- 古代ミケーネ人を祖とするミケーネ帝国、地底を根城とするハ虫人類の恐竜帝国、
- そして、外宇宙からの侵略者であるベガ星連合軍。
- 人類はマジンガーZやゲッターロボを始めとするスーパーロボットを中心に戦い、Dr・ヘル、ミケーネ帝国を打ち破り、恐竜帝国とベガ星連合軍との戦いも大詰めを迎えようとしていた。
- しかし、その戦いの最中でも人類は一つになることは出来なかった。
- 一年戦争によって表面化することとなった「アースノイド・地球居住者・」と「スペースノイド・宇宙移民者・」の確執は、戦争終結から7年が経過した現在、新たな局面を迎えていた。
- 地球連邦軍を内部から掌握しつつあるエリート集団「ティターンズ」は、そのエゴをむき出しにしてスペースノイドの弾圧を行い、それを危険視する人間達は反地球連邦組織「エゥーゴ」を結成し、抵抗を開始していた。
- 一つの戦いが終わり、新たな戦いが始まる中、巨大な運命の嵐は静かに世界を飲み込もうとしていた。
- ===============
- 月面 地球連邦軍ルテチウム基地
- ~ルテチウム基地 通路~
- 「おい、そこのお前…」
- 「…自分の事でしょうか?」
- 「そうだ。…その制服を着てるって事は、『グローリー・スター』のメンバーか?」
- 「自分はセツコ・オハラ少尉」
- 「所属は月面駐留軍戦技研究班『グローリー・スター』。配属は10日前になります」
- 「噂のライトスタッフに、こんなお嬢ちゃんが紛れ込んでいるとはな」
- 「マスコットとして、チアガールでもやるのかい?」
- 「……」
- 「フン…その怯えた顔…。俺達が誰かは知っているわけか」
- 「…ティターンズの方とお見受けします」
- 「その通りだ。俺はジェリド・メサ中尉。そっちはカクリコン・カクーラー中尉だ」
- 「…では、中尉。自分を呼び止めたのは、どういったご用件でしょうか?」
- 「フン…軍での口の利き方ってのが、まるでわかっちゃいないようだな」
- 「やっぱり、こいつらには『お人形遊び』がお似合いだぜ」
- 「…それはグローリー・スターの任務について、おっしゃっているのでしょうか?」
- 「…いい機会だ。後方でママゴトをしてる半端者に教えてやるぜ」
- 「地球連邦軍は戦争をしてるんだ。宇宙から来たベガ星連合とかいう連中や忌々しいエゥーゴとな」
- 「兵器ってのは戦場に出てこそ意味があり、兵士ってのは敵を落としてこそ、その存在意義があるんだよ」
- 「……」
- 「新兵器の評価試験なんてのは、実戦と比べたら遊びみたいなもんだぜ」
- 「……」
- 「言いたい事があるんなら、言い返してもいいぞ、少尉」
- 「もっとも、ティターンズの俺達に楯突く覚悟があるんならの話だがな」
- 「……」
- 「フン…グローリー・スターなんて大層な名前をもらっているようだが、所詮は一般兵なんだよ」
- 「要するに大きな顔するなって事だ。戦争の行方は、俺達ティターンズが決めるんだからな」
- 「…自分は……」
- 「あなた達、何をしてるの?」
- 「チッ…面倒な奴のお出ましだ」
- 「見ての通りだ中尉。素人のお嬢さんに軍のしきたりを教えてやってただけだぜ」
- 「へぇ…そのしきたりってのは、ティターンズ様一流のハッタリを披露してくださる事かい?」
- 「何だ、貴様は…?」
- 「うちの大事なルーキーにアヤつけられて黙って見てられるかよ」
- 「グローリー・スターをナメてると痛い目に遭うぜ、地球育ちのエリートさんよ」
- 「フン…素人のお仲間か。さしずめ人形遊びのお相手って所だな」
- 「戦場に立たない腰抜けが、ティターンズに楯突くとはな。笑わせてくれるぜ」
