「それから寮監室にはもう掛けてくるな」 「だってお前、携帯に掛けても出てくれないだろう?」 手塚は受話器を握ったまま目を閉じた。互いに情報をやり取りするようになった、自分の肩にしか背の届かない生意気な女子を思い浮かべる。 必要なら誰とでも寝られる。だから自分は向いている。 傷ついたふうもなくそう嘯いた後ろ姿。手塚がサインをもらったハンカチをいかにもどうでもよさそうに振った後ろ姿。決してそのときの表情をこちらには見せない。 「...携帯に掛けたら、できるだけ出るようにする」 慧とはーー『未来企画』とは手塚が一番近い。もし、慧の気まぐれな連絡を手塚が受けるようにすれば、あの生意気で男前な女の被る負担は少しでも減るのかもしれない。 「国交復活と考えてもいいのかな?」 「調子になるなよ」 即座にそこは叩く。