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- カルナ
- 【表記】
- 【俗称】
- 【種族】サーヴァント(APorムーンセル)
- 【備考】
- 【切札】
- 【設定】
- 【ステータス】
- ランサー
- 筋力B 耐久C 敏捷A 魔力B 幸運D 宝具EX
- ランチャー
- 筋力B 耐久A 敏捷A 魔力B 幸運A+
- 【クラス別スキル】
- 対魔力:C
- 二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
- 大魔術、儀礼呪法など、大掛かりな魔術は防げない。
- ただし宝具である黄金の鎧の効果を受けているときは、この限りではない。
- 【固有スキル】
- 貧者の見識:A
- 相手の性格・属性を見抜く眼力。
- 言葉による弁明、欺瞞に騙されない。
- 天涯孤独の身から弱きものの生と価値を問う機会に恵まれたカルナが持つ、相手の本質を掴む力を表す。
- 騎乗:A
- 幻獣・神獣ランクを除くすべての獣、乗り物を自在に操れる。
- 『マハーバーラタ』では戦車を駆り、戦場を走る姿が描かれている。
- ライダーのクラス適性も備えるほどランクが高い。
- 無冠の武芸:-
- 様々な理由から他者に認められなかった武具の技量。
- 相手からは剣、槍、弓、騎乗、神性のランクが実際のものより一段階低く見える。
- 真名が明らかになると、この効果は消滅。
- 魔力放出(炎):A
- 武器に魔力を込める力。
- カルナの場合、燃え盛る炎が魔力となって使用武器に宿る。
- このスキルは常時発動しており、カルナが握った武器はすべてこの効果を受けることになる。
- 神性:A
- 太陽神スーリヤの息子であり、死後にスーリヤと一体化するカルナは、最高の神霊適正を持つ。
- この神霊適正は神性がB以下の太陽神系の英霊に対して、高い防御力を発揮する。
- 【宝具】
- 『日輪よ、具足となれ(kavacha & kundala カヴァーチャ&クンダーラ)』
- カルナの母クンティーが未婚の母となることに恐怖を感じ、
- 息子を守るためにスーリヤに願って与えた黄金の鎧と耳輪。
- 太陽の輝きを放つ、強力な防御型宝具である。
- 光そのものが形となった存在であるため、神々でさえ破壊は困難。
- カルナの肉体と一体化している。
- 『梵天よ、地を覆え(Brahmastra ブラフマーストラ)』
- カルナがバラモンのパラシュラーマから授けられた対軍、対国宝具。
- クラスがアーチャーなら弓、他のクラスなら別の飛び道具として顕現する。
- ブラフマー神の名を唱えることで敵を追尾して絶対に命中するが、
- 呪いにより実力が自分以上の相手には使用できない。
- 『梵天よ、我を呪え(Brahmastra kundala ブラフマーストラ・クンダーラ)』
- 隠されたカルナの宝具。
- 奥の手。
- 飛び道具のブラフマーストラに、カルナの属性である炎熱の効果を付与して発射する。
- もとより広い効果範囲を持つブラフマーストラの効果範囲をさらに広め、威力を格段に上昇させる。
- その性能は核兵器に例えられるほど。
- 『日輪よ、死に随え(Vasavi shakti ヴァサヴィ・シャクティ)』
- 神々をも打ち倒す、一撃のみの光槍。
- 雷光でできた必滅の槍。
- インドラが黄金の鎧を奪う際、カルナの姿勢があまりにも高潔であったため、
- それに報いねばならないと思い与えた。
- 黄金の鎧と引換に顕現し、絶大な防御力の代わりに強力な"対神"性能の槍を装備する。
- 黄金の鎧
- インド神話において、
- 英雄カルナが身にまとっていた黄金の鎧と耳輪。
- カルナの母クンティーが未婚の母となる事に恐怖を感じ、
- 息子を守るためにスーリヤに願った鎧と耳飾り。
- 太陽そのものの輝きを放つ、強力な防御型宝具。
- 光そのものが形となったものであるため、
- 神々でさえ破壊は困難であり、
- インドラはこれを無効化しようと尽力した。
- 神話において、インドラはバラモン僧に変化して
- カルナの館を訪ね、カルナが御前の沐浴をしている時に
