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- 〔巨神兵東京に現れ〕
- 昨日の夜のことだった。私の一人暮らしのマンションに大学生の弟が突然やってくる。実家でも弟が私の部屋に入ったことなんかなかったので、私のベッドとか服とか置いてある空間に弟がいるって光景がなんか不思議。すると弟も言う、
- 「この日常、ぶち壊すって感じで申し訳ないんだけどさ、」
- 何この子。酔っらってんの?
- 「大きな災いがやってくる」
- ほんと、なに言ってんの?それネットとかのデマの話じゃなくて、信じんのあんた?そこまでバカじゃなかったよね。
- 「唐突でごめんな。でもマジで、この街は明日全部壊れるよ」
- 「災厄ってさ、本当は不意に襲ってくるんじゃなくて、実際には予兆だって警告だってあるんだ。」
- 弟にしか見えない男のこと、二人きりで向かい合っていて、でも絶対こんなこと言わないよな、と思ってなんか怖くなる。何なのあんた。誰なの?
- 「僕は警告だよ」
- 怖い。不思議なことが起こっている。でもそれを覚えているべきだったのだ。不思議なこと、突飛なことだって起こるのだ。弟が言う、
- 「いつも通りの日常を過ごしている時に、予兆とか警告の唐突さにどう向き合えるかが重要なんだ」
- ちょっと…私の背中がぞくぞくする。この子普通じゃないよ。絶対可笑しい。私の足が振るい始めると弟が少し笑う。
- 「じゃあ姉ちゃんに任したからな。意地悪するみたいで申し訳ないけど、もちろんその反対だよ」
- そしてそのまますうっと薄くなり、消える。
- 私は昨日の夜のうちに、ちゃんと伝えるべきだったのだ。もっと大きな声で叫ぶべきだったのだ。
- 今住んでいる街がなくなるとか、いつもの日常がなくなるとか、普通に生きててどうやって言うの?
- でももうそんな警告届かない、伝わらない。災厄そのものが今目の前で立ち上がる。
- 「明日が来る前に、この街から逃げ出しなさい」
- 創造主ばかりが神ではない。自分の願いや祈りを聞き届け、叶えてくれる存在だけが神というわけでもない。大きな災厄が人間と似た形で空から降りてきて、わたしたちには判る。恐れこそが神の本質なのだ。
- だから人間たちが自分たちに危害を加え、命を奪おうとするものに手を合わせ、膝を折り、拝み、祈る。
- 世界には寿命がある。なのに、僕たちに任せても世界がダラダラと延命するだけなので、世界は強引にあいつらを召還する。そのとき僕たちは、全てが終わるべくして終わるんだと知る。でも僕たちはひたすら行き続けてたかったのだ。世界を終わらせたくなかったのだ。
- 【第一の日、人と地上の生き物が消える。】
- 創造の神は七日間でこの世を創ったらしい。
- 【第二の日、この世から全ての生き物がいなくなる。】
- 僕たちだってこの世に色んなもの作ってきた。
- 【第三の日、太陽と月が壊され、昼も夜もなくなる。】
- 【第四の日、地が沈み、全ては水になる。】
- 【第五の日、水も空も失せる。】
- こんな風に一週にして色々壊されていくように見えるけど、多分壊すほうだって同じくらい時間がかかるに違いない。
- 【第六の日、光が消え、全ては闇と混沌に包まれる。】
- 炎が世界を壊すのに七日間かかるなら、それだけ逃げるチャンスもある。逃げろ。生き延びろ。新しい世界を自分で作ればいいんだ。
- 【第七の日、災いな仕事を終え、安息の喜びの中で静かに泣く。】
- 世界の意志なんて知るものか。神の気持ちなんて構うものか。終わる世界の中で。私以外の存在に希望を抱きながら、私は生き、逃げながら待っている。
- 「これが、これから始まる火の七日間である。」
- 新世界の訪れの前の、巨大な炎がやってくる。
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