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May 24th, 2015
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  1. せめてぐみちゃん手伝ってくれないかな。
  2.  
  3. 助けを求めるようにぐみちゃんの方を見てみると――。
  4.  
  5. 蛍「早河、各部活への定例会議の書類を作る。生徒会室へ戻ってくれるか」
  6.  
  7. 恵「あ、はーい」
  8.  
  9. 晶「ああ……」
  10.  
  11. 頼みの綱のぐみちゃんは去っていってしまった。
  12.  
  13. 残ったのは、俺と――会長。
  14.  
  15. あとダンボール4箱。
  16.  
  17. 奏龍「………」
  18.  
  19. 晶「………」
  20.  
  21. 奏龍「じ、じゃ、がんばって!」
  22.  
  23. 晶「やっぱりな! やっぱり絶対手伝ってくれないと思った!」
  24.  
  25. 叫んでみても、誰にも届くわけがない。
  26.  
  27. 晶「……はあ」
  28.  
  29. どのくらいで終わるというのは、忘れておこう。
  30.  
  31. こういうのは黙々とやるのが一番だ。
  32.  
  33. 晶「よーし、やるかー」
  34.  
  35. …………。
  36.  
  37. ………。
  38.  
  39. ……。
  40.  
  41. 晶「……辛い」
  42.  
  43. 延々と『ポイ』が視界に入る。
  44.  
  45. 紙を貼り付けた完成『ポイ』と、針金だけの未完成『ポイ』。
  46.  
  47. 右から左へと流れてゆく『ポイ』の流れに飲みこまれてしまいそうだ。
  48.  
  49. 単純作業ということは、同じ動きがずっと続くということだ。
  50.  
  51. それはわかっていた。
  52.  
  53. 誰もいないというのに、思わず叫びたくなってしまう。
  54.  
  55. 晶「誰かたすけてー!!」
  56.  
  57. ???「はいっ」
  58.  
  59. 晶「えっ?!?!」
  60.  
  61. 桜子「助けに来ましたよ、葛木さん!」
  62.  
  63. 茉百合「あぁ、皇くんたら本当に晶くん一人に押し付けちゃったのね」
  64.  
  65. 晶「水無瀬、茉百合さん!」
  66.  
  67. 天使だ。
  68.  
  69. 完全に天使だ。
  70.  
  71. その背中がうっすら輝いてるのは、俺の目のせいなのか?
  72.  
  73. それともこの延々と続く『ポイ』地獄のせいで幻覚でも見てるのか?
  74.  
  75. ぶんぶんと頭をふってみたけど、やっぱり目の前には水無瀬と茉百合さんがいた。
  76.  
  77. 二人とも優雅な笑顔を浮かべながら、俺の横に座ってくれる。
  78.  
  79. 晶「どうしたんですか? あの、仕事は…いいんですか?」
  80.  
  81. 茉百合「いいの、今日は私はお休みをもらっていたから。学校には少し寄っただけだったのだけれど」
  82.  
  83. 桜子「そしたら、葛木さんがここで一人で作業しているって聞いたので、何かお手伝い出来ればと」
  84.  
  85. 茉百合「そうね。三人でやればすぐに終わるでしょう」
  86.  
  87. 晶「え、でもいいのかな……二人に手伝わせるなんて…」
  88.  
  89. 桜子「今日は待ち時間が少なかったから、時間が余っているんです。葛木さんのお役に立てるなら、有効な時間の使い方だと思いますよ!」
  90.  
  91. 茉百合「桜子もこう言っている事ですし、遠慮しなくていいのよ」
  92.  
  93. 晶「本当ですか? ありがとうございます…うぅ」
  94.  
  95. 茉百合「もともとは私たちの仕事ですもの。そんなに感激されると恐縮してしまうわね」
  96.  
  97. 微笑みながら言った茉百合さんに頭を下げた後、水無瀬の姿が視界に入った。
  98.  
  99. 水無瀬はダンボールいっぱいの紙と枠を見つめている。
  100.  
  101. なんだか、その目がきらきらしている気がした。
  102.  
  103. もしかして、楽しそうだと思っているんだろうか。
  104.  
  105. 桜子「この紙を、こっちに貼ればいいんですよね?」
  106.  
  107. 晶「あ、えっと、裏表あるので気をつけて」
  108.  
  109. 桜子「わかりました。
  110.  
  111. 桜子えーっと……」
  112.  
  113. 茉百合「こっちが表よ、桜子。この説明書に書いてあるわ」
  114.  
  115. 桜子「あ、ほんとだ」
  116.  
  117. ふたりはダンボールに入っていた説明書を一緒に覗き込む。
  118.  
  119. ふんふんと頷きながら説明書を読む水無瀬。
  120.  
  121. その水無瀬にいろいろと説明してあげる茉百合さん。
  122.  
  123. なんだか、とても自然に仲良しだ。
  124.  
  125. 茉百合「うん、この量だったら、三人で手早くやればすぐに終わりそうね」
  126.  
  127. 桜子「そうね、頑張りましょ」
  128.  
  129. 晶「いやもう、俺は話し相手が来てくれただけでも、すごく嬉しいです!」
  130.  
  131. 桜子「そうなんですか?」
  132.  
  133. 晶「そうですよ……一人だけで単純作業していると気がめいるっていうか」
  134.  
  135. 茉百合「話しながらだと、気がまぎれますものね」
  136.  
  137. 桜子「あぁ、葛木さんの言うことはなんだかわかる気がします。私もお喋りしながらだと楽しいですし」
  138.  
  139. 茉百合「ふふ、桜子、手はちゃんと動かして下さいね」
  140.  
  141. 桜子「もう、動かしてますよ。まゆちゃんは時々いじわる言うんだから」
  142.  
  143. 茉百合「意地悪じゃないわよ、桜子はお喋りに夢中になるといつも手が止まるじゃない?」
  144.  
  145. 桜子「む~」
  146.  
  147. ああ、これが女の子同士のやり取りなんだ。
  148.  
  149. きっとふたりはいつもこうやって話してるんだろうな。
  150.  
  151. なんだか、ふたりの仲の良さを盗み見してるみたいな気分だけど、自然と顔が緩んでしまう。
  152.  
  153. 桜子「あ、もう、葛木さんまで! まゆちゃんのせいよ?」
  154.  
  155. 茉百合「くすくす…」
  156.  
  157. 晶「あ、いやあの! ふたりって本当に仲良しなんだなーと思って。小さい頃から友達だったんですか?」
  158.  
  159. 茉百合「いいえ、そこまで小さい頃からというわけではないのよ。確か4年くらい前だったかしら?」
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