- 「これはこれは…。エゥーゴに新型ガンダムを提供されたジェリド・メサ中尉殿ではないですか」
- 「さすがエリート部隊!新型を惜しげもなく敵さんに渡すとはなかなかの太っ腹で…」
- 「貴様っ!」
- 「…やめんか、トビー中尉。他部隊の作戦に余計な口出しは慎め」
- 「へえい、チーフ…」
- 「失礼をした、ジェリド中尉。部下の不始末は自分が代わって詫びよう」
- 「チッ…」
- (この男がデンゼル・ハマー大尉…。グローリー・スターの隊長か…)
- 「ごめんなさいね、あなたも。突っかかるような事をして」
- 「いえ…自分は…」
- 「固いぜ、セツコ。『栄光の星』の看板背負ってるんだから、もっと堂々としてろって」
- 「はい…」
- 「あなたがグローリー・スターの3rd、セツコ・オハラ少尉ね」
- 「は、はい」
- 「私はエマ・シーン中尉」
- 「今、デンゼル大尉とトビー中尉から基地の施設の説明を受けていたの。あなたも一緒にどうかしら?」
- 「自分は…」
- 「このコール…ティターンズの非常召集…!?」
- 「どうやら、エゥーゴの連中の尻尾をつかんだようだな」
- 「行くぜ、カクリコン、エマ。今日こそ、連中を叩き潰す…!」
- 「あ、あの…ジェリド中尉…」
- 「待ってろよ、少尉。お前達にティターンズの実力を見せ付けてやるぜ!」
- 「ご無事で、皆さん…」
- 「せいぜい頑張ってな、ティターンズさんよ」
- 「トビー。友達の出撃をからかうような真似はやめろ」
- 「たとえ相手が自意識過剰で世間知らず、単細胞で口だけの青二才でもな」
- 「フフン…チーフ。相当、アタマに来てらっしゃるようで」
- 「当然だ。俺の部下をシロウト呼ばわりするような連中なんざ軍神アレスに●●、ヌかれちまえばいい」
- 「●、●●…」
- 「チーフ…セツコが引いてるぜ」
- 「っと、こいつは失礼。セクハラだったかな、少尉」
- 「い、いえ!自分には何の事だかさっぱりわからず…」
- 「ははははは。いいリアクションだ、少尉」
- 「お、恐れ入ります」
- 「いいか、少尉。俺達はグローリー・スター…重大な任務のために選ばれた者達だ」
- 「己にしかない正しい資質に従い、その誇りを忘れるな」
- 「了解です」
- 「んじゃ、ティターンズの連中がエゥーゴを迎撃している間、俺達は俺達のお仕事をしますか」
- 「うむ…。格納庫ではとびっきりの美女が俺達を待っているからな」
- ==============
- ~ルテチウム基地 格納庫~
- 「バルゴラ1号機、オールグリーン。調整は完璧だ。2号機の調子はどうだ、トビー?」
- 「問題なし。俺のカワイコちゃんは今日もご機嫌っスよ」
- 「3号機も問題ありません」
- 「技術スタッフの話では、各機のカーバーの調整も完了したそうだ」
- 「全領域対応汎用武装システム、『ガナリー・カーバー』ね…。随分と欲張りな装備だぜ」
- 「茶化すな、トビー」
- 「ガナリー・カーバーの実用化と、あれを使った戦闘術『GSコンバットアクション』の完成が俺達の任務だ」
- 「で、俺ちゃん達のバルゴラは、そのガナリー・カーバーの運用を前提に調整されてるってわけね」
- 「ガナリー・カーバー運用機が制式量産されれば、連邦軍の戦力は飛躍的にアップする」
- 「と言っても、カーバーのテストは始まったばかりだがな」
- 「ゴールへの道のりは遠い…か…」
- 「俺の1号機は砲撃主体に、中尉の2号機は中距離格闘戦用、少尉の3号機は近接格闘戦用として調整済みだ」
- 「それらはスペシャルとしての使用法で、各ガナリー・カーバーには基本となる格闘・射撃用の武器も実装されている」
