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cherryflan

miyakowasureomake

Oct 22nd, 2012
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  1. 猜疑が争いを焚きつけ、争いは火の手を生み、命は瞬く間に燃え尽きていく。
  2. 全ての命が燃え、その残骸だけが虚しくも激しい炎を上げる、嘗ての大路。
  3. 呆然と立ちつく少女の姿が一つ。彼女は人ではない。
  4.  
  5. そこに、彼女と同じく人ならざるものの影があった。
  6. 四肢の一部を失った黒の獣が、這うように少女に迫る。
  7. 「貴様ガ、ミマヤニ力(ちから)ヲ与エタ精霊カ」
  8. 獣の問いかけに、少女は答えない。
  9. 暫しの間を置き、獣が続ける。
  10. 「一ツダケ聞キタイコトガアル」
  11. 少女は黙したまま、俯く。
  12. 「…ミマヤガ我ニ止メヲ刺サントセシトキ、直前マデ感ジテイタ剣カラ発セラレル、
  13.  貴様ト同種ノ力ガ突然失ワレタ。
  14.  其ノヨウナ事ガ無ケレバ、我ハミマヤに殺サレテイタダロウ。
  15.  何故、貴様ハ我ニミマヤヲ殺サセタ。」
  16. 少女は顔を上げた。そこに表情は見えない。
  17. しかし発せられた声は、微かな震えを含んでいた。
  18. 「あの娘が…ミマヤだけが人になるのが、許せなかった。」
  19.  
  20.  
  21. 精霊にとってミマヤの存在は何者だったのか。
  22. 二人が共に過ごした数年の間、
  23. アカリは国の歴史を語り、ミマヤは喪った記憶を紡ぎ、僅かに残る思い出を語っていたという。
  24. 精霊と人の、祝詞を介さぬ交わりの例は存在せず、その間柄を説明する言葉は無いが、
  25. それがもし人と人の間柄であったなら、何と呼ぶものであっただろうか。
  26.  
  27. ともあれ、語りたがりは常に人間のみ。妖魔の語り部など聞いたことも無いだろう。
  28. 死人には語るべき口が無く、精霊は黙して何も語らず。
  29. 人の地平に立つ者は、物語の断片を集め、空想するしかできない。
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