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- せめてぐみちゃん手伝ってくれないかな。
- 助けを求めるようにぐみちゃんの方を見てみると――。
- 蛍「早河、各部活への定例会議の書類を作る。生徒会室へ戻ってくれるか」
- 恵「あ、はーい」
- 晶「ああ……」
- 頼みの綱のぐみちゃんは去っていってしまった。
- 残ったのは、俺と――会長。
- あとダンボール4箱。
- 奏龍「………」
- 晶「………」
- 奏龍「じ、じゃ、がんばって!」
- 晶「やっぱりな! やっぱり絶対手伝ってくれないと思った!」
- 叫んでみても、誰にも届くわけがない。
- 晶「……はあ」
- どのくらいで終わるというのは、忘れておこう。
- こういうのは黙々とやるのが一番だ。
- 晶「よーし、やるかー」
- …………。
- ………。
- ……。
- 晶「……辛い」
- 延々と『ポイ』が視界に入る。
- 紙を貼り付けた完成『ポイ』と、針金だけの未完成『ポイ』。
- 右から左へと流れてゆく『ポイ』の流れに飲みこまれてしまいそうだ。
- 単純作業ということは、同じ動きがずっと続くということだ。
- それはわかっていた。
- 誰もいないというのに、思わず叫びたくなってしまう。
- 晶「誰かたすけてー!!」
- ???「はいっ」
- 晶「えっ?!?!」
- 桜子「助けに来ましたよ、葛木さん!」
- 茉百合「あぁ、皇くんたら本当に晶くん一人に押し付けちゃったのね」
- 晶「水無瀬、茉百合さん!」
- 天使だ。
- 完全に天使だ。
- その背中がうっすら輝いてるのは、俺の目のせいなのか?
- それともこの延々と続く『ポイ』地獄のせいで幻覚でも見てるのか?
- ぶんぶんと頭をふってみたけど、やっぱり目の前には水無瀬と茉百合さんがいた。
- 二人とも優雅な笑顔を浮かべながら、俺の横に座ってくれる。
- 晶「どうしたんですか? あの、仕事は…いいんですか?」
- 茉百合「いいの、今日は私はお休みをもらっていたから。学校には少し寄っただけだったのだけれど」
- 桜子「そしたら、葛木さんがここで一人で作業しているって聞いたので、何かお手伝い出来ればと」
- 茉百合「そうね。三人でやればすぐに終わるでしょう」
- 晶「え、でもいいのかな……二人に手伝わせるなんて…」
- 桜子「今日は待ち時間が少なかったから、時間が余っているんです。葛木さんのお役に立てるなら、有効な時間の使い方だと思いますよ!」
- 茉百合「桜子もこう言っている事ですし、遠慮しなくていいのよ」
- 晶「本当ですか? ありがとうございます…うぅ」
- 茉百合「もともとは私たちの仕事ですもの。そんなに感激されると恐縮してしまうわね」
- 微笑みながら言った茉百合さんに頭を下げた後、水無瀬の姿が視界に入った。
- 水無瀬はダンボールいっぱいの紙と枠を見つめている。
- なんだか、その目がきらきらしている気がした。
- もしかして、楽しそうだと思っているんだろうか。
- 桜子「この紙を、こっちに貼ればいいんですよね?」
- 晶「あ、えっと、裏表あるので気をつけて」
- 桜子「わかりました。
- 桜子えーっと……」
- 茉百合「こっちが表よ、桜子。この説明書に書いてあるわ」
- 桜子「あ、ほんとだ」
- ふたりはダンボールに入っていた説明書を一緒に覗き込む。
- ふんふんと頷きながら説明書を読む水無瀬。
- その水無瀬にいろいろと説明してあげる茉百合さん。
- なんだか、とても自然に仲良しだ。
- 茉百合「うん、この量だったら、三人で手早くやればすぐに終わりそうね」
- 桜子「そうね、頑張りましょ」
- 晶「いやもう、俺は話し相手が来てくれただけでも、すごく嬉しいです!」
- 桜子「そうなんですか?」
- 晶「そうですよ……一人だけで単純作業していると気がめいるっていうか」
- 茉百合「話しながらだと、気がまぎれますものね」
- 桜子「あぁ、葛木さんの言うことはなんだかわかる気がします。私もお喋りしながらだと楽しいですし」
- 茉百合「ふふ、桜子、手はちゃんと動かして下さいね」
- 桜子「もう、動かしてますよ。まゆちゃんは時々いじわる言うんだから」
- 茉百合「意地悪じゃないわよ、桜子はお喋りに夢中になるといつも手が止まるじゃない?」
- 桜子「む~」
- ああ、これが女の子同士のやり取りなんだ。
- きっとふたりはいつもこうやって話してるんだろうな。
- なんだか、ふたりの仲の良さを盗み見してるみたいな気分だけど、自然と顔が緩んでしまう。
- 桜子「あ、もう、葛木さんまで! まゆちゃんのせいよ?」
- 茉百合「くすくす…」
- 晶「あ、いやあの! ふたりって本当に仲良しなんだなーと思って。小さい頃から友達だったんですか?」
- 茉百合「いいえ、そこまで小さい頃からというわけではないのよ。確か4年くらい前だったかしら?」
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