- “貴方の持ち物をいただきたい”とせまったという。
- カルナには沐浴の時にバラモンに請われたら断らない、
- という誓いがあった。
- 彼はインドラの罠と知りながらもこの申し出を受け、
- 求められるまま、
- 唯一の出自の証ともいえる鎧を差し出したという。
- ◆
- 神話では奪われたままだが、
- サーヴァント化したカルナはこの鎧を所持している。
- 見た目こそ重厚になってしまうが、物理・概念とわず
- あらゆる敵対干渉を削減する無敵の鎧である。
- これがあるかぎり、カルナにはダメージ数値は
- 十分の一しか届かない。
- 施しの英雄
- 『マハーバーラタ』において
- 施しの聖者と言われたカルナの特長。
- 感情表現の乏しいカルナだが、
- 自らを拾い上げたもの、
- 擁護したものを貶められる事には憤怒する傾向にある。
- それが利益のみの関係であれ、
- 恩義には恩義で酬いるのがカルナの在り方だからだ。
- そんな滅私奉公な性格からか、
- カルナは人から何かを求められた時、
- 道理が通っていればたいていのものは与えてしまう。
- これは彼が持ち物や財産にこだわらず、
- 心の在り方を第一に考えているためだろう。
- ◆
- ただし、聖杯戦争中は主人の勝利が第一なので、
- “勝ちを譲ってくれ”という求めには応じられないし、
- それが相手にとって良くない提案であると諭す。
- 「ふざけた勘違いだ。
- そもそも勝利とは自らでしか勝ち得ぬもの。
- 俺が施す勝利は、本当におまえにとっての勝利なのか?」
- これは嫌味ではなく、
- 勝ちを譲られた時点で人生に負けているのではないか?
- と本気で心配しての質問である。
- 神性:A
- 太陽神スーリヤの息子。
- のちにスーリヤと一体化するため、最高の神性を持つ。
- 神性がB以下の太陽神系の英霊に対して
- 高い防御力を発揮する。
- ◆
- 自己主張の乏しいカルナだが、
- 父である太陽神の威光を守る事には激しい決意を見せる。
- 母のいないカルナだが、父が太陽神である事だけは
- 確かであり、その力を授かった以上、決して、
- 父を貶める事はできないと誓っているからだろう。
- 無冠の武芸:-
- 様々な理由から認められる事のなかった武具の技量。
- 剣、槍、弓、騎乗、神性のそれぞれのスキルランクを
- マイナス1し、属性を真逆のものとして表示する。
- ただし、真名が明かされた場合、このスキルは消滅する。
- また余談ではあるが、
- 幸運値のランクはカルナ本人による申告である。
- 貧者の見識:-
- 相手の性格・属性を見抜く眼力。
- 言葉による弁明、欺瞞に騙される事がない。
- 実はたいへん思慮深い、人間的に優れた英雄。
- 異なる思想、敵側のものであろうとその生き方を受け入れ、
- “それもあり”と尊重する徳の高さを持っている。
- しかし、カルナのそういった本質は伝わりづらい。
- カルナの言動は本質を突く。
- 自らを偽った言動、取り繕う態度、信念。
- そういったものを見抜き、
- 『相手が隠しておきたい本質』を率直に語ってしまう。
- 結果、たいていの相手に嫌われてしまい、
- 戦闘を余儀なくされる。
- 誰だって自らの短所を語られるのは嫌なものだ。
- ◆
- 言うまでもなく、カルナの言動は相手(の短所)を
- 嫌悪してのものではない。
- 人それぞれの立ち位置を肯定するカルナにとって、
- 相容れぬ信念、理解できない美醜も尊ぶもの。
- 心の中では感心しているものの言葉には出さないため、
- 結果として“あらゆるものを否定し、嫌っている”ように
- 勘違いされてしまうようだ。
- 宝具
- 日輪よ、死に随え(ヴァサヴィ・シャクティ)
- 一撃のみの光槍。雷光で出来た必滅の槍。
- カルナとアルジュナの戦いが最終局面を迎えた時、
- アルジュナの父であり神々の王であるインドラは
- アルジュナを助けるため、カルナの最大の武具である
- 『黄金の鎧』を策略で取り上げてしまった。
- しかし、その時のカルナの態度があまりにも
- 高潔だったため、インドラは我が子の敵であるカルナに
- 心酔し、鎧を取り上げた代償として自身ですら