- 「で、俺達のテストが終了すれば、3機のスペシャルデータを統合して、全領域への対応が完成するっていう寸法ね」
- 「その通りだ。そして、1号機はシステムのマスターとして各機のデータを統合する事になっている」
- 「つまり、2号機と3号機は、1号機を完成させるためのアシストってわけか」
- 「身が入らんか、中尉?」
- 「まっさか!こんな面白い任務は、そうはないっスよ!」
- 「とびっきりのデータを用意しますぜ。それを使うチーフが、生まれてきたのを後悔するぐらい強烈な奴をね」
- 「ったく、お前という奴は…」
- 「……」
- 「どした、セツコ?心配事でもあんのか?」
- 「いえ…」
- 「ダメダメ!芝居下手過ぎ!悩んでますって顔に書いてあるぜ!」
- 「……」
- 「少尉、メンタル面のケアも兵士にとって重要な責務だ。吐き出して楽になるなら、話してみろ」
- 「……」
- 「もしかして、ティターンズの連中に言われた事、気にしてる?」
- 「……」
- 「図星ね…。その真面目さはキュートだけど、裏目ってるな」
- 「…地球連邦は異星からの侵略者、ベガ星連合軍と戦い…」
- 「同時に反地球連邦組織…エゥーゴという新たな敵を迎えています」
- 「敵ね…。エゥーゴは反地球連邦ってよりも反ティターンズの組織だがな…」
- 「こういった非常時において、自分のような存在は無意味ではと…」
- 「セツコ・オハラ少尉!気をつけ!」
- 「サ、サー!イエッサー!」
- 「我々は誇り高き月面駐留軍戦技研究班…通称、グローリー・スターだ!その任務を復唱しろ!」
- 「我々の任務…!次期主力量産機の評価試験、並びに戦技研究です!」
- 「量産機の完成は戦局を左右する。その開発プロジェクトは、軍において重大な任務である事は既に言った通りだ」
- 「お前はそれに不満があるのか?」
- 「いえ!その重要性については認識しております!」
- 「…だったら、焦るな。人間は、自分の身の丈にあった事からやっていけばいい」
- 「しかし、チーフ…。あのような侮辱まがいの事を言われては…」
- 「自分はともかく、チーフと中尉は実績もおありになるのに…」
- 「おいおい、買いかぶり過ぎだぜ。Dr・ヘルやミケーネの雑魚相手にちょいとスコアを稼いだ俺と…」
- 「一年戦争を生き抜いたチーフを一緒にするなっての」
- 「お前も過大評価しているぞ、トビー。俺の実績なんぞ誇りどころか、ホコリを被ってるようなもんだ」
- 「…そういう事だ、少尉。戦場に立っていようといまいと、俺達は自分の戦いをしている」
- 「お前は、その丁寧な操縦技術を買われてグローリー・スターに配属されたが…」
- 「銃を撃っていないからといって、戦っていないと思うのは大間違いだぞ」
- 「……」
- 「それにこんなご時勢だ。いつ俺達だって実戦に駆り出されるかわかったもんじゃないからな」
- 「…はい…」
- 「ま、テストパイロット稼業もティターンズの連中が言うほど楽じゃないぜ」
- 「事実、今、テストしているこのバルゴラの開発中に、お前の先任のマイケルは殉職してるんだからな」
- 「え…」
- 「んだよ、チーフ。その話、してなかったんスか?」
- 「ああ…その…何だな…。余計な不安感を与えると思ってな…」
- 「……」
- 「この反応を見る限り、黙っていたのは逆効果だったみたいですぜ」
- 「すまんな、少尉。確かに事前の説明が不十分だった事は認める…」
- 「だが…」
- 「大丈夫です、チーフ。自分も覚悟は出来ているつもりです」
- 「それに、たった10日とは言え、自分もバルゴラにそれなりの愛着を持っております」
- 「言ってくれるじゃないの、この子は…!」
- 「…自分には、他に行く所もありませんから…」
