●「屈辱」ツイッターが炎上
　明らかに冷静さを失った集団の一人に「敵」と吊るし上げられた冒頭の女性は、すぐにその場を離れるのだろうと思ったが、そうではなかった。
「なんで私が朝鮮人なのよ。日本人だって言ってるでしょ。お前こそ帰れ、ジジイ」
　女性も負けじと言い返した。
　悪意をむき出しにした言葉が街頭でも、ネット上でも広がっている。ヘイトスピーチ（憎悪表現）を繰り返すデモの様子は動画配信され、気付けば、生活の中のそこかしこで、こうした言葉にぶち当たる。
　主張や理由よりも、それ自体が目的のようにも見える“むき出しの言葉”の裏には何があるのだろうか。
　『五体不満足』の著者、乙武洋匡さん（３７）のツイッターが炎上したのは、５月１８日のこと。銀座のイタリアンレストランで車いすを理由に入店拒否されたことを、店名を挙げて「屈辱」とつぶやいたのが始まりだった。
　ツイッターなどでの説明によると、事前に予約していた店は建物の２階にあるが、エレベーターは利用できず、当時はスタッフが２人しかいなかった。体を抱えて上がってほしいと頼んだが、店主に「忙しいから無理」「車いすなら、事前に言っておくのが常識だ」などと「ぶっきらぼうに」言われたという。
　それに対して、店側はそんな言葉遣いはしていないと反論。事前に連絡するようにとホームページに載せていなかったことを謝罪した。ネット上では、バリアフリーではない建物なら周りが手を貸せばいい、など乙武さんに賛同する意見もあったが、店名を晒したことへの批判や、車いすの場合は事前に伝えるべきだという否定的な意見も飛び交った。