- 使いこなせなかった雷神の力を与えた。
- それがこの『雷槍』である。
- 神々をも打ち倒す力を持つというが、
- 神話においてカルナがこれを使用した記録はない。
- 人物背景Ⅰ
- 倒される側の英雄である。
- (マハーバーラタはパーンダヴァ王家とカウラヴァ王家、
- 両勢力による戦いを主軸として描かれたもの)
- インド神話の大英雄アルジュナのライバルとして名高い。
- ◆
- カルナは人間の王の娘クンティーと、
- 太陽神スーリヤとの間に生まれた。
- クンティーはクル王パーンドゥの妻だったが、
- パーンドゥは子供を作れない呪いにかかっており、
- 后たちは各々の手段で子供をもうけるしかなかった。
- クンティーは任意の神々と交わり、
- 子供を産むマントラを授かった女で、
- この手段でパーンドゥの子供を産む。
- ……が。彼女は王の妻となる前に、
- マントラの実験として子を一人もうけていた。
- この子供こそカルナ。太陽神スーリヤと
- 交わるコトで生まれた、黄金の英雄である。
- クンティーはしたたかな女で、初出産の恐れ、
- 神々が自分の子を認知するかといった不安から、
- 太陽神スーリヤに
- “この子供が貴方の息子である証拠がほしい”と願った。
- 太陽神スーリヤはクンティーの言葉を聞き入れ、
- 生まれてくる子供に自らの威光、属性を与える。
- これがカルナを不死身たらしめる黄金の鎧の出自である。
- ◆
- が。そこまでの恩寵、誠実さを示されながら、
- クンティーは一人目の息子を捨ててしまう。
- クル王パーンドゥの后になる事が決まっていた彼女には、
- 息子の存在は無用でしかなかったからだ。
- こうして母に捨てられたカルナは自らの出自を知らず、
- ただ、太陽神スーリヤを父に持つ事のみを
- 胸にして生きていく。
- 母の顔を知らず、また、その母の動機が不純だった為か、
- カルナの姿は見目麗しいものとは言えなかった。
- 父の輝かしい威光は備わっているものの、
- その姿は黒く濁っていた。
- 顔つきは酷薄で、その一挙一動は粗暴につきる。
- 人間の母親がいなかった為に人の感情の機微を学べず、
- まわりの人間からは煙たがれる日々だった。
- そんな境遇で育ったカルナだが、彼は母や周りを
- 恨まなかった。むしろ全てを肯定していた。
- 「俺が生を受けたのは父と母あってこそ。
- 母がどのような人物であれ、俺が母を貶める事はない。
- 俺が恨み、貶めるものがあるとすれば、
- それは俺自身だけだ」
- カルナはその外見とは裏腹に、
- 優れた徳と悟りを得た子供だった。
- 神の子でありながら天涯孤独の身であったからだろう。
- カルナは弱きものたち、
- その生と価値を問う機会に恵まれた。
- その結論として、彼は自らの潔癖さを貫く道を選んだ。
- 「人より多くのものを戴いて生まれた自分は、
- 人より優れた“生の証”を示すべきだ。
- そうでなければ、力なき人々が報われない」
- カルナにあるものは父の威光を汚さず、
- 報いてくれた人々に恥じる事なく生きる信念だけ。
- “冷酷、無慈悲ではあるが、同時に尊厳に満ちている”
- カルナのスタンスはこうしてかたちどられた。
- ◆
- そうして青年に成長したカルナは、
- クル族の協議会に参加する。
- 協議会ではパーンダヴァ五兄弟がその武芸を誇り、
- 名声をほしいままにしていた。
- 特に三男アルジュナの弓の腕は素晴らしく、
- 誰もかなう者はいないと讃えられた。
- 場がパーンダヴァを讃える声で一色になった時、
- カルナは飛び入りで参加し、
- アルジュナと同格の武芸を披露する。
- (余談だが、消極的なカルナがなぜアルジュナと
- 競おうとしたかは伝説上でも不明とされている。
- 誰も羨まない、誰も恨まないカルナが唯一意識した相手が
- アルジュナである理由は、後に判明する事になる)
- カルナは優劣を決しようとアルジュナに挑戦する。
- が、王族であるアルジュナに挑戦するには
- クシャトリア以上の資格が必要となる。
- (※クシャトリア……
- カースト制度でいう武門、王族。
- カルナはヴァイシャ(商人)、
