- 中天
- 販売元:ソニー・ミュージックエンタテインメント
- 価格:7800円
- 対応機種:Macintosh、Windows
- ●中天
- 前作「東脳」で七度の転生を繰り返し、自らの命を取り戻したリンの強い光を持った心に、闇との戦いを前に顔をバラバラにされた「ナンシュ」が助けを求める。「東脳」が「顔」の形をした世界で命を探す円環状の旅だったのに対し、「中天」では、「顔」を探し、「闇」を相手に戦うために、三角形の宇宙を旅する。三部作だそうだから、次でこの円環が閉じることになるのだろうけど、とりあえず、今回の相手は「闇」。栗本薫の魔界水滸伝では、タナトスと呼ばれる「死の闇」が全てを食い尽くした。黒沢清監督の「スウィートホーム」では闇が襲って来る。この「中天」でも、闇アメーバという光を食う虫が出て来る。闇に潜む何者かではなく、「闇」そのものを相手にするという筋書きは比較的ポピュラーだが、話が哲学的になりやすい欠点もある。ただ、やや思想的にストーリーが展開するこのシリーズにはぴったりの相手だ。戦うべき相手が、明確になった分、ストーリーも分かりやすく、進行も一本道になって、よりゲームっぽさが増した。
- 攻略のポイントは迷路。「天の川」から、迷宮を辿って「中天」と呼ばれる三つの宮がバランスをとって結ばれている世界へと入る。「星の宮」「月の宮」「日の宮」という三つの光を司る宮からなる三角形の中心には「マガタマ惑星」が浮いている。それらの三つの宮も、全て迷路というか、目的の場所に簡単には行けないようになっている。その場所の把握と、宮同士を結ぶ門を開くことが、攻略のポイントになる。とにかく、いきなり「天の川」の迷路が難しい。目印になるようなものがほとんど無い上に、一度通ったところを振り返ると何かが現れる、といった具合で、適当に動いているだけでは、どうしようもない。正解の道筋は、実は凄く簡単に作られていて、工夫しているのだけど、中々気が付かない。迷宮の設計は難しいとは思うが、ゲーム序盤からいきなりこれでは、ここでやる気が失せる人も多いだろうな。
- 佐藤理氏描くキャラクターは、程良く抽象的で、この不思議な世界にリアリティを与えている。グラフィックも全体に抑えたトーンになって、見やすくなった。ただ、ゲームをしながら気が付いたんだけど、この「中天」(東脳もだけど)、キャラクターデザインや抽象化された世界構造を抜いて見ると、世界を救うために旅する主人公、それぞれに難問を出す各宮の長、アイテムを探して対闇用の武器を作る、などなど、結構正統派ロール・プレイング・ゲームの定石を踏まえているのだ。「転生」の概念を無くし、敵を明確にすることで、「中天」は、ほとんどアニメ系のロール・プレイング・ゲームと同じようなストーリー展開をする。その手の、特に「剣と魔法の世界」が好きな人には違和感無くゲームの世界に馴染めると思う。「光」対「闇」の戦いなんて、モロそれ風でしょ。闇に引き込まれて闇の手先になった奴なんかも出てくるしね。実際、「東脳」に比べ、ゲームとしてのクオリティは相当良くなっている。その分マルチメディア・エンターテイメント的な要素は薄くなっているけど、面白くなっていることは間違いない。思想的な要素や、人間の潜在意識のパロディのようなキャラクターを減らしている分、ストーリーが単なる風刺や文明批判の比喩で終わらず、広がりが出てきた。
- 相変わらず、同じ所を行ったり来たりしなければならないし、難易度を高めるためだけの仕掛けが多いのが気になるが、絵や音のクオリティやシーンの美しさを優先すると、世界そのものは小さくせざるを得ないのだろう。でも、面白ければすぐ終わっても大丈夫なんだから、プレイ時間を長引かせるための工夫はやめて欲しいな。ま、難しいことは考えず気楽に遊べるゲームに仕上がってるのが何よりかな。ダンジョン系が苦手な人にはツライけどね。
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Chu-Ten




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