- 「…マイケルの件は不幸な事故だった…。だが、奴の尊い犠牲を無駄にせんためにも、俺達はバルゴラを仕上げなくてはならん」
- 「はい」
- 「声が小さいぞ、少尉!●●…もとい!腹に気合を込めろ!」
- 「はい!」
- 「OK!いい返事だ。ついでにもう一つ、サブチーフとして命令だ」
- 「俺の事は階級じゃなく、トビーって呼んでくれ」
- 「え、その…それは…」
- 「中尉の軽口は気にするな。こいつは無礼講を上官である俺にまで通そうとしやがる」
- 「尊敬と敬愛の表現のつもりなんスけどね」
- 「お前が俺をリスペクトするのは、飲み代の勘定の時だけだろうが…!」
- 「とんでもない!休暇申請の提出と、ボーナス査定時もっスよ」
- 「ってなわけで、今夜も尊敬させてください、デンゼル・ハマー大尉!」
- 「堂々とオゴリの催促とは恐れ入る…」
- 「少尉、お前もどうだ?ビール代ぐらいは出すぞ」
- 「い、いえ…!自分は遠慮させていただきます」
- 「…そうか、少尉はまだ未成年だったな」
- 「申し訳ありません」
- 「年齢の事で謝る必要はない。胸を張れ、少尉。猫背になってるぞ」
- 「は、はい!」
- 「明日には稼動テスト・レベルCに入る。ガナリー・カーバーのマニュアルを再読しておけ」
- 「サー!イエッサー!」
- 「!」
- 「こいつは…!警戒ラインへの侵入警報じゃねえか!」
- 「まずいな…。この基地の駐留部隊はティターンズと共にエゥーゴを追っている…」
- 「チーフ…!」
- 「スクランブルがかかるかも知れん!ハンガーへ行くぞ、トビー!」
- 「了解!」
- 「…バルゴラが出撃する…」
- ===============
- 第1話 ザ・ライトスタッフ
- 「スクランブルから1分15秒で出撃か。まあ合格点だな」
- 「そいつはどうも。ま…散々シゴかれましたからね」
- 「だが、ここからは訓練じゃない。実戦になるぞ」
- 「やれやれ…さっきまで戦場に出ない事を気に病んでたってのに急展開だね、どうも」
- 「しかし、ルテチウム基地の戦略的価値なんてゼロに等しいのに…適さん、何しに来るんでしょうね?」
- 「いや…価値はある。俺達が一番よくわかっているはずだ」
- 「俺達のバルゴラ…。それにその開発データですか…」
- 「あの基地で今戦えるのは俺達だけだ。それを忘れるなよ」
- 「了解。シューフィッター役のセツコに実戦は無理ですからね」
- 「トークタイムは終わりだ。来るぞ…!」
- 「スカート付きモドキと緑のGM系…エゥーゴが来たか…!」
- 「どうやら、ティターンズは別働隊におびき出されたようだな」
- 「ったくよ…!素直過ぎるぜ!地球育ちのエリート坊ちゃんズはよ!」
- 「よし…陽動は成功だ」
- 「クワトロ大尉とガンダムMk‐Ⅱを囮に使ったんだ。ティターンズの連中は飛びついてくるさ」
- 「おまけにターゲットが自ら出てきてくれるとはな」
- 「上手くいけば、データ取りだけでなく、鹵獲出来るかも知れん」
- 「ガンダムMk‐Ⅱに続いて、いただかせてもらうとするか」
- 「了解だ。各機、仕掛けるぞ」
- 「どうします、チーフ?連中、やる気のようですぜ」
- 「…相手はエゥーゴか…」
- 「心情的には味方したい所ですが…」
- 「それ以上は言うな。…言ったら、撃つ」
- 「へえい…軍人さんは辛いねえ…」
- 「俺達は地球連邦軍の兵士だ。エゥーゴを叩くぞ…!」
- 「了解!こうなりゃ連中をさらりと撃退して、エマ中尉の株を上げるとしますか!」
- 「チーフ…中尉…」
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