- あるいはシュードラ(奴隷)だったと思われる)
- 身分の差から挑戦を断られ、笑いものにされるカルナ。
- そんなカルナを救ったのはパーンダヴァと対立する一族、
- カウラヴァ百王子の長兄、ドゥリーヨダナだった。
- 彼はカルナを気に入り、その場で王として迎え入れる。
- こうしてカルナは不名誉から救われたが、
- カルナの出世を聞きつけた養父が現れ、
- カルナの出自が判明してしまった。
- パーンダヴァ五兄弟は自分たちより上の武芸を
- 見せたカルナをさらなる笑いものにする。
- “御者の息子風情が恥を知れ”と。
- カルナはこの言葉に激怒した。
- 自分の事ならあまんじて受けるが、
- 養父を侮辱された事は聞き逃せない。
- ……たとえそれが欲にかられて名乗り出た
- 養父だとしても、カルナにとっては自らを
- 育ててくれた誇るべき父だからだ。
- カルナと五兄弟の対立はもはや引き下がれないものと
- なるが、日没を迎え、協議会は幕を下ろした。
- 以後、カルナは自分を救い、王として扱ってくれた
- ドゥリーヨダナを友とし、
- 彼らカウラヴァ百王子の賓客として生きる事になる。
- その先に待つ、パーンダヴァ五兄弟―――
- 大英雄アルジュナとの過酷な戦いを理解した上で。
- 人物背景Ⅱカルナが武人として弓を預けるカウラヴァ百王子と、
- アルジュナを筆頭とするパーンダヴァ五兄弟の対立は
- 激しさを増し、最終的には領地をかけての戦となった。
- この戦をクルクシェートラの戦いと呼び、
- カルナはこの戦でその命を終える事となる。
- ◆
- カルナはカウラヴァ百王子を、ひいてはドゥリーヨダナを
- 勝たせる為にその力を振るい続けた。
- パーンダヴァ側でカルナに対抗できるのはアルジュナだけ
- であり、そのアルジュナをもってしてもカルナとの
- 直接対決は死を覚悟しなければならないものだった。
- いくつかの衝突、因縁、憎しみ合いを経て、
- 両陣営の戦いはクルクシェートラに到達する。
- ことここに至って、
- カルナの母・クンティーは最後の賭けにでた。
- カルナに自らの出自を明かし、
- パーンダヴァ陣営に引き入れようと考えたのである。
- クンティーはアルジュナの従者にして友人・クリシュナに
- のみ事情を明かし、二人だけでカルナと面会する。
- クンティーは自分がカルナの母である事を明かし、
- 実の兄弟で戦う事の無益さを涙ながらに語り、
- アルジュナたちと共に戦い、
- 栄光を手にするべきだと説得した。
- カルナは宿敵アルジュナの友人であるクリシュナに
- 礼を欠かさず、また、母の説得を静かに聞き入れた。
- その後に、
- 「貴女の言葉は分かった。兄弟たちと手を取り、
- 正しい姿に戻る。
- それはなに一つ欠点のない、光に満ちた物語だろう」
- では、と喜ぶクンティーに対し、
- カルナはなお静かに言葉を続ける。
- 「だが、一つだけ答えてほしい。
- 貴女はその言葉を、遅すぎたとは思わないのか」
- 母と名乗るのが遅すぎた。
- カルナを省みるのが遅すぎた。
- それを恥と思わないのであれば、どうか答えてほしい。
- ―――母を名乗る貴方が、自らに何の負い目もないという
- のなら、自分も恥じる事なく過去を受け入れる、と。
- クンティーは身勝手な女ではあるが、
- それも生来の天真爛漫さ、無邪気さからくるもので、
- 決して恥を知らない女ではない。
- 彼女とて自らの行い……
- 自分のために生まれたばかりのカルナを捨てた事……
- が我欲に満ちたものだと自覚、自責はあった。
- なればこそ、彼女にも最低限の誇りはある。
- 今まで独りで育ち、養父たちに感謝し、何の憎しみも
- 抱かないカルナに、醜い嘘だけはつけなかったのである。
- クンティーは答えられず、交渉は決裂。
- うなだれて立ち去るクンティーにカルナは告げる。
- 「それは欺瞞、独りよがりの愛だ。
- アナタの愛で救えるのは、アナタだけだ。
- アナタの愛はアナタにしか向けられていない。
- だが―――」
- 「その気持ちに応えよう。
- 以後、戦において俺に及ばぬ兄弟を仕留める事はない。
- 俺が全力を尽くすのは、我が宿敵アルジュナだけだ」
- 五兄弟のうち、実力の劣る他の兄弟には
- 手を出さないとカルナは誓う。
- これ以後、カルナは幾度となく五兄弟を
- 見逃すのはこの誓いからである。
- 「自ら手にした場所へ帰るがいい。
- ……一度だけだが。
- 息子と呼ばれた事には、感謝している」
- 館の門を閉め、クンティーを送り出すカルナ。
- それはカルナなりの母親・クンティーへの愛。
- いまさら母恋しでもないが、最後に「母親としての情」に
- 訴えたクンティーの覚悟……それが真偽さだからぬものと
- しても……に、彼は応えたのだ。
- クンティーは自らの過去を明かす、という危険を冒した。
- 施しの英雄であるカルナにとって、
- その決意は酬いるに値するものだったのだ。
- ◆
- そうして、最後の戦いの直前。
- カルナの懐柔はできないと悟ったアルジュナの父、
- 雷神インドラはバラモン僧に化けてカルナと接触し、
- 彼から黄金の鎧を奪った。
- 父スーリヤから授かった不死身性を失ったカルナだったが、
- それでも戦いに赴く事をやめるとは言わなかった。
- カルナは黄金の鎧を失った時点で、
- 速やかに自らの破滅を受け入れたにも関わらずだ。
- あまりにも潔いカルナに感じ入ったのか、
- インドラは何故、と問う。
- アルジュナ愛しでこのような計略に走るインドラを
- 非難せず、鎧を失い、なぜ戦場に向かえるのかと。
- 「アナタを恨む事はない。
- 一枚上手だっただけの話だろう。
- むしろ―――そうだな。神といえど父親である、
- というのが俺には喜ばしい」
- では戦いに赴くのは何故だ、とインドラ。
- 「俺にとって敗北とは、父の威光を汚す事だ。
- 死が待っているにしても、逃げる事はできない」
- なにしろ、その為だけに生きてきた。
- 自らを生み、育ててくれたものたちに胸を張れるように
- 生きてきたカルナにとって、
- 自らの命は、彼自身のものですらなかったのだ。
- 「それに、ドゥリーヨダナにも恩がある。
- 俺はなぜか、あの厚顔で小心な男が眩しくてな。
- 我が父への不敬となるが、たまに、あの甘い光こそが、
- 日の暖かさだと思うのだ」
- カルナの背負う太陽の火ではなく、
- 絶対的なスーリヤの輝きでもなく、
- 人間が見せる不完全な魅力こそが太陽だとカルナは語る。
- その姿にスーリヤそのものの神性を見たインドラは、
- 自らの槍をカルナに与えた。
- 彼はこの高潔な英雄から命以上のものを奪った。
- その見返りにあたるものを与えなければ
- 自らの名誉を貶める事になるし、なにより―――
- 己が息子にも与えなかった最強の槍を、
- この男なら使いこなせるのでは、と惚れてしまったのだ。
- ◆
- こうしてカルナはバラモン僧を送り、鎧(肉)を失い、
- 幽鬼のようにやせ細った姿で戦場に向かった。
- アルジュナとの最後の戦い。
- カルナには既に味方はなく、身を任せる馬車の御者すら
- パーンダヴァに内通する敵だった。
- 数々の重荷、異母兄弟である弟への感情。
- 呪いによりカルナの馬車の車輪は轍にはまり、
- アルジュナの矢の弦が限界まで引き絞られる。
- 長く、見えない縁に操られるよう覇を競いあった兄弟は、
- ここぞとばかりに渾身の一撃を放ち合う。
- ――果たして、アルジュナの弓は、太陽を撃ち落とした。
- ◆
- カルナは死後、父スーリヤと一体化したと言われている。
- 『施しの英雄』と呼ばれ、何かを乞われたり
- 頼まれたりした時に断らない事を信条とした聖人。
- 非常に高い能力を持ちながら、
- 血の繋がった兄弟と敵対する悲劇を迎え、
- 様々な呪いを受け、その真価を発揮する事なく命を
- 落とした英雄―――それがカルナである。
- 余談ではあるが、
- アルジュナが真相……カルナが自分の兄である事……を
- 知っていたかどうかは定かではない。
- カルナがクンティーの息子である事を知っているのは、
- カルナとクンティー、クリシュナ、
- 太陽神スーリヤだけと思われる。
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